3Dフルハイビジョン撮影対応 ビデオカメラを5機種比較する (2011年9月28日公開)
映画が3Dで上映されるようになり、家庭用薄型テレビが3D対応になり、そして3D対応のBlu-rayディスクレコーダーや映画タイトルが登場し、残るは家庭用のビデオカメラ、つまり自分自身で3D映像を撮影できる製品の登場を待つだけとなっていた。これまでも3Dの写真が撮影できるデジタルカメラは発売されており、そのデジタルカメラでもスタンダード画質(640×480ドット)での動画撮影は可能であったが、やはり今の主流はフルハイビジョン(1920×1080ドット)という事で、発売が期待されていた。 先陣を切ったのはパナソニックである。2010年8月下旬に、「HDC-TM750」と「HDC-TM650」(容量以外同性能)というビデオカメラを発売したが、この機種にオプションの3Dコンバージョンレンズ「VW-CLT1」を取り付けることで、フルハイビジョンの3D撮影が可能になったのである。しかしこの製品は完璧とは言えなかった。本来は2D撮影のビデオカメラに、アダプタを付けることで3D撮影が可能になると言う方式である以上、3D方式は「サイドバイサイド方式」となり、左右それぞれの目で見えるビデオはフルハイビジョンの半分である960×1080ドットとなってしまう上に、ズームも使えないのである。 それに対して両目とも1920×1080ドットの解像度で撮影する「フレームパッキング方式」でズームもできるビデオカメラは、ソニーとビクターから発売された。ソニーの「Handycam HDR-TD10」とビクターの「Everio GS-TD1」はどちらも2011年1月13日に同時に発表され話題を呼んだ。しかし発売は、ソニーの「Handycam HDR-TD10」が4月なのに対して、ビクターの「Everio GS-TD1」は2月上旬であるため、「Everio GS-TD1」では家庭用ビデオカメラで世界初の両目ともフルハイビジョン撮影ができるビデオカメラとうたっている。また同日にソニーはより軽量コンパクトで低価格だが「サイドバイサイド方式」の「Bloggie MHS-FS3」も発表しており、こちらも4月発売となる。 一方パナソニックでは「HDC-TM90」「HDC-TM85」(容量以外同性能)を2月下旬に発売する。3Dコンバージョンレンズ「VW-CLT1」を取り付ける必要があり、「サイドバイサイド方式」である点は、先に発売していた「HDC-TM750/650」と同じだが、「HDC-TM90/85」は性能を抑えることでより低価格の機種になっており、3D撮影に対応した機種を下位機種へ広げた形となる。 このように2010年8月現在で3メーカーから7機種が発売されているが、どのような違いがあるのだろうか。前述のように、パナソニックの4機種と、ソニーの「Handycam HDR-TD10」とビクターの「Everio GS-TD1」の2機種の間には大きな違いがある。それが記録方式である。パナソニックは基本は2D撮影用の機種であるため、撮像素子は1つしか搭載していない。そのため、2D撮影時は1920×1080ドットのビデオを撮影できるわけだが、3D撮影となると1920×1080ドットの中から左右それぞれに映像を割り振らねばならず、結果的に960×1080ドット、いわばハーフフルハイビジョンになるわけである。横方向の解像度が半分の映像を再生時に横に2倍に拡大するため、フルハイビジョンと比べると解像感は低くなってしまう。この方式は「サイドバイサイド方式」と呼ばれている。一方「Handycam HDR-TD10」と「Everio GS-TD1」はイメージセンサーを2つ搭載しているため、左目用と右目用でそれぞれ独立したイメージセンサーを使う事ができる。そのため、左右それぞれ1920×1080ドットの解像度で撮影が可能である。この方式は「フレームパッキング方式」と呼ばれている。
それぞれの方式でメリットとデメリットがある。「サイドバイサイド方式」のデメリットは前述のように画質が劣ることである。一方のメリットは、録画方式がAVCHD方式にできることである。AVCHDは2D撮影のハイビジョンビデオカメラで一般的に採用されている方式である。1920×1080ドットのイメージセンサーを半分ずつ使って左右の映像を撮影しているので、左右合わせて1920×1080ドットであるから、2D撮影と同じ解像度であり、それならば普及しているAVCHD方式になるわけである。AVCHD方式ならパソコンに取り込んで編集もできるし、Blu-rayレコーダに取り込んでBlu-rayディスクに焼くこともできる。 一方、「フレームパッキング方式」のメリットはなんと言っても解像度の高さである。真のフルハイビジョンの3Dはこの方式であると言えるだろう。反面デメリットも多い。まず、左右合わせて3840×1080ドット(1920×1080ドット×2)になるため、当然、撮影するときのビットレートが高くなる。例えば、「Everio GS-TD1」で2D撮影(1080i)で録画した場合は17Mbpsや12Mbpsだが、3D撮影した場合は34Mbpsや22Mbpsになってしまう。解像度が倍なのでビットレートも倍である。ビットレートが倍になると言うことは、使用する容量も倍になるわけで、ビデオカメラ本体のメモリの消費が激しくなる。また、1920×1080ドットではない事から録画方式にAVCHDが使用できないというのもデメリットだ。AVCHDは正確にはMPEG-4 AVC/H.264だが、「Handycam HDR-TD10」と「Everio GS-TD1」は共にMPEG-4 MVC/H.264を採用している。2011年8月現在ではMVCに対応した高性能なビデオ編集ソフトやオーサリングソフトは存在しないため、パソコンに取り込んでも高性能な編集はできず、Blu-rayビデオとしてディスクに書き込むこともできない。付属のアプリケーションでは編集できるものの、せいぜいカット編集くらいで、文字を入れたりエフェクトを入れたりというような高度な編集はできない。またBlu-rayディスクレコーダーでも現行機種がバージョンアップで対応している程度であるため、Blu-rayディスクに書き込もうとすると、Blu-rayディスクレコーダーまで揃えなければならない。一般的なのは、ビデオカメラで撮影したまま置いておき、ビデオカメラ本体で撮影したり、ビデオカメラを直接3D対応テレビにつないで見ることになる。それでは本体のメモリがすぐいっぱいになってしまうため、「Handycam HDR-TD10」と「Everio GS-TD1」は共にパソコンへのデータを保存しておき、再生時にはビデオカメラに書き戻して再生する形をとることができる。また、両機種ともUSB接続のハードディスクを直接接続してバックアップがとれるようになっている他、「Handycam HDR-TD10」は外付けハードディスクから直接再生もできるが、いずれにしてもビデオカメラ本体での再生が前提となっている。将来的には、MVC対応の編集ソフトも出てくると思われるが、扱うデーターサイズが倍になることから、パソコンの性能はかなり高いものが要求されるはずだ。この扱いにくさはデメリットである。
それでは、各製品の詳細なスペックを比較する前に、簡単に「できること」と「できないこと」を中心に、イメージセンサーと価格、本体サイズなどを比較してみよう。なお、パナソニックの「HDC-TM750」と「HDC-TM650」、「HDC-TM90」と「HDC-TM85」はメモリ容量の違いによる差しかないため、それぞれメモリ容量の大きな「HDC-TM750」と「HDC-TM90」を掲載した。 |
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(裏面照射形CMOS) |
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78×69×235mm(3D) |
