小ネタ集
2022年末時点のプリンターを徹底検証
新機種と旧機種を徹底比較
(2022年5月16日公開)

表中の背景が黄色になっている項目は、旧機種・参考機種からの変更点です。なお3機種で比較している場合は、旧機種1・参考機種1からの変更点となります

新機種「PX-S730」と旧機種「PX-S740」を徹底比較する

 PX-S730はPX-S740の後継機種だ。型番の数字が下がっているが、機能的に低下したわけではない。むしろ、8年半ぶりの新機種と言うことで、様々な点で最新機種らしい進化が見られる。どのような点が変わったのか、細かく見ていこう。またPX-S730のベースとなっている複合機PX-M730Fとも比較し、単なるPX-M730Fのプリント単機能版なのかも確認してみよう。

プリント(画質)
新機種
旧機種
参考機種
型番 PX-S730 PX-S740 PX-M730F
(関連項目のみ)
製品画像
発売日 2022年10月20日 2014年4月10日 2020年10月8日
発売時の価格(税込) 18,700円 18,678円 19,800円
インク 色数 4色 4色 4色
インク構成 ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
シアン
マゼンダ
イエロー
カートリッジ構成 各色独立 各色独立 各色独立
顔料/染料系 顔料
(文書キャビネット保存400年)
顔料
(つよインク200X)
顔料
(文書キャビネット保存400年)
インク型番 IP09B(大容量)
IP09A(標準容量)
75番(大容量)
74番(標準)
IP09B(大容量)
IP09A(標準容量)
最小インクドロップサイズ 3.8pl(MSDT) 2.8pl(MSDT) 3.8pl(MSDT)
最大解像度 4800×2400dpi 4800×2400dpi 4800×2400dpi
高画質化機能 PrecisionCoreプリントヘッド
(600dpi)
PrecisionCoreプリントヘッド
(600dpi)
PrecisionCoreプリントヘッド
(600dpi)

 ビジネス向けの機種では、全色顔料を示すPXの後ろに複合機ならM、プリント単機能機ならSを付け、その後ろにグレードを表す数字を、A4プリント対応なら3桁、A3プリント対応なら4桁で表し、さらにファクス機能付きならF、エコタンク方式ならTを付けるという法則がある。また、複合機と同じ機能のプリント単機能機は基本的に同じ数字が付けられる。また、数字が大きい方が上位機種だが、今回のように後継機種の場合は数字が下がる場合がある。今回の場合、旧機種PX-S740は複合機PX-M740Fをベースにしていた。その後、PX-M740Fは上位機種のPX-M780Fと下位機種のPX-M680Fに分かれている。そして、それらを統合する形で2020年に登場したのがPX-M730Fとなる。中間的存在なので、中間の型番である「730」を名乗ったのだと思われる。そして、そのプリント単機能機版が今回のPX-S730となる。こういった経緯であるため、型番の数字が下がっても、機能的に低下したわけではない。ちなみに、販売価格はPX-S740が18,678円だったのが、PX-S730では18,700円と、ほぼ同価格と言える。新型コロナウィルスによる世界的半導体不足や製造や輸送の問題もあって、製造コストが上がり価格が上がる事が多い中、価格が上がっていないのは驚きと言える。ちなみに、複合機PX-M730Fは19,800円なので、スキャナーやコピー、ファクス機能が付いて、わずか1,100円差である。その点で言うとPX-S730の割安感は薄いともいえる。
 それでは、まず印刷画質を見てみよう。PX-S730は4色顔料インクという点はPX-S740と変わらない。ただし、インクはPX-S740では「つよインク200X」という名称が付けられており、写真の耐保存性の高さを売りにしていた。しかし、そもそも全色顔料インクという構成は、普通紙印刷に特化しており、写真の印刷画質は良いとは言えない。そのため、写真印刷が目的ではない機種に、写真の耐保存性を売りにしたインクが使われるというずれが生じていた。PX-S730では写真の耐保存性は非公表だが、代わりに文書の耐保存性をうたっており、インクの種類と合致した。具体的には、キャビネット保存で400年となっており、重要な文書などの長期保存も安心と言える。インクの変更もあって、インクカートリッジは、PX-S740では大容量が75番、標準容量が74番だったが、PX-S730ではIP09となった。IP09の後ろに色を表す文字(C/M/Y/K)が付き、大容量の場合は、その後ろに「B」、標準容量なら「A」が付く。PX-S740では大容量と標準容量で数字が異なっていて分かりにくかったが、PX-S730では同じ数字で「A」と「B」で区別する形となりわかりやすくなった。
 ちなみに画質面で言うと、最小インクドロップサイズがPX-S740の2.8plから、PX-S730では3.8plに大きくなっている。文書印刷では、写真印刷ほど最小インクドロップサイズが大きく影響せず、普通紙印刷時の印刷解像度を高めた「PrecisionCoreプリントヘッド」を採用しているのは同等であるため、文字や線などに影響を与えることはほとんど無いだろう。ただ、文書中の写真やイラスト、グラフなどのべた塗り部分に、粒状感(ドットが見えてザラザラする感じ)を感じやすくなるかもしれない。ちなみに、これらインクの種類や画質は、複合機PX-M730Fと全く同等だ。

