小秀山 (こひでやま)

(1,982m、長野県、岐阜県)  163座

乙女渓谷の「二の谷コース」は魅力いっぱいの渓谷だ!



 2008年10月17日(金)

乙女渓谷キャンプ場〜二の谷コース〜小秀山〜三の谷コース〜乙女渓谷キャンプ場

下呂温泉の宿500-540乙女渓谷キャンプ場605〜758男滝の上部〜830鎧岩847〜924カモシカ渡り931〜954三の谷分岐1000〜1032兜岩〜1145小秀山1220〜1305兜岩1313〜1333三の谷分岐1340〜1457管理棟1507〜1535乙女渓谷キャンプ場

 この山は、つい「こしゅう山」と読みたくなるが、「こひで山」と読む。この山は長野と岐阜の県境にある阿寺山地の主峰で、昔から裏木曽の名峰と言われてきたそうである。

 その裏木曽の名峰に登るのに木曽側からのコースはなく、岐阜の加子母(かしも)にある乙女渓谷キャンプ場から登ることになる。そのため関東からの日帰りは難しい。
 そこで、昨日は位山へ登って下呂温泉へ泊り、今日、小秀山へ登ろうという訳である。

 下呂温泉の宿を5時に出発。まだ真っ暗で、昨日確認しておいた乙女渓谷への入口を通り過ぎてしまい、5〜6km先の道の駅まで行って引き返す。

 舗装がしてある林道を走り、「本当にこんな所にキャンプ場があるのだろうか?」と心配になった頃、立派な施設が並ぶキャンプ場へ着いた。
 キャンプ場には、登山者のものと思われる車が2台止まっているだけだった。広い駐車場へ車を止め、身支度を整えて管理棟で登山届を出していると、近くに止めてあった車からオジさんが 顔を出す。車中で寝ていたオジさんを私が起こしてしまったようだ。このオジさんとしばらく話し込む。

 6時5分発。
「二の谷コース」は管理棟の脇の階段を下り、木製の太鼓橋(写真)を渡って行く。大分明るくなってきたが、写真を撮るには光線不足である。

 それに、ここは熊がいるというので要注意。今日は私が一番乗りなのでいつ熊と遭遇するか分からない。木の橋(桟橋というのかも)であっても、時々ホイッスルを吹きながら登って行った。

 最初に現れたのが「乙女渕」というナメ滝だった。
 木の橋はまだまだ続く。

 自然の山道とは違い、急な階段が連続するとシンドイ。

 しばらくすると、両側が切り立った廊下状の所へ出た。思わず黒部峡谷を思い出した。

 そして、今度は谷底の方を眺めた時、あの黒々とした岩の裂け目から、ヌーと熊が出てきそうな気がした。でもここはかなり高いので熊も易々とは登ってこられまい。

 さらに登って行くと、小さな滝が次々と現れる。
 今度は「ねじれの滝」が現れた。

 この滝を過ぎると、桟橋から登山道になり、2〜3分も歩くとシャクナゲの群生地があった。今は花の時期ではないが花が咲いたらさぞかし見事だろうと思った。

 また木の橋を渡って対岸へ。この橋の真ん中に長イスが2つ置いてあった。ここで腰を下ろして渓谷を見ながら、マイナスイオンを存分に吸って下さい、という配慮なのだろう。

だんだん紅葉も良くなって来た。
 すぐに「和合の滝」が現れた。高さは3mぐらいだろうか。ここから左側を登って行くと、「声の泉」という標識が立ち、小さい字で(耳を澄ますと乙女のささやきが)と書いてあった。なかなかロマンチックな標識だ!

 そこから左手を見ると、小さな沢があった。和合の滝の音にかき消されそうだが、かすかにせせらぎが聞える。これが乙女のささやきだろうか。

さらに紅葉が良くなって来た。

 紅葉の写真を撮っていると、「電池の残量が少なくなりました」とのメッセージ。ヤバイ!

