【北行庵】 HOMETRAVEL
事例報告/旅行中のハップニング
欧州ツアーの観光バスが衝突事故に
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はじめに Page Head ▲
marupi-geridome-s 2005年10月のこと、ツアーでオランダ・ベルギーのバス周遊旅行をしました。その後半ブリュージュからアルデンヌ地方の古城巡りに向かう途中、雨の山道で対向車がスピンしながら後向きに対向車線に進入、バスの前部に激突する事故となりました。 幸いに事故現場での死者や重傷者は発生しなかった。しかし、時間の経過と共に具合が悪くなり医師の診察を希望する人が6名程いたのです。ブリュッセルのホテルでは医師と看護師が待っていました。この事故の説明と簡単に旅行保険などについて説明するページです。

衝突事故の発生と現場 Page Head ▲
10:41 ベルギーは右側通行、左が谷側で右が山側の片側一車線の道を走っていた。道路の中央は1m程度の色違いのスペースで示されている。まだ小雨で路面は濡れていた。大きく右にカーブする緩い坂道を順調に走っていたが、バスは急にバンビング・ブレーキ(ABS作動 ?)をかけ右の山側ぎりぎりにグッと寄った・・・。
「バーン」という激音と大振動の後にバスは止まった。その直前の「あぶなーい!」という前方の大声で、ワイフも私も咄嗟に前部座席上部を手で掴んだようでした。2人ともその自分の手に顔をぶつけ、ワイフは左あごに打撲による小さな赤い跡ができました。ワイフの打ち傷は軽いもの、報告もせずに放置した。しかし痕跡が完全に消滅したのは帰国後だったようです。私は頬が痛かっただけでした。

最後部の座席から外を眺めていたので、バスが右車線を走っていたことは間違いなかった。何と衝突したのか一瞬は分からなかった。しかし、直ぐ何かの金属板がバス前方から対向車線の端まですっ飛んだのは見ました。対向車が車線をはみ出し正面衝突と思いました。
当初の心的ショックから落ち着きを取り戻し、デジカメ片手に最後部からバスの最前部に行ってみる。フロント・ガラス越しに見ると、個人用車両の後部が大きく破損し横倒しになっていた。 バスとこの車は同じ方向を向いている。つまり、追突? しかし、それにしては衝撃が大きすぎる。

我々が聞いたかぎり、左側の対向車線を走っていた車が何らかの理由で走行中に180度スピンしてこちらの車線に入り込んだ。そのスピンする車を見たバスのドライバーさんは急ブレーキをかけると共に右側に車体を寄せる事故回避行動をとったのです。しかし大きくこちらの車線に入り込んだ対向車を避けることは不可能で、バスの前部・左角が衝突したのです。これ以上バスが右に寄ったら山の斜面に乗り上げ、今度はバスが間違いなく横転する位置関係でした。バスのドライバーさんも危機一髪、運転席・外部の下部が大きく破損しフロント・ガラスもひび割れの状態だった。でも怪我はなかった(ようでした。)

10:44 前部に行き事故車を見た時には既に数名の人達がいて横倒しの車の運転席あたりで何やらしていました。
10:45 白地に赤線の救急車が事故車の前部につく。
しばらくは横転した車から人を救出する作業が続いたようでした。そして、事故車の運転手さんは救急隊員の手により車外に救出され、首に鞭打ち症対策の救急用ギブスを付ける応急手当を受けました。私は見ていなかったのですが、この人とバスのドライバーさんはお互いの無事を喜び合い、しばし抱き合って互いの背中を叩いていたそうです。ワイフが言うに、「とても感動的なシーンだった。」車の状態からは想像できませんが、人命に係わるような事故にならず本当によかった。
11:00 首に救急用ギブスを付けた事故車の運転手さんは自分で歩いて後続の黄色い救急車に乗り、自らベットに横たわった。そしてこの救急車は急ぎ立ち去りました。

