毛無山 (けなしやま)

(1,946m、山梨・静岡)  131座

毛無山山頂からの富士山。


麓登山口〜毛無山往復

2005年4月9日(土)

相模原530−612相模湖IC−河口湖IC−R139−朝霧高原−730麓(ふもと)駐車場740〜824二合目832〜910四合目920〜940五合目〜1006六合目〜10267合目〜1102八合目〜1125富士山展望台〜1137九合目〜1143分岐点〜1200毛無山1300〜1404五合目1415〜1510登山口

 毛無山という山は全国で20座以上もあるという。昔の人は杉や檜など針葉樹が生えていない山を、「ハゲ山」とか「毛無し山」などと呼んだからだろう。
 今回めざすのは富士山の西側、朝霧高原の近くにあり、日本200名山に選ばれている「毛無山」である。

 朝5時30分に家を出た。外はすっかり明るくなっているが、思ったより雲が多い。昨夜の天気予報では「快晴」と報じていたので、やがて晴れて来ることを期待しながら相模湖ICへと向かった。

 津久井湖の桜が満開だった。湖面に写すピンク色がよく映えた。今日は花見客で賑わい、帰りは渋滞してしまうかも知れないと思った。
 民家の庭先にもモモやコブシ、ミツバツツジなどが咲いており、まさに春爛漫のドライブだった。

 相模湖ICへ6時12分着。
 河口湖ICまで来ると正面に少しモヤっているが大きな富士山が見えた。前回、愛鷹山から見た富士山は宝永火山がコブのように見えたが、ここから見る富士山は、すっきりとして美しい。

 河口湖ICから朝霧高原をめざしてR40を走っている時、道端にキツネがいた。北海道にいるキタキツネよりも一回り小さいが、こんな所でキツネに会うなんて驚いた。

 朝霧高原は文字通り朝霧だった。いや、霧ではなく霞だろう。春の霞でモヤっており、富士山も目指す毛無山も見えなかった。

 東京農大農場を過ぎ、麓(ふもと)集落へ入って行く。民家は5、6軒しか見当たらない。駐車場(写真左)へ7時30分に到着。思ったより早く着いた。広い駐車場には先客の車が3台あった。私が準備をしている時、もう1台入って来た。

 準備を済ませ、7時40分に出発。
 登山口は駐車場の隣にあった。ゲートの脇をすり抜けて進んで行く。

 5、60メートルも行くと右手奥に小さな神社があった。そして、道端に「麓金山精錬場跡」と書かれた案内板が立っていた(写真右)。こんな所に金山があったとは驚いた。もしかしたら信玄の隠し金山だろうか、と思ったが、近くに石を砕いた機械が真っ赤に錆びて立っているのを見ると、さほど古い時代のものではなさそうだった。

 そこから沢沿いの道を少し進んでから、さっき精錬跡地で写真を撮った時、ストックを忘れて来たのに気づいて引き返す。

 分岐点へ7時58分着。迷わず右側の尾根コースを行く。ここは杉林の急登だった。しかし、杉林はすぐに終わり、葉を落とした雑木林となった。しばらく登るとゴロゴロした大きな石が現れて来た。

 少し斜面が緩んだ尾根へ出ると、左手に沢の音を聞くようになり、右手に山頂らしきものが見えた。しかし、樹木が多過ぎて写真は撮れない。

 いつの間にか青空が広がって来た。二合目の標識の所で休憩。実に爽やかだった。小鳥のさえずりと沢のせせらぎを聞きながら、花の百名山の著者である田中澄江さんが、「仕事の疲れは山でとる」と言ったが、まさにその通りだと思った。一汗かいて春の日差しを浴びていると、ここで昼寝でもしたくなって来たが、まだ二合目なのでそうもいかない。早々に出かけることにした。

 歩き出して1、2分もすると「不動の滝展望台」へ着いた。右手正面奥にすばらしい滝が見えた(写真右)。どうせならここで休めばよかったと思った。そして、あの二合目の標識に、せめて「不動の滝まであと1分」とか、あと何メートルとか書いてくれたらなあ・・、と思いながら、ザックを置いて写真を撮った。滝の上には頂稜が見えたがモヤっているためどれが山頂か分からなかった。(滝の拡大写真は→こちら)

 ここからは凄い急登になった。岩や木などに掴まりながら、ただひたすら登って行く。ここは地図で大雑把に見る限り、4kmほどの距離で高度1,100mも登らねばならない。半端な急登ではない。
 笹が生い茂るようになると、すぐに四合目へ着いた。ここでも1本立てた。やはり高度1,100mも登るとなるとピクニック気分という訳にはいかない。

 9時20分発。
 駐車場から二合目まで1時間かかり、四合目まで2時間もかかっている。こんな調子でいくと六合目で3時間、八合目で4時間、山頂まで5時間もかかってしまう。
 少し斜面も緩んで来たが、それでも急登に変わりはなかった。

 突然、「WELCOM TO 5GOME」と書かれたユニークな標識が現れた(写真左)。思わず「Oh I am happy!」と言ってから、「I am glad to see you」とデタラメな英語でつぶやいた。しかし、待てよ。人に会った訳でもないのに「see you」というのはヘンだな! と思った。どうせ言うなら「get 5gome」かな? と思いながら、苦笑いをしてしまった。

