安楽死と尊厳死
  1.日本の安楽死事件をみる
  2.オランダの安楽死事件
  3.オランダの安楽死法
  4.オレゴンの安楽死法

 1.日本の安楽死事件をみる
  日本では、消極的安楽死について裁判で争われてはいない。ここに示されているのはいわゆる積極的安楽死に
 ついて争われた例である。
  ◇東京地裁 嘱託殺人被告事件
   ○判決 懲役1年、執行猶予2年。
   ○事件内容
    被害者は被告人の母親である。彼女は1937年(昭和12年)脳溢血で倒れてから半身不随となり、1948年
    (昭和23年)頃に夫が彼女の同伴の願いを容れずに単身朝鮮に引き揚げた後、1949年(昭和24年)2月頃
    から病状が悪化し全身不随になる。被告人は被害者と同居をしその看病につとめていたが、ある晩帰鮮した
    父親の窮状を知り被害者に伝えたところ、彼女はひどく落胆し、「早く楽にしてくれ」、「早く殺してくれ」と被告
    人に懇願した。被告人は、帰鮮の望みも絶たれた被害者(母親)の願いを容れて、その苦悩を除くことが母親
    に対する最後の孝養であると考え、青酸カリ液を母親の口の中に入れて飲ませて死亡させた。
   ○安楽死についての弁護側の主張
    致命的かつ不治の病気に患った者が、その病気のために激烈な肉体的苦痛に悩み、死による以外にその
   苦痛を軽減または終わらせることができない場合に、その病人から明示的または推定的に殺害の嘱託がなさ
   れたとき、病人の苦痛を軽減または終息させる目的で病人を殺害することを安楽死と定義づける。その条件を
     (1)殺害行為と死の結果の間には法律上の因果関係が存在しない、
     (2)殺害行為は刑法第35条の正当防衛行為である、
     (3)殺害行為は刑法第37条の緊急避難行為である、とした。
    その上で、本件については被告人の所為は(1)、(2)、(3)のいずれにも該当するため、安楽死の行為であ
   るとした。
    つまり、(1)については、被告人の行為によって発生したのは、被害者の苦痛の軽減又は除去である。被害
   者の死という結果は不治の疾病によって生じたものであり、被告人の行為によって生じたものではないから、
   両者の間に刑法上の因果関係は存在しない。
    次に、(2)については、被告人は被害者に対し扶養の義務を有する。扶養の義務を有する者の行う安楽死は,
   医師のなす正当行為に準じ、刑法第35条の規定する場合に該当する。
    更に、(3)については、被告人が本件犯行をした当時、被害者は激しい肉体的苦痛に悩み、これを除去する
   には殺害する以外にはなかった。したがって、不治の病を宣告された生命を維持することよりも、激しい肉体的
   苦痛を除去しようとすることの方が法益があるので、被告人の行為によって生じた害は避けようとした害を超え
   ないので、被告人の行為は刑法第37条の緊急避難に当たる。
   ○裁判所の判決理由
    (1)因果関係不存在の主張について
     「他人から殺害の嘱託を受けてこれに応じ、依嘱者を殺害する意思をもってこれを実行した行為と被害者の
     死亡との間に実験則上その死亡がその行為によって生じたものと認むべき関係がある以上、法律上の因
     果関係があるといわねばならない。」とし、本件についは「被害者が他人の行為により青酸加里その他の毒
     物をその致死量以上飲まされるとき、致死の結果を生ずることは実験測上明らかである」として実験則上の
     死亡が行為によってなされたと考え、さらに「本件被害者は被告人の行為により致死量以上の青酸加里を
     飲まされた結果死亡したことは明らかである」として、被告人の行為と被害者の死亡の間に因果関係が存在
     するとしている。この結果弁護側の(1)の主張は退けられている。
    (2)正当業務行為の主張について
     「元来、刑法第35条に規定する「正当ノ業務ニ因リ為シタル行為」とは法令上形式的に権利又は義務とせら
    れる旨の規定がなくても、社会観念上正当と認められる行為を業務として行うことを謂い、かような行為は違
    法性を阻却するものである。しかし違法性を阻却さられるのはひとり業務行為に限らず、いやしくも社会通念上
    正当と認められる行為即ち正当行為であれば前者と同様に解すべきである」と正当防衛を規定する。
     弁護人の主張については、「現代医学の智識および技術の上から見て、不治又は致命的と認められる重症
    病者がその疾病のために激烈な肉体的苦痛に悩んでいる際、その重症病者に対し故意に死を惹起する行為
    が行われた場合、いかなる条件においてこれを正当行為としてその違法性を阻却するかは個々の具体的要
    件を仔細に検討してこれを決定しなければならない。」として、この種の事件については個別に判断すべきで
    って一般的な原則は存在させるべきではないとの立場に立っている。
     そこで、本件事案については、「被害者は1937年(昭和12年)12月頃脳溢血で倒れて半身不随となり、更
    に1949年(昭和24年)2月頃から症状が悪化して全身不随となり、食事のことはいうまでもなく大小便の始末
    に至るまですべて家人の手をわずらわす状態になったこと」、さらに、「被害者は死亡当時四肢に不働性縮萎
    を来たし、手足背面に浮腫を生じていたことが認められ」、また「被告人は母親が倒れた当時、遠近から医者
    を呼んで診察してもらうなどして、約3ヶ月の間医療に全力を注いだところ日増しに快くなってゆき、もつれなが
    らも口が利けるようになったが、右半身の不随はついにどうすることもできなかったこと」、そして1942年(昭
    和17年)4月頃、被告人は母親を背負って日本医科大学附属病院に連れてゆき、一週間ほど入院させて診察
    してもらったが、「半身不随は今日の医学ではどんなことをしても治すことはできない不治の病気であると診断
    されたことが認められるので、本件犯行の当時被害者が現代医学上不治と解せられる病気に罹っていたもの
    ということができる」として本件被害者は現代医学では不治の病に罹っていたことを認めている。しかし、被害
    者の本件犯行の当時の肉体的苦痛の程度については、
     ・1949年(昭和24年)4月31日 被告人が被害者の顔を拭いた時、被害者は何も言わなかった。
     ・1949年(昭和24年)5月31日 被害者は居眠りをしていた。
     ・同日                 被告人が被害者に御飯を持って行き、お茶を飲ませたが、被害者は何時
                          ものとおりであった。
     こうした供述により「被害者は本件犯行の当時その疾病により激烈な肉体的苦痛のため苦悩していたとは認
    めがたい」とし、被害者が本件犯行当時苦悩していたのはむしろ精神的なものであって、その理由は被害者が
    「待ち望んでいた帰鮮の望みが絶たれて失意落胆し死を嘱託するに至った事実により明らかである」としてい
    る。これをふまえ、「このような精神的苦痛はそれがいかに激烈であっても、疾病による肉体的苦痛が激烈で
    ない以上、精神的苦痛を取り除くため死を惹起する行為があっても、これを正当行為とすることができない。」と
    した。
    (3)緊急避難行為の主張について
     「元来、刑法第37条第1項にいわゆる緊急避難は自己又は他人の生命、身体、自由若しくは財産について
    の法益に現在の危難が存する場合に、これを避けるためにやむを得ず他人の法益を侵害するときにおける法
    的現象について規定したものであるが、これらの両法益が同一の人に属する場合にもこれを認めることができ
    ると解するべきである」と規定した。そして、本件事案についてては、被害者は1937年(昭和12年)12月頃脳
    溢血で倒れて以来約11年半の久しきにわたり半身不随のまま病臥しており、特に1949年(昭和24年)2月
    頃から病状が悪化して全身不随となりその状態が本件犯行の当時にまで及んでいたことを認め、犯行の当時
    被害者の身体に対して危難が現存していたことが肯定した。しかし、本件犯行当時、被害者は激烈な肉体的
    苦痛ではなく、精神的苦痛によって苦悩していたと考え、この場合には死による以外苦痛を軽減又は終わらせ
    ることができないとは考えられないから、被告人の行為は緊急避難にあたらないとした。
  
