ガーネット


サービスは泣いたし、実のところジャンも泣いた。高松は泣かない代わりに急用だと言って部屋を出て、帰って来た時目が赤かった。
赤も青も黒も目を赤くして、話すのもままならず、酒をかっ食らって、三人で眠った。
そして朝。ジャンがサービスと高松の元へ帰ってきてから初めての朝。
一番最初に目を覚ましたのは高松だった。
ベッドの上から部屋の惨状を見回し溜息。
ワインの空き瓶に脱ぎ散らかされた服。幸せそうに丸まって眠る隣の二つの塊。高松は頭痛を覚え、ベッドから降りるとジャンの布団を剥ぎ取った。
「起きなさいっジャンっ!!」
ジャンはもぞもぞと動くとぼんやり目を開けた。
「……あれ…?」
「早く起きて着替えなさい。今日はアンタの必要なものを買いに行くんですから。さあ、さっさと顔を洗って歯でも磨いてきなさい。歯ブラシは洗面台の下の棚に買い置きがあるはずですからそれを使って……ジャン? 聞ーてんですか?」
「たかまつ……? あれ……?」
「なに寝ぼけてんですかアンタ。とにかく私は一度部屋に戻りますから。さっさと起きなさいよ。ああそれから、サービスは後十分もすれば勝手に起きますから放っておいても平気ですよ」
言いたいことを言い終えたのか高松は散らばった服から自分のものを拾い上げ手早く着替えると部屋を出て行った。
残されたジャンはぼんやりと部屋を見回した。
大きな広いベッドの上。床に散らばった服。微かに感じる頭痛は二日酔いだろう。すぐ側に感じる体温はサービスのもの。そのサラサラの髪に手を伸ばし、ああそうか、帰ってきたんだっけ、とジャンはようやく思い出した。
何度かそのまま髪を撫でると青い目がジャンを捕らえた。
「おはよー」
にへらっと笑うジャンに三度瞬きし。
「おはよう、ジャン」
サービスは滅多に見せない幸せそうな笑みを浮かべた。


「高松が買い物に行くから着替えろって」
「そうだね。おまえの物を買い揃えなきゃいけないからね」
シャワーを浴びて歯磨きをして服を着て遅い朝食をとってオレンジジュースを飲んでいたら、すっかり身支度を整えた高松がジャンの手からコップを奪った。
「あ、オレの」
「居候がなに言ってんですか。ほら、下に車を回してきましたから行きましょう」
「はーい」
三人で廊下を歩いていると、前方に見知った人がいた。一瞬歩みを止めた。
「ジャン」
軽い驚きを含んだ声に、ジャンはサービスと高松の腕を取り笑顔を向けた。幸せだよと言うように。
マジックは、昔よくしたようにほんの少し眉を下げ、仕方ないなあと許すような笑みを浮かべた。
「お出かけかい?」
「ええ、ジャンの買い物に」
「そうか、気を付けて行って来なさい」
ペコリと頭を下げてすれ違う。
絡んだ視線に笑顔で応えて、ジャンはサービスと高松の後を追った。



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10月13日の誕生石は「ガーネット」
石言葉は「真実の愛」