べっ甲


ジャンとアスが小さくなってから暫らくしてのこと。噂を聞きつけたサービスが、二人を見にやって来た。


「本当に小さいな」
「本当に小さいんですよ」
小さなジャンと小さなアスを連れて、ヘリポートまでお出迎え。
アスは高松と大人しく手を繋ぎ、ジャンはサービスを一目見るなり高松の後ろに隠れてしがみ付いていた。
「それでなんでオマエに張り付いてるんだ?」
「知りませんよそんなこと。ほらアスもジャンも挨拶なさい」
高松に促され、アスはペコリと無表情に頭を下げる。
「ほらジャン」
ジャンを前に出そうと身体を捻る高松と一緒にジャンも動く。
「なにやってんですかアンタ。人見知りですか?」
ジャンはぎゅうと高松の白衣を握り、顔を埋める。微かに覗く頬が上気していた。
「ジャン?」
「あのねっ」
ぎゅっぎゅっとジャンに白衣を引っ張られ、高松は片膝を突いて耳を貸した。
「すっごいきれー」
「サービスですか?」
「うんっ。くるしいの」
眼をきらきらさせ、胸を押さえるジャンに、高松は立ち上がり苦笑した。
「アンタに一目惚れですって」
「フーン。ジャンだね」
「そうですねぇ」
サービスとジャンとの間に立ちはだかる小さなアスと、きらきらうるうるの目をサービスに向ける小さなジャンを見ながら、大きな二人は肩を竦める。
「こんなところで立ち話もなんですから、部屋に行きませんか」
「そうだね」
スッと動きジャンを抱き上げ歩き出す。アスがこの世の終わりのような顔をして固まった。
「ガキに対抗意識燃やしてんじゃありませんよ……。はいはい大丈夫ですからねー。あんなんでもアイツにはちゃんと恋人いますから」
高松がアスを抱き上げ、あやすように背中を叩く。
「あいつ、きらいだ……」
ぎゅうと高松の胸に顔を押し付けたアスは、涙目で呟く。
「はいはい。そんなこと言うもんじゃありませんよ」
高松は落ち着かせるよう頭を撫で、それから心の中で溜め気を吐いた。



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11月18日の誕生石は「べっ甲」
石言葉は「持久力、鍛えられた美しい身体」
きちんとカプを考えているわけでもない