  ◇名古屋高裁 尊属殺人被告事件
   ○判決 懲役1年、執行猶予3年。
   ○事件内容
    被害者は被告人の父親(当時52歳)である。被害者は1951年(昭和26年)に脳溢血で倒れ、1954年(昭和
    29年)から全身不随になっていた。さらに、61年(昭和36年)頃から悪化し、上下肢は曲げたままで、少しで
    も動かすと激痛を訴えるようになり、その上しばしば「しゃっくり」の発作におそわれ、息も絶えんばかりに悶え
    苦しみ、「早く死にたい」「殺してくれ」などと叫ぶようになった。被告人は、そのような父の言語に絶した苦悶の
    有様を見るにつけ、子として堪えられない気持ちになり、また医師からももはや施す術もない旨を告げられたの
    で、むしろその願いを容れ病苦から免れさせることこそ、父親に対する最後の孝養であると考え、その依頼に
    応じて同人を殺害しようと決意し、牛乳に自家用の使い残りの有機燐殺虫剤少量を混入した上、もとどおり詮を
    して小屋におき、事情を知らない母をして父親に牛乳を飲ませて殺害した。
   ○安楽死の要件について
    (1)病者が現代医学の知識と技術からみて不治の病に冒され、しかもその死が目前に迫っていること、
    (2)病者の苦痛が甚だしく、何人も真にこれを見るに忍びない程度のものなること、
    (3)もっぱら病者の死苦の緩和の目的でなされたこと、
    (4)病者の意識がなお明瞭であって意思を表明できる場合には、本人の真摯な承諾のあること、
    (5)医師の手によることを本則とし、これにより得ない場合には医師によりえないと首肯するに足る特別な事
      情があること、
    (6)その方法が倫理的にも妥当なものとして認容しうるものなること。
     これらの要件がすべて充たされるのでなければ、安楽死としてその行為の違法性までも否定しうるものでな
    いと解すべきとした。
   ○本件における安楽死の検討
    被害者は不治の病に冒され死が迫っていたこと、身体を動かすたびに激痛に襲われていたこと、、また、しゃっ
   くりの発作で死にまさる苦しみに喘いでおり、真に見るに忍びなかったことなどから、(1)、(2)、(3)の要件は満
   たしている。 しかし、医師の手によることを得なかったなんら首肯するに足る特別の事情が認められないことと、
   その手段として採られたのが病人に飲ませる牛乳に有機燐殺虫剤を混入するというような、倫理的に認容しが
   たい方法であることの2点において、(5)、(6)の要件を欠く。このため、本件は安楽死として違法性を阻却する
   に足るものでないと判決した。(4)については、地裁段階の判決では被害者の発した「殺してくれ」「早く楽にして
   くれ」という言葉は真意でないとしたが、この判決ではその誤りを指摘し、被害者が「いよいよ死期が迫ったことを
   自覚し、どうせ助からぬものなら、こんなひどい苦しみを続けているよりは、一刻もはやく死んで楽になりたいと希
   っていたことを推察するに難くない」として、前述した言葉は被害者の「自由なそして真意にいでたものと認める
   のが相当」であるとした。
   ◎いわゆる「名古屋高裁の六要件」と呼ばれるものである。

