〜彼の事をきかせて〜キャラ説明に使えるかもしれない十題
お題提供:HiSoKa(ヒソカ)




〜彼の事をきかせて〜キャラ説明に使えるかもしれない十題

「なあ、高松いま暇か?」
 ICレコーダーとメモ帳、それとA4の紙を2枚持ったジャンが、ガンマ団の保健室に現れた。
「こんな所までわざわざ来るなんて、珍しいですね。」
 ジャンのテリトリーはサービスの部屋を拠点とした半径2キロと研究棟の高松の研究室という所だ。その中にガンマ団の保健室は含まれていない。
 机に向い書類を書く手を止めない高松に、ジャンは口を尖らせ、それでも忙しいと追い出さない所から判断するに、相手をする気はあるのだろうと本題に入った。
「インタビュー、してもいいか。」
「インタビュー? 一体何のですか。」
「ガンマ団広報部のバイト。サービスと高松に個別にインタビューして来いって。来月の広報誌に載せるんだよ。」
「拒否権は?」
「あるわけないだろー。」
 明るく笑うジャンに、高松はペンを置きジャンへ向き直った。
 息を吐いて一言。
「コーヒーを淹れてそこに座りなさい。」



〜彼の事をきかせて〜キャラ説明に使えるかもしれない十題

「まず、現在恋人はいますか?」
 ICレコーダーの録音ボタンを押し、テーブルを挟んで向かい合わせに座ったジャンの言葉に高松は嫌そうな顔をした。
「どうしてそんなことを聞くんですか。」
「恋人の有無で質問が代わんだよ。」
「……いませ」
「因みにこれ、マジック様も御覧になるから。」
 高松は口を噤み、ジャンを睨み付けた。鋭い眼光をジャンは受け流し、にやにやと高松を見詰める。
「ドクター高松。現在付き合っている人はいますか?」
 高松はコーヒーを一口含み、あまりの不味さに顔を顰めた。
「ええ。いますよ。」




「では最初の質問です。」

01:第一印象

「第一印象ですか?」
「そう。その付き合ってる人の第一印象を答えてくれよ。」
 高松はマグカップをテーブルに置き、空を見た。
「大昔すぎてなんとも。」
 当たり前と言えば当たり前の答えに納得せず、ジャンは食い下がった。
「覚えてる事でいいからさ。」
「そうですねぇ。」
 そしてポツリ、と口にした。
「髪の毛。ですかね。」
「髪?」
「ええ。……綺麗な髪がきらきら太陽の光を反射してね、そりゃ綺麗でしたよ。」
「へぇ。」
 知らない過去に身を乗り出し、ジャンはメモ帳を構えた。
「今よりもっと短くて、肩ぐらいまでですかね。触りたくて手を伸ばしたら、横からハーレムに手を叩かれましてね。大喧嘩ですよ。」
「あ。おまえ名前出すなよ。誰の事だかバレちまうだろ。」
「原稿を起こすときに適当にぼかしゃいいでしょ。」
「まーそうだけどさ。」
 めんどくさいとボヤキ、ジャンは文字を書き付けたメモ帳を一枚捲ると質問の書かれたA4の紙に視線を落とした。
「じゃあ次ぎの質問な。」



02:噂

「……真実じゃいけないんですよね。」
「んー。できれば『聞いた話によれば〜』みたいなヤツがいいんだけど。」
「……実はカツラらしいですよ、あの髪。」
「…………。マジで書くぞ、それ。」
「どうぞ。」
 澄ました顔で答える高松に、ジャンは目を瞑って一言呻いた。
「次ぎ行くぞクサレマッドサイエンティスト。」



03:アシ(車?バイク?チャリ?電車?)

「どういう意味ですか、これは。」
「えっと……交通手段移動手段だな。」
「なら、ヘリ、飛行船、車といったところですか。意外に自分で運転しますよね。」
「そーそ。結構上手いよな。これも家系かね。」
「マジック様も?」
「すげー上手いよ。ハーレムも下手だって話は聞いたことないだろ?」
「飛ばしますけどね、あいつは。」
 一瞬、虚を衝かれたような顔をした。
「 ああそっか、高松は乗ったことあるんだ。へー。なんからしいな。」
 にっこりと笑うジャンの顔に痛みを感じ、高松は先を促した。
「次の質問は何ですか。」



04:趣味

「なんだよ、行き成り協力的だな。えーと、次は……相手の趣味。オレこれ知ってるぜ。」
「だったらさっさと答えなさい。」
「何でオレが。ああじゃあ、一緒に言おうぜ。」
 高松は眉を顰めた。
「アンタ馬鹿なんじゃないで……」
「ほら、せーのっ」
「絵画鑑賞っ!」
「絵画鑑賞。」