78×63×217mm(3D) |
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635g(3D) |
476g(2D) |
まず、イメージセンサーからして各製品で大きく異なる。2つのイメージセンサーとレンズを搭載しているのは「Handycam HDR-TD10」「Bloggie MHS-FS3」「Everio GS-TD1」の3製品である。「Handycam HDR-TD10」と「Everio GS-TD1」は裏面照射形CMOSを採用しており、それぞれ420万画素と332万画素となっている。「Bloggie MHS-FS3」は510万画素と、画素数は他の2製品より上だが、裏面照射形ではないCMOSを採用している。「HDC-TM750」と「HDC-TM90」はCMOSとは異なるMOSセンサーを採用している。「HDC-TM750」は3原色それぞれを専用のセンサーで処理する3MOSを採用。各色305万画素で計915万画素である。一方「HDC-TM90」3MOSではなくMOSセンサーで332万画素となる。 撮影できるビデオ映像としては、2D撮影は当然全機種が可能である。一方3D撮影も全機種が可能だが、高画質のフレームパッキング方式は2つのイメージセンサーを持つ「Handycam HDR-TD10」と「Everio GS-TD1」のみが行える。一方扱いやすいサイドバイサイド方式は、イメージセンサーが1つしかない「HDC-TM750」と「HDC-TM90」に加えて、「Bloggie MHS-FS3」と「Everio GS-TD1」が行える。「Bloggie MHS-FS3」はイメージセンサーを2つ持つが、フレームパッキング方式には対応せずサイドバイサイド方式のみ対応である。一方、「Everio GS-TD1」は両方式に対応している唯一の機種である。逆に「Handycam HDR-TD10」はフレームパッキング方式しか行えない。最近はビデオカメラで静止画(写真)も撮影できる。2D写真は全機種が可能である一方、3D写真は機種が限定され、「Bloggie MHS-FS3」と「Everio GS-TD1」のみが行える。ビデオだけでなく写真も3D撮影がしたい場合は注意が必要だ。 光学ズームに関しては、イメージセンサーを2つ持つ「Handycam HDR-TD10」と「Everio GS-TD1」は3D撮影、2D撮影共に行えるが、映像素子を1つしか持たない「HDC-TM750」と「HDC-TM90」は2D撮影時には行えるものの、3Dコンバージョンレンズ「VW-CLT1」を取り付けると光学ズームが利用できなくなる。3Dコンバージョンレンズで3D撮影に対応するという方式では3D撮影時にはズームが行えず、撮影方法が限定される点は注意が必要だ。ちなみに、「Bloggie MHS-FS3」は元々光学ズーム機構を搭載していないため、2D撮影時、3D撮影時共に行えない。 液晶ディスプレイは2.4〜3.5型とサイズに違いがあるが、それよりも裸眼3D表示が行えるかどうかがポイントとなる。3D撮影を基本に考えている「Handycam HDR-TD10」「Bloggie MHS-FS3」「Everio GS-TD1」は、裸眼3D表示が行えるが、2D撮影が基本の 「HDC-TM750」と「HDC-TM90」は2D表示のみとなる。 メモリ容量は64GBの機種が多いが、低価格の「Bloggie MHS-FS3」は8GB、2D撮影の機種としても最上位になる「HDC-TM750」は96GBとなっている。またそれ以外に「Bloggie MHS-FS3」を除く4機種はメモリカードも使用できる。 本体サイズと重量には大きな差がある。光学ズーム機能も持たず、液晶サイズも小さい「Bloggie MHS-FS3」は最も小型で軽量だ。最も重い「Handycam HDR-TD10」の6分の1の120gであり、これならばデジタルカメラ感覚で持ち歩ける。「HDC-TM750」と「HDC-TM90」は2D撮影時には3Dコンバージョンレンズを取り付けないため、重量はそれぞれ440gと281gでサイズも小さめである。特に「HDC-TM90」はかなり小型軽量である。ただ、3Dコンバーションレンズは、78×59×97mmで重量も195gなので、3D撮影時には、長さが10cm近く長くなってしまう。特に、「HDC-TM750」では長さ235mmとなり、5機種中最長で、重量も645gとかなり重くなる。2つのイメージセンサーを持ち、フレームパッキング方式での3D撮影ができ、裸眼3D表示が行える液晶を備える「Handycam HDR-TD10」と「Everio GS-TD1」はさすがに大きく重い。体積では「Everio GS-TD1」の方が27.7%大きいが、重量は「Handycam HDR-TD10」の方がやや重い。ソニーの2D撮影専用機種の中でかなり高性能な「handycam HDR-CX560V」でも62×67×133.5mmで435gなので、どちらにしても、幅と奥行きが大きく、重量も250〜300g重い事になる。 このような違いがある5機種であるが、これから細かく見ていくとしよう。
まずはイメージセンサー、レンズを中心にズーム倍率や焦点距離などを見てみよう。 |
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(裏面照射形CMOS) |
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(305万画素×3) |
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265万画素(16:9) |
310万画素(16:9) |
298万画素(16:9) |
759万画素(16:9) |
261〜194万画素(16:9) |
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エクステンデッド17倍 |
iAズーム18倍 |
iAズーム40倍 |
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F1.2〜2.8(2D) |
F1.5〜2.8(2D) |
F1.8〜3.5(2D) |
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29.8〜357.6mm(16:9) |
35〜420mm(16:9) |
28〜729mm(16:9) |
イメージセンサーの種類は各社様々だが、CMOS系が3機種、MOS系が2機種となっており、CCDの機種は1機種もない。ソニーのHDR-TD10の採用する「Exmor R CMOS」とビクターのGS-TD1の採用する「高感度B.S.I CMOS」はいずれも「裏面照射形」と呼ばれる新しいタイプのCMOSであり、従来よりも光の感度が格段に良くなっており、その分暗いシーンなどでのノイズが少なくなっている。ソニーのMHS-FS3が採用する「Exmor CMOS」は「Exmor R CMOS」と名称は似ているが、1世代前のもので、裏面照射形ではない。それでも従来のCMOSより画質面でかなり改良されており、携帯電話に搭載されるCMOSカメラと比べると画質はかなり良くなっている。パナソニックの2機種はいずれも「MOS」センサーを採用しているが、これはCMOSと比べると受光部の面積を2倍とした物だ。そのため、裏面照射形とは別の方法で暗いシーンでのノイズを少なくすることに成功している。中でもHDC-TM90の採用する「3MOS」は、RGBのカラー3色をそれぞれ独立したMOSセンサーで処理することにより、より色再現力がアップしている他、解像感も高くなっている。