プリント(印刷速度)
新機種
旧機種
参考機種
型番 PX-S730 PX-S740 PX-M730F
(関連項目のみ)
製品画像
ノズル数 1568ノズル 1568ノズル 1568ノズル
カラー:各256ノズル
ブラック:800ノズル
カラー:各256ノズル
ブラック:800ノズル
カラー:各256ノズル
ブラック:800ノズル
印刷速度 L判縁なし写真(メーカー公称) N/A 41秒 N/A
A4普通紙カラー(ISO基準) 11.0ipm 10.0ipm 11.0ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準) 21.0ipm 19.0ipm 21.0ipm
ファーストプリント速度 A4普通紙カラー 9.3秒 12.0秒 9.3秒
A4普通紙モノクロ 6.3秒 8.0秒 6.3秒

 続いて印刷速度を見てみよう。PX-S740からノズル数が変化していないため、大幅な印刷速度アップは望めない。ただし、何らかの改良がなされたのか、最小インクドロップサイズ大きくなったためか分からないが、PX-S740ではカラー文書が10.0ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)から、PX-S730では11.0ipmに、モノクロ文書は19.0ipmから21.0ipmに若干ながら高速化している。また、1枚目のプリント速度であるファーストプリント速度も、カラー文書が12.0秒から9.3秒に、モノクロ文書が8.0秒から6.3秒に高速化している。1、2枚の印刷を頻繁に行うというような使い方でも高速化を実感できるだろう。ちなみに、この速度は複合機PX-M730Fと同等だ。

プリント(印刷コスト)
新機種
旧機種
参考機種
型番 PX-S730 PX-S740 PX-M730F
(関連項目のみ)
製品画像
印刷コスト
(税込)
L判縁なし写真 N/A N/A
(大容量:25.2円?)
N/A
A4カラー文書 大容量:10.5円 大容量:10.3円 大容量:10.5円
A4モノクロ文書 大容量:3.6円 大容量:3.5円 大容量:3.6円
インク1本の印刷枚数
(カラー文書)
ブラック 大容量:1,100ページ
標準:350ページ
大容量:1,500ページ
標準:350ページ
大容量:1,100ページ
標準:350ページ
カラー 大容量:600ページ
標準:300ページ
大容量:730ページ
標準:300ページ
大容量:600ページ
標準:300ページ
インク1本の価格
(税込)
ブラック 大容量:4,103円
標準:1,848円
大容量:4,598円
標準:1,463円
大容量:4,103円
標準:1,848円
カラー 大容量:各1,331円
標準:各968円
大容量:各1,738円
標準:各979円
大容量:各1,331円
標準:各968円

