07:言祝ぎ さらりと髪を撫でた。 女の子の様に長い髪が手を滑る。 指に髪を巻き付け軽く引く。 目覚める気配はない。 笑んだ寝顔に鼻を摘んだ。 「……っ!!なにすんだよっ!!」 予想通りの反応に笑う。 「兄ちゃん?」 訝しげな声にもう一度イッキの鼻を摘み顔を近付け口を塞ぐ。 どうしようかと逡巡しているらしいイッキに笑みが深くなる。 抵抗するように腕が動くが力なくベッドに落ちた。 と、息苦しさに耐えきれなくなったのか突き飛ばされた。 立ち上がり見下ろす。 「イッテー。なにするだよイッキくん。」 「ヒカル兄ちゃん?それはこっちのセリフ。なんなんだよいきなり。」 「ああ。腹減ったからなんか食いにいかないかい。」 あっさりと答えれば、イッキは不機嫌そうにゴロリと転がり俯せになった。 「いま何時?」 呟きながらベッドサイドの目覚まし時計を手に取った。 「午後7時。」 「うげー。3時間しか経ってねぇじゃん。」 「馬鹿言え。3時間も眠らせてやったんだ。ほらさっさと起きろ。」 ぶつぶつ言いながらイッキはベッドから起き上がった。 壁に寄り掛かり羽織っているだけだったシャツのボタンを留めていく。 「大体なんで兄ちゃんそんなに元気なの。」 「なんでって…。そりゃ、鍛えてますから、俺は。」 「兄ちゃんの方がダメージ大きいはずなのに!!」 面白くなさそうにイッキは叫んだ。 思わず苦笑して肩を竦めて背を向ける。 「ほら、早くしないと店閉まるだろう。」 「あっ待てよヒカルっ!!なぁなぁオレ、ラーメンがいい!!」 「はいはい。」 「兄ちゃんの奢りなっ!!」 「半分出せよ。」 腰にまとわりつく体温に頬を緩めつつ、俺は玄関の扉を閉めた。 |