イメージセンサーの性能を見る限りでは、5機種の中で「HDR-TD10」「GS-TD1」「HDC-TM750」の3機種は特に画質がよいと言える。 画素数を見てみよう。動画撮影時の画素数はいくつ以上あればよいという線引きはしにくい。例えばフルハイビジョンは1920×1080ドットなので、207万3600画素となるため、これを満たしていればとりあえずフルハイビジョンの解像度でイメージセンサーが読み取っているとも言える。しかし実際にはイメージセンサー1画素では光の三原色のRGBのうち1色しか読み取れないため、207万3600画素あっても完全なフルハイビジョンとは言えない。かといって、1920×1080×3色の622万800画素が必須かと言えばそうでもない。様々な技術により、300〜400万画素クラスでも十分な解像感を得ることはできるようである。207万画素が最低ライン、300〜400万画素あればより綺麗に撮影できると考えれば良いだろう。また総画素数より有効画素数が重要となる。総画素数はイメージセンサーの全ての画素数だが、実際に撮影時に使用できるのは有効画素数の分だけだからだ。「Handycam HDR-TD10」は総画素数が420万画素で、有効画素数は3D動画は左右それぞれ199万画素、2D動画では265万画素となっている。極端に解像感の高い映像ではなさそうだが、十分綺麗な画質で撮影できそうだ。「Bloggie MHS-FS3」は総画素数510万画素で、有効画素数は3D、2D共に310万画素である。低価格ながら同じソニーの「Handycam HDR-TD10」よりも画素数では高く、センサーそのもの性能では劣る物の解像感では上回る事になる。ちなみに、この2機種では総画素数と有効画素数の差が大きいが、これは2D静止画の有効画素数から予想すると、CMOSセンサーが4:3の比率のものであるため、そこから16:9の映像を切り出すために上下の画素が大きく無駄になっているためと思われる。一方の「Everio GS-TD1」は総画素数は332万画素と低めだが、有効画素数は3D動画で左右それぞれ236〜182万画素、2D動画で298〜207万画素である。こちらは16:9のCMOSセンサーを使用しているのか、総画素数に対する有効画素数は高めだ。有効画素数に幅があるのは手ぶれ補正の設定によって有効画素数が変化するためだ。2D動画の場合、もっとも手ぶれ補正が強いアクティブモード及び通常モードの場合207万画素となるが、手ぶれ補正を切ると298万画素になる。3D動画の場合も同じでアクティブモードで182万画素、通常モードで207万画素、切で236万画素となる。三脚などに固定して撮影する場合は手ぶれ補正をオフにした方が画質は高くなるが、とりあえず手ぶれ補正が通常モードの時や、2Dのアクティブモードの時は、フルハイビジョンの画素数である207万画素を確保しており、最低限必要なレベルは保持していると言える。「HDC-TM750」は3MOSであるため、各色305万画素×3で合計915万画素としている。有効画素数も2D動画で253万画素×3となっている。RGBそれぞれがフルハイビジョンの画素数を超えているため、完全に1920×1080ドットの解像感が得られる事が分かる。ただし3D撮影時はアダプタを使用するため画素数は不明である。「HDC-TM90」は総画素数332万画素だが、有効画素数261〜194万画素となっており、それほど余裕のある画素数ではない。また3D撮影時はアダプタを使用するため画素数は不明である。以上より、5機種とも十分に高画質に撮影できるレベルになっているが、「HDC-TM750」が1歩抜きに出ていると言えるだろう。 続いてズーム倍率と焦点距離について見ていこう。ズーム機能は被写体に寄る時に重要な機能だ。光学ズームは画質の劣化がほぼ無くズームできるため、この倍率が高い方が良い。デジタルズームはデジタル的に拡大しているだけなので、画質が低下する事から、できる限り使わない方が良いだろう。一方、焦点距離は35mm換算で表すのが分かりやすく、低い方の値がワイド側、高い方の値がズーム側での焦点距離となる。ワイド側では数値が小さい方が幅広く撮れることとなり、一方ズーム側では数値の大きい方が寄ることができる。ワイド側は室内や乗り物の中など狭い空間で撮影するときに重要だ。2Dのビデオカメラならワイドコンバージョンレンズを付ける事が対応できるが、3Dビデオカメラではレンズを取り付けることができないため、製品自体の焦点距離が重要だ。 まずは2Dから見てみよう。「Handycam HDR-TD10」は動画撮影時のワイド側が29.8mmとなっている。静止画撮影時も、動画と同じく縦横比16:9なら29.8mmだが、4:3にすると27.4mmとさらに広角になる。これは2D専用の高性能ビデオカメラ並で、なかなか広く撮れるので便利だ。光学ズームはここから12倍となっており動画の場合で357.6mmまで寄ることができる。ズーム倍率が極端に高いわけではないが実用的なレベルにはなっているだろう。また、イメージセンサーの中心部だけを取り出すことで画質をほとんど落とさずにズームできる「エクステンデッドズーム」により17倍までズームできる。「Bloggie MHS-FS3」は小型で低価格であることが特徴の機種なので、光学ズーム機能はない。焦点距離も動画撮影時で47mm、静止画撮影時で57mmとかなり狭いといえる。狭い場所での撮影には苦労しそうである。デジタルズームは4倍付いているが、おまけ程度と考えた方が良さそうだ。「Everio GS-TD1」はワイド側が動画撮影時、静止画撮影時共にで37.3mmである。ビデオカメラとしては標準的な値だが、「Handycam HDR-TD10」と比べるとどうしても劣って見えてしまう。光学ズームは10倍で、こちらも「Handycam HDR-TD10」よりやや劣る。一方で、ワイド側の焦点距離が「Handycam HDR-TD10」より大きいため、そこからの10倍ズームでは373mmとなり、「Handycam HDR-TD10」よりも被写体に寄れることになる。「HDC-TM750」はワイド側が動画撮影時と縦横比16:9の静止画撮影時は35mm、4:3の静止画撮影時は38.8mmとなっており、「Everio GS-TD1」よりやや広いが、「Handycam HDR-TD10」と比べるとやはり劣って見える。光学ズームは12倍で、35mmからの12倍なので420mmとなり、さらに、イメージセンサーの中心部だけを取り出すことで画質をほとんど落とさずにズームできる「iAズーム」を使えば18倍ズームとなるためズーム側は強い。「HDC-TM90」はワイド側が動画撮影時と縦横比16:9の静止画撮影時は28mm、4:3の静止画撮影時は34.2mmとなっており、縦横比4:3の静止画以外では、「Handycam HDR-TD10」並に広く撮れる。光学ズームも21倍と高く、729mmまでズームできる。さらにiAズームを用いれば40倍ズームとなる。ワイド側とズーム側の両方に強い機種だと言えよう。 これが3D撮影となると状況が異なる。「Handycam HDR-TD10」は焦点距離が34.4mmまで伸びるため、2D撮影時よりは狭くなる。とはいえ、この値は「Everio GS-TD1」や「HDC-TM750」の2D撮影時よりも広く撮れる事になるため、十分実用的な範囲だ。光学ズームも10倍と2D撮影時よりやや低下するが、十分な倍率であり、3D撮影時でも実用性は高い。「Bloggie MHS-FS3」は3D撮影時でも2D撮影時と同じ焦点距離となっている。2D撮影時での焦点距離が長かったため、広く撮れるとは言い難いが、他機種との差は縮まったと言える。「Everio GS-TD1」はワイド側が動画撮影時で44.8mm、静止画撮影時で42mmと2D撮影時より狭くなっている。40mmを超えるとかなり狭いので、室内など狭い場所では撮影しにくそうだ。また光学ズームも5倍と、「Handycam HDR-TD10」よりも2D撮影時との差が大きい。5倍という値は少々物足りない。「HDC-TM750」と「HDC-TM90」はアダプタを取り付けることで3D撮影が可能になると言うことから、どちらも光学ズームが使用できなくなる。また焦点距離も58mmになってしまい、かなり狭い。特に「HDC-TM90」は2D撮影時は焦点距離が短かっただけに勿体ない感じだ。58mmというのは、「Handycam HDR-TD10」で1.68倍ズームをしたときと同じ状態でかなり狭いので、屋外での使用に限定されるだろう。 以上から、画質面ではどの機種も十分な画質ではあるが、「HDC-TM750」が最も高画質で、「Bloggie MHS-FS3」以外の3機種は大差なく、「Bloggie MHS-FS3」はイメージセンサーの性能がやや劣るといったところだ。焦点距離やズーム倍率の点では、2D撮影時は「Handycam HDR-TD10」と「HDC-TM90」が使いやすく、3D撮影時は「Handycam HDR-TD10」が使いやすいという結果である。
