ユリ


※注意
 パラレルです。
 もしもジャンがPAPUWAで、伊達衆と一緒にパプワ島に放りこまれてたら……。
 というIF設定の上でのお話。
 コケシになっていないのは、多分速攻でリキッド側についたから。
 でもパプワハウスで暮らしていない。
























 忍び込んだ先に、それは在った。
 青く丸い輝く石。
 オレの敵。
 敵だった石。

 手を伸ばし、触れる前に引っ込める。
 もう一度。
 それでも触れられなかった。
「どうかしたのか?こんな夜中に。」
 ハッと声の方向を見ると目を擦る子どもの姿があった。
「すみません。起こしてしまいましたか。」
「ああ。おまえ、子どもの貴重な睡眠時間をなんだと思ってる。」
「申し訳ありません。」
 謝るジャンを、パプワはじっと見つめた。
「なにかあったのか?」
 ジャンはそっと頭を振った。
「いいえ。ただ……。」
「ただ?なんだ?」
「ただ、私はこれに触れるのかと……。」
 話し声で起きたのか、目を開けるチャッピーをジャンは撫でた。
 コタローとリキッドは眠ったままだった。


 昔の話だ。
 昔、サービスや高松と共に仕官学校にいた頃、一度だけ、一人で青い秘石に近づく機会があったのだ。
 ジャンは躊躇い、手を伸ばし、引っ込め、そして青い秘石を掴んだ。
「グッゥ……。」
 焼け爛れるかというほどの電流。
 否、存在を否定する、強い力。
 ジャンは手を押さえ床に膝をついた。
 青は赤の番人の存在を認めない。
 ジャンに分かったのはそれだけだった。


「ただ、いまなら触れるかと。」
「触ってみるといいぞ。」
 パプワは強い瞳でジャンを見上げた。
 手を伸ばす。
 そして引っ込めた。
 じっとパプワはそれを見つめた。
 チャッピーも緊張した様に固まっていた。
 そしてジャンは手を伸ばし、カチンと指先で石を叩いた。
 手を空中でさ迷わせ、ゆっくりと石に触れた。
「……触れた。」
「ああ。よかったな。」
 手を引っ込ませ、呆然と呟くジャンに、パプワは優しく言葉を掛けた。
 ジャンは途惑った様に笑って、立ち上がった。
「また、来ます。」
「ああ。今度は昼間に来い。」
「はい。」
 ジャンは頷き、パプワハウスを後にした。


(ぶっちゃけあんな眼で見るか?フツー)
 青い秘石の視線も考えも、ジャンには届かない。
 ふう、と。
 青い秘石は詰めていた息を吐き出した。
(赤玉がかわいがる理由がわかったよ、番人)
 一途過ぎる子に苦笑して、青の秘石は意識を沈ませた。



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6月11日の誕生花は「ユリ」
花言葉は「威厳」
パラレルでごめんなさい