 続いて印刷コストを見てみよう。PX-S730の印刷コストは、カラー文書が10.5円、モノクロ文書が3.6円となっている。これはPX-S740の10.3円と3.5円とほぼ同等となっている。0.2円又は0.1円の差はあるが、1万枚印刷しても2,000円又は1,000円の差なので、気にするほどではないだろう。ただ、印刷可能枚数に関しては少々注意が必要だ。PX-S730では大容量インクカートリッジの場合、A4カラー文書を印刷すると、ブラックインクは1,100枚、カラーインクは600枚印刷が出来る。しかしPX-S740ではそれぞれ1,500枚と730枚となっている。つまり、インク交換の頻度が上がることとなる。印刷コストがほぼ同等と言うことから分かるように、印刷枚数が少なくなった分、インクカートリッジ自体の価格は安くなっているので、メリットになる場合とデメリットになる場合がある。つまり、印刷枚数がそれほど多くなく、最後まで使い切れない内に使用期限を越えてしまい、目詰まりしやすくなるなどで交換していたと言うユーザーは、使い切りやすくなるし、使い切れなくてもインクカートリッジの価格が下がった分だけお得と言える。一方、印刷枚数が多いユーザーは、交換の手間が増えるだけでなく、予備のインクカートリッジのスペースも多くなるかもしれない。ちなみに、標準容量カートリッジの場合は、PX-S730とPX-S740では印刷可能枚数に違いは無い。また、これらの点は複合機PX-M730Fと同等だ。

プリント(給紙・排紙関連)
新機種
旧機種
参考機種
型番 PX-S730 PX-S740 PX-M730F
(関連項目のみ)
製品画像
対応用紙サイズ 定型用紙 L判〜A4 L判〜A4 L判〜A4
長尺用紙 長さ1,200mmまで 長さ1,200mmまで 長さ1,200mmまで
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
○手差し
(1枚/1枚/1枚)
前面 【カセット】
(250枚/65枚/50枚)
【カセット】
(250枚/50枚/20枚)
【カセット】
(250枚/65枚/50枚)
その他
排紙トレイ自動伸縮
用紙種類・サイズ登録 ○(カセット収納連動) ○(カセット収納連動) ○(カセット収納連動)
用紙幅チェック機能 ○(印刷時) ○(印刷時) ○(印刷時)

 続いて、PX-S730の給紙、排紙機能を比較してみよう。対応用紙サイズや、長尺用紙の最大長、印刷時の用紙幅チェック機能などは同等だ。基本は前面給紙カセットからという点も変わらない。普通紙の場合、PX-S730は250枚までセット可能で、これもPX-S740と同等だ。ただ、ハガキは65枚セット可能で、PX-S730の50枚よりやや増えている。写真用紙も20枚から50枚に増えている。ハガキや写真用紙を多く印刷するなら便利になったと言える。一方、PX-S740には背面手差し給紙機能があった。上面後方にある小さなカバーを開けると、手差し給紙口が現れ、ここから1枚ずつの給紙が行える。通常の背面給紙のような大型のものではないため、1枚ずつ手で支えながら給紙するものだが、前面給紙カセットにセットした物と異なる用紙を1、2枚印刷する場合に入れ替えずに印刷できるというメリットがあった。また、封筒のような2重になった紙や、ラベル用紙のような剥がれやすい用紙の場合、背面給紙の方が安心感はあった。PX-S730では、この背面手差し給紙は無くなっている。ただし、前述の封筒やラベル用紙は前面給紙からで問題ないことになっているため、いざという時の保険がなくなった程度に考えておけば良いだろう。これらの点も複合機PX-M730Fと同等だ。

プリント(付加機能)
新機種
旧機種
参考機種
型番 PX-S730 PX-S740 PX-M730F
(関連項目のみ)
製品画像
自動両面印刷 対応/非対応
対応用紙 普通紙 普通紙 普通紙
対応サイズ A4〜B5
レター
A4〜B5
レター
A4〜B5
レター
自動両面
印刷速度
A4カラー文書 7.0ipm 6.3ipm 7.0ipm
A4モノクロ文書 12.0ipm 9.2ipm 12.0ipm
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能 ○(オートフォトファイン!EX) ○(オートフォトファイン!EX) ○(オートフォトファイン!EX)
特定インク切れ時印刷 ○(黒だけでモード・5日間のみ) ○(黒だけでモード・5日間のみ) ○(黒だけでモード・5日間のみ)
自動電源オン/オフ −/○(指定時間) −/○(指定時間) −/○(指定時間)
PictBridge対応
廃インクタンク交換 ○(メンテナンスボックス交換可) ○(メンテナンスボックス交換可) ○(メンテナンスボックス交換可)
フチなし吸収材エラー時の対応機能 ○(フチあり印刷継続可) ○(フチあり印刷継続可)

