小ネタ集
2022年末時点のプリンターを徹底検証
新機種と旧機種を徹底比較
(2022年5月16日公開)

表中の背景が黄色になっている項目は、旧機種・参考機種からの変更点です。なお3機種で比較している場合は、旧機種1・参考機種1からの変更点となります

新機種「MFC-J5800CDW」と旧機種「MFC-J5630CDW」を徹底比較する

 MFC-J5800CDWはMFC-J5630CDWの後継機種だ。とはいえ、見た目にも本体右側のインクカートリッジ部だけが大きく飛び出る形になっていることからも分かるように、MFC-J5630CDWでは従来型カートリッジ方式だったが、MFC-J5800CDWは大容量カートリッジのファーストタンク方式に変更されている。そのために本体価格は大きく上がったが、印刷コストは大きく下がっている。また、それ以外にも機能強化された部分が数多くある。細かく比較していこう。

プリント(画質)
新機種
旧機種
型番 MFC-J5800CDW MFC-J5630CDW
製品画像
発売日 2022年11月上旬 2019年2月上旬
発売時の価格(税込) 63,250円 37,400円
インク 色数 4色 4色
インク構成 ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成 ファーストタンク方式
(各色独立インクカートリッジ+サブタンク方式(200枚分)
各色独立インクカートリッジ方式
顔料/染料系 顔料 顔料
(マゼンダに一部染料が含まれる)
インク型番 LC417XL LC3119(大容量)
LC3117(標準容量)
最小インクドロップサイズ カラー:2.5pl
ブラック:4pl
1.5pl
最大解像度 1200×4800dpi 1200×4800dpi
高画質化機能 自動ノズルチェック

 まずは、販売価格を見てみよう。MFC-J5800CDWの販売開始時の価格は63,250円で、MFC-J5630CDWの37,400円から25,850円の値上げ、約1.7倍の価格となっている。ただし、これは従来型カートリッジ方式からファーストタンク方式へと変更され印刷コストが大幅に下がったためだ(後述)。一般的に、同程度の機能の場合、印刷コストと本体価格は反比例になるので、本体価格は高く設定されている。
 それでは、印刷画質を見てみよう。方式は変更となったが、4色インク構成である事は変わらない。ただし、MFC-J5800CDWでは「次世代インクジェットプリンティング技術『MAXIDRIVE(マキシドライブ)』を搭載」という謳い文句となっている。これは、新開発のプリントヘッドを採用している事を指しているようだ。その内容は「従来より吐出可能な液滴サイズを大きくする事で高画質を維持しながら印刷速度が向上」「長期使用による駆動劣化も抑えることで耐久性が向上」となる。その内容通り、最小インクドロップサイズがMFC-J5630CDWの1.5plから、MFC-J5800CDWではカラーが2.5pl、ブラックが4plへと大型化している。「高画質を維持しながら」となっているが、やはりある程度の画質低下はあると言える。ただ、写真を印刷するなら最小インクドロップサイズは重要だが、MFC-J5800CDWの目的となる文書印刷では写真印刷ほど影響を受けない。確かに文書中の写真やイラスト、グラフなどで若干粒状感(ドットが見えてザラザラした感じ)が強くなる他、年賀状印刷などを行う場合も粒状感を感じやすくなるだろう。それでも、エプソンの場合はビジネス向けプリンターでは2.8〜3.8plが一般的で、キャノンではカラーが5pl、ブラックが11plという製品も存在することから、他社に比べて劣るというわけでは無い。大きな問題ではないだろう。それよりも、ビジネス向けの機種では全色で顔料インクを採用することで、普通紙印刷時に高画質に印刷できる事が重要であり、その点はしっかりと対応している。実は、旧機種のMFC-J5630CDWでも全色顔料をうたっていたが、注釈として「マゼンダの一部に染料が含まれる」となっており、完全な全色顔料では無かった。MFC-J5800CDWでは晴れて完全な全色顔料となった。また、自動ノズルチェック機能が搭載され、印刷結果にスジ状に抜けが発生するなど、プリントヘッドの問題を検知し、自動で修復、メンテナンスを行われるようになった。これにより大量印刷後に印刷不良があって印刷し直しといった、用紙とインクの無駄を軽減することが可能となる。ビジネス用途には特に便利な機能と言えるだろう。
 なお、「完全な」全色顔料になった事に加えて、インク方式も変更されているため、インクカートリッジも変更となる。ちなみにMFC-J5800CDWはファーストタンク方式だが、エプソンのエコタンク方式やキャノンのギガタンク方式の様に内臓のタンクに、インクボトルからインクを補充するのでは無く、大容量のカートリッジ方式となる。ただし、内部に小型のタンクを搭載しており、ここに常に200枚分のインクを確保している。つまりインクカートリッジのインクが空になった時点で、内蔵タンクにより200枚分の印刷が可能だが、インクカートリッジは交換が可能となる。インク切れ前にカートリッジ交換が可能なので、大量印刷時にインク切れで止まっていたという事態を軽減できる。 使用するインクカートリッジは、MFC-J5630CDWでは、大容量のLC3119と、標準容量のLC3117の2種類が用意されていたが、MFC-J5800CDWではLC417XLの1種類となった。なお、大容量カートリッジを示す「XL」が付いているが、「XL」無しのカートリッジは存在しない。また容量的には、LX417XLは、LC3119よりさらに大容量となる(後述)。