続いて、撮影時や再生時に重要な液晶モニターについて見ていこう。 |
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12.3万画素 |
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エクストラファイン液晶 |
クリアブライトIII液晶 |
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5機種では「Handycam HDR-TD10」と「Everio GS-TD1」が特に綺麗だと言える。サイズも3.5型と大きいだけでなく、「Handycam HDR-TD10」が122.9万画素、「Everio GS-TD1」が92万画素と、液晶の解像度が高い。撮影している画像が細かく見えるため、相手の表情が分かりやすかったり、ズームする対象を見つけやすかったりする。次にパナソニックの2機種「HDC-TM750」と「HDC-TM90」が綺麗だ。3.0型と十分な大きさで、画素数も23万画素と撮影する内容の確認をするには問題のない解像度だ。「Bloggie MHS-FS3」は本体サイズが小さいため、2.4型と小型になってしまっているだけでなく、縦横比4:3となっていることが問題だ。動画は縦横比16:9なので、「Bloggie MHS-FS3」以外の4機種では画面いっぱいに表示できるが、「Bloggie MHS-FS3」では上下に黒帯ができてしまう。そのため実際に表示されるサイズは2.4型よりもさらに小さくなってしまう。縦横比4:3の静止画撮影時には画面いっぱいに表示できるが、動画撮影がメインの使い方では問題がある。 これ以外に「HDC-TM750」はビューファインダーも搭載している。最近では搭載機種が減ってしまったが、明るい場所などで液晶画面が見にくい場合などに重宝する。ただし画素数は液晶画面より少ないため、表示は荒くなる。またタッチパネル操作が行えるのは「Bloggie MHS-FS3」を除く4機種で、直感的な操作が行える点で便利だ。 そして、3D撮影が行える機種ならではの機能として、液晶画面が裸眼3D表示できるかも重要な点だ。裸眼3D表示機能とは、3D対応薄型テレビとは異なり、眼鏡等を必要とせず、3D表示が行える機能だ。これは、パナソニックの2機種を除く3機種が対応している。低価格な「Bloggie MHS-FS3」もしっかり対応している点は驚きである。一方、パナソニックの2機種は、あくまでオプションのレンズを付ける事で3D撮影ができるだけなので、基本は2Dビデオカメラだ。そのため、液晶画面は2D表示のみなのはうなずけるが、3D撮影をしても単体では確認ができないのは残念だ。
次は、動画撮影時に使用できる機能と、映像や音声の記録方式、および記録モードを見てみよう。 |
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(ワイド側のみアクティブモード) |
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AAC(MVCモード時) |
AAC(iFrame時) |
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1920×1080×2 60i 28Mbps(MVC) |
30p |
1920×1080×2 60i 34Mbps(MVC) |
1920×1080 60i 17Mbps(AVCHD) |
1920×1080 60i 17Mbps(AVCHD) |
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1920×1080×2 60i 22Mbps(MVC) |
1920×1080 60i 13Mbps(AVCHD) |
1920×1080 60i 13Mbps(AVCHD) |
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1920×1080 60i 17Mbps(AVCHD) |
1920×1080 60i 9Mbps(AVCHD) |
1920×1080 60i 9Mbps(AVCHD) |
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1920×1080 60i 12Mbps(AVCHD) |
1920×1080 60i 6Mbps(AVCHD) |
1920×1080 60i 6Mbps(AVCHD) |
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1920×1080 60p 28Mbps(AVCHD) |
30p |
1920×1080 60i 24Mbps(AVCHD) |
1920×1080 60p 28Mpbs(AVCHD) |
1920×1080 60p 28Mpbs(AVCHD) |
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1920×1080 60i/24p 24Mbps(AVCHD) |
60p |
1920×1080 60i 17Mbps(AVCHD) |
1920×1080 60i 17Mpbs(AVCHD) |
1920×1080 60i 17Mpbs(AVCHD) |
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1920×1080 60i/24p 17Mbps(AVCHD) |
30p |
1920×1080 60i 12Mbps(AVCHD) |
1920×1080 60i 13Mpbs(AVCHD) |
1920×1080 60i 13Mpbs(AVCHD) |
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1440×1080 60i 9Mbps(AVCHD) |
30p |
1920×1080 60i 5Mbps(AVCHD) |
1920×1080 60i 9Mpbs(AVCHD) |
1920×1080 60i 9Mpbs(AVCHD) |
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1440×1080 60i 5Mbps(AVCHD) |
1920×1080 60i 6Mpbs(AVCHD) |
1920×1080 60i 6Mpbs(AVCHD) |
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720×480 60i 9Mbps |
960×540 30p 28Mbps |