05:口癖

「ジャンがジャンがジャンが。」
「なんだよそれ。」
 ジャンは目をぱちぱち叩いた。
 高松はマグカップに手を伸ばし口を付け、冷めた上に酸化して、さらに不味くなったコーヒーに席を立ち、やかんに火をつけた。
「寄越しなさい、淹れなおしますから。」
 手の付けられていないマグカップを受け取り、高松はジャンに背を向けた。
「なあ、高松。」
「サービスは、いつもアンタのことばかりですよ。今も昔もね。」
 ジャンはにやりと笑ってやった。
「なんだよ、ヤキモチかよ。」
「なんで私がアンタに焼きもち焼かなきゃなんないんですか。」
 ドリップから滴がコーヒーサーバーに落ちる。コーヒーの芳ばしい薫りが保健室に広がった。
「私はサービスがアンタのことを楽しそうに話すのが好きなんですよ。」
 とくとくとコーヒーサーバーからマグカップへコーヒーを注ぐ。ジャンのカップへは半分。
「そういうもんでしょ。嫉妬なんてくだらない感情湧きませんよ。」
 マグカップを二つ持って振り返った高松は、顔を赤くして見詰めるジャンと目が合った。
「……なんでアンタが照れるんですか。」
「いやだってもうさっ!!」
 視線を彷徨わせるジャンに高松は息を吐いて、目の前にマグカップを置いた。
 冷蔵庫から200mlの牛乳パックを取り出すと、砂糖と共にジャンの前に置く。
「もういいよ!! 次いこ次!!」
 マグカップに牛乳をなみなみ注ぎ、砂糖を4杯入れてジャンは叫んだ。



06:仕草

「これは好きな仕草ってことでいいんですか?」
 マグカップに口を付けたジャンは、顔を顰めた。
「砂糖入れすぎですよアンタ。」
 高松に笑われ、飲めるだけ一気に飲んで、ジャンは残りの牛乳をカップに注ぐと空になった牛乳パックをゴミ箱に投げ入れた。すっかり白くなったコーヒーを一口。
「『彼の仕草』から思い浮かべることを答えてください。サービスの仕草と言えば。」
「そうですねえ。」
 ガラガラと保健室の戸が開けられた。
「あ、あの。」
「なんですか。」
 おどおどとした態度の団員。若い、が高松に関する噂は知っているのだろう。
「消毒薬と絆創膏を貰ってくる様にと……。」
「患者はどうしたんですか?」
「え、あ、それは、その。」
 レコーダーを一時停止して、成り行きを見ていたジャンは、涙ぐむ団員に忍び笑いを漏らした。
「いけませんね。何のための医者だと思っているのですか。きちんと患者にここまで来ていただかないと、処置を施すことができません。」
「や、いえ、ただカッターで指先を切っただけですから。消毒薬と絆創膏さえ貰えれば。」
「何を言っているんですか。そこから破傷風にでもなったらどうするつもりですか。これだから医療を理解できないものは。」
「え、あ、すすみません。」
 蛇に睨まれた蛙はすっかり萎縮しきり、訳も分からず頭を下げた。きらりと高松の目が光る。
「本当に反省しているんですか? 信じて欲しいのならそれなりの誠意を見せていただかないと。」
「せ、誠意ですか?」
「ええ。」
 手には何時の間にか注射器とアンプル。アンプルの中身は注射器に吸い取られ、無色の液体が光を反射して七色に光った。
「ああ、大丈夫ですよ。たぶん死にませんから。」
 高松は団員の腕を掴むと、注射器の針を腕に刺した。

「見事なお手前で。」
 床に転がる男にちらりと目をやり、ジャンは手を叩いた。
「褒めても何も出ませんよ。」
「何か出てきそうだから何もいらないって。それより。」
 カチリとICレコーダーのスイッチを入れる。
「ああ、サービスの仕草でしたっけ?そうですね、髪を掻き揚げる仕草、でしょうか。」
「ナルホド。オッケー、次いこ。って、それよりさ。」
 ぴくぴくと痙攣を起こしている床の男を指差して一言。
「これ、どうなんの?」
「さあ?」



07:表情

「笑顔。」
「早いな。」
「それ以外にありますか。」
「上手く入れた紅茶を飲むときの顔とか好きだぜ。」
「なら、アナタが帰ってきたときのサービスの表情。」
「……反則だろそれ。」
「だからなんでアンタが顔を赤くするんですか。」
 ククと楽しげに笑う高松を睨み付け、ジャンは乱暴にメモを書き付けた。
「あ。おーい、高松。なんか反応あったみたいだぜ?」
「ほう。まあ、成功ですか。」
 ジャンの指先には、ブカブカのガンマ団の制服を着た子供の姿。
「若返りの薬?」



