19題目:休暇


温泉に行きたいと駄々をこねたら、サービスが連れてってくれた。

「うひゃーーっ!! 雪!! 真っ白!! 二十云年ぶり!!!」
「はしゃぐんじゃありません。まったく。」
「いいじゃん珍しいんだから。あの島じゃ雪は滅多に降らないんだよ。」
「まー、いいですけどね。そうやってはしゃいでいるからほら、サービス置いてかれてますよ。」
「え!? ま、待てよサービスっっ!!」
「やれやれ。」

 休暇を取って、サービスとオレと高松と。
 冬の日本の高級温泉旅館。

「スゲー!! 貸し切り風呂だって、あと内湯もあるし、大浴場も二つあるぜー。」
「私たちは離れですか。奮発しましたね、サービス。」
「フフ。」

 大きな大きな露天風呂。時間がなのか時期なのか、オレ達の他に人はいない。

「思い出しました。ここって、一日三組しか客を取らないところですよね。」
「え? ってことは、オレ達の他に、あと二組しかお客さんいないってこと?」
「道理で静かなはずですよ。」
「高い?」
「とても。まあ、サービスの奢りですから構いませんけど。」
「ジャン、髪を洗ってくれる?」
「ああ!」
「相変わらずですね。」

 ひらひらと舞い落ちる冷たい花びら。

「あーー、なに一人で呑んでるんだよ!! 高松!!」
「私にもくれるかい。」
「構いませんけど、入浴しながらの飲酒は身体に悪いですよ。」
「じゃあなんで呑んでんだよ?」
「私はいいんですよ。」
「いい日本酒だね。」
「お褒めに預り光栄です。」
「な、な。オレにも一口!!」
「止めときなさい。アンタお酒弱いんですから。」

 ふやけてシワシワになった指先。

「あー、なんか腹減ってきた。」
「そろそろ夕食の時間かな。」
「上がりましょうか。」

 新鮮な海の幸とか、肉とか、酒とか。

「酔ったーーー。」
「あんなに呑むからですよ。」
「だってスゲー良い酒だったから。」
「よかったですねー。良いか悪いか分かる舌があって。」
「呑ませ甲斐があるよ。」
「学生時代に鍛えられましたから。」
「よく隠れて呑みましたよねー。」
「兄さんから貰った酒をね。」
「なー、昔話をするのって、年取った証拠らしいぞ。」
「……。」
「うをっ! いきなし眼魔砲撃つなよ!!」
「馬鹿ですねー、アンタ。」

 更ける夜。
 馬鹿騒ぎと大切な友達。



2005.06.19 [日] 23:58