 続いてPX-S730のその他のプリント機能を比較してみよう。自動両面印刷機能やその対応用紙とサイズ、黒だけでモードや自動電源オフなどは同等だ。自動両面印刷の速度が向上しているが、これは印刷速度そのものの高速化によるものが大きいと思われる。違いがあるのはフチなし吸収材エラー時の機能だ。プリンターにはインクの吸収材が2つある。1つは廃インクタンクで、クリーニングなどの際に排出されるインクを貯めておくタンクだ。こちらに関してはメンテナンスボックスの名称で、PX-S740でもユーザーによる交換が可能だったが、PX-S730でも同じく交換が可能だ。一方、フチなし印刷時は、用紙とピッタリ同じサイズで印刷すると、用紙の微妙なズレによりフチが残ってしまうため、少し大きめに印刷し、用紙外にはみ出た分は「フチなし吸収材」に吸収させる仕組みとなっている。PX-S740では、こちらが一杯になった場合は、印刷が完全に止まってしまい修理に出して交換するしか無かったが、PX-S730では「フチなし吸収材」にインクが貯まらない「フチあり印刷」に限っては継続印刷が可能となった。とりあえず急ぐ物はフチあり印刷で印刷しておき、余裕のある時に修理に出すことが可能となった。ちなみに、これらの機能も複合機PX-M730Fと同等だ。

スマホ/クラウド対応
新機種
旧機種
参考機種
型番 PX-S730 PX-S740 PX-M730F
(関連項目のみ)
製品画像
スマートフォン連携 アプリ メーカー専用 Epson Smart Panel EPSON iPrint Epson Smart Panel
(EPSON iPrintにも対応)
AirPrint
対応端末 iOS 13.0以降
Android 8.0以降
【発売時】
iOS 5.0以降
Android 2.2以降
【現行】
iOS 13.0以降
Android 8.0以降
【発売時】
iOS 11.0以降
Android 5.0以降
【現行】
iOS 13.0以降
Android 8.0以降
スマートスピーカー対応 ○(Alexa/Googleアシスタント) ○(Alexa/Googleアシスタント) ○(Alexa/Googleアシスタント)
Wi-Fi接続支援機能 ○(QRコード読み取り(iOS)/アプリ上で選択して本体で許可(Android)) ○(QRコード読み取り(iOS)/アプリ上で選択して本体で許可(Android))
写真プリント
ドキュメントプリント ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
クラウド連携 プリント アプリ経由/本体 ○/− ○/− ○/−
オンラインストレージ ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/google classroom) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/google classroom) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/google classroom)
SNS ○(Instagram/Facebook・コメント付き可) ○(Instagram/Facebook・コメント付き可) ○(Instagram/Facebook・コメント付き可)
写真共有サイト
メールしてプリント ○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/BMP/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文) ○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/BMP/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文) ○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/BMP/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文)
LINEからプリント ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint)
リモートプリント ○(リモートプリントドライバー) ○(リモートプリントドライバー) ○(リモートプリントドライバー)
スキャンしてリモートプリント