 ◇鹿児島地裁 嘱託殺人被告事件
   ○判決 懲役1年、執行猶予3年。
   ○事件内容
    事件発生は1975年(昭和50年)7月24日。
    被害者は被告人の妻(50歳)である。被害者は長年肺結核や自律神経失調症を患い療養生活を送ってきた。
   被告人は被害者と同居して看護にあたってきたが、病状が一向に快方に向かわず、不眠や全身の疼痛に苦悶
   して自殺を試みたり、「苦しいから殺してくれ」などと泣いて訴えたりしていた被害者に執拗に哀願され、これ以上
   苦しませるに忍びないとの気持ちに駆られて、自分が手を下して罪に陥るのと引き換えに被害者の痛みを取り 
   除いてやることこそ妻に対する最後の愛情であると考え、死を覚悟して睡眠薬を飲み「南無観世音菩薩」などと 
   唱和しながら眠りについた被害者を、枕元のタオル、ビニール製物干しロープを用いて絞殺した。       
   ○判決理由
    「不眠や全身の疼痛にとりつかれ自殺を試みたりしていた妻を励まし自らも渾身的に看病の手を尽くしてきた被
   告人としては、耐え難い苦痛を訴え執拗に死を求める妻の姿を見るにつけ、これ以上妻を苦しませるに忍びない
   との気持ちに駆られ、むしろ妻に対する愛情ゆえに、ついにその願いを容れて判示のように妻を殺害したもので
   あって、その心情は十分に察しうるところではある」と被告人の心情は認めたが、妻の病は現代の医学上必ずし
   も不治の病というわけのものではなく、その程度も死期が目前に迫っているというような状況にあったわけでは 
   なく、また殺害の方法としても、医学的処置によることがないので、被告人の行為は社会的相当性を欠くため違
   法である。  
   ◎「名古屋高裁六要件」に照らしても安楽死にあたらないと思われると考えられた。

 ◇神戸地裁 殺人被告事件
  ○判決 懲役1年、執行猶予3年。
  ○事件内容
   事件発生は1975年(昭和50年)7月31日。
   被害者は被告人の母親(67歳)である。
   被害者は1971年(昭和46年)に高血圧で倒れて左半身不随になって以来通院治療を受けていた。被告人は
    被害者と二人暮らしをして生計を支えながらその看護にあたっていた。被害者は1975年(昭和50年)7月18
   日頃から被害者が激しいけいれん発作をたびたび起こすようになり、被告人に対して「もう長生きできんわ」等と
   死期を自覚しているかのような言葉をはくようになった。被告人は思案の末、どうせ病気が不治であるなら一層
   のこと自分が被害者を楽にしてやろうと決心し、犯行当1日もけいれん発作を起こして終日いびきをかいて眠り続
   けていた被害者が再び発作を起こしたところを、電気コタツのコードで絞殺した。
  ○裁判所の判断
   被害者は解剖の結果脳に高度の動脈硬化症があり、脳の萎縮がみられ、また右大脳半球に数年前に生じたと
  思われる軟化病巣のあったことが認めらた。このことから被害者の病気が「現代医学の知識と技術からみて治癒
  することのできないものであったことが一応認められる」と被害者の病気は現代医学では不治の病であることは認
  めた。しかし、被害者は1971年(昭和46年)に倒れた後も日常生活にさほど支障がなく、1975年(昭和50年)7
  月18日頃に発作を起こした後も別段危篤状態に陥ったわけではない。また被告人自身も被害者の死が「近い将
  来訪れるであろうとは考えていたとしても、目前に迫っているとまでは思っていなかったことが認められる」として
  死期が目前に迫っていたことは否定した。したがって名古屋六要件の(1)にはあたらないとしている。
   次に、被害者が病気によってどの程度の肉体的苦痛を感じていたかの点についてみると、1971年(昭和50年)
  7月18日ころ「はじめてけいれん発作を起こした後、1日数回の発作が起こり、発作の時間は3分ないし10分位で
  あり、発作の態様は、「仰向けに寝たまま、手を天井に向かって伸ばして体を海老のように曲げ手足を激しく振りけ
  いれん」するという状態であり、発作中の苦痛が相当程度のものであったことがうかがわれ」たとし、被告人が被 
  害者の「発作で苦しむ様を見るに忍びないと思った心情も理解できなくはない」と一定の理解は示したが、「けいれ
  ん発作の時間も比較的短」いこと、「最初にけいれんを伴う発作が起こって苦しむようになってから本件犯行に至
  るまでの期間も約2週間とそれほど長いとはいえ」ないこと、「発作のおさまっている時は特に肉体的苦痛を感じる
  状態ではな」いことさらに「犯行前日の朝までは時々起きて自分の身の廻りのことぐらいしていたこと」や「本件犯
  行時においては、時々発作を伴いながらも眠り続けていたものであること」などを考慮して、本件犯行当時におけ
  る被害者の「肉体的苦痛が死にまさるほどのもの、何人とも見るに忍びないほどの激しいものであったとは認めら
  れない」と名古屋高裁判決の(2)についても考えられないとした。
   さらに、被害者は「本件犯行当日の朝発作を起こして眠りに落ちるまで、発作を起こしている間を除いては意識
  が明瞭であり自己の意思を表示しうる状態にあった」と自己の意思表示ができる状態であったとし、一方、被害者
  自身が「苦痛に耐えかねて、被告人に対して自分を殺してくれるように嘱託し、または死ぬことを積極的に希望し
  たという事実はなんら認められない」として名古屋高裁判決の(4)についても認められないとした。
   以上の3要件が満たされていない点を考慮して安楽死については認められないと結論づけ、その他名古屋高裁
  判決が示した要件については、「本件においてはもはやこの点について論ずるまでもなく」として、「いわゆる安楽
  死として行為の違法性を阻却される場合に該当しなことは疑いをいれないところである」とした。

