01:手


この手を離さなかったら


もしもあのときあの手を離さなかったら
もしかしたらこの未来はなにか変わっていたのだろうか。

いつだって
どの闘いであっても
俺に望まれたのは前を向くことだった。
先に進む事だった。

ふざけるなと思う。
ふざけるなと。

その先が光だとは限らないではないか。

前を向いて進んだ先にあったのは喪失ではないか。

もしも、もしもあのとき前を向くことを止めていたら。
もしも憎しみに負けていたら。
ココロヤサシイ王様はまだこの場所に居たのではないのか。

(それはクダラナイIFの話。もっとも忌むべき有り得ない仮定の話し。)

未来を手に入れたとしても、
希望を手にしたとしても、
その手の中に入れられないものがあるのだとしたら。

クダラナイ。
オカルトには興味がない。
そんなものいらない。
だから、
カエセよ。

(アイツは確かにこの腕の中にいたんだ。)

(なのにその証拠の一つも無い。)


もしもあの時、あの手を離さなければ。
憎しみを捨てなければ。

(オマエはココに居たのではないのか…?)