ライラック


「高松ー」
書類を持って研究室を訪れたグンマは、机に伏せて眠る高松を見つけて慌てて声を抑えた。
小さな寝息を立てる身体にそっとブランケットを掛ける。
(最近あんまり眠ってなかったみたいだもんね……)
どうにも上手くいかない探査機作り。
高松はこちらに戻ってきてから研究室に籠もりっきりだった。
(昔から、一度始めたら突っ走る人だからなぁ)
グンマが止めなければ眠らずずっと研究漬けだ。
ふらふらで、目の下のクマを濃くして幼いグンマの食事を作る姿も、一度や二度ではない。
そんな時グンマは、倒れそうなくらい顔色が悪い高松を、必死で止めて、朝から一緒のベッドで眠っていた。
(僕が研究者になって一緒に仕事をするようになってからは減ったのに)
とうとう追い付くことのなかった背に身体をくっつける。
あったかい体温に安心したように目を閉じた。
「あんまり無茶しないでよ、高松。昔みたいにずっと側にはいられないんだから」
「グンマ様……」
「んー?」
身体の下からの困ったような高松の声にやわらかく答え。
「僕は高松が大好きなんだから」
グンマはコツンと高松の背中におでこを付けた。
「はい……」
困ったような高松の声は昔と変わらない。
「大好きだよ……」
グンマはそれ以上の想いで小さく呟いた。
高松は、ずるく気付かない振りをした。



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5月12日の花言葉は「愛の芽生え」