 PX-S730のスマホ、クラウド関連機能を見ていこう。対応アプリは最新のEpson Smart Panelとなり、PX-S740のEPSON iPrintとは異なるアプリとなった。これまでEPSON iPrintを使っていたユーザーは、使い勝手が変わることとなる。対応端末は、PX-S730ではiOSは13.0以降 、Androidは8.0以降となっており、PX-S740の発売時のiOS 5.0以降、Android 2.2以降と比べると、新アプリとなり、古い端末に対応しなくなったように思える。しかしEPSON iPrintも、この間に徐々に対応バージョンを上げており、現在ではiOS 13.0以降、Android 8.0以降となっているため、PX-S740でもこの対応バージョンでないと使用できない。その点ではPX-S730とPX-S740に違いはない。ちなみに複合機のPX-M730Fは、Epson Smart Panelへの移行期だったため、Epson Smart PanelとEPSON iPrintの両方に対応している。使い慣れたアプリか、最新アプリか選べたわけだが、今年発売モデルから一斉にEPSON iPrintは非対応となり、PX-S730もこれに該当する。
 PX-S730が進化した点として、Wi-Fiダイレクト接続時の接続支援機能が搭載されたことが上げられる。iOSの場合は、PX-S730の液晶に表示されるQRコードを、標準カメラアプリで読み取れば接続が完了する。Androidの場合は、アプリ上のプリンター一覧から、接続するプリンターを選択すると、PX-S730の液晶にメッセージが表示されるので「許可」を選べば接続出来る。PX-S740では手動で接続するしか無く、セキュリティーキーの入力なども必要だったが、PX-S730では不要となった。Wi-Fiルーターなどがあり、これを通じてスマートフォンとPX-S730が同じネットワーク内にあるなら、そもそもこの機能は使わないが、Wi-Fiルーターがない場合や、普段使っている人以外が一時的に使用する場合などに重宝するだろう。

操作パネル/インターフェース/本体サイズ
新機種
旧機種
参考機種
型番 PX-S730 PX-S740 PX-M730F
(関連項目のみ)
製品画像
液晶ディスプレイ 2.4型カラー
(角度調整可)
2.2型モノクロ 2.7型カラー
(角度調整可)
操作パネル 物理ボタン式
(角度調整可)
物理ボタン式 タッチパネル液晶
(角度調整可)
インターフェイス USB他 USB2.0×1 USB2.0×1 USB2.0×1
無線LAN IEEE802.11ac/a/n/g/b
5GHz対応
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11ac/a/n/g/b
5GHz対応
(Wi-Fiダイレクト対応)
有線LAN 100BASE-TX 100BASE-TX 100BASE-TX
対応OS Windows 11/10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.9.5〜
Windows 11/10/8.1/8/7/Vista/XP SP1
MacOS 10.5.8〜
Windows 11/10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
耐久枚数 10万枚 8万枚 8万枚
外形寸法(横×奥×高) 425×378×164mm 449×380×171mm 425×378×249mm
重量 5.9kg 6.1kg 8.9kg
本体カラー ホワイト ホワイト ホワイト

