一目見て、
これは恋だと確信した。



  年下の彼氏



己より 微かに高い背
青い瞳
冷めた視線

家族を愛したあなたは、
その力故に家族との溝を深めて行った。
長男として総帥として、
常に頂点で在り続けた男。
だからこその孤独。
ひとりぼっち。
だからきっと、そこに惚れた。
そこに惹かれた。











「あなたの闇を愛していました。」
告げるオレに あなたは首を傾げる。
一人ぼっちだと泣いていた青年は、いまや3人の子の親だ。
自分より年上に見える風貌に、ほんの少しの笑み。
それでもあなたは遥かに年下。
「愛した理由ですよ。キンタローに聞かれたんです。」
デスクの端に腰掛け、腕を首に回す。
「『た』というと、今はどうなんだい?」
頭を引き寄せ、髪を梳く。
されるがまま、あなたは笑う。
「そうですね…どうでしょう?」
理由なんていらなくなったのはいつからか。
いつしか、ただありのままのあなたを愛していた。
惹かれるなんて半端な言葉じゃ言い表せないくらい。
「難しいですね…。あなたの闇も力も未熟さも、すべて愛しいんですけれど…。」
触れるだけの戯れのキスを、あなたは嬉しそうに受け入れる。
「愛してます。」
耳元で囁けば、くすぐったそうに目を細める。
幸せそうな笑み。
「キミは幸せかい?」
「ええ。」
微笑めば、腰に手を回され、引き寄せられる。
バランスを崩したオレは、あなたの胸に倒れこんだ。
「それはよかった。」
「マジック様〜。」
オレの非難を聞き流し、あなたはオレを抱き締める。
笑顔。
やりたい放題ですね、まったく。



紅茶と、甘い香りに瞳を開いた。
「目が覚めたかい?」
頭上からの声に顔を上げると、そこにはあなたの顔。
「うわわあ、す、すみませんっ。」
あなたの膝の上に横向きに座り、あなたに抱かれたまま、どうやら眠ってしまったらしい。
慌てるオレに、あなたは抱き締める腕の力を強くした。
困って見上げると、笑顔。
こそばゆくて、恥ずかしくって、オレはあなたの服の端を握り締めた。


甘い匂いの正体は、焼き立てのクッキーだった。
「コタローちゃんが、シンちゃんと作ったんだって持ってきてくれたんだよ。」
親鳥のようにオレの口にクッキーを運ぶあなたは、いったい何を考えているのか。
文句を言おうと口を開き、止めた。
見上げれば笑顔。
年下の我が侭を許すのも年上の役目だ。



それからしばらくしてサービスがやってきて、
「兄さん。そろそろジャンのこと返してもらえます?」
苦笑と共にオレは解放された。



扉を閉める前に聞こえた呟きに、オレは笑う。
「足が痺れた…。」
ああ、もう。なんて意地っ張りっ!