11:00 警察のパトカーがバスの後ろにいました。そして救出作業担当らしき赤塗りのボックスカーが事故車の近くに止まった。
11:20 バス中央部のドアーから外に出て、自分の目でバスの損傷を見たり、赤いボックスカーの設備を覗いたりした。屋根に特殊なアンテナを付けたこの車には事故車を切断したりドアーをこじ開けたりする荒仕事用の道具らしきものが沢山ありました。いろいろ写真を撮っていたら、レスキュー隊員4人がカメラの前に並んでくれました。今回は救急車で済む程度で、実際には彼らの出番はなく幸いでした。しかしこの人達の活躍を必要とする事故も時々あるのでしょうね・・・。

11:41 事故発生後1時間も経過してから、婦警さんがカメラ(デジカメらしい)で事故現場の撮影をしました。何とも悠長な感じがしましたが、人命救助が最優先で警察による事故の調査等々は後回し、ということでしょう。
11:45 バスがものものしい車両に取り囲まれている中、臨時の白い中型スクールバスが我々をピックアップにきました。本格的な代替の観光バスは間に合わず、アンヌヴォア城の見学中にスーツケースを積替えて迎えにくるようでした。

今までのバスとドライバーさんを残したまま、携帯品を持ってスクールバスに移動し、近くの目的地に向いました。時間的には約1時間のロスですが、心理的にはもっと長かったような気がしていました。

観光先のレストランで一息 Page Head ▲
12:00 見学先のアンヌポア城の駐車場に到着。白いスクールバスは我々を降ろして直ぐに帰っていった。 道路を横切った傾斜地にレストラン(道路側、2階)と土産店(庭園側、1階)の建物がある。小雨のなか、全ての手荷物類をもって道を渡った。 レストランに入り、とりあえずテーブルにつく。好きな飲物を注文するようにいわれた。これは事故の発生により 「参加者に多大な迷惑を掛けた」 ので旅行会社が気を利かせたのです。我々はカプチーノを頼みました。今のところ怪我人はいないし心配はないのですが、沈みがちな気分を変えるのに暖かい飲物はありがたいものでした。

医師の診察について Page Head ▲
19:15 アルデンヌ地方の古城巡りを終え、首都ブリュッセルのホテルに到着した。
19:20 ロビーに入る。
午前のバス衝突事故の直後に「怪我をした人は?」という聞き取り調査がありました。外傷を受けた人はおらず救急隊員のお世話になった人もいなかった。その後の観光でも全員が同じように行動したのです。しかし、我々だって前席の背もたれを掴んだ手に顔を強くぶつけたし、体調への悪影響を心配する人がいても不思議はありません。

事故以後に何らかの不調や異常を感じ医師の診断を希望する人が実際に6名(?)もいたようです。我々がホテルに到着した時には既に医師と看護師のチームがホテルのロビーで待機していました。ここでは問診や当面の医薬品の処方程度の簡単な事しか出来ないのですが(問題があれば直ぐ病院行き)、不調を感ずる人達は医師の診断で少なくとも気分的に楽になり、帰国後の対処法もはっきりすることでしょう。

19:55 一旦は自室に入ったが、直ぐホテル1階のレストランで夕食となった。 医師の診察を受けた女性が隣だったのでお願いして診断書(英文)を見せてもらいました。あちこちにマークが付けられた簡単な一枚の印刷物(B5位)です。本人は見かけ上は元気に振舞っていましたが、やはり幾つかの病名と医師の署名が手書きで記載されていました。受診した6名のなかには鞭打ち症と診断された人もいたそうです。
医師の診察を受けた人達はどうやら全員が前方の座席だったようです。対向車がスリップして回転するのを見た人もいたのですが、衝突の物理的ショックは前方の席ほど大きかったのかも知れません。海外ツアーでバスに乗車する場合、「最前列4席は旅行保険の適用外なので座らないこと」といわれます。万一の時にバスの構造上の理由で傷害の度合いが深まるからでしょうが、今回の事例でも最前列は空けたほうが良いようです。
バスが横転しなくて本当に良かったと改めて思いました。

我々のテーブルでは怪我の場合の保障のことが話題になりました。今回のようなケースでは、旅行会社からは何の保障もなく全て自分の旅行保険から支払うことになるそうです。隣の女性に伺ったところ、診察代12ユーロ(約1680円)、痛止めの薬15ユーロ(約2100円)、程度だったらしい。これらの費用は各自がカード決済をして診断書と領収書を受取る。帰国後に旅行保険会社に請求して外国での支出を還付してもらう手順のようでした。このような事故を経験すると、掛け捨ての旅行保険やクレジット・カードは必須のものと実感します。