 最後にPX-S730の操作パネルやインタフェースなどを見てみよう。PX-S740では前面から上面に欠けて大きく面取りされた部分に液晶と操作パネルが搭載されている。斜めになっているが、固定されており角度調整はできなかった。PX-S730では、液晶と操作パネルは前面に搭載され、持ち上げることで水平近くまで角度調整が可能となっている。見やすい・操作しやすい角度に調整できるため、高い位置に置いても低い位置に置いても操作しやすい。さらに、PX-S740では2.2型でモノクロ表示の液晶だったが、PX-S730では2.4型のカラー液晶となった。PX-S740でも多少のアイコン表示などはあったが、PX-S730ではカラー化され、グラフィカルな表示になった事で、非常に分かりやすくなっている。角度調整と併せて、操作性は大幅の向上している。ちなみに、複合機PX-M730Fでは、2.7型のカラー液晶となっているだけで無く、タッチパネル操作が可能となっているため、PX-S730はこれよりは劣る事となる。とはいえ、PX-M730Fの場合はファクス機能付き複合機であるため、コピー操作やファクス操作など本体での操作が多いためと言える。PX-S730は基本的にはパソコンやスマートフォン上で操作をしてプリントする事となるため、本体での操作は、本体設定を行う場合や、インク残量確認、エラーメッセージ確認と対応、Wi-Fiの接続設定、セットした用紙の設定など限られる。2.4型カラー液晶+ボタン操作で十分と言えるだろう。
 インターフェースは、USB、無線LAN、有線LANの3通りから選べる点で、PX-S730とPX-S740は同等だ。ただしPX-S730では無線LANが強化されている。PX-S740では一般的なIEEE802.11n/g/bに対応しており、2.4GHz帯の電波を使用していた。この2.4GHz帯はBluetoothや電話の子機でも使用される他、電子レンジの影響を受けやすく、通信が不安定になる事がある。PX-S730では新たにIEEE802.11ac/aに対応し、IEEE802.11ac/n/a使用時は5GHz帯の電波を使用できるようになった。5GHz帯は無線LAN専用と言え、通信が安定する。またIEEE802.11acは従来のIEEE802.11nより通信速度が高速だ。ストリーム数やチャンネル幅などが不明なのでなんとも言えないが、1ストリームの場合、IEEE802.11nは帯域幅20MHzで72.2Mbps、40MHzで150Mpbsだが、IEEE802.11acは最低の帯域幅80MHzでも433Mbpsとなり、3〜6倍の速度になる。高速印刷が可能なので、通信速度がボトルネックになりにくくなった。
 PX-S730の対応OSはWindowsはXP以降に対応しており、引き続き幅広いOSに対応する。PX-S740ではWindows XPはSP1以降だったが、PX-S730ではSP3以降となったくらいで、マイクロソフトのサポートの終了したOSまで対応するのは安心だ。MacOSも10.9.5以降と、PX-S740の10.5.8以降と比べるとやや新しいバージョンからとなったが、それでもかなり古いバージョンまで対応している。ちなみにPX-M730FはMacOSは10.6.8以降であり、このあたりは製品の発売時期により異なっている。
 耐久枚数はPX-S730では10万枚となり、PX-S740の8万枚よりやや強化された。また複合機のPX-M730Fも8万枚なので、これよりも耐久性はやや高い。本体サイズは425×378×164mmで、横幅が24mmほど小さくなった以外はそれほどサイズは変わらない。前面給紙カセットだけが飛び出ているデザインも同じだ。複合機のPX-M730Fと比べると、横幅と奥行きは全く同じである点に、PX-M730FとPX-S730でプリンター部が共通であることが表れている。高さはスキャナ部が無い分85mm小さいため、かなり薄型に見える。



 実に8年半ぶりの新機種だが、機能は大きくは向上も低下もさせず、最新機種に共通の変更点を取り入れた様な機種と言える。つまり、画質や印刷速度、印刷コストなどには大きく手を加えず、フチなし吸収材エラー時の対応機能を搭載、スマホ用アプリを最新のものに変更し、Wi-Fiダイレクトの接続支援機能を搭載、IEEE802.11ac/a対応と5GHz帯対応という点は、他のビジネス向けの機種でも新機種に移行するタイミングで搭載される共通機能と言える。ある意味、前面に液晶と操作パネルを搭載し、角度調整できるという点も、家庭向け、ビジネス向け共通のデザインだ。本体サイズと操作性を両立させると、これに落ち着くと言うことだろう。それでも、印刷速度はやや向上し、印刷した文書の耐保存性も高まるなど、確実に使いやすくなっている。8年半ぶりで、デザインが大きく変わったわりには変更点は小さいと言えるが、価格も変動しておらず、最新機種並みにアップデートされたと考えれば悪くない。問題はほぼ同機能の複合機との価格差だ。機能面では、本体の耐久性がやや高くなり、高さが抑えられているが、液晶はやや小さくタッチパネルではないという違いがある。プリント機能だけで1,100円しか安くないのであれば、いざという時にコピーとファクス機能がある方が便利と言える。PX-S730は自体は、価格と機能を考えるとお買い得な製品と言えるため、設置場所の高さに制限があるか、絶対にプリント機能以外は使わないので余分な機能がない方が良いという人向けの製品と言えるだろう。少なくとも、古い設計のPX-S740よりはずっと良い製品である。

(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
キャノンhttp://canon.jp/


PX-S730