クレマチス


「反対されると思ったのになあ」
マジックの私室のソファーに座り、カルーアミルクの入ったグラスに口を付け、ジャンはコトンと傍らに座る人の肩に頭を乗せた。
「されたかったのかい?」
クスリと笑われ顔を背ける。
「そういうわけじゃありませんけど。……マジック様?」
逃げるように口を付けようとしたグラスを取り上げられ、ジャンはマジックを見上げた。
与えられるくちづけ。
「こんなものより私を味わいなさい」
告げられた台詞に、ジャンは照れと恥じらいを溜息に隠して。
マジックの首に腕を回した。





「反対すると思ったのになあ」
「してやろーか?」
にやりと面白そうに笑われジャンは首を振った。
「遠慮しときます」
「お前本当ーにチンだな」
「チンっつーなっていうかどういう類の悪口だよそれは」
シンタローのイジメにがっくりと肩を落とし、ジャンは総帥室のソファーにわざとらしく懐いた。
「まあ、いいんじゃねーの。遅かれ早かれするつもりだったんだろ?」
「まーね。色々あるし……。でも本当に良いのかなあとか、色々。それに面倒臭いし」
「オイ」
「だってさあ。正式にパートナーですって宣言されたら、パーティーも出なきゃいけないだろうし、護衛だってつくんだろうし。いや、いまのまんまじゃいざという時困るってのも、分かってんだけどさ」
「当たり前だ。これからも親父と一緒にいたいんだったらきちんと手続きしやがれ。大体護衛だったら今だってついてんだろーが」
「うん、まあね。……オレはあの人と一緒にいたいし、オマエたちが反対しないってんなら、なんももんだいはねーけどさあ」
「『さあ』じゃねぇだろーが。それともなにか?それは俺に対する当てつけか?」
青筋一本浮かび上がらせるシンタローに、慌ててジャンは激しく首を振る。
「違う違うって!!そんなことあるわけねーだろ!?」
「ああっ?じゃあなんだって……もしかして、マリッジブルーか?」
「まりっじぶるぅ?なんだそれ」
「結婚が決まった者が結婚に対して不安になることだ」
突然入りこんできた声に、シンタローとジャンはバッとそちらを見た。
驚いたような二つのよく似た顔に見られ、キンタローは数歩たじろいだ。
「す、すまない。ノックをしたが返事がなかったので勝手に入ってしまった」
(聞かれたか?)
(いや、だいじょーぶみたい)
ジャンの返答に、シンタローは安堵の息を吐いてキンタローに手を振った。
「いや大丈夫だ。気にするな」
「あ、ああ」
首を傾げながら書類を持ってシンタローに近づくキンタローに、ジャンはソファーから立ち上がると二人に手を振った。
「じゃあオレ、そろそろ戻るな」
「おいジャン」
「んー?」
シンタローに呼びとめられ、扉を開いたままジャンは振り返った。
「なんだよ」
「グンマも楽しみにしてるんだ。逃げるなよ」
「わかってるって」
パタンと扉を閉め、廊下一つ苦笑いした。



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5月17日の花言葉は「清く美しい心」
式の流れがわかりません……。
誓いとかするの?誰にするの?
あれかな、出席者に宣言&誓いかなあ。
同性婚の式の流れはどうすれば……。資料が上手く見付かりませんよ。
そもそもマジックさんの『神』の概念ってどれ?
とか考え出すと止まりません。珍しくちゃんと結婚させる気はあるのですが!
どこかによい資料がありましたら教えてやってくださいm(__)m