以上、オランダ・ベルギー旅行記の説明とほぼ同じです。以下は、後日調べて追加しました。


旅行保険など費用の負担について Page Head ▲
筆者は保険に関しては通常の素人以下の知識しかありません。旅行会社で掛捨て旅行保険(東京海上日動火災)を購入し、その説明書を成田空港で受け取っていました。帰国後に改めてザッと読んでみました。

(1) 今回のようなバス事故の場合は「傷害死亡」の項目になると思われます。その中の「保険金をお支払いできない主な場合」には「保険契約者、被保険者の故意」、「保険金受取人の故意」、等々にまじって「むちうち症または腰痛で他覚症状のないもの」という記述がある。さて、今回の事故では現地の医師から「むちうち症」と診断された人もいたらしいのですが、他の症状が診断書に記載されていなければ保険金は出ないのでしょうか? 支払い可能な傷害治療費用は事故発生当日から180日間は治療費の支払いが行われる、とされている。

(2) 海外旅行中の事故に起因する何らかの身体上の問題が帰国後に発生した時は、現地の医師の診断書と領収書があれば、「傷害後遺傷害」の項目を当てはめることが可能と思われます。もし事故に遭遇した証明が難しい場合は、旅行会社に証明をお願いするしかないでしょう。説明書では、少なくとも事故当日から180日以内に申請すると傷害後遺障害保険金額の3%〜100%が支払われるとされている。

(3) 旅行会社はこの種の事故とそれによる損害には何の責任もないのです。旅行会社がツアー参加者に配布した海外募集型企画旅行・旅行条件書の記載事項を抜粋すると、
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 9. 旅行代金に含まれないもの → (9)傷害・疾病に関する医療費等
18. 当社の責任 → (3)お客様が次に例示するような当社または当社の手配代行者が管理できない事由により損害を被られたときは、当社は本項(1)の責任を負いません。
キ. 輸送機関の遅延、不通、スケジュール変更、路線変更またはこれらによって生じる旅行日程の変更もしくは目的地滞在時間の短縮
ク. 輸送・宿泊機関等の事故、火災または第三者の故意または過失によりお客様が被られた損害
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事実、事故により行程に変更があったのですが、飲み物が2度だけ無料で振舞われた事と昼食と夕食のレストランが変わり食事メニューの変更があった事が旅行会社の負担(または一部負担)と思えます。契約上は行程の消化と食事の提供は義務ですから、多少の狂いは意にせずツアーの遂行となるのでしょう。飲み物の提供には多少の「お詫び」の意もあると思います。

追記(2006.07.17): 1982年に旅行業法と標準旅行業約款の改正で「特別保障規定」が導入され、旅行会社が所定の保証金や見舞金を支払う制度ができ、2005年4月に改正され特別保障の金額が引き上げられました。ただし企画旅行中でも旅行会社の手配によるサービスを受けない日は対象外とされる。( 2006/7/16 日経、弁護士相談「海外旅行での事故の補償は?」、関係する要点)。詳細は旅行会社なり参考文献で確認してください。

(4) 医師・看護士チームのホテル待機は、旅行会社が代理店となっている東京海上日動火災保険「キャッシュレス・メディカル・サービス」の提携医療機関(クリニックと一般医)がブリュッセルにあるので、恐らくはそこの医師・看護士が派遣されたものと考えられます。ならば、日本での診療費の請求手続きは大幅に簡素なもので済むはずです。他の保険会社の旅行保険を購入した場合は全ての手続きを済ませる必要があるでしょう。
別のケースは、旅行会社が現地の旅行手配を依頼しているミキ・トラベルが医師と看護士の派遣をしたのかも知れません。旅行保険の会社が違えば通常の医療費請求の手続きとなるでしょう。

この事故事例では旅行会社の旅行条件や海外旅行保険ハンドブック(旅行保険の説明書)を利用して説明しましたが、どの旅行社・どの保険会社であれ大体は同じようなものと思われます。

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(2008.05.26 文字サイズ変更ボタン設置)(2006.01.19 公開)

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