プリント(印刷速度)
新機種
旧機種
型番 MFC-J5800CDW MFC-J5630CDW
製品画像
ノズル数 1680ノズル 1680ノズル
全色:各420ノズル 全色:各420ノズル
印刷速度 L判縁なし写真(メーカー公称) N/A N/A
A4普通紙カラー(ISO基準) 30.0ipm 20.0ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準) 30.0ipm 22.0ipm
ファーストプリント速度 A4普通紙カラー 4.6秒 6.0秒
A4普通紙モノクロ 4.4秒 5.5秒

 続いてMFC-J5800CDWの印刷速度を見てみよう。ノズル数は据え置きながら「MAXIDRIVE」が印刷速度が向上をうたっているだけあり、カラー文書、モノクロ文書共に30ipmと非常に高速だ。MFC-J5630CDWではカラーが20.0ipm、モノクロが22.0ipmであったため、大幅な速度向上を果たしている。1枚目のプリント速度であるファーストプリント速度も、MFC-J5630CDWではカラー6.0秒、モノクロ5.5秒だったが、それぞれ4.6秒と4.4秒に高速化している。数枚の印刷を頻繁に行うような使い方でも高速化を実感できるだろう。

プリント(印刷コスト)
新機種
旧機種
型番 MFC-J5800CDW MFC-J5630CDW
製品画像
印刷コスト
(税込)
L判縁なし写真 N/A N/A
A4カラー文書 4.1円 6.6円→7.1円(大容量)
A4モノクロ文書 0.8円 1.5円→1.9円(大容量)
インク1本の印刷枚数
(カラー文書)
ブラック 6,000ページ 3,000ページ(大容量)
550ページ(標準容量)
カラー 5,000ページ 1,500ページ(大容量)
550ページ(標準容量)
インク1本の価格
(税込)
ブラック 4,400円 4,950円→5,346円(大容量)
1,320円→1,430円(標準容量)
カラー 各5,500円 2,420円→2,618円(大容量)
1,320円→1,430円(標準容量)

