レッド・トパーズ |
島に来て二日目。 朝の陽射しはミントの様に清々しい。 「豊かな島ですね」 散歩途中に見つけた洞窟は、小さな箱庭のような岬に繋がっていた。 背の低い草が生え、黄色いハイビスカスの花が咲いていた。 側には柘榴の木。 「そうだね」 「椰子の木もある」 岬の先、ギリギリに生えた椰子の木に触れる。小さく力を放ち、椰子の実を一つ海に落とした。 そこから下を覗きこむと、穏やかにゆれる波と揺蕩う椰子の実が見えた。ゆっくりと流され、崖に邪魔され見えなくなる。 「結構高いですね」 「そうかい? このぐらいなら飛びこんでも大丈夫だろう」 「やらないで下さいね、えーと、マジック」 クツクツとマジックは笑った。 「慣れないね」 ジャンは頬を赤くしそっぽを向いた。 「そんなすぐに慣れるようなもんじゃないでしょう」 「そうかい」 マジックは抑え笑い楽しそうに、ジャンの手を取りその髪に赤いハイビスカスを一輪挿した。 「うん。似合う」 「……ありがとう、ございます、えーと、マジック」 ごにょごにょ頬を赤くして、言いよどみながら礼を言う。 「では、散歩の続きと行こうか」 手を引かれ、恋人同士のデートの様に島を散策。 ピチピチと舞う珊瑚色の小鳥や、名前も知らない小動物。 そしてコテージの反対側で小さな入江を見つけた。 ぷかぷかと浮かぶ椰子の実や流木。 「色んなものがここに流れ着いているようだね」 「そうですね。さっき落とした椰子の実もここに流れ着くかもしれませんね」 後ろに立つ人が、首筋に一つキスを落とすのに気付かない振りをして、ジャンは面白そうな者は無いか流れ着くものを見まわした。 「なにかあったかい?」 「いいえ。でも、街のものは何一つありませんね」 「海流が邪魔をしているんだろう。ちょうど街と隔てるように流れがあるはずだよ」 「……本当に、隔離された島なんですね」 「お誂え向きだろう?」 マジックは言い逃れできぬよう、後ろから抱き締める。 ジャンは何度も身動ぎし、そして諦めた様に力を抜いた。 「……そろそろコテージに戻りましょう。えーと、マジック」 何度言っても馴れないジャンに、クックとマジックは喉で笑った。 ハイビスカスがマジックの鼻先を掠めた。 −−−−− 11月8日の誕生石は「レッド・トパーズ」 石言葉は「生命・繁栄」 赤いハイビスカスとジャンは合うと思うの。 |