【北行庵】 HOMETRAVEL
事例報告/旅行中のハップニング
高山病、その予防と対策
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はじめに Page Head ▲
何処であれ誰であれ、高所なら発症の可能性があるのが高山病。これまでに標高 3000m 以上の観光地を海外ツアーで幾度か訪問し、極く軽い高山病らしき経験や同行者の高山病発症の事例にも遭遇しました。この機会に高山病に関するいろいろな情報をまとめてみました。海外パックツアーで行く標高の高い観光地のリストも最後に掲載してあります。どうぞ、ご参考に。

高所の観光地で高山病らしき体験 Page Head ▲
以下の5カ所はツアーで訪ねた高地です。ロープウェーや電車、バスの登山でしたが、高山病が発症しうる標高です。その時の体験談と参加ツアーでの発症事例です。
スイス・ゴルナーグラート展望台/クルム・ホテルのカフェテラスとマッターホルン (1) スイス、ゴルナーグラート展望台、2003年5月24日 名峰マッターホルンやモンテローザ、氷河を見にゴルナーグラート展望台に行きました。ツェルマット村(標高1605m)からゴルナーグラート(標高3089m)まで登山電車GGBで一気に上がる。ゴルナーグラート駅からクルム・ホテルやその上の展望台まで平気で坂道を歩いて登れた。1時間以上もゴルナーグラートで過ごした後、下山電車の関係で再度GGB駅からホテルまで坂道を登った。この時は心臓バクバク、呼吸も苦しく、体全体が鉛のように重くなる。数歩で立ち止まる状態になった。やっとの思いでホテルに着き、カフェで1時間ほど休ませてもらった。安静により平常に戻った。
注1:村営ゴルナーグラート・クルム・ホテル(標高3130m)に酸素ボンベの設備がある。
注2:現在はエレベーターが設置され、駅からホテルまで楽に行けます。
注3:2007年6月30日、ゴルナーグラート展望台を再訪、その後は高所の下りハイキング(2815m→2582m/約1.5時間)でしたが、高山病の症例は耳にしなかった。
ペルー・クスコ空港(標高3360m)の正面 (2)ペルー、クスコ、 2006年4月16日
インカ帝国の首都クスコと天空の都市マチュピチュ遺跡を観るため、ペルーのリマ空港(海抜・約150m)からクスコ空港(海抜・約3360m)まで飛んだ。航空機から外に出ると大気中の酸素の急激な減少を経験する(機内の与圧は高度2000m相当らしい。) 体内の酸素消費を抑えるため全てゆっくり、スロー、スロー。希薄な酸素を取り込むため頻繁に深呼吸もした。しかし、夜になるとフラツキを自覚、さらに軽い頭痛もあった。睡眠後は問題は解消していました。
メンバーの1人は夕食も食べれずホテルの部屋で酸素吸入を続ける状態になった。2泊の滞在中、メンバー20人中で重症は1人のみ。
添乗員さんによると、このツアーはクスコ到着当日の夜に3〜5人の重症者が発生し看護で眠れないのが普通、今回は”例外的”に少なかったそうです。序でながら、到着して昼食、その後はミニバスでクスコ近郊のインカ遺跡めぐりでした。高度的には富士山より高い場所にも行きました。
追記(2011.11.05)聞込み情報/ 2月のツアーでペルーのチチカカ湖(標高が約3810m)に行った人によると、参加者の約半分は酸素吸入が必要となり、ご本人も頭痛がひどくて辛い思いをしたそうです。時間の経過により慣れて観光はできたそうです。
アメリカ・ハワイ島マウナケア山(標高4205m)/頂上近く天文台群のある所 (3)米国ハワイ州、マウナケア山、 2007年4月4日
ハワイ州の最高峰、ハワイ島のマウナケア山(Mt. Mauna Kea/標高4205m)に4WDのミニバスで登った。海岸沿いのホテルから標高4000m以上の頂上部まで1日でアップダウンする世界でも珍しい山岳ドライブです。海岸沿いの町から一気に登ると高山病になる。中腹で2回の休憩をとり体を希薄な空気に慣らした。山頂部は高所で寒く、車内で体をゴソゴソ動かして不慣れな「防寒用つなぎ」を着用した。車外に出たとたんにフラフラ・グラーという感じに襲われ、しゃがみ込む程に息苦しくなった。急いで深呼吸を続けたら治まりました。全14名中、70歳位の男性1名が高山病にやられ、動かず車内で酸素ボンベを吸い続けたようです。他の人達は特に問題はなく雄大なサンセットや星空を楽しめたようでした。
スイス、ユングフラウヨッホ (4)スイス、ユングフラウヨッホ、 2007年6月28日
登山電車でユングフラウヨッホ駅(3454m)まで登り、スフィンクス展望台(3571m)からユングフラウやメンヒなどの名峰やアレッチ氷河のパノラマを楽しみました。自由行動を終えて集合したら、女性メンバー1人が倒れ、レスキュー隊員2名がすぐ駆けつけました。見ていないが、高山病とされ、酸素吸入したようです。駅のホームに行くと列車は反対側にあり、線路の横断は地下道を使う。倒れたメンバーは何とか自力で歩けるようになったが、階段の下りと上りは無理と判断され、この人のみレスキュー隊員付き添いのうえ線路を直接渡りました。レスキュー隊の反応は早く親切なものでした。
倒れたメンバーも高度が下がったら平常にもどり、ハイキングも大丈夫でした。
フランス、エギュー・ド・ミディ展望台(標高3842m) (5)フランス、シャモニー(エギュー・ド・ミディー展望台)、2007年7月1日
エギュー・ド・ミディー展望台(3842m)に登りモンブランを含む西アルプスの眺望を楽しみました。谷底のシャモニーから展望台まで約2800mもロープウエー乗継とエレベーターで上がります。富士山より高く高山病にかかる高度です。
参加者は26名でした。ワイフは高所で軽い頭痛を経験した。が、頭痛薬を飲む程ではなかった。メンバーには高所でひどい頭痛がして辛かった人もいた。それ以上の症状を経験した人達はいなかったようです。