 続いてMFC-J5800CDWの印刷コストである。従来型カートリッジ方式からファーストタンク方式へと変更されたため、印刷コストは大幅に下がっている。また、MFC-J5630CDWは、新型コロナウィルスや円高などの影響により、インクカートリッジの価格が値上げされたため、印刷コストが当初より上がっている。矢印の前がこれまでの印刷コスト、後が価格改定後の印刷コストとなる。A4カラー文書の場合、価格改定後のMFC-J5630CDWが7.1円なのに対して、MFC-J5800CDWは4.1円、A4モノクロ文書の場合1.9円に対して0.8円となる。それぞれ42.3%と57.9%安くなっており、かなりの差だ。またモノクロの方がより安くなっている。
 これはインク1セットでの印刷可能枚数と、インクカートリッジの価格を見れば分かりやすい。MFC-J5630CDWでは、大容量インクの場合、ブラックインクは3,000ページ印刷可能で5,346円だが、MFC-J5800CDWでは6,000ページと印刷可能枚数は倍になっているにもかかわらず、価格は4,400円とむしろ安くなっている。カラーインクはMFC-J5630CDWでは各1,500ページ印刷可能で各2,618円だが、MFC-J5800CDWでは各5,000ページと3倍以上の印刷可能枚数だが、価格は各5,500円と2倍強となっている。つまり大量に購入する事で1枚当りの印刷コストを下げているのである。これには、印刷コストが安くなる以外のメリットがあり、インク交換回数が減るため手間の軽減される他、オフィスなど大量印刷する場合に予備のインクの数を減らすことが出来るため、スペース面でのメリットもある。一方デメリットもある。インク1セットの価格は、MFC-J5630CDWの13,200円から、MFC-J5800CDWでは20,900円へと上がっている。一度セットしたインクカートリッジは基本的には半年、長くても1年以内には使い切らなければ、結局インクが目詰まりしやすくなるなどして使えなくなる。つまり、従来のインクカートリッジでも使い切れるかギリギリというユーザーにとって、大容量になっても使い切れず、単に購入時が高いだけになってしまう。特にMFC-J5630CDWではより容量の少ない標準容量カートリッジが用意されている。こちらはブラック、カラー共に550枚となっており、価格は各1,430円だ。大容量インクとの枚数の差のわりに、価格差が小さいため、印刷コストは高くなるが、こちらなら、1セット4,290円と手頃だ。印刷枚数がそれほど多くなく、標準インクでも十分だったユーザーには、MFC-J5800CDWは無駄が多くなってしまうだろう。

プリント(給紙・排紙関連)
新機種
旧機種
型番 MFC-J5800CDW MFC-J5630CDW
製品画像
対応用紙サイズ 定型用紙 L判〜A3 L判〜A3
長尺用紙 長さ1,200mm(1.2m)まで 長さ431.8mmまで
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面

(100枚/50枚/20枚)
0.52mm厚対応

(100枚/50枚/20枚)
0.52mm厚対応
前面 【カセット】
(250枚/20枚/20枚)
【カセット】
(250枚/20枚/20枚)
その他
排紙トレイ自動伸縮
用紙種類・サイズ登録 ○(カセット収納(前面)/用紙セット(背面)連動) ○(カセット収納(前面)/用紙セット(背面)連動)
用紙幅チェック機能

 続いて、MFC-J5800CDWの給紙、排紙機能を比較してみよう。L判〜A3用紙に対応し、前面給紙カセット1段+背面給紙という点は、MFC-J5630CDWと変わらない。ただし、長尺用紙に関しては、MFC-J5630CDWが431.8mmまでと、A3用紙の420mmをやや超えるサイズまで(実際は海外で使われるタブロイドサイズの279×432mm対応のためであり、長尺印刷機能ではない)だったが、MFC-J5800CDWでは1,200mm(1.2m)まで対応した。ビジネス用途では長尺印刷を必要とされる場面もあり、より使いやすくなったと言える。

プリント(付加機能)
新機種
旧機種
型番 MFC-J5800CDW MFC-J5630CDW
製品画像
自動両面印刷 対応/非対応
対応用紙 普通紙・はがき(インクジェットはがき・光沢はがき非対応) 普通紙・はがき(インクジェットはがき・光沢はがき非対応)
対応サイズ A4/B5/A5/レター/はがき A4/B5/A5/レター/はがき
自動両面
印刷速度
A4カラー文書 21.0ipm 11.0ipm
A4モノクロ文書 21.0ipm 12.0ipm
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
特定インク切れ時印刷 ○(クロだけ印刷・最大30日) ○(クロだけ印刷・最大30日)
自動電源オン/オフ −/− −/−
廃インクタンク交換 −/− −/−
フチなし吸収材エラー時の対応機能