まず、動画撮影時の機能である。手ぶれ補正は全機種が備えているものの、機能は大きく異なる。「Handycam HDR-TD10」が最も高性能で、光学式でしかもアクティブモードに対応している。アクティブモードはワイド側では通常の手ぶれ補正より10倍手ぶれしにくいという。また縦横方向のぶれだけでなく回転ぶれも補正される高性能ぶりだ。しかも2D撮影だけでなく、3D撮影でも利用できる。さらに2D撮影時はズーム側でも2倍ぶれにくいアクティブモードである。手ぶれ補正能力は群を抜いている。次に優れているのはパナソニックの2機種である。光学式であるため画質の低下が無い上に、2D撮影時は電子式と組み合わせることで、歩きながら撮影したりズームしたときの手ぶれも強力に補正される。ただし3D撮影時は通常の手ぶれ補正になってしまう点は残念だ。「Everio GS-TD1」は電子式の手ぶれ補正となっているため、手ぶれ補正をオンにすると画質が低下してしまうのが残念だ。ただしアクティブモードに対応しており、ワイド側で通常の手ぶれ補正より10倍手ぶれしにくく、補正能力は悪くない。しかし、アクティブモードにするとさらに画質は低下するため、必要に応じて手ぶれ補正を切り替えた方が良さそうだ。一番低価格な「Bloggie MHS-FS3」は電子式手ぶれ補正なのは当然として、注意したいのは2D撮影時しか機能しない事だ。またアクティブモードのような機能も搭載していないため、一般的な手ぶれ補正の補正能力となる。 最近では標準機能となりつつある「顔検出機能」は全機種が備えている。ただし「Bloggie MHS-FS3」だけは3D撮影時には利用できない。その他、ホワイトバランスやフォーカス、明るさの調整は、「Bloggie MHS-FS3」以外はオートとマニュアルに対応しているため、手軽に撮影することも、こだわって撮影することも可能だ。一方の簡単操作が売りの「Bloggie MHS-FS3」はオートのみで、マニュアル設定ができない。逆光補正機能は、「Everio GS-TD1」「HDC-TM750」「HDC-TM90」の3機種はオンとオフを切り替えられる。面白いのは「Handycam HDR-TD10」で、オフとオートの切り替えとなるのである(他の機種はオフよオン)。つまりオートにしておけば必要に応じて自動的に逆光補正が行われるわけである。常にオンになってしまう3機種より便利だろう。 映像の記録方式を見てみよう。3D動画の場合、フレームパッキング方式はMVC(MPEG-4 MVC/H.264)で、サイドバイサイド方式はAVCHD(MPEG-4 AVC/H.264)で統一されていることが分かる。独自仕様を採用していないため、市販のパソコン用ソフトなどで対応行われた際は問題なく使えるはずだ。また2Dのハイビジョン動画もAVCHD(MPEG-4 AVC/H.264)、2Dのスタンダード画質動画はMPEG-2 PSとなる。低価格でパソコン上で手軽に扱ったり、ビデオ共有サイトにアップロードすることが目的の「Bloggie MHS-FS3」と、イメージセンサを1つしか持たないパナソニックの2機種は、サイドバイサイド方式となる。前述のように1920×1080ドットを2つに分けて左右の映像とするため解像度は実質半分となるが、2D動画と同じ形式で記録できる利点がある。一方2つのイメージセンサを持ち、高性能な「Handycam HDR-TD10」と「Everio GS-TD1」はフレームパッキング方式となる。左右それぞれの映像が1920×1080ドットとなるため、フルハイビジョン画質のまま3D撮影が可能だが、3D専用の記録方式となってしまう上に、ファイルサイズも大きくパソコン上でも扱いにくい。そこで「Everio GS-TD1」では、サイドバイサイド方式の記録も可能になっている。画質か手軽さかを必要に応じて選べる点で、両対応は便利である。 音声の記録方式はドルビーデジタルかAACである。ただしそのチャンネル数には違いがあり、「Handycam HDR-TD10」と「HDC-TM750」は5.1チャンネル記録が可能だが、それ以外の3機種は2チャンネルのステレオ記録となる。より臨場感のある音を録りたい場合は、5.1チャンネル記録に対応した機種がオススメだ。またその2機種と「HDC-TM90」の計3機種は、ズームマイクに対応する。これは映像をズームさせて被写体に近づいた時に、マイクも一緒にその場に移動したように臨場感のある録音ができる機能である。 それでは、記録モードごとに細かくビットレートも見てみよう。「Handycam HDR-TD10」は3D動画で選べる記録モードは1種類のみである。60i(毎秒60コマのインターレース記録)でビットレートは28Mbpsである。28Mbpsというと高いビットレートに感じるが、1920×1080ドット2つ分でこのビットレートなので、単純計算で左右一方に割り振れるビットレートは14Mbpsとなる。2Dでは24Mbpsや17Mbpsというビットレートが選べることを考えると、3D撮影時は若干ブロックノイズが発生しやすい可能性がある。それでもファイルサイズと画質を考えるとこの辺りに落ち着くのだろう。2D撮影の場合は、フルハイビジョンが5モードとなる。「PSモード」では通常のインターレース記録の60iではなくプログレッシブ記録の60pとなるモードだ。毎秒60コマで奇数行と偶数行に分けて半分ずつ記録する60i記録と異なり、毎秒60コマで1920×1080ドット全てを記録する60pモードは、より詳細でなめらかな画像が得られる。ただしそのままではBlu-rayディスク等に書き込めなかったり、パソコン上で扱うには重かったりという難点もある。通常の60i記録では24Mbps、17Mbps、9Mbps、5Mbpsを選べる。ただし下2つのモードでは解像度が地上デジタル放送並みの1440×1080ドットとなる。ビットレートがかなり低いため解像度をやや下げることでブロックノイズを減らすという事である。これは他社にはない考え方であるが、どちらがよいかは好みが分かれるところだ。また面白いところで、上二つのモードではフィルム映画と同じ24pでの記録も行え、これも他社にない機能だ。その他スタンダード画質で9Mbpsのモードがある。スタンダード画質としては高めのビットレート設定だ。「Everio GS-TD1」の3D撮影モードは34Mbps、22Mbps、17Mbps、12Mbpsの4つがあるが、上二つがMVC、下二つがAVCHD方式だ。MVC方式はフルハイビジョン2つ分のデータ量となるためビットレートが高めである。ちなみに34Mbpsというのは「Handycam HDR-TD10」より若干ながら高いビットレートであり、その分ブロックノイズは少ないだろう。2D動画は、24Mbps、17Mbps、12Mbps、5Mbpsの4モードである。「Handycam HDR-TD10」のように60p記録のモードはなく全て60i記録だ。また一番下のモードでも解像度は1920×1080ドットなので、純粋に画質と使用容量を考えて選べばよい。パナソニックの2機種は3D動画も2D動画もAVCHD方式であるため、どちらも同じモードとなる。17Mbps、13Mbps、9Mbps、6Mbpsの4モードから選べるが、「Handycam HDR-TD10」や「Everio GS-TD1」のように24Mbpsのモードを持たないため、特に高画質で記録したいと思う時には残念だ。それ以外に2Dモード時は60pの記録が可能であり、「Handycam HDR-TD10」と同じく、高詳細でなめらかな撮影が行える。また「HDC-TM90」では、MacのiMovieでの再生・編集に適した「iFrame」での記録モードを持っているのが面白いところだ。最後に「Bloggie MHS-FS3」だが、パソコン上での試聴や、動画投稿サイトにアップロードしやすいよう、全モードがプログレッシブ記録となっている。