柳たんぽぽ |
「なぁ、さーびすぅ。」 分かりやすいおねだりの声に、サービスが本から顔を上げると、手に櫛を持ったジャンが、サービスの座る椅子の前に立っていた。 わくわくしているのがはっきりと分かる顔に、サービスは少し笑う。 「なに。」 「な、な。髪、梳かさせてくれよ!」 尻尾が生えていたら、ぶんぶんと大きく振られていそうだ。 マテをして、しゅんとさせてみたいような気もしたが、まあいいかと頷いた。 ヤタ!と、ジャンはパタパタ小走りに、サービスの背後に回り込んだ。 サラサラの髪に手を掛け、そっと櫛を通す。 「やっぱりキレーだぁ〜、サービスの髪!」 「そう?」 視線を本に落とし、ジャンの動きに身を任せる。 時々項に当たる手がくすぐったい。 「サラサラだし、スベスベだし、触ってて気持ちいいし、マジック様のとは大違いだ。」 手放しの称賛が嬉しい。 あの兄よりも、というのなら尚更。 なんて、下らない対抗心。 「恋愛感情じゃ、ないんだけどネ。」 「ん?なんか言ったか?サービス。」 顔を覗き込むジャンに、サービスは頭を振った。 ジャンはふーん、と頷くと、ポケットから少女趣味なリボンやゴムやヘアピンやバレッタを取り出した。 放って置けば、髪は物凄いことになるだろうな、とサービスは見当を付けた。 この前ジャンに遊ばれた時は、ワックスやムースで固められ、落とすのに一苦労だったのだ。 「今日はリボンと一緒に編み込むだけだって。」 サービスの心を察したのか、伺うようにジャンは口を開いた。 ダメ?と聞いてくる瞳に、サービスは少し考え、答えた。 「いいよ。その代わり、後でシャンプーからブローまでしてもらうからネ。」 「了解!」 にっこり笑って、嬉々として準備を始めるジャン。 その背中になんとなく、サービスは言葉を届けた。 「愛してるよ、ジャン。」 ジャンは振り返り。にっこり笑った。 「オレも愛してるぜ、サービス。」 二人は微笑み合い、それから、ジャンは準備に、サービスは本へと戻った。 ‐‐‐‐‐ 5月16日の誕生花「柳たんぽぽ」 花言葉は「宣言」 うちのサービスとジャンは、×というより&な関係。 |