以上は経験した場所のみですが、多くの高高度の観光地があります。
後述の「標高の高い観光地」 を参考にされてください。

高山病とは Page Head ▲
「山酔い」ともいい、英語では「Altitude Sickness」または「Mountain Sickness」という。登山愛好家なら高山病の予防と対策は常識でしょう。しかし登山に関係なく過ごす人にとり、高地の観光を含むパック旅行や現地ツアーに参加すると事前の準備が必要です。むやみに不安に思ったり恐れることはかえって悪影響があるようです。まずはやさしい基本的な知識をもちましょう。

空気の成分を体積百分率で表すと、20.9%は酸素、78.1%は窒素、他はアルゴンや二酸化炭素などです。高度変化で空気の組成は変わらない。しかし平地の大気圧は 760mmHg(1013hPa) だが、標高3000mに登ると約520mmHg(約2/3)、標高5000mでは 約1/2 に低下する。 つまり高所ではそれだけ空気が薄くなり、空気中の酸素量が少なくなる。これでは体が必要とする酸素を吸収できない場合もあり得るのです。悪いことに、空気中の減り方よりも体内の酸素量の減り方は大きいらしい。例えば富士山(3,776m)。平地と比し空気の酸素量は 2/3 だが体内酸素量は 1/2 という。エベレスト頂上(8,848m)なら空気の酸素量は 1/3 で体内酸素量は 1/4 になるらしい。これでは通常の活動はできません。