3D動画は1920×1080ドットの30pのみとシンプルだ。一方2D動画は1920×1080ドット、1280×720ドット、480×720ドットとビットレートではなく解像度が選べる点がおもしろい。また1280×720といった、(フルでない)ハイビジョンの解像度はAV機器では一般的ではないが、パソコンでは一般的な解像度だ。YouTubeなどでも、1920×1080ドット、1280×720ドットから選べるようになっている事からも、あくまでパソコンとの親和性を高めたモードである。ちなみにビットレートに関しては掲載されていないため不明だ。 以上より、強力な手ぶれ補正機能や音声の5.1チャンネル記録ができ、ハイビジョンからスタンダード画質まで様々な記録モードが選べ、60p、60i、24p記録が行える「Handycam HDR-TD10」が機能面で優れていると言える。ただ「Everio GS-TD1」も、手ぶれ補正が電子式で、音声も2チャンネル記録のみとなるが、フレームパッキング方式とサイドバイサイド方式の両方が選べ、3D撮影時に選べるモードが多く、より高いビットレートが選べるため、弱点はあるものの優れた点も目立つ。また、パナソニックの2機種も手ぶれ補正能力は高いといえる。動画投稿サイトへのアップロードということを考えると「Bloggie MHS-FS3」も便利だ。ただ全体的にスキが少ない「Handycam HDR-TD10」は安心して選べるとは言えそうだ。
続いて静止画撮影時の機能と、静止画の記録モードを見ていこう。画質を比較する上で必要なことから、再度となるが静止画撮影時のイメージセンサーの有効画素数も掲載している。 |
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有効画素数 |
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265万画素(16:9) |
310万画素(16:9) |
298万画素(16:9) |
759万画素(16:9) |
261〜194万画素(16:9) |
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530万画素(16:9) 190万画素(4:3) 30万画素(4:3) |
310万画素(16:9) 40万画素(16:9) |
223万画素(4:3) 207万画素(16:9) 30万画素(4:3) |
1330万画素(16:9) 1219万画素(4:3) 864万画素(3:2) 829万画素(16:9) 768万画素(4:3) 552万画素(4:3) 530万画素(16:9) 491万画素(4:3) 30万画素(4:3) |
481万画素(3:2) 446万画素(16:9) 207万画素(16:9) 192万画素(4:3) 188万画素(3:2) 30万画素(4:3) |
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静止画同時記録(3D) |
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静止画同時記録(2D) |
400万画素(4:3) |
92万画素(16:9) 13万画素(16:9) |
829万画素(16:9) 207万画素(16:9) |
207万画素(16:9) |
まず静止画撮影の機能を見てみよう。最近のデジタルカメラの多くに搭載されている、笑顔を検出して自動的にシャッターを切る機能だが、「Bloggie MHS-FS3」を除く4機種が搭載している。またフラッシュに関しても、「Handycam HDR-TD10」「HDC-TM750」「HDC-TM90」が搭載しているため、デジタルカメラとしての使い勝手も見劣りしない。「Everio GS-TD1」はフラッシュは搭載しないが、最近ではフラッシュを光らさなくても十分明るく撮れる機種が増え、特に「Everio GS-TD1」は裏面照射形CMOSセンサーであることを考えてもそれほど問題にはならないかもしれない。「Bloggie MHS-FS3」は携帯電話のようにLEDライトを搭載しており、フラッシュほど遠くまで明るくはないが、近くのものを明るく撮影できる。 静止画の記録方式は一般的だ。2Dに関してはJPEGで5機種とも揃っている。3Dに関しては、撮影できるのが「Bloggie MHS-FS3」と「Everio GS-TD1」のみだが、どちらもMPO形式(MPF準拠)であり、標準的な仕様だ。 それでは、記録モードを見てみよう。それぞれの機種が複数の画素数を選べるが、縦横比16:9のものと4:3のものが混在している。パナソニックの2機種は縦横比3:2の設定があるが、これは銀塩カメラで一般的な比率である。「Handycam HDR-TD10」「Bloggie MHS-FS3」「HDC-TM90」の3機種は縦横比4:3の設定が最も高画質である一方、「Everio GS-TD1」は16:9が、HDC-TM750は3:2が最も高画質な設定の縦横比になっている。一般的なデジタルカメラでは縦横比4:3で撮影されるので、これと同じように使おうと思うなら縦横比4:3の比率の設定の画素数が重要となる。一方、薄型テレビに映すのが目的なら縦横比16:9で撮影すると画面いっぱいに表示できるため、この設定での画素数が重要となる。デジタルビデオカメラで静止画を撮影するのはどういった目的かを明確にすることで、見え方が変わってくるだろう。ちなみに、イメージセンサーの静止画撮影時の有効画素数も掲載しているが、実際にはこれより画素数の高い設定モードが選べる場合がある。これはデジタル的に画素を補完しているだけなので、実際にその画素数のイメージセンサーを搭載したデジタルカメラと比べると解像感は低くなる。例えば「Handycam HDR-TD10」で710万画素の設定で撮影したものは、実際に有効画素710万のデジタルカメラより解像感は低い。それを差し引いても、「HDC-TM750」は高画質だ。設定上は1420万画素で撮影ができ、イメージセンサーの有効画素数に以下で最も高い設定でも、縦横比4:3なら552万画素となる。これならL版や2L版程度の印刷に十分耐えうる解像度だ。「Bloggie MHS-FS3」はイメージセンサーの有効画素数が500万画素で、記録モードも500万画素と、なかなかの画質で撮影できる。前述のように、イメージセンサー自体の性能は劣るため、ノイズ量や色再現力に違いはあるだろうが、解像感では、残りの3機種を上回るのは、低価格機としては驚きである。それ以外の3機種はイメージセンサーの有効画素数が200万〜300万画素代であることもあって、それほど高画質の写真撮影は行えない。もちろん薄型テレビにビデオと一緒に表示するなら問題ないし、L版サイズ程度なら十分綺麗に印刷できるが、本格的に綺麗な写真を撮るならデジタルカメラを併用する必要がありそうだ。 ちなみに「Everio GS-TD1」を除く4機種は、動画撮影中に静止画を撮影することもできる。さすがに3D動画撮影中は行えないが、2D動画撮影中に静止画も同時記録できるのは便利だ。また笑顔検出機能を持つ「Handycam HDR-TD10」「HDC-TM750」「HDC-TM90」は、動画撮影中に笑顔を認識すると静止画を記録する事もできる。つまり何気ない日常をビデオに撮りつつ、笑顔のいいシーンだけ写真でも残せるわけである。ビデオカメラに静止画撮影機能が付いているからこそできる、おもしろい機能だと言えよう。ちなみに、動画撮影中の静止画撮影では、画素数が低下する場合がある。例えば「Handycam HDR-TD10」の場合、動画は縦横比16:9で撮影しているため、縦横比16:9の静止画なら最高の530万画素相当である3072×1728ドットで撮影できる。一方、縦横比4:3では、3072×1728ドットの中から4:3の縦横比の画像を取り出すため、左右がカットされた2304×1728ドット(400万画素相当)になる。「Bloggie MHS-FS3」では207万画素が最高となり、実質フルハイビジョンの動画から1コマを切り出したような状態だ。「HDC-TM750」「HDC-TM90」は画素数に制限はないが、動画が縦横比16:9であるためか、同時に撮影できる静止画も、縦横比16:9の画素数の設定に限られる。 このように、各社静止画の画質にはばらつきがあるが、それぞれ動画撮影中にも静止画が撮影できるように工夫されていたり、フラッシュを内蔵したりとできるだけ静止画撮影も便利に使えるようになっていることが分かる。また、画質もデジタルカメラには及ばないものの、薄型テレビに映したり、L版程度への印刷なら十分に行えるレベルで撮影できることも分かる。さらに動画撮影中に笑顔を認識して自動的に静止画撮影をする機能が搭載された機種があるなど、デジタルビデオカメラならではのおもしろい使い方もできる。
