新旧プリンター比較 2017年末発売のプリンターを旧機種と比較する (2017年10月11日公開)
EW-M660FTは国内初のエコタンク搭載プリンターだった。そのため、その後に発売された機種と比べると、様々な点で制限や劣る部分、使いにくい部分があった。その後継となるEW-M670FTは様々な点で改善された機種だ。その一方で、FAX機能とADFを搭載という点ではEW-M660FTを踏襲している。FAX機能も含めて徹底的に比較してみよう。
まず価格を見ると、発売時の価格は共に54,980円となっている。エコタンク搭載プリンターはその性質上、なかなか価格が下がらない機種である。そのため、発売時の価格が、そのまま買いやすさに影響する。その点でEW-M670FTはEW-M660FTと同じレベルにある。 それではプリント画質、速度、コスト面を見てみよう。EW-M670FTは4色インク構成で、黒が顔料、カラーが染料というのはEW-M660FT同等だ。最小インクドロップサイズ印刷解像度も同じで、PrecisionCoreプリントヘッド採用で普通紙への高画質印刷が出来るのも同じだ。しかし、インクに関しては一新され、2世代目エコタンクとも言うべき「挿すだけ満タンインク方式」となっている。EW-M660FTでは本体右側に飛び出ているエコタンクのフタを開け、大きめの注入口に自分で満タンを確認しながら注入する必要があった。しかし、EW-M670FTではボトルを注入口に挿し込むだけで満タンまで入って自動的に止まる仕組みになった。またインクの残ったボトルも、キャップがスクリュー式となったため、保存しやすくなった。さらに注入口の形状が色によって異なるため、誤ったインクボトルを挿し込むこともなくなるなど、かなり改善されている。タンク自体も、本体から完全に独立して飛び出していた従来と比べると、EW-M670FTではほとんど本体に埋め込まれ、飛び出ている部分はわずかだ。また前面からインク残量も確認できるようになっている。 方式が変わったことでインクボトルも、型番がクツ(顔料)とハサミ(染料)から、ヤドカリ(顔料)とハリネズミ(顔料)に変更となった。それと共に、耐オゾン性がEW-M660FTの半年以上1年未満からEW-M670FTでは2年へと写真の耐保存性がわずかに向上した。ただし、同じ挿すだけ満タンインク方式を採用し、先に発売されていたEW-M770Tのインクはマラカス(顔料)とハーモニカ(染料)で、こちらは耐光性50年、耐オゾン性10年である事を考えると、これよりは劣る。 印刷速度はノズル数が同じながら、普通紙はやや高速化した。 A4カラー文書が7.3ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)から8.0ipmに、A4モノクロ文書が13.7ipmから15ipmとなった。L判フチなし写真の印刷速度は75秒で、フチあり印刷しか出来なかったEW-M660FTとは比較しにくいが、ほぼ同じ性能のインクカートリッジタイプの複合機PX-M650Fが70秒だった事を考えると、やや遅くなったといえる。普通紙印刷速度を重視した結果だろう。印刷コストはEW-M670FTの場合、A4カラー文書が0.9円、A4モノクロ文書が0.4円である。EW-M660FTの0.8円と0.4円と比べるとA4カラー文書だけわずかに高くなっている。EW-M660FTでは、カラーが一本900円、ブラックが1本1,800円だったが、EW-M670FTではカラーが各1,150円、ブラックが2,150円とやや価格が上がっているのが原因だ。これは、ボトルが挿すだけ満タンインク方式に変更されたためか、耐保存性が向上したためかは不明だ(より耐保存性の高いEW-M770T用のインクは同方式ながら、さらに高い)。またカラーインクの量は70mlで同じだが、ブラックインクの量は140mlから127mlに1割減っている。とはいえ、価格が上がり量が減ったとはいえ、結果的に印刷コストに与える影響はわずかなので気にするほどではなさそうだ。一方で、付属のインクボトルが、EW-M660FTでは各色2本ずつだったが、EW-M670FTでは1本ずつとなった。それでも付属のインクでA4カラー文書を印刷した場合、カラーインクは6,000ページ、ブラックインクは7,500ページまで使用することが出来る。同クラスのインクカートリッジタイプのプリンタPX-M680Fでは、カラーインクは600ページ、ブラックインクは1,100ページまでしか使用できないので、6000ページ印刷したとしても。カラーインクは各10本、ブラックインクは6本必要となる。カラーインクは1本1,590円、ブラックインクは1本3,790円なので、1,590円×3色×10本+3,790円×6本=70,440円で、付属のインクだけで元が取れる計算になる。EW-M660FTと比べるとインクボトルの付属本数は減ったが、十分にお得である事は変わっていない。
