百合


百合をめぐる悲しいけれど美しい物語。

今から7年前のこと。
阪神大震災でひとりの少女が、家の下敷きになり亡くなった。

彼女の名前は百合ちゃんという。
ご両親が百合の花のように清楚で自立心があって個性がある
女の子になってほしい、という願いをこめて名づけたそうだ。

彼女のお別れ会の日はたくさんの白百合で埋め尽くされた。
その花を家に持ち帰った親友は、花が散った後も
捨てる気持ちになれなくて、葉っぱだけになった百合を
毎日水をとりかえ、飾り続けた。
そうしているうちにむかごがついたのだった。

驚いた親友の母親が専門家に相談し、むかごを球根にまで育て、
学校の園芸部や「百合を咲かせる会」の保護者有志が
花の世話を続けた。

そしてその百合は彼女の同級生の高校の卒業式の日に開花し
友達の旅立ちをともに見送った。
 



百合さんのことは、NHKのある番組で知りました。
そしてそれから何年もたってから、
亡くなった彼女のご遺体が
安置されていたのが、
偶然にも
震災後私がちょっとだけお手伝いに伺った
学校の救護所だったことを本で知りました。


百合 
亡き人の居場所、希望のありか
共著 河村直哉
   中北 幸 家族