マリーゴールド


 ハーレムはガンマ団日本支部の屋上でタバコを吹かしていた。
 用があってわざわざこの支部に寄ったのだが、総帥の叔父という立場のハーレムには、非常に居心地の悪い場所だった。
 支部内にいるのも、飛行船にいるのもゴメンで、結局人のいない屋上に腰を下していた。
 一箱吸いつくし、クシャリと箱を潰す。
 最後の一本に火を点け、フウと煙を吐いた。
「あ、ハーレム見っけ。」
 屋上のドアを開け、ぴょこりとジャンが顔を出した。
 ハーレムはタバコを持った手を軽く上げることで応える。
「捜したんだぞ?部屋にも船にもいないし。なにやってんだよ、こんなとこで。」
「星、見てたんだよ。」
「星?」
 ジャンはハーレムの隣に腰を下すと、後ろに手をついて空を見上げた。
「へー、結構凄いな。」
「だろ。」
 ジャンはそのままパタンと仰向けに倒れた。
「キレーだ。星ってさ、何億年も前に光ったものを、いまオレたちは見てるんだよな。スゲーや。」
 ハーレムは一口吸い、短くなったタバコをコンクリートの地面でもみ消した。
「サービスはどうしたよ。」
「もう寝たよ。夜更かしは美容の大敵ってさ。」
「ふーん。じゃあ、部屋に戻っか。」
 ハーレムは立ち上がると、ジャンに手を差し出し、その手を取るジャンを引き上げた。
 そのままジャンを掴むと、肩に担ぎ上げる。
「落ちるなよ。」
「……オレは荷物か。」
 ハーレムはジャンの抗議に構わず建物に入った。
 はあ、とジャンは息をつき、バシバシと目の前にあるハーレムの背中を叩いた。
「んだよテメェ。」
「久しぶり。ただいま。」
 世界を飛びまわっている二人は、一年の殆どを離れて暮らす。
 会う場所もまちまちで、本部やガンマ団の支部のこともあれば、どこかの戦場という事もあった。
 それでもお互いに、場所がどこであろうとも、帰る場所はココだと、ココなのだと思っていた。
「おう、ただいま。」
 ハーレムは笑い、空いた手でジャンの頭をかき混ぜた。



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6月5日の誕生花は「マリーゴールド」
花言葉は「可憐な愛情」