 ◇大阪地裁嘱託殺人事件
  ○判決 懲役1年、執行猶予3年。
  ○事件内容
   事件発生は1977年(昭和52年)7月6日。
   被害者は被告人の妻(当時65歳)である。
   被害者は末期状態の胃がんで入院中であったが、次第に容態が悪化し、激痛を訴えるようになった。被告人は
  病院に泊まりこんで被害者を看護していたが、被害者は自らがんで余命いくばくもないことを知るようになったらし
  く、連日のように「助からないのだから早く殺してくれ」と被告人に哀訴泣願したり、治療に抵抗を示したり、自殺を
  試みるなどした。被告人は、医師に対し、妻を楽にしてくれるよう依頼したが、あと一週間位だから我慢するように
  さとされ、その翌日も再び自殺を企図した妻を阻止して元気づけたが、かえって妻からにらまれたため、病苦か逃
  れさせるため、妻がためらわぬ限り、その願いを受け容れて殺害しようと考えるに至り、刺身包丁を購入してこれを
  横になっている妻に示したところ、妻がこれを左胸に持っていくので、遂にその決意を固め刺殺した。
  ○裁判所の判断
   本件について、正当行為としてのいわゆる安楽死とは認められないと判断している。その理由として、医師の手
  によっていないことがあげられている。この点を判例は「刑法35条の正当行為に当たる、いわゆる安楽死が考え
  られるとするならば、名古屋高等裁判所昭和37年12月12日判決の指摘するように、それは、原則として、医師
  の手によらなければならないと考える。医師以外の者にそれを許すとしたら、濫用の危険は甚だ大きいといわなけ
  ればならないから、原則として、医師の手によるべきである。しかして、例外的に、医師の手によることができない
  特段の事情があれば、医師の資格がない者が行っても、認められる場合もありうると思われる。」とし、医師の資
  格のない者が行う場合も特段の事情についても、被害者は「病院に入院中で、医師の医療行為を受けていたもの
  であるから、医師の手によることができない特段の事情はなかったというべきである。」としてる。また、医師が「不
  治の病及び死期切迫を確認しながら安楽死の頼みを拒否している場合であっても」それは特段の事情に当たると
  いうことはできないと考えられている。
   更に、安楽死の実行方法に言及し、倫理的にも妥当なものは考えられないとする。すなわち、「単に、死にゆく者
  の苦痛が少なければそれで足りるものとは思わない」とし、被告人が刺身包丁で胸を2回突き刺している点につい
  て、「このような、刃物を用いた殺害方法が果たして倫理的に妥当なものといえるものか甚だ疑問であ」ると考え
  ている。以上の2点から正当行為に当たらないと判断している。
   また、緊急避難ないし過剰避難についても否定している。「刑法37条1項に照らすと、まず、本件において、身体
  的苦痛があり、危難が現存していることは明らかである。」として肉体的苦痛の存在は認めているが、「しかして、
  比較較量すべき両法益が同一人に帰属する場合にも緊急避難がありうると考えられる」と考察し、そこでこの事件
  については「被害者の身体的苦痛を除去するために同女の生命を奪ったというのであって、そこで比較較量すべ
  きものは、被害者の生命と被害者の身体的苦痛から免れることである。しかし、身体的苦痛は、人の生命を前提と
  して存在するものであり、この苦痛を免れるということも、生命がなくなれば同時にその存在を失うと考えられる。し
  たがって、身体的苦痛を除去するため生命を奪う場合には、保護されるべき法益は存在しなくなるのであるから、
  刑法37条1項にいう、身体に対する現存する危難を避くるためというには当たらないというべきである」として緊急
  避難も考えられないと判断している。
   更に、「本件で、仮りに、緊急避難が問題となりうるとしても、被告人として、被害者が激痛を訴えたときに、医師
  に連絡して、その激痛を緩和すべく鎮痛の処置をとってもらうことが十分期待できた筈であって、被害者の身体的
  苦痛を避けるためには被害者を殺害することが唯一の方法であったとは到底考えられない。」として緊急避難ない
  し過剰避難にはあたらないとしている。
   (3)期待可能性欠缺については、「本件において、被告人には期待可能性が存したというべきである」として,即
  ち、「被告人として、被害者の頼みを拒否し、激痛に苦しむ同女を見守っていくことが相当容易でないことは十分理
  解できる」と被告人の心情に一定の理解を示しながらも、しかし、「医師からもさとされているとおり、あと一週間位
  の我慢であったと思われ、鎮痛、鎮静、催眠などの薬効がなかったわけではなく、被告人に対し、被害者を殺害す
  る以外の、他の適法行為に出ることを期待できなかったものとは認められない」として期待可能性欠缺が存したと
  する。

 ◇高知地裁 嘱託殺人事件
  ○判決 懲役3年、執行猶予1年。
  ○事件内容
   事件発生は1990年(平成2年3月16日)である。
   被害者は被告人の妻である。
   被告人の妻は1985年(昭和60年)に軟骨肉腫を患い、数年来入退院を繰り返していたが、90年1月退院後は
  自宅療養していたが、痛みがひどく、しばしば「死にたい」ともらすようになり、「排ガス心中」なども試みたりしてい
  た。事件当日も心中を企図したが果たせず、被害者は風呂場でカミソリ自殺を試みた。被告人は、被害者から「死
  にこくったき、引いて」等と殺してほしい旨哀願されてこれを承諾し、被害者のの頸部をカミソリで切ったり、傷口に
  湯をかけるなどしたが、被害者が死なないばかりか、その頸部の傷口の大きさに動転して早く死亡させようと考え、
  被害者の頸部を両手で強く締めつけを殺害した。 
  ○裁判所の判断
   まず、安楽死については、違法性がなく、判税の成立が否定されるという見解をとる。
   そこで、いわゆる安楽死に該当するための条件として
    a 病者が現代医学の知識と技術からみて救済の見込みのない不治の傷病により死期が目前に迫っているこ
     と
    b 病者の苦痛が著しく、何人も真にこれを見るに忍びない程度のものであること
    c もっぱら病者の苦痛を緩和させる目的で行われること
    d 病者の意識が明瞭であって意思を表明できる場合には、本人自身の真摯な嘱託または承諾があること
    e 医師の手によって行われるべきこと
    f 安楽死の方法がそれ自体社会通念上、相当な方法であること
    の各要件をすべて具備することが必要であると解すべきであると主張している。
   これを、本件について見るに、前記e及びfの各要件が充足されていないものである。弁護人は、この点につき
  これらを欠く場合にも安楽死を認めるべきである旨主張した。
   しかしながら、判決は「もともと生命の尊厳は絶対的なものであって、これを損なう行為が社会的相当性を具備し
  てその違法性が阻却されるのは、きわめて例外的な場合に限られると解するべきであろう。」とし、そうだとすると「
  安楽死の認められるべき場合の要件についても、やはり厳格に全要件を満たした場合にのみ認められるべきもの
  と解すべきである。」とした。
   そうしたわけで、この点についての弁護人の主張は採用されなかった。
   つぎに、期待可能性について考察している。
   期待可能性について「期待可能性とは、行為の当時における具体的事情のもとにおいて、行為者のその違法行
  為に出ないで他の適法行為をなしえたであろうと期待しうることをいうものである。そして責任要素としての「故意」
  あるいは「過失」の内容を為す要件であると解され、すなわち期待可能性がない場合には、「故意」も「過失」も認
  められないから、犯罪が不成立となるものである。」と定義している。
   そこで、本件においては、「被告人が被害者の生前、その看病などに精魂を傾けていた事情は十分窺うことがで
  き、その夫婦愛は広く、かつ、深いものであったと認められる。」として被告人の立場にも理解を示している。
  しかしながら、被害者の「軟骨肉腫の末期症状」のような不治の疾病で著しい苦痛を伴うような場合には、医師に
  より、例えばモルヒネなどの麻薬を使用するなどして、その苦痛を緩和することも現代の医学において承認されて
  おり、心中することや患者が自殺するのに手助けをする前にとるべき方法(再度入院し、患者の苦痛をやわらげる
  ための医師の治療行為を受けることなど)を、なお期待できる余地があり、従って被告人の本件行為に期待可能
  性がなかったものとはいえないと結論づけている。

