小ネタ集
新旧プリンター比較
2017年末発売のプリンターを旧機種と比較する
(2017年9月13日公開)

表中の赤文字は旧機種からの変更点です。なお3機種で比較している場合は、旧機種1からの変更点となります。

PIXUS XK70とPIXUS TS9030を徹底比較する

 キャノンのPIXUS XK70はPIXUS TS9030の後継というべき製品だ。今回よりPIXUS TSシリーズを離れ、PIXUS XKシリーズになった。それと同時にPIXUS XK50も発売されたが、こちらはPIXUS TS9030とPIXUS TS8030の間のような製品だ。まずは、PIXUS XK70を旧モデルPIXUS TS9030と比較してみよう

プリント(画質・速度・コスト)
新機種
旧機種
型番
PIXUS XK70
PIXUS TS9030
製品画像

発売時の価格
44,880円
39,880円
インク
色数
6色
6色
インク構成
顔料ブラック
染料ブラック
フォトブルー
シアン
マゼンタ
イエロー
顔料ブラック
染料ブラック
グレー
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成
各色独立
各色独立
顔料/染料系
染料/顔料(黒)
(ChromaLife100)
染料/顔料(黒)
(ChromaLife100)
インク型番
N10XL/N11XL(大容量)
N10/N11(標準容量)
370XL/371XL(大容量)
370/371(標準容量)
ノズル数
6656ノズル
6656ノズル
C/M:各1536ノズル
PB/Y/染料BK/顔料BK:各1024ノズル
C/M:各1536ノズル
GY/Y/染料BK/顔料BK:各1024ノズル
最小インクドロップサイズ
N/A
1pl
最大解像度
4800×1200dpi
9600×2400dpi
印刷速度
L判縁なし写真(メーカー公称)
14秒
18秒
A4普通紙カラー(ISO基準)
10.0ipm
10.0ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準)
15.0ipm
15.0ipm
印刷コスト
L判縁なし写真
12.5円
15.9円→16.6円
A4カラー文書
5.7円
8.9円→9.5円
A4モノクロ文書
N/A
N/A

 PIXUS XK70はPIXUS TS9030の後継という位置づけだが、価格は5,000円アップしている。では、プリントの基本機能である、画質と速度、印刷コストを見てみよう。インク色数は6色でPIXUS XK70とPIXUS TS9030に違いは無い。そのうち1色が顔料ブラックである点も同様だ。一方残りの染料5色だが、ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色は同じだ。PIXUS TS9030ではそれらに加えてグレーインクを搭載し、低彩度の箇所でグレーをベースにした色表現をすることで画質を向上、またモノクロ印刷時の青みがかったり赤みがかったりするのを押さえる役割も果たしていた。しかし、これは色の安定性を重視した物で、鮮やかに表現する点ではシアン、マゼンダ、イエローの基本3色頼みという状況であった。PIXUS XK70ではグレーインクを廃止し、代わりにフォトブルーインクを搭載する事で明るい青から白にかけての粒状感が低減、一方新インクにより赤色の発色性が向上している。
 しかし気になるのは最小インクドロップサイズと最大解像度の点だ。解像度がPIXUS TS9030の9600×2400dpiからPIXUS XK70では4800×1200dpiに落とされている。これは下位モデルと同じ解像度だ。ただ解像度が下がっただけでは画質はほとんど低下しない。重要なのは最小インクドロップサイズなのだが、これが今年より非公開となった。カタログへの記載が無いのではなく、メーカーに問い合わせても公表できないという回答であった。従来1plでは9600×2400dpiで、4800×1200dpiでは2pl以上というのがキャノンのパターンだっただけに、非公開というのは色々想像してしまう。確かに、ドットを小さくすると、密に打つ必要があり、つまり印刷解像度を上げなければならないという事になるのだが、従来の1plの場合、印刷解像度4800×1200dpiでは不足で、用紙によってはドット間に微妙な隙間が出来るという話が出たことが過去にあった。もちろん、より正確にドットを打つことで4800×1200dpiでも1plが可能になったという可能性もあるが、それなら1plを堂々と公表すれば良いのではないだろうか。となると、場合によっては下位モデルと同じ2pl、もしくはそこまででは無くても、1.5plや1.2plといったPIXUS TS9030よりやや大きい最小インクドロップサイズになっている事も考えられる。そうなると、画質面、特に粒状感の面ではやや劣るという事が考えられる。
 PIXUS XK70はPIXUS TS9030とノズル数は同等だが、L判写真印刷速度は18秒から14秒に高速化した。僅かな事だが、エプソンの上位機種の13秒にぼぼ並んだと言える。なおA4普通紙への印刷測度はカラー、モノクロ共に変化していない。大きく異なるのは印刷コストだ。L判フチなし写真が12.5円とPIXUS TS9030の15.9円より下がっている。しかも、PIXUS TS9030の370/371番インクは2017年10月1日より価格が上がるため、PIXUS TS9030は16.6円となる。写真用紙代(400枚で1,705円、1枚4.2625円)が込みなので、インク代は約8.2375円と12.3375円で3分の2になった計算だ。A4カラー文書もPIXUS XK70は5.7円と、PIXUS TS9030の9.5円(9月末までは15.9円)と比べると安くなっている。ちなみに、写真印刷では顔料ブラックインクを使用しないので、染料のN11XLインクは950円なので、5本で4,750円。これを印刷コスト(用紙代除く)で割ると、約577枚。つまり乱暴な計算だが、インクが均等に使用できた場合、染料インク1セットで577枚印刷ができる。一方、PIXUS TS9030でも同じ計算をすると、371XLインクは1,310円×5本で6,550円で、531枚となる。PIXUS XK70とPIXUS TS9030は同じ本体なので、カートリッジサイズは同じで、それほど内容量を増やせる訳では無い。若干増えているが、大半はインクカートリッジの価格を下げる事によって、印刷コストを下げている事になる。