 続いてMFC-J5800CDWのその他のプリント機能を比較してみよう。自動両面印刷機能はMFC-J5630CDWと同じく搭載しており、普通紙とハガキに対応しているが、ハガキはインクジェットタイプや光沢タイプには非対応という点まで、変化はない。ただし、片面印刷速度の向上に伴って、自動両面印刷の速度も向上している。MFC-J5630CDWではカラー文書が11.0ipm、モノクロ文書が12.0ipmだったが、MFC-J5800CDWでは共に21.0ipmへと大幅に高速化している。自動両面印刷を多用する人にはうれしい改善点だろう。

スキャン
新機種
旧機種
型番 MFC-J5800CDW MFC-J5630CDW
製品画像
原稿サイズ A4(215.9×297mm) A4(215.9×297mm)
読み取り解像度 1200×2400dpi
(ADFは600×600dpi)
1200×2400dpi
(ADFは600×600dpi)
センサータイプ CIS CIS
原稿取り忘れアラーム
ADF 原稿セット可能枚数 50枚 30枚
原稿サイズ ハガキ〜A4
長尺900mmm対応
ハガキ〜A4
長尺900mmm対応
両面読み取り
読み取り速度 カラー 25.2ipm? 17.6ipm?
モノクロ 25.2ipm? 17.6ipm?
スキャンデーターのメモリカード保存 ○(JPEG/PDF/TIFF) ○(JPEG/PDF/TIFF)

 MFC-J5800CDWのスキャナー機能を見てみよう。原稿サイズや読み取り解像度、ADF使用時の解像度制限や、長尺読み取りなど、MFC-J5630CDWと同じとなっている。ただし、ADFへの原稿セット可能枚数は30枚から50枚へと増えている。また、ADFの速度も高速化している。ipm値での表記では無く100dpiスキャン時の秒数での表記となるが、表中では60秒をスキャン秒数を割ってipm値として表記している。MFC-J5630CDWでは、1枚3.4秒となるため、17.6ipm相当となる。一方、MFC-J5800CDWでは1枚2.38秒となり25.2ipm相当に高速化された。スキャンやコピー時がより便利になったと言えるだろう。ただし、25.2ipmというと30.0ipmのプリントより速度が遅いため、コピー時のスキャン解像度が100dpiだとしても、スキャン速度がボトルネックになってしまい、プリント速度を十分に発揮できない。実際、コピー速度はカラーが16ipm、モノクロが25ipmとなっている。とはいえ、MFC-J5630CDWではそれぞれ9ipmと12ipmであった事を考えるとかなり高速化している。

ダイレクト印刷
新機種
旧機種
型番 MFC-J5800CDW MFC-J5630CDW
製品画像
ダイレクトプリント メモリーカード
USBメモリー ○(最大256GB) ○(最大256GB)
赤外線通信
対応ファイル形式 JPEG JPEG
最大画像解像度 N/A N/A
読込ファイル数上限 999ファイル 999ファイル
色補正機能 フチあり/フチなし
日付印刷
明るさ調整(5段階)
コントラスト調整(5段階)
フチあり/フチなし
日付印刷
明るさ調整(5段階)
コントラスト調整(5段階)
手書き合成
メモリーカードからUSBメモリー/外付けHDDへバックアップ −/− −/−
PictBridge対応
各種デザイン用紙印刷 インデックスプリント インデックスプリント

 MFC-J5800CDWのダイレクト印刷機能を見てみよう。USBメモリーのみ対応でJPEG形式のみに対応する点や色補正機能など、各種機能はMFC-J5630CDWと同等だ。

