ブルー・アゲート


スケッチブックを取り出し、えんぴつをカシカシ動かして、目の前の光景を写し取る。
「上手いもんですね」
高松は後ろからジャンの手元を覗き込み感心したように呟いた。
「島にいる時、時間だけはたくさんあったからな」
手元と目の前のソファーの中央に座り本を読む人から視線を外さずジャンは答えた。
あまり見せない真剣な眼差しに高松は肩を竦める。いつもにやけているだけの男が集中していることを気取られるのにも構わず筆を走らせているのだ。
「サービスも愛されたもんですね」
「おまえのことも愛してるぜ?」
「はいはい。サービスの次にでしょ」」
「なんだよー。おまえだってサービスの次にオレのこと好きなくせに」
「何言ってるんですかっ!! アンタなんてグンマ様とキンタロー様の次の次の次の次の次の次のその後ろの後の方ですよ!」
「はーいはいっ」
二人のやり取りを聞いていたサービスは小さく笑って、顔を上げ高松を見るとソファーの右隣をポンと叩いた。
高松は、まだ仕事がとブツブツ言いながら素直にサービスの隣に腰を下ろした。
高松の頭を引き寄せ、肩にもたれ掛からせると、再び本に戻る。右手は高松の頭を抱え込んだままだ。
「愛されてるねー、ドクター」
「オマエもオイデ」
顔を上げずに促すサービスに、ジャンはスケッチブックをテーブルに置きパタパタと小走りに駆け寄ると、空いている左隣に座り込み、サービスの膝に頭を乗せた。
「……アンタなにやってんですか」
「膝枕」
にやりと答えるジャンにサービスはちらりと視線を向け、高松は大きく息を吐いた。


テーブルからスケッチブックが落ちる。


開いたページにはソファーで眠る三人の姿が描かれていた。



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10月18日の誕生石は「ブルー・アゲート」
石言葉は「芸術性」