最後に記録メディアやバッテリ、各種端子、本体サイズと重量について見ていこう。 |
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SD(SDHC/SDXC対応) |
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(付属バッテリ) |
235分(2D) |
90分(2D) (1回の撮影は29分まで) |
155分(2D) |
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105分(2D) |
80分(2D) |
80分(2D) |
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(最大容量バッテリ) |
470分(2D) |
230分(2D) |
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235分(2D) |
105分(2D) |
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(バッテリ装着時) |
78×69×235mm(3D) |
78×63×217mm(3D) |
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(バッテリ装着時) |
635g(3D) |
476g(3D) |
記録メディアは、全機種ともフラッシュメモリを内蔵しており、別途メモリカードを購入することなく撮影が可能だ。容量的には「Bloggie MHS-FS3」を除く4機種は64〜96GBを搭載しているため、十分な撮影時間が確保されていると言える。例えば、「Handycam HDR-TD10」では3D撮影では5時間15分、2D撮影のFXモードなら6時間15分となる。「Everio GS-TD1」では、3D撮影のTHRモードで4時間、2D撮影のUXPモードで5時間50分である。「HDC-TM750」はHAモードで12時間40分、「HDC-TM90」はHAモードで8時間30分となる。一回の旅行であれば、途中でパソコン等への転送する必要はないと思われる。どうしても長期の旅行や、長時間撮影するという場合も、別途メモリカードを使用することで撮影時間を延ばすことが可能だ。4機種ともSDカードに対応しており、しかも32GBを超える規格であるSDXCにも対応しているため、大容量のメモリカードを使用できる。最近では16〜32GBのメモリカードでも数千円と低価格化しており、今後もさらに大容量化・低価格化が進むと思われるので、例えば搭載メモリが64GBの機種に64GBのSDXCカードを挿せば、撮影時間を倍にできる計算だ。 注意点としては、どの機種も動画撮影に使用する場合は、書き込み速度を示すClass表記がClass4以上のメモリカードを使用することを推奨している。また、「Handycam HDR-TD10」はSONYの製品だけあって、メモリースティックPRO Duoにも対応している。これら4機種と異なるのが「MHS-FS3」である。まず、内蔵メモリが8GBしかない。1920×1080ドット30p記録で1時間20分、1280×720ドット60pで2時間40分、30pで4時間となるため、さっと取り出して数分撮影するのを繰り返す程度なら問題ないが、少し長めに撮影するとなると物足りない。その上にメモリカードも使用できないので容量を増やすこともできない。何とか8GBの中でやりくりするか、途中でパソコンに転送する必要がある。「MHS-FS3」の価格と使い方を間挙げると仕方のないところだろう。 バッテリ駆動時間はそれぞれ付属のバッテリと、オプションのバッテリの中で最大容量の物を使用した場合の両方を記載している。実撮影時間で見ると、「Handycam HDR-TD10」が2D撮影で105分、3D撮影で80分、「Bloggie MHS-FS3」が2D撮影で80分、3D撮影で60分、「Everio GS-TD1」が2D撮影で80分、3D撮影で55分、「HDC-TM750」が60分、「HDC-TM90」が50分である。「Handycam HDR-TD10」の撮影時間が最も長く、パナソニックの2機種は短めだ。いずれもある程度の撮影を楽しめるが、旅行などで頻繁に撮影するなら少し心許ないとも言える時間だ。また、イメージセンサーを2つ搭載するソニーとビクターの3機種は、3D撮影時の方が2D撮影時より撮影時間が短くなる点は注意が必要だ。 「Bloggie MHS-FS3」を除く4機種ではバッテリを交換可能なので、より大容量のバッテリを使用するか、同容量でも2つ持つことでバッテリ駆動時間はのばすことができる。「Handycam HDR-TD10」では「NP-FV70」(2060mAh)が付属するが、NP-FV100(3900mAh)を使えば、99gの重量増と引き替えにバッテリ駆動時間は倍以上に延びる。3D撮影時で2時間40分、2D撮影時で3時間55分ももつとかなり安心だ。これは5機種中最大である。「Everio GS-TD1」では、「BN-VF815」が付属するが、「BN-VF823」なら30%ほど撮影時間は延びる。しかしそれでようやく「Handycam HDR-TD10」の付属バッテリと同時間なので、やや心許ない。より大容量のベルトホルダータイプもあるが、本体で充電ができない他、バッテリ残量も表示されないなどやや特殊な製品だ。「HDC-TM750」は「VW-VBG130-K」が付属するが、「VW-VBG260-K」にすると50g増で撮影時間はほぼ倍になる。「HDC-TM90」は、「VW-VBK180-K」が付属するが、「VW-VBK360-K」を使うと40g増で撮影時間は同じく倍になる。パナソニックの2機種も大容量バッテリを使って、ようやく「Handycam HDR-TD10」の標準バッテリと同じなので、少しでも長く撮る場合は必須と言えそうだ。 ちなみに充電方法だが、「Bloggie MHS-FS3」を除く4機種はACアダプタを使用する。一方「Bloggie MHS-FS3」はUSB充電が可能なので、データの転送と充電が一度に行えて便利だ。だたし、コンセントからUSBに変換するアダプタなどは付属しないため、コンセントから充電したい場合は別途アダプタを用意する必要がある。 各種端子を見てみよう。全機種がHDMI端子を備えているのは、さすがフルハイビジョン撮影ができる機種だけある。いずれもHDMIミニ端子なのは注意が必要だ。「Bloggie MHS-FS3」を除く4機種は、専用端子を用意しており、そこに付属のケーブルを接続すればコンポジット出力も可能だ。また、「Handycam HDR-TD10」「HDC-TM750」「HDC-TM90」の3機種は、付属又は別売りのケーブルでD端子への出力も可能だ。