スマホ/クラウド対応
新機種
旧機種
型番 MFC-J5800CDW MFC-J5630CDW
製品画像
スマートフォン連携 アプリ メーカー専用 Brother Mobile Connect Brother iPrint&Scan
AirPrint
対応端末 iOS 14.0以降
Android 5.0以降
【発売時】
iOS 11.0以降
Android 4.03以降
【現行】
iOS 14.0以降
Android 4.03以降
スマートスピーカー対応
Wi-Fi接続支援機能
写真プリント
ドキュメントプリント ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン ○(PDF/JPEG) ○(PDF/JPEG)
クラウド連携 プリント アプリ経由/本体 ○/○ ○/○
オンラインストレージ ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/OneNote) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/OneNote)
SNS
写真共有サイト
スキャン アプリ経由/本体 ○/○ ○/○
スキャンしてオンラインストレージにアップロード ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/OneNote) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/OneNote)
メールしてプリント ○Eメールプリント(JPEG/GIF/PNG/TIFF/BMP/PDF/Word/Excel/PowerPoint/TXT/メール本文) ○メール添付印刷(JPEG/GIF/PNG/TIFF/BMP/PDF/Word/Excel/PowerPoint/TXT)
本体でプリント操作が必要
LINEからプリント
リモートプリント
スキャンしてリモートプリント

 MFC-J5800CDWのスマホ、クラウド関連機能を見ていこう。対応アプリはMFC-J5630CDWの「Brother iPrint&Scan」から、他の新機種同様「Brother Mobile Connect」へ変更されている。対応端末も、「Brother iPrint&Scan」は、MFC-J5630CDW発売時はiOS 11.0以降/Android 4.03以降、現行でもiOS 14.0以降/Android 4.03となるが、「Brother iPrint&Scan」はiOS 14.0以降/Android 5.0以降となるため、より新しいバージョンからの対応となる点は注意が必要だ。
 その他、スマートフォンからのプリント・スキャン機能や、クラウドとの連携機能は同等だ。ただし、印刷したい写真や文書を添付してプリンターにメールするとプリントされる機能は、MFC-J5630CDWの「メール添付印刷」から、MFC-J5800CDWでは他の新機種同様「Eメールプリント」へと変更された。「メール添付印刷」では、送信すると専用のクラウド上に保存されるため、24時間以内にプリンター本体からの操作でクラウドにアクセスし、送信元のメールアドレスを選択してプリントという手順が必要だった。「Eメールプリント」では、本体の操作が必要なく、メールを送信すると、自動的にプリントされるようになった。また、「メール添付印刷」ではWord、Excel、PowerPoint、PDF、TXT、BMP、GIF、JPG、PNG、TIFF形式に対応しているが、添付ファイルのみの印刷でメール本文は印刷されなかった。「Eメールプリント」では対応ファイル形式は同じながら、メール本文を印刷するか選べるようになった。これらの設定は、ブラウザ上から行え、ドキュメントと画像でそれぞれ画質と用紙サイズ、さらにドキュメントは両面印刷をするかどうかも設定できるようになった。ソフトウェア的な変更のみだが、同機能の使い勝手は大きく向上している。

コピー機能
新機種
旧機種
型番 MFC-J5800CDW MFC-J5630CDW
製品画像
等倍コピー
拡大縮小 倍率指定 ○(25〜400%) ○(25〜400%)
オートフィット
定型変倍
フチなしコピー
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
割り付け(2面/4面) ○/○ ○/○
その他のコピー機能 濃度調整
地色除去コピー
傾き補正
濃度調整
地色除去コピー
裏写り除去コピー
傾き補正
インク節約モードコピー
バラエティコピー 2in1IDカードコピー
ブックコピー
透かしコピー
2枚に分割
ソートコピー
ポスターコピー(3×3/2×2/1×2)
A4+ノート
A4+方眼
A4+メモ
A4センター
2in1IDカードコピー
ブックコピー
透かしコピー
2枚に分割
ソートコピー
ポスターコピー(3×3/2×2/1×2)
A4+ノート
A4+方眼
A4+メモ
A4センター

 MFC-J5800CDWのコピー機能を見てみよう。各種拡大縮小や2面/4面割付は同等だ。一方、その他のコピー機能として、濃度調整と、地色除去コピーは搭載しているが、裏写り除去コピーとインク節約モードが無くなっている。インク節約モードは全体に色を薄くするのでは無く、文書の文字はそのまま残しつつ、見出しなどの大きな文字や、グラフ、色囲みなどは、輪郭だけを残して内側の色を薄くすることで、見やすさを落とさずにインク使用量を減らすことができるという、エプソンやキャノンには無い機能だったが、省かれてしまった。2in1IDカードコピーやブックコピー、透かしコピー、2枚に分割、ソートコピー、ポスターコピーといったバラエティコピー機能は引き続き搭載されている。

