ジャスミン |
サービスの私室でジャンとサービスは本を読んでいた。 とはいっても、実際本を読んでいるのはジャンだけで、サービスは床に座り本を捲るジャンを見つめているだけだった。 本を読むジャンの尻尾がメトロノームのように振れていた。 夢中になるほど面白い本なのかな、とサービスはその動きを眺めながら微笑んだ。 愛しくて愛しくて仕方がない。 ふりふり振れる尻尾も、ぴくぴく動く耳も、どれだけ見ていても飽きないのだ。 じっと見つめるサービスの視線に気が付いたのか、ジャンが振り返った。 「なに?サービス。」 尋ねるジャンに首を振ることで答える。 「ふーん。」 ジャンは立ち上がり、とことことサービスに歩み寄った。 シャランシャラン ジャンに着けられた首輪に繋がる鎖が音を立てた。 ジャンはサービスの前に来ると、ぺたりと足元に座りこんだ。 ソファーに腰掛けるサービスの脚に甘える様に擦り寄った。 「くすぐったいよ、ジャン。」 「あはは、ひっでー。」 頬を寄せ、正面に回り、サービスの踵を持ち上げ、そのつま先に口付けた。 上目遣いにジャンは見る。 「なあ、これ、外さない?」 くいっと首輪に指を掛けてジャンはサービスに頼んだ。 「ダメだろ?犬はキチンと繋いで、誰の持ち物か知らしめないと。」 サービスは手に持った鎖を引いた。 シャランと音を立ててジャンの首が持ち上げられる。 「ジャンは犬なんだから、ちゃんと私のモノだって主張しとかないとネ。」 兄さんにまた取られちゃうと、サービスは言った。 昨夜、部屋に帰らなかったことに対して、まだ拗ねてるのかと、ジャンは息をついた。 マジック様の所為ばかりとは言い切れない。煽ったのは多分自分。 ジャンは仕方ないなと、立ち上がった。 サービスに向かい合う様に跨った。 膝に乗り、ぎゅうと首に抱きつく。 「重いよ、ジャン。」 「いいだろ?犬は飼い主に甘えるもんなんだよ。」 ジャンは、自分でしておきながら、恥ずかしいのか、少し頬を赤くする。 サービスは可愛いなあとジャンの後ろ頭を撫でた。 ブンブンと本能のままジャンの尻尾が振れた。 フフフッとサービスは笑った。 ジャンはサービスの笑い声に、身体を少し離し、おでこ同士をこつんとくっつけた。 「機嫌は治りましたか?ご主人様。」 にっこりと、芝居がかった口調で瞳を覗きこむジャンに、サービスも笑い掛けた。 「まだもうちょっと、甘えられ足りないな。」 両腕を伸ばすサービスの胸に、「了解っ」とジャンは飛び込んだ。 ‐‐‐‐‐ 6月8日の誕生花は「ジャスミン」 花言葉は「愛らしさ」 こんなんでも親友。 |