おだまき(赤)


 ぐっと押しつけられた二枚のチケット。
 ジャンはチケットとキンタローを見比べ首を傾げた。
「なんだよキンタロー。」
「この間懸賞で当てたのを忘れていた。」
「へー。キンタローが懸賞に応募するのってなんか意外だな。って、そうじゃなくてさ。」
「有効期限は明日までだ。確か、明日オマエは休みだったな。」
「うん。こないだ休日出勤した代休。」
「グンマも休みなんだろう。二人で行くといい。」
 キンタローは言いたいことを全て言ったのか、研究に戻っていった。
「グンマと……遊園地?」
 事態が未だ飲み込めず、ジャンは廊下に立ち尽くし、後ろから高松に蹴を入れられた。



「でさ、いきなりげしっ、だぜ?容赦無いよ高松は。」
「あはははは。」
 グンマの部屋のベッドの上で二人は話し込んでいた。
 ピンクとブルーの色違いのパジャマ。
 ジャンはココアの入ったマグカップに口を付けた。
「遊園地かぁ。」
「行くでしょ?ジャンさん。」
 にっこり笑うグンマに、ジャンは腕組みをした。
「うーーーん。」
「どうしたの?」
「だってよ、初デートじゃん。やっぱこう、オレがグンマを誘うとかしたかったかなってさ。」
「うーーん。でもね、ジャンさん。僕はなんだか嬉しいよ?」
「なんでだよ。」
「だって、これって僕たちが愛されてるってことでしょ?」
「そっかー?要らないもの押しつけられた気がすんだけど。」
「そんなことないよ!」
「そうかなぁ。」
「そうだよ!それにこれ、多分、キンちゃんが買ってきてくれたんだよ?」
「え?なんでそう思うんだよ。」
「だって、どこの遊園地が好きかって聞かれたし、チケットの領収書見ちゃったもん!」
 ジャンはまじまじとチケットを手にとって見つめた。
「ふぅん。そっかーーー。キンタローめ、お気遣いの紳士っぷりを発揮しやがって。」
 懸賞で当たったなどと嘘をつく必要なんてないのだ。
「あはは。キンちゃんらしいよね!」
 気を使わせたくなかったんだねーとグンマは笑った。
「ま、じゃあ、キンタローの顔を立てて、ありがたく使わせていただきますか。」
「うん!僕、すっごく楽しみだよ!いっぱい遊ぼうね、ジャンさん!」
「ああ。そうだな!」
 二人は顔を見合わせて、にっこり笑い合った。



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6月2日の誕生花は「おだまき(赤)」
花言葉は「素直」
にゃんにゃん、いつかリベンジ。