 ◇横浜地裁 殺人被告事件
  ○判決 懲役2年、執行猶予2年。
  ○事件内容
   事件発生は1991年4月13日。
   被害者は東海大学付属病院に入院していた患者(当時58歳)で、被告人は同病院の勤務医である。
   被害者は多発性骨髄腫(現代医学では不治の病とされている発症原因不明のがんの一種)の確実診断を受け
  て、ほぼ5ヶ月前から同病院に再入院していた。被告人は彼を担当していたが、といっても事件発生当月に同病
  院の勤務医として着任したばかりであり、実質的な診察に当たったのは、被害者の症状が急激に悪化して末期状
  態になった、事件当日の6日前であった。
   被害者の長男の意向により、患者本人にも、また、その妻にも病名は告知されていなかったが、妻は後のこれを
  知るに至っている。
   被告人は、被害者が苦しそうな呼吸をしている様子を見た妻と長男から、「やるだけのことはやったから早く家に
  連れて帰りたい。苦しみから解放して楽にしてやってほしい」などと繰り返し迫られ、まず点滴やフォーリーカーテル
  を外すなど治療行為の中止を行ったが、数時間しても苦しそうな呼吸がおさまらなかったため、長男に重ねて強く
  要請され、死期を早めるおそれがあるかもしれないということを認識しつつ、呼吸抑制作用のある鎮静剤および抗
  精神薬を通常量を超えて、また通常を超える速度で続けて静脈注射した。しかし、それでもなお苦しそうな呼吸が
  おさまらないことに立腹した長男から、すぐに息を引き取らせるようにしてほしいと強く要請されて殺意をもって、徐
  脈、一過性心停止等の副作用のある不整脈治療剤である塩酸ペラパミル製剤の通常の2倍の使用量を患者の左
  腕に静脈注射をし、患者の脈拍等に変化もみられなかったことから、続いて、心臓伝道障害の副作用があり、希 
  釈しないで使用すれば心停止を引き起こす作用のある塩化カリウム製剤を、希釈することなく患者の左腕に静脈
  注射をし、患者を急性高カリウム血症に基づく心停止により死亡させた。
   ○判決内容
    5つの内容に分かれて述べられている。
    1.はじめに
     ・医学の進歩は様々な病気を克服してきた。
     ・しかしなお、現代医学の知識と技術をもってしても治癒不可能な病気が存在する。
     ・こうした病気に冒された患者が、治療を継続しても間近に死を迎えざるを得なくなりながら、医学の進歩によ
     って延命治療がされ、直る見込みのないまま、苦しみながら命を長らえる事態が出現した。
     ・こうした医療のあり方が、患者の自己決定権(病気への対応については患者自身が決定すること)の思想
     が高まり、生命の質(QOL)を問う考えが出、末期医療のあり方が問題とされるようになった。
     ・延命治療の進歩・普及により、尊厳死・自然死の思想が広まり、安楽死についても新たな思潮が生まれた。
     ・本件は患者が現代医療では知立不可能ながんの一種である多発性骨髄腫に冒され、末期状態にあった。
     ・家族からの要望により治療行為の中止が行われ、続いて苦痛緩和の措置がとられ、さらに苦痛から免れさ
     せるために生命短縮の措置が取られた。
     ・医療従事者が、本件のような措置をとることの選択を迫られる場面は、少なからずある。そこで本件は、末
     期医療の法的な限界を考えさせる。
    2.治療行為の中止の要件について
     ・治療行為の中止は、意味のない治療を打ち切って人間としての尊厳性を保って自然な死を迎えたいという、
     患者の自己決定権の理論と、そうした意味のない治療までを行うことはもはや義務ではないという医師の治
     療義務の限界を根拠に、一定の要件の下に許容されると考えられる。
      一 患者が治癒不可能な病気に冒され、回復の見込みがなく死が避けられない末期状態にあることが、ま
       ず必要である。
       ・治療の中止が患者の自己決定権に由来するとはいえ、その権利は、死そのものを選ぶ権利、死ぬ権利
       を認めたわけではなく、死の迎え方ないし死に至る過程についての選択権を認めたに過ぎないと考えられ
       また、治癒不可能な病気とはいえ治療義務の限界を安易に容認することはできない。
       ・死の回避不可能な状態に至ったか否かは、複数の医師による反復診断によることが望ましい。
      二 治療行為の中止を求める患者の意思表示が存在し、それは治療行為の中止を行う時点で存在するこ
       とが必要である。
       ・中止が具体的に検討される時点で、患者自身の明確な意思表示が存在することはが望ましいとともに、
       その意思表示は患者が自己の病状や治療内容、将来予想される事態について、十分な情報を得て正確
       に認識し、真摯な持続的な考慮に基づいて行われることが必要である。したがって、病名告知いわゆるイ
       ンフォームド・コンセントの重要性が指摘される。
       ・中止を検討する段階で患者の明確な意思表示が存在しないときには、患者の推定的意思によることを
       是認してもよいと考える。
       ・患者自身の事前の意思表示がある場合は、それが治療行為の中止が検討される段階での患者の推定
       的意思を認定するのに有力な証拠となる。
       ・事前の意思表示も、中止が検討されている段階とあまりにかけ離れた時点でなされたものだるとか、そ
