ごめんなさいごめんなさいごめんなさい
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい
ごめんなさい

ジャン…

ごめんなさいっ





嗚呼このまま貴方に抱きついてしまいたいと、いったい何度思っただろう。

でもオレは赤の人間で、貴方は青の人間だから…



「ごめんなさいっ」
ノアの箱舟の奥に納められている赤と青の玉の前で、
ひとりの青年が涙を流すことなく泣き崩れていた。
(何故謝るのです…?)
優しい声が辺りに響いた。
「ごめんなさいっ」
(ジャン)
なおも言葉を繰り返す青年に優しく、諭すように赤い玉は語り掛ける。
(話してください)
その言葉に青年の視線が虚空をさ迷った。
(ジャン)
創造主の声に促され、青年は口を開く。
「ダメ、なんです……」
(え?)
「ダメなんです…ダメだったんですっ!!ずっと、ずっと!!私は彼を忘れようとしていた!!25年間ずっと!!忘れられると思ってたっ!!でも…ダメなんです!オレはあの人を忘れられない…!!オレは出来損ないなんです!!」
ごめんなさい、と。
堰を切ったように青年は全てを吐き出した。
25年間隠してきた想いを。
(ジャン…)
赤の玉は掛ける言葉を見つけられなかった。
ただ、子供の苦しみに胸を痛めた。
青年は縋るように赤の玉を見つめた。
「オレを、壊してくださいっ」
(ジャンっ!!)
「こんな出来損ない存在しない方がいいんだ。」
「それは違うぞ赤の番人。」
落ち着いた人間の子供の声が彼らの後ろから聞こえた。
「パプワ様…。」
「おまえは出来損ないなんかじゃない。」
断言する子供の声は力強い。
「ですが、私は…」
「赤玉。こいつを舟から降ろしてやってくれ。」
子供は青年に構わず赤の玉を見て言った。
「パプワ様っ!?」
子供の言葉に青年は慌てた。
「なんだ?おまえ、あいつらの所に行きたいんじゃないのか?」
「だって…私は赤の番人ですよ。」
私が居なくなったら誰があなたを護るのですか、という青年に子供は答えた。
「大丈夫だリキッドが居る。それにみんなだっているぞ。」
心配するなと言われ、しかし尚も青年は食い下がる。
「だって、あなたが会えないのに…」
「会える。いつになるかは分からないが、きっとまたボクとシンタローは会えるぞ。」
だからおまえも会いに行っていいんだ、と。心優しい子供は言う。
「だから赤玉。こいつをあいつらのところへ行かせてやってくれ。」
(はい。)
創造主の言葉に驚いて、青年は赤の玉を見上げた。
「いいん…ですか…?」
(ええ。お行きなさい、ジャン。)
「だって…。」
(お行きなさい)
青年の体を抱きしめる様に、赤の玉の言葉が響いた。
「あっ…ああっ……」
青年の瞳から一筋の涙が溢れた。
会えるんだ、と強く思った。





貴方に会ったらまずなんて言おうか。
舟を下りてからずっとそれを考えていた。
あの島で思ったことを。
貴方に会えたあの瞬間に、本当は抱きしめたかったことを。
25年前に言えなかったことを。愛してると、大好きだと。
伝えたいことだらけで幸せそうに苦笑する。
でもまずは。
「いやー久しぶりだから迷っちまったぜ。」
ただいま。