ありえたかもしれない一つの可能性としての物語
――または
一つの転換期


がまずみ




「シンちゃん。みーつけた」
屋上の物陰に隠れる息子をマジックは覗き込んだ。
小さなシンタローは驚いた。
「なんで……」
「ん? どうしてシンちゃんの居場所がわかったかって? そんなの決まってるだろう? パパはシンちゃんのことならどんなことだってわかってるんだよ☆」
シンタローは信じられるものかとぷいっと顔を背けた。
マジックは眉を下げて、そっとシンタローの隣に腰を下ろした。
「シンちゃん。シンちゃんはキンちゃんのこと嫌い?」
「だいっきらい」
「どうして?」
「だって……」
シンタローは膝を抱えて顔を埋めた。
マジックは息子の小さな身体を抱きしめた。
「パパ?」
「シンちゃん、パパはね、なにがあってもシンちゃんのパパだよ」
「…………」
シンタローはじっとマジックを見つめた。
「パパはね、シンちゃんが『もうおれはパパの息子じゃないんだ』って言っても、ずっとシンちゃんのパパだし、シンちゃんはパパの息子だからね」
「……ほんとうに?」
「当たり前じゃないか。シンちゃんは不満?」
幼いシンタローは首を振った。
「でも……ほんとうにおれはパパの息子なの? あいつがほんとうのパパの息子で、おれはニセモノなんじゃないの?」
「どうしてだい?」
「だって、おれ、あいつみたいに金髪も青い目も持ってない。それに、パパみたいに強くないし……」
ぎゅっと口を結ぶ息子の肩をマジックはポンポンと叩いた。
「シンちゃんは強いよ。シンちゃんは、パパの自慢の息子だよ」
「ほんとうに?」
「本当さ。さあ、戻ろう。みんな心配しているよ」
「うん」
シンタローは頷いて立ち上がった。
途端、慌てたように離れていく扉の向こうの気配に、マジックはそっと溜息をついた。



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6月22日の花言葉は「無視したら私は死にます」
なんだか素敵な花言葉だと思ったヨ。もうひとつ花言葉もあったけど、あえてこっち。
もう一つのほうは「愛は死より強し」。