       の内容が漠然としたものに過ぎないときには、事前の意思表示がないと同様、家族の意思表示により補
       って患者の推定的意思の認定を行う必要がある。
       ・患者の事前の意思表示が何ら存在しない場合の対応については、
        1.医療現場での現実 
        2.今日国民の大多数の人が延命医療の中止を容認する意見を有していながら、具体的には患者の実
         際の意思表示がある場合が圧倒的に少ないという現実間のギャップがあること
        3.具体的に治療をを中止すべきか否かについては、医師による医学的観点からの適正さの判断がなさ
         れ、家族の意思表示があったからといって全ての措置が中止されるわけではないこと
        4.患者の過去の日常生活上の断片的あるいはエピソード的言動から患者の推定的意思を探ろうとする
         よりも、むしろ家族の意思表示による方が、はるかに治療行為の中止を検討する段階での患者の意思
         をすいていできるのではないかと思われる
        以上の考慮により、家族の意思表示から患者の意思を推定することが許されると考える。
       ・家族の意思表示から患者の意思を推定する条件
        1.家族が患者の性格、価値観、人生観等について十分に知り、その意思を適確に推定しうる立場にあ
         ること
        2.患者の病状、治療内容、予後等について、十分な情報と適確な認識をもっていること
        3.患者の立場に立った上での真摯な考慮に基づいた意思表示であること
      三 治療行為の中止となる措置は、薬物投与、人工透析など、疾病を治療するための治療措置及び対症療
       法である治療措置、さらには生命維持のための治療措置など、すべてが対象となると考えられる。
        どのような措置を何時どの時点で中止するかは、死期の切迫の程度、当該措置の中止による死期への
       影響の程度等を考慮して、医学的にもはや無意味であるとの適正さを判断し、自然の死を迎えさせるとい
       う目的に沿って決定されるべきである。
     3 安楽死の要件について
      一 まず、患者に耐えがたい激しい肉体的苦痛が存在することが必要である。
        苦痛の存在は現に存在するものだけでなく、生じることが確実に予想される場合も含まれる。
        精神的苦痛が末期患者の大きな負担になり、それにより死を願望することもあり得ることは否定できな
       いが、現段階では肉体的苦痛のみに限られるべきであると解すべきとする。
        精神的苦痛は、その有無、程度の評価が一方的な主観的訴えに頼らざるを得ず、客観的な症状として
       現れる肉体的苦痛に比して、生命の短縮の可否を考える前提とするのは、自殺への容認につながり、生
       命の軽視への危険な坂道へと発展しかねない。このため現段階では精神的苦痛は除かれるべきである
       とと解される。
      二 患者について死が避けられず、かつ死期が迫っていることが必要である。
        苦痛の除去・緩和の利益と生命短縮の不利益の均衡からして、死が避けられず、死期が切迫している
       状況ではじめて、苦痛を除去・緩和するための死をもたらす措置の許容性が問題となり得るといえる。
      三 患者の意思表示が必要
        患者の自己決定権の理論が、安楽死を許容する一つの根拠であるから、安楽死のためには患者の意
       思表示が必要である。
      四 安楽死の方法について
       消極的安楽死・・・延命治療を中止して死期を早める不作為型
       間接的安楽死・・・苦痛を除去・緩和するための措置をとるが、それが同時に死期を早める可能性をもつ
       積極的安楽死・・・苦痛から免れさせるために意図的積極的に死を招く措置をとる
       消極的安楽死は、治療行為の中止の範疇に入る行為であるので、その許容性を考えれば足りる。
       間接的安楽死
         主目的が苦痛の除去・緩和にある医学的適正性をもった治療行為の範囲内の行為とみなしえること
         たとえ生命の短縮の危険があったとしても苦痛の除去を選択するという患者の自己決定権を根拠に許
         容される。
       積極的安楽死
         末期医療の実際において医師が苦痛か死かの積極的安楽死の選択を迫られる場合は唐突に繰るの
        ではなく、末期患者に対してはその苦痛の除去・緩和のために種々の医療手段を講じ、こうした様々な
        手段を講じてもなお耐えがたい苦痛を除去することができずに、最終的な方法として積極的安楽死を選
        ぶと考えられる。
         患者の自己決定権としての意思表示は、積極的安楽死を行う時点での明示の意思表示が要求され、
        推定的意思では足りないというべき。
      安楽死許容条件
       (1)患者が耐えがたい肉体的苦痛に苦しんでいること
       (2)患者は死が避けられず、その死期が迫っていること
       (3)患者の肉体的苦痛を除去・緩和するために方法を尽くし他に代替手段がないこと
       (4)生命の短縮を承諾する患者の明示の意思表示があること