 7合目を過ぎ、5分ほど登った所に開けた草原のような所があったので、腰を下ろして休憩する。右手にテッペンらしいものが見えて来たが、樹木が多くてシャッターは切れない。

 ここからしばらく歩いた時、珍しい鳥を見た。白とピンク色の綺麗な鳥で、大きさは山鳩を一回り小さくした位である。

 途中で下って来るオジさんに会った。この人は私の後に駐車場へ入って来た人である。私がストックを忘れて引き返している時にすれ違いに登って行ったが、もう下って来るとは恐れ入った。
 私が、「早いですねえ・・」と声をかけると、「私は訓練でここを登っていますから・・」との言葉が返って来た。

 あと10分位でこの尾根の頂部にある分岐点へ着くだろうと、最後の急登にあえいでいる時、足元に八合目の標識があった。忠実な標識は有難いが、どうせなら「分岐点まであと○分」とか書いてくれると助かるんだがナア・・・。

 途中で胃が痛くなって来た。これは持病で空腹になると痛くなることがある。しかし、今日はラーメンだけしか持って来なかったので水を飲んで我慢した。

 かなりペースダウンして、ヨタヨタしながら登って行くと、「富士山展望台」と書かれた標識があった。正面にはボッテリした丸山しか見えなかったが、振り向くとすばらしい富士山が見えた(写真右)。思わず歓声を上げてしまった。早速、ザックを置いて写真を撮り、しばし見とれてしまった。

  (皆さんも ここ をクリックして富士山を堪能して下さい)

 さらに急登は続く。しばらくすると九合目の標識が現れた。なんでこんな所に標識を立てるのだろう、と思った。あと5分も頑張れば目の前の頂稜へ着くはずなのに・・・、標識なんて無い方が有難いと思った。
 案の定、4、5分で頂稜にある分岐点へ着いた。ここは丁字路になっており、左が丸山、右が山頂である。残雪がわずかにあった。

 私が写真を撮っていると、丸山の方から来た人が「ここが山頂ですか?」と声をかけて来た。「ここは分岐点ですよ」と言うと、「山頂じゃあないんですか・・・」とガッカリしたように言った。

 そこからは残雪がたっぷりあった。その雪道を2、3分ほど進むと、「南アルプス展望台」と書かれた岩があった。その岩に登って見ると、目の前に甲斐駒から白峰三山、荒川、赤石、聖まで並んで見えた。最高のロケーションだった。



(右から荒川岳、赤石岳、聖岳)

(右から北岳、間ノ岳、農鳥岳)

 ここから残雪を踏んで進んで行くと、腐った雪を踏み抜いて膝まで落ちること5、6回。やっと雪の無い、だだっ広い草原のような台地が見えて来た。そこが山頂だった。(写真右下)

 毛無山の山頂へ12時ジャストに到着。山頂からは目の前に富士山がバッチリと見えた。雲海に浮かんだ富士山を見ながら「来た甲斐があった」、と思った。
 山頂には先客が一人いたが、すぐにご夫婦がやって来た。そのご夫婦とお互いに写真を撮りあった。

 ここは一等三角点があり、毛無山の山頂となっているが、最高峰(1,964m)は北側に見えるピークである。しかし、そこまで行こうとは思わなかった。ここまで来ればもう充分である。山頂で富士山を見ながらラーメンを食べ、コーヒーを飲んでくつろいだ。

 13時ジャストに下山。
 この山は、自分が山頂に立っていながらどんな山容をしているのか未だに分からなかった。下から見上げた時は上部がモヤっており、上から見下ろすと下がモヤっているので、丸い山なのか三角の山なのか分からない。下りはぜひこの山全体の写真を撮りたいと思った。

 七合目あたりまで下って来ると、3人の中高年のパーティーと、20代前半の若者2人が登って来た。

 さらに六合目を過ぎると、私と同年代の単独行が登って来た。そして、「こんな登りがずーと続くんですかねぇー」と、うんざりしたような声で聞いて来た。
 私は「七合目を過ぎれば楽になりますよ」と励ましてやったが、この登りが苦しいのは私だけではないようだ、と思ってホッとした。

 「不動の滝展望台」まで来ると、若い女の娘が一人で休んでいた。その脇へ荷物を置いて写真を撮った。
 女の娘はまだ20才前のようだが、山の装備もせずに一人でこんな所にいるのが気になった。自殺でもされては困ると思って聞いてみると、私が途中ですれ違った青年二人とここまで一緒に来たが、リタイアして二人を待っているのだという。それを聞いて安堵した。私にも同じくらいの娘がいるので、つい気になってしまったが、どうも推理小説の読み過ぎだったようだ。

 (写真右は不動の滝展望台から山頂を撮ったもの。しかし、どれが山頂か分からなかった)

 登山口へ15時10分着。
 途中、道の駅からも富士山が見事に見えた。缶コーヒーを飲みながら、「全国には一度も富士山を見たことがない人もいるに違いない。その人達から見れば、晴れた日には会社から富士山を遠望し、休みの日には2時間も車を飛ばせば、こんな間近で見られることを幸せに思った。

 雪を抱いた富士山は、やはり美しいと思った。日本一美しい山であり、けしてスイスの山にも劣らないだろう、と思った。