ありえたかもしれない一つの可能性としての物語
――または
一つの転換期







「あっ! シンちゃ〜ん!」
キンタローと仲良く喋っていたグンマは、マジックに手を引かれて戻ってきたシンタローに気付くと駆け寄った。
「心配したんだよ!」
「なんだよグンマ。ひっつくなよ」
シンタローは抱きつくグンマに身をよじり、照れ隠しにそっぽを向いた。
「だってシンちゃんいなくなっちゃうからぁ。キンちゃんだって心配してたんだよ〜」
グンマの言葉にシンタローはその後ろに立つキンタローの存在に気がついた。
「……」
「……」
睨みあう二人。
先に口を開いたのはシンタローだった。
「……悪かったな」
「……別に」
視線を逸らしキンタローは答える。
その態度にシンタローは睨む力を強くした。鋭く睨め付け、いくつかの言葉を飲み込み口を開いた。
「っとにかく、謝ったからなっ!」
「……別に謝ってくれなくて良い」
「なんだとっ!!!??」
怒鳴りキンタローの胸倉を掴み上げた。
「うわあぁん シンちゃんがおこった〜〜」
シンタローの怒気に、不穏な空気に慣れていないグンマが泣き出した。
「怒ってねぇ!!」
「怒ったぁぁあああ!!」
「ふえっ。ふえぇぇぇっん」
泣き喚くグンマに釣られてキンタローが大泣きしだした。
「おいおい。なにやってんだよおまえ達。あーもう、ほら泣くなって!!」
コタローはグンマとキンタローの顔を拭くと立ち上がり、腰に手を当てシンタローたちを覗き込んだ。
「仲良くしろよ。友達だろ?」
「お兄ちゃん、だれ?」
涙を止めた眼でグンマはコタローを見上げた。
「僕は――」
コタローはなんと言うべきか悩み小さな兄たちに不審がられるほどたっぷり思案した後、おもむろに口を開いた。
「……お前たちの従兄弟のお兄ちゃんだ!」
「いとこぉ?」
不審な目を隠そうともせずにコタローを見上げたのはシンタローだった。
「俺の従兄弟はグンマだけだ」
「従兄弟というと、父さんかルーザー叔父貴の息子か」
「あとサービス叔父様かハーレム叔父様かもしれないよ?」
冷静に分析しだす7歳児たちにコタローは冷や汗をかいた。
(これはバレるよ……)
「そうかっ!」
小さなシンタローはポンと手を打つと片手を腰に当てコタローをビシッと指差した。
「おまえ、獅子舞の隠し子だろ!」
「ハーレム叔父様の隠し子?」
「そういえば似ている気がする……」
「え、えーと」
「ふふん。隠しても無駄だからな!」
「わっ! シンちゃんすごーい!!」
「……ハーレム叔父貴の隠し子。それなら納得がいくな。よく見れば似ている」
「そ、そうかな。僕、そんなに似てる?」
「ああ! そっくりだな!」
「そっか。そっかぁ……」
コタローは密かにショックを受けガックリ肩を落とした。



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花言葉、忘れました……。
キンタが泣いてるのは、小さなキンタは泣き虫だと可愛いんじゃない!?と友達と盛り上った結果です。