08:短所

「精神まで退行してなきゃいいんですけど。」
「起きるまでほっとくのか?」
 高松は子供の腕を掴むと採血を始めた。
「先にアンタの用事を終わらせちゃいたいですからね。で、次の質問は。」
「んー『彼の短所』」
「短所ですか。」
「ナシっていうのはナシな。」
 抜いた血をデータを取るため分離機に入れる。高松は軽く肩を竦めた。
「我儘、女王様、ケチ、サド、鬼畜……。」
「ちょ、ちょっと待て。」
「最後の方は嘘ですが。」
 しれっと答える高松に、疲れたようにジャンは机に顔を伏せた。
「おまえ、オレで遊んでるだろ……。」
「なに当たり前のこと言ってるんですか。」
「うわ、ひっでーーー。」
 勢い良く顔を上げ笑うジャンに高松も笑った。
「じゃ、前から三つまで書くからな。」
「せめて二つにしときなさいよ。」
「やだね。」
 笑い宣言し、ジャンは紙を捲った。



09:優しさ

「優しさ、ですか。」
 椅子に戻り高松はコーヒーに手を伸ばした。
「難しいですね。」
「そーか? サービスは優しいじゃん。」
 ジャンが不思議そうに首を傾げる。
「例えば?」
「パプワ島の動物たちに危害を加えなかっただろ?」
「それは単純に戦闘に参加しなかったからでしょ。」
「パプワ様にも優しくしてくれたし。」
「敵対関係になかったからですよ。」
「シンタローをよく構ってたみたいだし。」
「それはアンタに似ていたから。」
 眉を寄せる高松をジャンは笑った。
「オレに似てるってだけじゃ、あんなにわかりやすくシンタローに優しくしないさ。あれはサービスがシンタローを好きだからだよ。」
 違うか? と尋ねるジャンに、高松ははっきり答えなかった。
 それを見て、ジャンはテーブルを見詰め笑んだ。
「優しいさ。サービスも、高松も。オレは知ってる。」
 慈しむかのような眼差しに、高松は総毛立ち腕を擦った。
「やめなさいよ。さぶいぼ出てきたじゃないですか!!」
「なんでだよ! 人が真面目に答えてやってんのに。」
「アンタが真面目に答えてどうするんですか。アンタはインタビュアでしょ。まったく。」
「そう思うんなら、早く答えろよな。」
 拗ねた仕草で横を向く相手に、高松はこれ見よがしに溜息を吐いた。
「考えていたのにアンタが変な事言い出したんでしょうが。……家族思いなところでしょうかね。その他は難しくて上手く伝えられません。ほら、答えてやったんですからさっさと次に進みなさい。」
「へーへー。」
 ジャンはメモ帳を捲ると質問の書かれた紙に視線を落とした。
「あ、次が最後だ。」
「それは良かった。」



10:寝起き

「『彼の寝起き』って、これどういう答えを期待してんだろうな。」
「さあね。サービスは寝起きも寝付きもいいですよ。アンタはずーっとぼんやりしてますよね。」
「高松だって寝起きがいいほうじゃないだろ。」
「そんなことありませんよ。私は至って普通です。」
「そうかぁ?」
 納得できないというようなジャンに、高松は軽く息を吐いた。
「アンタねえ。私より遅く起きるくせになに言ってるんですか。」
「そりゃそーだけどさあ。なあそう言えばさ、サービスって死んだ様に眠るよな。」
「そうですか?」
「思わないか? オレはこのまま目覚めないんじゃないかって時々思うんだけど。」
「アンタそれでサービスのこと起こして怒られてんですね。」
「だって寝返りもしないし、ピクリとも動かないから怖くなるんだよ。」
「いい加減にしないと一緒のベッドで眠らせてもらえなくなりますよ。」
「それは困る。」
 笑ってジャンはメモ帳を閉じると中身の半分残ったマグカップに手を伸ばした。
 もぞりと床に落ちた子供の体が動くのを視界に捉え、高松は立ち上がる。
「目が覚めたようですね。」
 ジャンが首を捻って後ろを見ると、子供は体を起こし、床にぺたりと座りこんでいた。
 ぐるりと小さな頭が部屋を見回し、高松の顔を見上げると、……ぱたりと意識を手放し再び床に倒れこんだ。
「記憶の逆行はないようですね。まあ大丈夫でしょ。」
 高松はひとり頷くと、白衣のポケットから注射器とアンプルを取り出した。
「……なに。」
 不審そうに見上げるジャンに飛びきりの笑顔を見せ、注射器で薬を吸い上げた。
「大丈夫ですよ。見ての通りなにも起こりませんから。」
「何もって起こってるだろあれを見た通り!!」
 気絶している子供を指差すジャン。高松はその反対の腕を取った。
「ちょ、待てよ高松っ!」
「うっさいですねー。こっちも依頼人兼スポンサーが付いてんですよ。恨むんならあんたの大好きな人を恨みなさい。」
「マジックとサービスかーーーっっ!!」
 的確に犯人を言い当てるジャンの腕に、高松は躊躇いなく針を刺した。





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ポケットに注射器を入れてはいけないと思う。