 2.オランダの安楽死事件
 ◇アルクマール事件

  
○事件内容
   被害者(95歳、女性)は、1976年から彼女のホームドクターであった被告人に対して、何回も医学的に生命を
  絶ってくれるか尋ね、1980年4月(94歳のとき)には、書面による安楽死の意思表示を行っていた。被害者はま
  すます生命を絶つことを強く望むようになり、身体も目に見えて衰弱した。1982年7月16日午前11時ごろ、被告
  人は被害者、被害者の息子夫婦、被告人のアシスタントの医師と話し合い、被害者の直ちに死にたいという希望
  を再度確認したうえで、安楽死させた。このことを当日5時30分に捜査機関に報告した。
  ○判決
   緊急避難を認めて無罪となっている。
 ◇フローニンゲン事件
  ○事件内容
   医師である被告人は、多発性硬化症を病み、生きる希望を失っていた友人に、数ヶ月前から執拗に幾度も安楽
  死を依頼されていた。これに応じる決心をした被告人は、1982年8月5日午前2時半友人を安楽死させた。
 ◇シャボット医師事件
  ○事件内容
   被害者は22歳で結婚し二児をもうけたが、夫婦関係は悪かった。1986年には長男が自殺し、被害者も自殺を
  望むようになり、精神科にかかっていた。1990年2月に正式に離婚したが、その年の12月に次男が交通事故に
  遭い、その時見つかった悪性腫瘍により半年後に死亡した。この日の晩に被害者は自殺を図ったが未遂に終わっ
  た。被害者はオランダ自発的安楽死協会に届け出て被告人を紹介された。被告人は、1991年8月2日から9月7
  日の間およそ24時間にわたって被害者と話し合い、その期間にのべ7人の専門家に相談した。9月28日被告人
  と被害者のホームドクターにより安楽死が実行された。 

3.オランダの安楽死法

  第1章 定義
   第1条 この法律の目的のために、以下の定義をてきようすることとする。
    a. 大臣:司法大臣と健康、福祉およびスポーツ担当大臣
    b. 自殺幇助: 故意に他人の自殺を助けることまたは他人に刑法第294条第2項第2文に適用されている
       行為のための手段を与えること
    c. 主治医: 通告に従って、要請による生命の終結をする医師もしくは自殺を幇助する医師
    d. 自営の医師: 要請により命を終わらせるかもしくは自殺を幇助する主治医の意図について相談にのる
       医師
    e. ケアプロバイダー: 民法第7編の第446条だい1節に関連した人々
    f. 委員会: 第3条に関連した地域の検討委員会
    g. 地域調査官: 公的健康監督部門に健康ケア管轄区域で雇用された地域調査官
  
  第2章 正当なケア基準
   第2条 
    1 刑法第293条第2項に関連した正統なケア基準に従うために、主治医は以下のことをしなければなら
      ない
     a. 患者が要請を自発的にかつ注意深く熟考したことを満たしている 
     b. 患者の苦痛が耐え難いものであり、改善の見通しがないこと
     c. 患者に状況と見通しが知らされていること
     d. 患者とともに患者の状態を考慮に入れた合理性のある残された選択肢がないという結論に達してて
        いること
     e. 患者を診察しa.からd.までの正当なケア基準に関して書面を書いている少なくとも他の1人以上の
        医師と相談していること
     f.  相当なケアと配慮により患者の生命を終わらせるかまたは自殺を幇助すること
    2 患者がもはや自分の意思を示すことができない16歳またはそれ以上である場合、この状態になる以前
      になされた書面による生命を終わらせることの供述書をその人自身の利益に分別ある判断とみなすこと
      ができ、医師はその要請に従って差し使えない。第1項に関連する正当なケア基準には小さな違いを考
      慮に入れて適用するものとする。
    3 患者が16歳から18歳の未青年で自分自身の利益に理性的に判断できるとみなされる場合、患者に対
      して責任を持つ親またはその他の後見人が相談した後に、主治医は患者によってなされた生命の終結
      もしくは自殺の幇助への要請に従うことができる。
    4 患者が12歳から16歳までの未成年で自分自身の利益に理性的に判断できるとみなされる場合、患者
      に対して責任を持つ親またはその他の後見人から生命を終わらせることや自殺を幇助することに同意を
      得られた場合に主治医は患者の要請に従うことができる。第2条は小さな違いを考慮に入れて適用する。
 
  第3章 生命の終結の要請と自殺幇助のための地域検討委員会
   第3条 
    1 刑法第293条第2項、およびだい294条第2項第2文に関連して、要請により生命を終わらせることまた
     は自殺幇助をすることを報告する地域委員会を存在させなければならない。
    2 委員会は1人の法律専門家を委員長とし、1人の医師と1人の倫理もしくは道徳の専門家を含む、奇数の
     委員で構成されなければならない。委員会はだい1文に言及されている範囲で交替する委員から構成され
     なければならない。

   第4条
    1 委員長、委員、補助委員は大臣によって、6年間の任期で任命されなければならない。彼らは6年の
     任期の後1度だけ再任されることができる。
    2 委員会は事務官と一つまたはそれ以上の代理人を置かなければならず、そして彼らは法律の専門家で
     あり、大臣の任命した者でなければならない。 事務官は委員会の会合に顧問の資格で出席しなければなら
     ない。
    3 事務官は委員会に関するその仕事についてのみ責任をもって報告しなければならない。

   第5条
     委員長、委員、および補助委員はいつでも大臣に辞表を提出することができる。

   第6条
     委員長、委員、および補助委員は不適当と考えられる理由、資格をなくすべきに相当する理由または強制的
    な理由により、大臣によって免職されることがある。
 
   第7条
     委員長、委員、および補助委員は出席に対して報酬が支払われ、その他の公的資金でまかなえない限りに
     おいて、現行の法制どおりに出張および生計手当てが支払われる。
  
   第8条
    1 委員会は埋葬法第7条第2項に適用されている報告に基づいて、要請による命の終結と自殺幇助について
     第2条に発せられている正当な基準に従ってなされたかを検討しなければならない。
    2 委員会は主治医の行為の正当性を検討するために必要であれば、口頭もしくは書面で報告書を補足する
     ことを主治医に要求できる。
    3 委員会は主治医の行為の正当性を検討するために必要であれば、国内の病理学者、独立医もしくは適切
     なケア・プロバイダーから情報を得ることができる。

