ありえたかもしれない一つの可能性としての物語
――または
一つの転換期


バラ




「さて」
シンタローを連れ部屋に帰って来たマジックは、表面上はそれなりに仲良く見える小さな息子たちにひとまず安堵の溜息を吐き、背後に控える秘書を振りかえった。
「今日の予定はどうなっていた」
「午後に会議が1件。開発課とのものです」
「他は」
「本日はそれだけです。今週は休養期間ということで、あまり予定を入れませんでした」
シンタローの予定を読み上げるティラミスにマジックは息を吐いた。
「それをジャンに言ったかね」
「……はい。尋ねられました」
ヨウイシュートー。コタローは呟いた。
「抜け目ないからねえ」
マジックは苦笑するとティラミスに指示を出した。
「今日から1週間の予定は全てキャンセルだ。他国にこのことが洩れないようにしろ。それから、私に処理できる案件があれば回してくれ」
「はい」
ティラミスは一つ礼をすると部屋を出て、慌しく動き出した。
「お父さん。僕が手伝える事ってある?」
見上げてくるコタローにマジックは優しく笑み、ポンとその肩に手を置いた。
「なら、シンちゃんたちを頼めるかい?」
「うん。任せてよ!」
コタローは誇らしげに胸を拳で叩き、早速と小さな兄たちへと向って行った。
マジックはポケットから小型のGPS受信機を取り出し、団内をうろちょろ動く発信機にどうしたものかと溜息をついた。



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7月15日の花言葉は「愛・嫉妬・あなたを尊敬します」
ジャンを出したい……