ファクス機能
新機種
旧機種
型番 MFC-J5800CDW MFC-J5630CDW
製品画像
通信速度 33.6kbps 33.6kbps
画質設定 モノクロ 8dot/mm×3.85line/mm(標準)
8dot/mm×7.7line/mm(ファイン)
8dot/mm×15.4line/mm(スーパーファイン)
8dot/mm×7.7line/mm(写真)
8dot/mm×3.85line/mm(標準)
8dot/mm×7.7line/mm(ファイン)
8dot/mm×15.4line/mm(スーパーファイン)
8dot/mm×7.7line/mm(写真)
カラー 203×196dpi(標準・ファイン) 203×196dpi(標準・ファイン)
送信原稿サイズ A4/レター/リーガル A4/レター/リーガル
記録紙サイズ A3/B4/A4 A3/B4/A4
受信ファクス最大保存ページ数 400枚/N/A件 200枚/N/A件
データー保持(電源オフ/停電) ○/○ ○/○
ワンタッチ 8件(4件+シフト押し4件) 8件(4件+シフト押し4件)
アドレス帳 100件×2番号 100件×2番号
グループダイヤル 198宛先 198宛先
順次同報送信 250宛先
(電話帳200宛先+手入力50宛先)
250宛先
(電話帳200宛先+手入力50宛先)
自動リダイヤル
発信元記録
ポーリング受信/送信 −/− −/−
ファクス/電話自動切替
見てから送信
見てから印刷
受信ファクスを メール送信
共有フォルダ保存 −(Dropbox/Evernote/googleドライブ対応) −(Dropbox/Evernote/googleドライブ対応)
外部メモリー保存
PCファクス 送受信 送受信

 MFC-J5800CDWのファクス機能を見てみよう。画質設定から送受信原稿サイズ、ワンタッチダイヤルとアドレス帳、その他の送受信機能などはMFC-J5630CDWから変更は無い。ただし、受信ファクスの保存ページ数が200枚から400枚へとメモリーが倍増されており、ファクスの受信が多い環境でもより便利になっている。

操作パネル/インターフェース/本体サイズ
新機種
旧機種
型番 MFC-J5800CDW MFC-J5630CDW
製品画像
液晶ディスプレイ 3.5型
(角度調整可)
2.7型
(角度調整可)
操作パネル タッチパネル液晶+物理ボタン
(角度調整可)
タッチパネル液晶+物理ボタン
(角度調整可)
インターフェイス USB他 USB2.0×1 USB2.0×1
無線LAN IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
有線LAN 100BASE-TX 100BASE-TX
対応OS Windows 11/10/8.1/7 SP1
MacOS 10.15.X〜
Windows 11/10/8.1/8/7 SP1
MacOS 10.12.6〜
耐久枚数 30万枚又は7年 15万枚又は5年
外形寸法(横×奥×高) 545×436×305mm 530×398×304mm
重量 17.7kg 16.8kg
本体カラー ホワイト系
(操作パネルグレー)
ホワイト系
(操作パネルグレー)

 最後にMFC-J5800CDWの操作パネルやインタフェースなどを見てみよう。MFC-J5800CDWの操作パネルは本体前面に取り付けられ、持ち上げて角度調整が可能という点ではMFC-J5630CDWと変化がない。しかし、よく見ると色々と変更されている点が見て取れる。