パソコンとの接続は全機種がUSBだが、「Bloggie MHS-FS3」を除く4機種は本体にUSB端子を搭載し、USBケーブルを使用した接続なのに対して、「Bloggie MHS-FS3」は本体に収納式のUSBコネクタがあるため、直接「Bloggie MHS-FS3」をパソコンのUSBポートに接続でき、非常に簡単だ。 「Handycam HDR-TD10」「Everio GS-TD1」「HDC-TM750」のいわゆる高価格機種は、イヤホン端子とマイク端子を備えている。マイク端子があれば、別売りの高性能マイクを付けることが可能になる。一方イヤホン端子があれば、再生時にイヤホンで音声を聞くことが可能だ。もっとも、「Bloggie MHS-FS3」を除く4機種はスピーカーを内蔵しているため、再生時にはそちらで音声を聞くこともできる。その中でも「Handycam HDR-TD10」は、ステレオスピーカーを内蔵し、より臨場感のある音で楽しめる点で一歩抜きに出ている。 最後に本体サイズと重量を見てみよう。まずイメージセンサーを2つ搭載して光学ズームもできる「Handycam HDR-TD10」と「Everio GS-TD1」の2機種を見てみると、高さこそ「Handycam HDR-TD10」の方が1cm大きいが、幅と長さに関しては「Everio GS-TD1」がかなり大きく、見た目にもかなりの差がある。「Handycam HDR-TD10」が2D撮影のビデオカメラをの横幅を大きくしたように見えるのに対して、「Everio GS-TD1」は全体に大柄で、旅行などに持って行くには大きめだ。しかし重量に関しては、「Handycam HDR-TD10」の725gに対して「Everio GS-TD1」は675gと50g軽く、サイズが大きい事さえ気にしなければ、重量差はない。ただし、「Handycam HDR-TD10」と「Everio GS-TD1」の差は10%もない上に、例えばソニーの2Dビデオカメラの高機能機種「HDR-CX560V」は435g、小型の機種の「HDR-CX180」は300gであることを考えると、高機能機種の1.5倍以上、小型の機種の2倍以上で、ずっしりとした重さがあるのは両機種とも変わらない。パナソニックの2機種は2D撮影時は小型で軽量だ。「HDC-TM750」は66×69×138mmで440g、「HDC-TM90」は50.5×63mm×120mmで281gである。ただし3D撮影を行う場合は、レンズの先に3Dコンバージョンレンズ「VW-CLT1」を取り付けなければならない。これは、78×59×97mmで重量も195gあるため、一気に「Handycam HDR-TD10」と「Everio GS-TD1」に近づく。特に長さに関しては、200cmを超えており、かなり長い印象だ。ちなみに、ここでは「HDC-TM90」も本体と3Dコンバージョンレンズを純粋に足したサイズと重量になっているが、実際には3Dコンバージョンレンズとの間にステップアップリングを挟む必要があるため、重量はもう少し重く、長さももう少し長くなることが考えられる。3Dコンバージョンレンズを取り付けても「HDC-TM750」と「HDC-TM90」の方が軽量だが、問題はバランスにある。2D撮影時も3D撮影時も形状や重量が変わらない「Handycam HDR-TD10」と「Everio GS-TD1」は重いとはいえ、この形でバランスが取れるようにベルトなどが取り付けられているため、ホールド感が良く、思いの外重量は重く感じない。一方、「HDC-TM750」と「HDC-TM90」は2D撮影時の状態でバランスが取れるようにベルトが取り付けられているため、先端に195gもあり10cm近い物を取り付けると、前方にバランスが崩れる。3Dコンバージョンレンズを左手で支える必要がありそうだ。その点でも2D撮影時は「HDC-TM750」と「HDC-TM90」の2機種が軽くて便利だが、3D撮影時は「Handycam HDR-TD10」と「Everio GS-TD1」の方が撮影しやすい。最後に「Bloggie MHS-FS3」は特殊だ。縦型で薄型の本体は重量も125gと圧倒的に軽く、胸ポケットに入れておき、さっと取り出して使える大きさだ。手軽に撮影するという点では「Bloggie MHS-FS3」が最適と言える。 このように3D撮影対応のビデオカメラといっても、細かく見ていくと色々と違いがある事が分かっただろう。5機種それぞれに特徴があるが、最も万人にお勧めできるのは「Handycam HDR-TD10」である。2つのイメージセンサーによる、左右それぞれがフルハイビジョンの3D撮影が可能で、しかも光学ズームができるため一般的なビデオカメラと同じ感覚で使用できる。イメージセンサーの性能も良く、手ぶれ補正機能も強力である。また焦点距離が短いため狭い場所でも広く撮れる。液晶も綺麗で、映像だけでなく音声も5.1チャンネル録音可能である。バッテリ駆動時間は5機種中最も長く、サイズもそれほど大きくない。これで価格は12万円以下と比較的手頃で隙のない製品だ。様々な場面で使える実力を持っているため、3D撮影も主体でと考えている人は、とりあえず「Handycam HDR-TD10」を買っておけば不満は少ないはずだ。一方、3Dの静止画も撮影したいと言うことであれば「Everio GS-TD1」がオススメだ。手ぶれ補正が電子式だったり、音声が2チャンネル記録だったりと癖もあり、光学ズーム倍率が「Handycam HDR-TD10」より劣るという点もあるが、2D、3Dそれぞれの動画、静止画の4種類が撮影できるのはメリットだ。また記録モードが豊富で、高画質のMVC方式と、扱いやすいAVCHDの両対応をしているのも面白い。イメージセンサーの性能や液晶の綺麗さなどは合格点だ。問題があるとすると、価格が14万7000円と「Handycam HDR-TD10」より高い点だ。「HDC-TM750」と「HDC-TM90」は2Dが主体で、3Dはたまに撮って楽しめればよいという使い方、又は現在は2D撮影だけでよいが将来的に3D撮影もできる可能性を残しておきたいという人にお勧めだ。ただ、基本は2D撮影のビデオカメラなので、3D撮影時はズームもできず、液晶画面も3D表示ができない。また左右それぞれをフルハイビジョンで記録する事はできず、撮影時の重量バランスも崩れると、3D撮影時の機能はおまけ程度と考えた方が良さそうだ。価格もビデオカメラ本体と3Dコンバージョンレンズを揃えると、「Handycam HDR-TD10」や「Everio GS-TD1」と変わらなくなる。少しでも3D撮影を本格的に使うなら「Handycam HDR-TD10」や「Everio GS-TD1」を購入しておいた方が良さそうだ。ちなみに「HDC-TM750」と「HDC-TM90」から選ぶ場合は、高画質に惹かれたなら「HDC-TM750」を、光学ズーム倍率の高さと本体のコンパクトさに惹かれたなら「HDC-TM90」となるだろう。また、「HDC-TM750」にはメモリ容量が64GBの下位機種「HDC-TM650」が、「HDC-TM90」にもメモリ容量が32GBの下位機種「HDC-TM85」があるので、そちらも合わせて検討すると良さそうだ。一番特殊なのが「Bloggie MHS-FS3」である。決して高画質・高機能ではなく光学ズームもできないが、圧倒的な低価格とコンパクトさが魅力だ。とりあえず3D撮影を試してみたいという人や、動画投稿サイトへのアップロードが目的の人、コンパクトデジタルカメラや携帯電話間隔で常に持ち歩いてさっと取り出してさっと撮影したいという人には、「Bloggie MHS-FS3」はオススメだ。3D撮影の入門機のような製品だと言える。 (H.Intel) 【今回の関連メーカーホームページ】
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