高山病は高度上昇に伴った大気圧の低下で起こる「低酸素血症」と云われます。症状としては、動悸、息苦しさ、頭痛、畏怠感、めまい、発熱、食欲不振、吐き気、等々がありますが、個人差が大きいようです。高山病で下痢、という報告すらありました。どんなタイプの人が高山病になるのかは不明のようです。高地に行くまで高山病にかかるかどうか分からないのです。
高地に到着直後から約4日間は高山病の発生が多い、とされる。体が高地の大気圧と希薄な酸素量に順応すれば(高地順応/高地順化)、高山病の心配は消滅します。初期順応に失敗すると、顔面蒼白、心悸亢進、呼吸困難をきたし、高所肺水腫や高所脳浮腫によって死亡する重症例すらある、といわれます。以下の予防策を守るよう心がけてください。残念ながら万全とは云えず、守っても高山病になる場合があるようです。

高山病の予防と対策 Page Head ▲
多くが云われていますが、基本的に何時も体調を整えておくことが大切でしょう。
以下、予防や対策として重要なことをリストします。
----- For Your Sake, By Yourself -----
(1)ゆっくりと呼吸。なるべく深呼吸を多くすること。
(2)体力と酸素を消耗する急激な運動は避けること。(全てゆっくり、スロー、スロー)
(3)水分を多くとること。1日2リットル程度のようです。
(4)糖分をとること。例えば、レモン飴など。
(5)食べすぎは禁物、平素の6〜7分程度にすること。(胃腸の運動量を低下させる。)
(6)飲酒、喫煙、暑い風呂は控えること。
(7)興奮したり、怒ったり、騒いだりしないこと。
(8)高山病を気にしすぎないこと。
(9)酸素ボンベは最後の手段とすること。
----- Ask Your Doctor -----
(10)循環器などに問題のある場合は必ず出発前に医師に相談すること。
(11)高山病の予防に処方薬の「アセタゾラミド(Acetazolamide)別名ダイアモックス(Diamox)」が使用されるようです。医師に相談して必要なら処方してもらい、指示された通りに服用すると良いでしょう。参考までにダイアモックスに関するリンクを掲載します。

アセタゾラミド:ダイアモックス
ダイアモックスとは
高山病予防薬|ダイアモックス|海外勤務情報
【ダイアモックス錠250mg】効果と副作用(KK三和化学研究所)
高山病で死なないために

(12)血液検査で赤血球数がかなり少なく、貧血と診断される人は高山病にかかり易いかも知れません。出発前に医師に相談されるとよいでしょう。
(13)パルス・オキシメーター(pulse oximeter)なら簡便に動脈血の酸素飽和度を測定できるそうです。登山中の高度順化を知るため携帯型パルスオキシメータ(数万円)を手に装着する場合もあるとされる。が、これは調査・研究など特殊目的でしょう。

高山病になったら: 幾つかの対処法を以下に書き出してみました。
(1)現在地よりも高い場所に行ってはいけない。
(2)可能ならば、しばらく安静にしてみる。
(3)軽い頭痛程度なら、鎮痛剤で治まることも多いようです。
(4)ホテル、レストラン、バス、列車などの酸素ボンベを利用し、酸欠状態を緩和する。
(5)現地の医師の診察を受ける。
(6)高地の旅行を諦め、低地に移動する。 → 高山病なら治ります。

海外パック旅行が前提なので、高地での活動を仕事とする人達のような問題はないと思います。皮肉にもパック旅行なら正に高山病が発生しやすい到着後4日間の内に高地の観光をするのです。体が高地順応する間が無く、高山病になりやすい。しかし、標高4000m前後でも、万一の場合は酸素ボンベの使用で治まることが多いようなのです。それでもダメなら、高山病の処置に慣れた現地の医師に診てもらえば心配ないでしょう。本格的な高山病なら観光活動は直ぐ休止、治るまで諦めることが肝心です。