操作パネル全体
MFC-J5800CDW

※写真は同液晶のMFC-J7600CDWです。ただしMFC-J5800CDWにはNFCマークはありません。
MFC-J5630CDW

※写真は同液晶のMFC-J6583CDW・実際に製品を撮影した写真です。

 まずは液晶周りから見てみると、MFC-J5800CDWではMFC-J5630CDWより液晶が2.7型から3.5型に大型化されている。また、それ以上に液晶を大きく見せているのが、液晶右の3つのボタンの配置だ。MFC-J5630CDWでは液晶外に独立して物理ボタンで搭載されていた「戻る」「ホーム」「キャンセル」の3ボタンが、タッチセンサー式ボタンとなって液晶と同じ枠内に入った事で、液晶の一部に表示されているようなデザインとなった。目の錯覚で、それらのボタンまでを液晶として見てしまうため、2.7型と3.5型という数字以上に大きくなったように見えるが、実際には上の写真での背景が白い部分だけが液晶である。また、操作パネルの配置も変更されている。MFC-J5630CDWでは液晶が中央近くに配置されていたが、MFC-J5800CDWでは左寄りとなった。そして、ボタン類を全て液晶右に集約している。MFC-J5630CDWでは液晶左にあったワンタッチダイヤルボタンが、テンキーの右へ移動している。
 操作パネル以外を見てみると、インターフェースは同等だ。対応OSに関しては、WindowsはWindows 7 SP1以降という点では変わらないが、Windows 8は非対応となった。MacOSも10.12.6以降から、10.15.x以降となり、より新しいOSのみ対応となっただけでなく、専用ドライバーが提供されなくなり、OS標準のAirPrintを利用したプリントとなった。これにより用紙厚さ設定などが利用できない他、一部の設定は本体で行う必要がでている。耐久枚数も強化され、MFC-J5630CDWの15万枚からMFC-J5800CDWでは30万枚と倍増した。これも「MAXIDRIVE」の特徴の1つだ。また、各社とも(少なくとも卓上タイプの)インクジェットプリンターではビジネス向けを中心に数万〜数十万枚に強化しているが、枚数はどれだけ増えても年数の方は5年のままであった。しかしMFC-J5800CDWでは、5年を超え7年となっている。これに伴って、有料の定額保守サービス (ブラザーサービスパック)にも7年保証が追加され、部品保有期間も7年に延長されている。
 本体サイズも変更され、MFC-J5630CDWの530×398×304mmから、MFC-J5800CDWでは545×436×305mmとやや大きくなった。ただしこれは、インクカートリッジが大型化したことにより、全面右側のカートリッジ取り付け部が右に少しと、前に大きく飛び出る事となったためだ。本体部分のサイズはほとんど変わっておらず、見た目のサイズ感は変わっていない。また、本体カラーも全体はホワイト系で操作パネル部だけがグレーという配色も変更されていない。



 MFC-J5800CDWは、MFC-J5630CDWの後継機種の様で、そうでもないという微妙な製品だ。たしかにA3プリントA4スキャンのビジネス向けの機種としては後継機種と言えるだろう。一方従来型カートリッジ方式からファーストタンク方式に変更となったことでターゲットとなるユーザーは変化している。MFC-J5630CDWは、印刷はA3やB4が必要な一方スキャンはA4で問題なく、印刷内容は文書メインというユーザー向けの機種だった。MFC-J5800CDWでは、これに「大量に印刷する」という条件が加わっている。半年でインクカートリッジを使い切る事を考えると、月に1,000枚程度の印刷が必要で、これを大きく下回るユーザーには、使い切れない量のインクを高い価格で購入する事となり、無駄が多くなる。つまりMFC-J5630CDWではA3プリントができる複合機が必要だが、サイズが小さい方が良いというテレワークや小規模オフィスにも向いていたが、MFC-J5800CDWはそういった印刷枚数が少ない場合には向かなくなってしまった。逆に、印刷枚数が多いユーザーには従来よりもさらに魅力的に映るだろう。印刷速度の大幅アップと、耐久枚数・年数のアップも、自動ノズルチェック機能や、ADFの高速化など、強化された点は、大量印刷を念頭に入れている部分が大きい。ターゲットとするユーザーはこれまでより狭くなったが、ビジネス用途で大量印刷をするユーザーには、印刷コストが大幅に安くなった事だけでも十分なのに、数々の改良点が、しかも大幅な改良がなされたことにより、非常に魅力的な製品に進化したと言えるだろう。

(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
キャノンhttp://canon.jp/


MFC-J5800CDW