31 神様(メダロット)


「どうしたんだい?」
頭上から聞こえた声に反応し、メタビーは顔を上げた。
そこには、大学帰りなのか、ショルダーバッグを肩に掛けたアガタヒカルが居た。
ヒカルは土手にしゃがみ込んでメタビーと視線を合わせた。
「イッキ君とケンカでもしたかい?」
「そんなんじゃないっ!」
ぷいっと顔を背けるメタビーに苦笑して、ヒカルは隣に腰をおろした。
「さっきそこでイッキ君に会ったよ。」
メタビーはバッとヒカルの顔を見つめた。
ヒカルはにっこり笑った。
「心配してたよ。」
その言葉を聞いてメタビーは、視線を自分のつまさきに落とした。
「仲直り、したらどうだい?」
「おれが悪いんじゃない。あいつが謝ってくるまで誰が帰るもんか!!」
ヒカルは後ろに手を突き空を見上げた。
「ケンカできるって、凄いことだよ。だから相手は大切にした方がいい。」
メタビーはヒカルに顔を向けた。
「ヒカルも自分のメダロットとケンカするのか?」
ヒカルは少し笑った。
「さあねえ。ケンカになりもしないからねえ。」
ハッとメタビーは後ろを振り返った。
遠くからメタビーの名を呼ぶイッキの声が聞こえてきた。
「行ったほうがいいんじゃない?行ってイッキ君を謝らせればいいじゃないか。」
ヒカルの声にメタビーは立ち上がり、声のするほうへ駆け出していった。
「ありがとなっ!ヒカル!!」
ややあってポツリとヒカルは呟いた。
「ありがとだって、メタビー。」
ヒカルのメダロッチは、何も答えない。
しばらくしてヒカルもそこを去った。