標高の高い観光地 Page Head ▲
海外旅行ブームというか、余裕と癒しの実現とするか、国外に出て非日常的な体験を望む人達が多くいます。海に潜る人や山に登る人、さまざまです。高地の観光地をパック旅行で訪れる人も多くいる。ここで高い標高の観光地を部分的ながらリストしてみました。高山病対策が必要な標高3000〜4000m級の観光地が大部分です。各地の観光内容は他の参考文献や適当なウェブサイトで調べてください。記載の標高は資料により異なることもあり、目安とお考えください。
  • ラ・パス(ボリビア、3600m)/国際空港(4060m)
  • クスコ(ペルー、3360m)/マチュピチュ遺跡(2400m)
  • チチカカ湖(ペルー、3812m)/このエリアに、フリアカ空港(3825m)、シルスタニ遺跡(4000m)、ララヤ峠(4335m)、プーノ(3850m)
  • 九寨溝(中国・四川省、標高2000m以上)/長海(約3100m)
  • 黄龍(中国・四川省)/黄龍入口(約3100m)/ロープウエー乗場(3156m)/ロープウエー駅・上站(3600m)/五彩池(3556m)/ロープウエー 2006年完成/[Ref.05]
  • 香格里拉・シャングリラ(迪慶チベット族自治州、中国、3276m)
  • 青蔵鉄道/青海チベット鉄道(西寧2275m−タングラ峠5072m−タングラ駅5068m−ラサ3658m)/天空列車(車両は航空機と同じ与圧式)/2006年7月1日に西寧・ラサ間の全線が開通/全長1956Km、標高4000m以上の区間が960Km/ラサにはチベット仏教のボタラ宮殿あり/[Ref.03、他]
  • ゴルナーグラート展望台(スイス、3130m)、ゴルナーグラート駅(3089m)/ツェルマット(1631m)/登山電車(9.3km)/標高差 1458m/ゴルナーグラート・クルム・ホテル(酸素設備あり)
  • クライン・マッターホルン展望台(スイス、3883m)/ツェルマット(1631m)/ロープウエー2本+エレベーター
  • スフィンクス展望台(スイス、3571m)、ユングフラウヨッホ駅(3454m)/ヨーロッパで標高が最も高い鉄道駅/酸素吸入設備あり
  • エギュー・ド・ミディー展望台(シャモニー、フランス、3842m)/モンブラン/シャモニーの街(1035m)/ロープウェー2本+エレベーター/標高差 2807m
  • ハワイ島(マウナケア山、4205m)/頂上部は晴天確率が高く大気が安定/地上は曇でも山頂は晴が多い/世界11ヶ国の13基の天文台が集結(注:2007年4月現在、天文台の建屋11+パラボラ群1、計12)/ツアーはミニバス(4WD)で登る/[Ref.04]
  • キリマンジャロ(タンザニア、5895m)/4〜5日の本格的な登山ツアーあり/徒歩登山の標高差は4000m弱らしい。
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  • カラコルム峠(標高5570m)/中国・パキスタン
    聞き込み情報:昔の話ですが、パキスタンから数名のシェルパを雇って徒歩で峠越えをした人とツアーで一緒になりました。ご本人は大丈夫だったが、時間を掛けて登ったのに同じグループの3〜4人の日本人が高山病になった、そうです。
  • ヒマラヤ山脈越え/中国・ネパール(ナトゥラ・パス峠/標高約4300m/1962年以降閉鎖/再開予定があるらしい。)
  • ヒマラヤ山脈越え/中国・ブータン

アルプスの観光ツアーは短時間の高地訪問が多く高山病になることは少ないようです。しかし高地で1泊でもするとやはり通常の対策が必要です。

参考文献: 
Ref.01:日立デジタル平凡社、「世界大百科事典DVD版」項目「高山病」、1998。
Ref.02:Trapics、「中南米」、2005年度第2版、p.21。
Ref.03:Crystal Heart、「天空列車で行く世界の屋根チベット2000Kmの旅」、
2007年1月、pp.54-55
Ref.04:JAL-Mileage Bank、「地球を感じる、ハワイ島ネイチャー体験」、マイルウォッチ、Vol.30、2006年Winter、pp.12-13
Ref.05:Crystal Heart、「中国」、2007年3月〜9月、p.10-11。

標高の高い観光地は幾つもの旅行会社のサイトから入手しました。
他に数多くのウェブサイトを参考にしています。

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(2016.10.13 モバイル対策)(2014.03.05 改善)(2009.03.21 更新)(2006.07.10 公開)

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