プリント(給紙・排紙関連)
型番
PIXUS XK70
PIXUS TS9030
製品画像
対応用紙サイズ
名刺〜A4
名刺〜A4
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
○(100枚)
○(100枚)
前面
カセット(100枚/普通紙のみ)
カセット(100枚/普通紙のみ)
その他
排紙トレイ自動開閉
用紙種類・サイズ登録
○(カセット収納(前面)・カバー(背面)連動)
○(カセット収納(前面)・カバー(背面)連動)
用紙幅チェック機能


 続いて、PIXUS XK70とPIXUS TS9030の給紙、排紙機能を見てみよう。どちらも印刷できる用紙サイズや、前面給紙カセット+背面トレイという方式、排紙トレイの自動開閉機能や用紙登録機能を搭載する点でも同じだ。同じ本体を使用しているので、前面給紙カセットにA4やB5用紙をセットする場合は、カセットを伸ばす必要があり、本体から35mm飛び出すのも同様だ。ただ、このカセットは若干の変更が加えられた。PIXUS TS9030では、カセットの伸縮は手動だった。PIXUS XK70では、カセットを引き出す際に自動的に伸張するようになった。つまり、用紙をセットしていない時は縮めてすっきり収納しておいても、A4やB5用紙をセットする際に自動的にセットできるサイズになるという訳だ。もちろん、カセットを収納する時は自動で縮まったりはしない(そうでないとセットした用紙がぐちゃぐちゃになってしまう)。一見便利だが、B5より小さな用紙をセットしている場合、せっかく縮めておいても、カセットを取り出す度にカセットが伸張してしまう事になる。ただ、ハガキや写真用紙は前面給紙カセットには入れられないので、一般的にはA4やB5の普通紙を使う人が多いという判断なのだろう。

プリント(付加機能)
型番
PIXUS XK70
PIXUS TS9030
製品画像
自動両面印刷
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
○(自動写真補正II)
○(自動写真補正II)
特定インク切れ時印刷
自動電源オン/オフ
○/○
○/○
廃インクタンク交換

 続いて、PIXUS XK70とPIXUS TS9030のその他のプリント機能を比較してみよう。この部分に変更は無く、自動両面印刷やCD/DVD/BDレーベル印刷機能、自動電源オン/オフを備えている。

スキャン
型番
PIXUS XK70
PIXUS TS9030
製品画像
読み取り解像度
2400dpi
2400dpi
センサータイプ
CIS
CIS
原稿取り忘れアラーム
スキャンデーターのメモリカード保存


 PIXUS XK70のスキャン機能もPIXUS TS9030から違いは無い。解像度なども同等だ。

ダイレクト印刷
型番
PIXUS XK70
PIXUS TS9030
製品画像
カードスロット
対応メモリカード
SD
SD
USBメモリ/外付けHDD/外付けDVD対応
−/−/−
−/−/−
メモリカードからUSBメモリ/外付けHDD/外付けDVDへバックアップ
−/−/−
−/−/−
対応ファイル形式
JPEG/TIFF
JPEG/TIFF
手書き合成
○(ディスクレーベル対応)
○(ディスクレーベル対応)
PictBridge対応
○(Wi-Fi)
○(Wi-Fi)
赤外線通信
各種デザイン用紙印刷
カレンダー印刷
定型フォーム印刷(レポート用紙、原稿用紙/スケジュール用紙、方眼紙、チェックリスト、五線譜、漢字練習帳)
カレンダー印刷
定型フォーム印刷(レポート用紙、原稿用紙/スケジュール用紙、方眼紙、チェックリスト、五線譜、漢字練習帳)

 PIXUS XK70とPIXUS TS9030のダイレクト印刷機能も大きな変化は無い。PIXUS TS9030の売りであった、クリエイティブフィルターの数も9種類のままである。

スマホ/クラウド対応
型番
PIXUS XK70
PIXUS TS9030
製品画像
スマートフォン連携
対応端末
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 9.0以降)
Android 4.1以降
(Bluetooth対応)
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 7.0以降)
Android 4.0以降
NFC対応
写真プリント
ドキュメントプリント
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
クラウド連携
スマートフォン経由/本体
○/○
○/○
オンラインストレージからの印刷
SNSからの印刷
○(コメント付き可)
○(コメント付き可)
写真共有サイトからの印刷
メールしてプリント
リモートプリント
スキャンしてリモートプリント

