オパール


小高い山の頂上にぽつりと一本立つ枝下桜が春の到来を告げた。
満開になった木の根元にシートを敷いて、のんびりとお茶を飲む影が三つ。
茶は玉露。茶請けは草団子。
一部緊迫したムードの漂うなか、ジャンは一人草団子に手を伸ばしながら、なんでこんな事になっているのかと後ろの二人を伺った。
バチリと音が出そうなほど睨み合う二人。ガンマ団総帥のマジックと先月18歳になったばかりのその弟のサービス。
わざわざ日本に桜を見に来てまで何をやっているんだかと、本来当事者であるはずのジャンは、我関せず、オレは関係ないよと団子を頬張るのだった。
「兄さんがかわいい弟のために遠慮するべきでしょう」
「普段会えない私に譲るというのが出来た弟なのではないのかい?」
両者一歩も譲らず。
口を挟んでもややこしくなるだけだと沈黙を守るジャンは、内心どっちでもいいよと投げ気味だった。
対決の内容はくだらない。今夜どちらがジャンと一緒に眠るか。
「おまえは寮では彼と同室だろう。偶の休暇なんだ、私に譲ってもいいだろう」
「同室と言ったって高松もいますっ。兄さんこそ帰ってくるたびにジャンのことをさらっていくじゃないですか!」
「恋人なんだから当然だろう?」
「オレだって一緒にジャンと寝たいんですっ!!」
「さーびすぅ。その言い方はなんか誤解を招くぞ?」
小さくツッコミを入れるジャンをじろりと睨む。
「オマエがハッキリしないのが悪いんだろう!?」
「そうだね。ここは一つ君に決めてもらおうかな」
「えーーーと……」
ジャンは悩む。前に同じ状況になった時に、正直に「どっちでもいいぜ?」と言ったら何故か結託して反撃されHP激減。サービスの機嫌を損ね一週間口を聞いてもらえなかったのだ。同じ事を繰り返すのだけは避けたい。
「二人とも一緒がいいの?」
ジャンの問いに二人が同意する。
「あー、ならさ、三人で眠ればいーんじゃないか?」
どう……?と二人の顔色を伺う。
「兄さんと?」
「と、俺と」
「三人で、かい?」
「いいじゃないですか、別に何をするわけでもないんですから」
お互いを横目で見ながら思案中。
「私は構わないよ」
先に折れたのはマジック。サービスもジャンの
「ダメか?」
に仕方ないと同意した。
「よかった。じゃあほら、花見の続きしようぜ」
にっこり笑い冷たくなったお茶を煎れ直すため丘の下に待機する執事を呼んだ。湯の入ったポットを持ってくる執事を見ながら、暫くこの手で行こうとジャンは一人頷いた。



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10月20日の誕生石は「オパール」
石言葉は「幸福を得る」
なんで高松がいまだに同室なんだろうか……。