続いて、プリントの付加機能を見てみよう。まずEW-M660FTでも自動両面印刷機能は搭載していたが、普通紙のみだった。EW-M670FTではハガキにも対応し、ハガキの宛名面と通信面を入れ替える事無く印刷できるようになった。また、廃インクタンク(メンテナンスボックス)をユーザーが交換できるようになった。EW-M660FTでは廃インクタンクがいっぱいになるとメッセージが表示され修理に出さなくてはならなかったが、EW-M60FTではそういった事が無くなった。印刷枚数が多いと思われる機種だけにうれしい機能だ。
ダイレクト印刷機能はEW-M670FTもEW-M660FTと同じく搭載していない。
続いてスマホ、クラウド対応の機能を見てみよう。基本的には機能面では変わりが無い。SNSの写真をコメント付きで印刷できるようになったが、小さな差と言えるだろう。iOSのバージョンが7.0から9.0、Androidのバージョンが4.0から4.1になっているが、これは本体の発売時のアプリの対応バージョンなので、現在のアプリの対応バージョンは両機種ともiOS 9.0/Android 4.1以上となる。
コピー機能を比較してみると、EW-M670FTや機能が強化されていることが分かる。まず、対応用紙がEW-M660FTのA4/B5のみだったのが、A4〜A6/六切/ハイビジョン/KG/2L判/L判/洋形封筒1〜4号、長形封筒3号/4号/ハガキと格段に増えている。そもそもEW-M660FTがA4とB5だけだったのが不思議で、本来の機能に戻ったと言える。バラエティコピーとして、免許証などを表面、裏面と2回スキャンし、上下に並べて印刷できる「IDコピー」機能はEW-M660FTも搭載していたが、EW-M670FTでは影消しコピーとパンチ穴消しコピー機能も搭載された。
FAX機能を見てみよう。基本的な通信速度や画質、受信ファックスの保存ページ数などは同じだ。一方、短縮ダイヤルはEW-M660FTが60件だったのに対してEW-M670FTでは100件、グループダイヤルも59宛先から99宛先に、順次同報ダイヤルも30宛先から100宛先に増えている。ポーリング受信だけで無くポーリング送信にも対応した。また、ファクス受信時は自動で受信、電話着信時には接続した外付け電話機の着信音が鳴って呼び出してくれる「ファクス/電話自動切替」にも対応した。1回線で電話でFAXを共用している場合は便利だ。また、液晶が大型化、カラー化したため(後述)、送信前に原稿を確認できる「見てから送信」と、受信時に内容を確認してから印刷するか判断できる「見てから印刷」機能も搭載された。前者は送信ミスを減らすことが出来、後者は余計なFAXを印刷しないため、用紙代やインク代の節約になる。
インタフェースはEW-M660FTと変わっていない。対応OSはWindows XPがSP1以上からSP3以上に変更されているが、新製品は対応OSが新しい物だけに限定されるのは仕方の無いところだが、逆に言うとサポートに切れたXPやVistaに対応しているのはうれしいところだ。また、Windows XPのSP1からSP3へは無償バージョンアップが可能なので、特に問題は無いだろう。 耐久枚数は5万枚と変化はないが、家庭用プリンターが1万〜1万5000枚程度と言われているため、かなり強いと言える。印刷枚数が多いと思われるエコタンク搭載プリンターではうれしいところだ。本体サイズはEW-M660FTの515×360×241mmから、EW-M670FTでは375×347×231mmへと小型化した。奥行きに関しては液晶・操作パネルが収納できるようになった事も影響しているため、実質はほとんど変わらない。高さもADF部がトレイの形に飛び出ていたEW-M660FTと比べて、全体に高さがあるEW-M670FTの方が大きく見える場合もある。ただ横幅が14cmも小型化したのは、設置スペース面で有利だ。プリンタ部の小型化に加えて、エコタンクが本体に埋め込まれる形になったのも大きいだろう。エコタンク搭載プリンターは大きいというのは過去の話になりつつある。 EW-M670FTは、初のエコタンク搭載プリンターであるEW-M670FTの問題点をことごとく改善したような製品だ。フチなし印刷も出来、エコタンクも使いやすくなった。各所で機能アップが図られ、その一方で大幅に小型化した。EW-M670FTは、欠点の少ない機種へと進化し、より購入しやすい機種になったと言えるだろう。 (H.Intel) 【今回の関連メーカーホームページ】 エプソンhttp://www.epson.co.jp/ |