 続いて、PIXUS XK70とPIXUS TS9030のスマホ、クラウド対応に付いて見ていこう。まず、対応端末に関してはAndroidのバージョンが4.0から4.1、iOSのバージョンが7.0から9.0になっているが、これは本体の発売時のアプリの対応バージョンなので、現在のアプリの対応バージョンは両機種ともAndroid 4.1/iOS 9.0以上となる。PIXUS XK70に新たに搭載されたのはBluetooth接続機能だ。ただ、これはBluetoothを使って写真を送信すれば印刷されると言った機能では無い。Bluetoothでお互いを認証しておけば、ダイレクト接続(Wi-Fiダイレクト)の際の接続が簡単という機能だ。Bluetoothは接続時に使用するだけで、印刷操作は「Canon PRINT Inkjet」上で行い、データー転送にはWi-Fiが使用される。ちなみにAndroid 5.1以上の対応で、iOSは非対応だ。また、代わりにNFCが非搭載となった。どちらが簡単なのかは不明だが、方法が変わった点は注意が必要だ。それ以外の機能に違いは無い。

コピー機能
型番
PIXUS XK70
PIXUS TS9030
製品画像
等倍コピー
拡大縮小
倍率指定
○(25〜400%)
○(25〜400%)
自動変倍
オートフィット
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
○(色あせ補正対応)
○(色あせ補正対応)
割り付け(2面/4面)
○/○
○/○
バラエティコピー
枠消しコピー
IDコピー
枠消しコピー
IDコピー

 PIXUS XK70とPIXUS TS9030のコピー機能は同等だ。機能の追加・削除はない。

操作パネル/インタフェース/本体サイズ
型番
PIXUS XK70
PIXUS TS9030
製品画像
液晶ディスプレイ
5.0型
(90度角度調整可)
5.0型
(90度角度調整可)
操作パネル
タッチパネル液晶
(90度角度調整可)
タッチパネル液晶
(90度角度調整可)
インターフェイス
USB他
USB2.0×1
USB2.0×1
無線LAN
IEEE802.11n/a/g/b
(ダイレクト印刷対応)
IEEE802.11n/g/b
(ダイレクト印刷対応)
有線LAN
100BASE-TX
100BASE-TX
対応OS
Windows 10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.10.5〜(AirPrint利用)
Windows 10/8.1/8/7 SP1/Vista SP2
Mac OS 10.8.5〜
外形寸法(横×奥×高)
372×324×140mm
372×324×140mm
重量
6.7kg
6.7kg
本体カラー
グレーメタリック
レッド/ホワイト

 最後にPIXUS XK70とPIXUS TS9030の操作パネルやインタフェース、本体サイズなどを見てみよう。本体が同じなので、液晶サイズは同等だ。タッチパネル操作なのも変わらない。接続インタフェースはUSB2.0に加えて、無線LANと有線LANに対応するのも同等だ。ただし、この無線LANが若干強化された。PIXUS TS9030は2.4GHz帯の電波周波数を使うIEEE802.11n/g/bの対応だった。これがPIXUS XK70では、2.4GHz帯に加えて5GHz帯にも対応しIEEE802.11n/a/g/b対応となった。ダイレクト接続時は5GHz帯は使用できないが、家庭内の電子レンジや電話の子機など様々な物に影響を受けやすい2.4GHz帯に比べて安定した接続ができる5GHz帯対応は便利になったと言えるだろう。
 対応OSは大きく変化し、Windows Vistaが対応から消えている。さらにWindows 8.1には対応するがWindows 8は非対応となった。また、MacOSのドライバは、PIXUS TS9030もドライバディスクには収録されずダウンロード対応だったが、今回からはキヤノンからは提供されず、AirPrintを使用する方法となった。対応バージョンもMacOS 10.8.5以上から、MacOS 10.10.5以上になっている。
 本体サイズは全く同じだ。ただ、本体カラーに関しては、PIXUS TS9030が前面や側面はブラック、天板がレッド又はホワイトだったが、PIXUS XK70はグレーメタリックとなり、より高級感が高まっている。




 Bluetooth対応や無線LANの5GHz帯対応などもあるが、一番大きな変化はインクの変更だろう。しかもただインクを改良したのでは無く、その構成を変更し、グレーインクをフォトブルーインクに変更した。解像度の低下と、最小インクドロップサイズが非公表となった事により、画質、特に粒状感の面では悪くなったのではという疑惑があるが、少なくともキヤノンの複合機の中では最も高画質になるだろう。本体価格が5,000円上がったが、印刷コストが大きく下がったので、印刷枚数が多い人には逆にお得になるだろう。ただ印刷コストが安いPIXUS XKシリーズは下位モデルPIXUS XK50もラインナップされているので、必要な機能に合わせて選択できる、


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
キャノンhttp://canon.jp/