ニガヨモギ


 眠る顔を見つめた。
 ベッドの横に椅子を置いて。
 朝から晩まで。
 ジャンは団にいる時はずっと、眠るコタローの傍にいた。

 シュウと部屋の扉が開いた。
「帰ってきていたのか。」
 部屋に入ってきたのはキンタローだった。
 バイタルサインチェックに来たのか、コタローの脈拍や体温を測っていく。
「いつも帰ってくるとここにいるな。」
「んー。傍にいたいんだよ。」
 ジャンはゆったりと答えた。
「どうしてだ?おまえがオレやグンマやシンタローに負い目を感じているのは知っているが、コタローはおまえの所為ではないだろう?あれはマジック伯父貴が悪い。」
 ジャンは微苦笑して、コタローの寝顔をまた見つめた。
「なんでかなあ。オレは、コタローにしてやれる事全部してやりたいんだよ。こいつが目覚めたら、望むこと全部してやりたいんだ。」
「どうしてだ?」
「どうしてなんだろうな。好きなのかもな。」
 キンタローははぐらかされたかと思ったが、ジャンの愛情深い瞳に、考えを改めた。
「ジャンはコタローが大切なんだな。」
 ぱちぱちと、ジャンは瞬いた。
「ああ、そう…なのかもな。うん、そうなんだろうな。」
 優しく微笑んで、ジャンはコタローの髪を撫でた。
























「オジさん、だれ?」

 不審そうな声。

「兄さんに、コタローを鍛えて欲しいって頼まれたんだ。一緒に来る?」

 警戒を解くようにジャンはにっこり笑った。

「おじさんって酷いなあ。オレの名前はジャン。前任の赤い秘石の番人。よろしく、コタローちゃん。」

 差し出すジャンの手を、コタローはおずおずと握り返した。

 手を掴むコタローの動きに感動して、ジャンは眼の淵を赤くした。



  君が目覚めるのを待っていたよ。







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6月7日の誕生花は「ニガヨモギ」
花言葉は「少しだけ笑って」