2005年6月18日


 ジャンがティラミスとチョコレートロマンスに呼ばれて、マジックの執務室へ行くと、部屋の主人がシンタロー人形を抱えさめざめと泣き崩れていた。
 しかしそれだけならば、いつものことなのだ。ジャンが呼ばれるまでの事ではない。
 もう二つ。何故か、マジックは、グンマ人形とキンタロー人形も抱え泣いていたのだ。
「……ナニゴト?」
 ジャンは横に立つ二人の秘書に尋ねた。
「キンタロー様と」
「グンマ様に」
「「嫌われたと」」
 奇麗に声を揃える秘書達にジャンは吹き出した。
「ジャンさん、どうにかしてくださいよ」
「鬱陶しくて仕方ありません」
「そう言われてもさぁ」
「「お願いします」」
 苦労してるんだなあとジャンは、やるだけやるかと秘書達に手を振り、マジックの前へ歩み出た。
「マジック様。どうしたんです?」
「ジャンーーっ!!」
 ギュウと手を握り締められ、ジャンは心持ち退いた。
「シンちゃんが私のことを避けるんだよっ」
「いつものことじゃないんですか?」
「違うよっ!!シンちゃんはパパのことを愛しているのに素直になれないだけだよ!!ってそうじゃなくて!!グンちゃんとキンちゃんまで、パパのことを避けるんだ〜〜っ!!」
 右手でジャンの手を握り、左手で子供みたいに泣き腫らした目を擦る恋人の姿に、ため息と愛しさ。
 ジャンは空いた手でポンポンとマジックの肩を叩いた。
「大丈夫ですよ。嫌われているわけじゃありませんから。」
「え?」
 マジックは弾かれる様にジャンを見上げた。
「何か知ってるのかいっ??」
「はい。相談されましたし」
「な、なんでみんなパパのこと避けてるんだい??」
「それをバラしたらオレ、グンマに怒られちゃいますから。うーん、明日になったら分かりますよ」
「明日??」
「そう明日」
 明日は。
「……父の日?」
 愛する父親に贈る、秘密のパーティー。

 ジャンはにっこり笑ってマジックの髪をひと撫ぜした。