   第9条 
    1 委員会は第8条第1項に関連して報告書を受け取ってから6ヶ月以内に主治医に対して、その調査結果と
     そこに至った理由を通知しなければならない。
    2 委員会は行政局、検察当局、地域検査官に調査結果を通知しなければならない。
     a. 委員会の意見が、主治医が第2条に発せられた正当なケア基準に従って行動しなかったということに
       なった場合、または
     b. 埋葬法第12条の最終文に記された状況が起こった場合
     委員会は主治医にしかるべく通知しなければならない。
    3 最初の第1項で規定した期限は最高6週間だけ1回に限り伸ばすことができる。委員会はしかるべく主治医
     に対して通知しなければならない。
    4 委員会は主治医に口頭でその調査結果を説明する権限が与えられている。口頭での説明は委員会または
     主治医の要請によってなされる。

   第10条
    委員会は検事が要求することができる情報のすべてを提供するよう義務付けられている。
    (1) 第9条第2項に関連して、このケースで主治医の行為を調査した目的
    (2) 犯罪調査の目的
    委員会は主治医に対し、情報を検事に提供したことを通知しなければならない。

   第11条
    委員会は要請によって命を終わらせることまたは自殺幇助のすべての報告されたケースを記録しておく責任
    があるべきである。

   第12条
    1 委員会は調査結果を単純多数決で採決するべきである。
    2 委員会は調査結果を委員たちが投票に加わった場合にのみ採用することができる。

   第13条
    地域検討委員会の委員長は委員会の運営方法と活動について議論するために最低年2回は会合を開くべ
    きである。行政総会と公共健康監督部門の代表をこの会合に出席してくれるようを招く必要がある。

   第14条
    委員会の委員および補助委員は彼らの責務の中で得たすべての情報に関して秘密を維持する義務がある。
    ただし、その問題の中で情報を開示するという法令によって要求された場合、または情報を開示する必要性
    が彼らの責任について論理的な結論である場合を除く。

   第15条 
    特別なケースを検討する委員会の列席委員の一人は不適格なものとなり、彼の判断の公平性を危険にさらす    かもしれない事実や状況がある場合は、変更してもらうことができる。

   第16条
     どの委員あるいは補助委員あるいは事務官も主治医によって要請により命を終わらせることまたは自殺幇助     をすることの明示された意図について意見を述べることは差し控えるべきである。
 
   第17条
     1 毎年4月1日までに、委員会は大臣に前年を通しての活動の報告を提出しなければならない。
     2 第2項に関連する事項は少なくとも述べなければならない。
      a. 委員会に通知され、評価した要請により命を終わらせたものと自殺幇助したものの件数
      b. これらのケースの特質
      c. 委員会の調査結果とその理由

   第18条
    毎年、国の議会に第17条第1項に関係する報告が基礎として委員会の計画を報告すべきである。
  
   第19条
     1 大臣の推薦によって、規則は議会における命令で規定されなければならない
      a. 委員会の数とその権限
      b. 所在
     2 さらなる規則以下のものに関しては大臣もしくは議会での命令に準ずるものによって規定できる
      a. 委員会の大きさと構成
      b. 活動方法と報告手順

   

4.オレゴンの尊厳死法

 一般条項

  1.01 定義 以下の語句はこの法案においては常に次の意味で使用される。

 (1)大人 18歳以上の個人を意味する。

 (2)主治医 患者のケアと末期患者の治療に主たる責任を負う医師

 (3)顧問医師 患者の病気に関して専門性と経験により診断および予後をする資格のある医師

 (4)カウンセリング 州から資格を与えられた精神科医または臨床心理士と患者の間で患者が
   精神医学的にそして心理学的に疾患を患っているかどうまたは正常に機能しない判断力を原
   因としたうつ状態を決定する相談


 (5)ヘルスケア供給者 職業の日常的な営みやビジネスの普通のコースにおけるヘルスケア
   や、ヘルスケアの設備を含むものを管理する資格を与えられたまたは証明書を持っている、
   そうでなければ州法によって権威付けられもしくは許可された人

 (6)無能力者 裁判所または主治医あるいは顧問医師の判断において患者がヘルスケア供給
   者、もし存在するならば患者のそぶりに精通している人を通じての意思疎通を含む、に対
   してヘルスケアの決定をしたり意思疎通をする能力に欠けていること
 
   能力者は無能力者でない者。


 (7)インフォームド・ディシジョン 彼または彼女の人生を人間味ありまた尊厳ある方法で終
   えるための処方箋を請求し獲得するための資格のある患者の決定である。そして、それは主
   治医により完全に情報をもらった後の事実の正当な評価に基づいています。


    (a)彼または彼女の医学的診断

    (b)彼または彼女の予後

    (c)処方された薬物治療を受けることの危険性

    (d)指示された治療を行うことで起こりそうな結果
    (e)制限されていない代替治療、コンフォート・ケア、ホスピス・ケアあるい
       はペインコントロール


 (8)医師の承認されている 患者や患者に関する記録を検討した顧問医師によって確かめられ
   た主治医の見解


 (9)患者 医師のケアの元に置かれている人

 (10)医師 オレゴン州の医療審議会によって日常医療をする資格を与えられた医療または治
   療をする医師


 (11)条件を満たした患者 人道的かつ尊厳ある方法で彼または彼女の人生を終わらせる投薬
   の処方箋を得るためのこの法律の要求を満たすオレゴン州の条件を満たす住民

 (12)末期の疾患 合理的な医学的判断によって、6ヶ月以内に死を迎えるであろうことが医
   学的に確定したいるかまたは予想されている、不治で回復できない疾患

第2章 終末医療のために書かれた要求

 2.01 誰でも投薬のために書かれた要請を開始することができる

オレゴン州に居住する大人で主治医と顧問医師によって末期の疾患による苦痛があると認められ
た人は、彼または彼女の自発的な死への希望を表明することができ、この法律に従って、人間的
で尊厳ある彼または彼女の人生の終わりを目的とした投薬を要求することを書いておくことがで
きる。


 

工事中
                      

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