 しばらくすると分岐があった。標識には、「右:夫婦滝展望台、左:夫婦滝」と書いてあった。せっかくだから展望台へ寄って行こう。そこから30mほど行くと高台に櫓を組んだような展望台があった。そこからは遥か遠くの山頂付近から二筋の滝が見えた。それが夫婦滝で、これをアップで撮ろうとした時、バッテリーの電池が無くなって動かなくなった。はい、それま〜で〜よ〜!△#〇!▲&

 せっかくここまで来ていながら、夫婦滝の写真が撮れず、これから先何も撮れないなんて本当に悔しい。でもジタバタしても仕方がない。バッテリーの予備を持って来なかったのがいけなかった。(と言う訳で、ここから先の写真はありません)

   再び分岐へ戻り、夫婦滝をめざして行くと、突然、小屋が現れた。私が持っている地図には避難小屋は載っていない。真新しい小屋で中を覗こうとしたら玄関に「土足禁止」の表示。中はピカピカのフローリングだった。こんな立派な小屋なら泊まってみたいと思った。

 小屋の脇の沢を少し登った所から、左手の尾根へ取りつく。ここはもう普通の登山道である。
 ひと汗かいた時、「烏帽子岩」の標識があった。だがそれらしい岩は見当たらない。「どこにも無いじゃん?」と思いながら目を凝らすと、対岸の紅葉した木の奥にピョコンと突起した岩があった。「なるほど、あれが烏帽子岩か・・・」と納得。

 岩がゴロゴロした急登を登って行くと、「夫婦滝展望台(左の岩に乗ると二筋の滝が見えます)」という標識が立っていた。早速、その岩に乗ると、二筋の滝が大きく見えた。この位大きく見えると迫力があっていい。ここで滝を見ながら一服しよう。

 しかし、返す返すも写真を撮れないのがイタイ。
 コースはあの滝を巻いて真上へ出るが、あとワンピッチで行けるだろう。

 歩き出すと、真っ赤に色づいたモミジが、登山道一面を覆っていた。思わず息を飲んだ。あ〜あ、写真が撮りたいナア・・・。
 先ほどの展望台から10分足らずで夫婦滝(男滝)へ着いた。どうせならここで休憩すれば良かったと思った。滝は最上部から滝壷まで見えた。ここから見ると白糸のようで美しい。
 標識には「小秀山まで4.01km」と書いてあり、さらに「ここからは軽装では登れません」とも書いてあった。

 私が持っている地図では、滝の右側から登るように書いてあるが、実際は左側を登って行く。ここは岩がゴロゴロした急登で、観光客には登れない。
 ついに男滝の上部へ立った。7時58分。そこから15mほど先に、落差10m位の「小滝」があった。その小滝の前に架かった丸太の橋を渡って対岸へ。そして尾根を登って行く。

 真っ赤なモミジが綺麗だ。山全体が色付いている訳ではないが、ここは紅葉を見下ろすことが出来る。昨日登った位山は木が大きく、紅葉を見上げるのに首が痛くなった。

 尾根を少し登って左へトラバースして行くと沢へ出た。沢を徒渉して左側(右岸)へ渡って30〜40mもほど進むと、「孫滝」が現れた。ここが最終水場らしいので沢水を一口飲んで行く。

 ここからは、かなりの急登になった。苔むした岩がゴロゴロし、足元が滑りやすい。しかし、この急登も長くは続かず、左へトラバースして主尾根へ出た。すぐに大きな岩が現れた。

 ここからも急登は続く。木の根っこに掴まりながら攀じ登って行くと、「鎧(よろい)岩」があった。標識には、「一周お回り下さい」と書いてあった。早速一周したが、とにかくデカイ岩だ。3階建ての住宅ぐらいの大きさだ。そしてテッペンがちょうど屋根ぐらいだ。

 せっかくなのでテッペンに登ってみようと思い、空身で登り出したが途中で引き返す。下りで怪我でもしたら大変だ。

 ここからは急登というより、ほとんど直登だ。今日は桟橋の階段登りで少しペースが狂ってしまい、ペースがガクンと落ちた。時々、立ち止まって紅葉を眺める。

 ヤセ尾根へ出た時、「第一展望台」の標識があった。
 さらに急登を5、6分ほど登ると、「第二展望台」があった。しかし樹木が多くて展望は利かなかった。
 ここからは、少しなだらかになった。

 しばらくすると、主尾根へ出た。もしかしたら稜線かも知れない。「第三展望台」へ9時17分着。

 ついに出た「カモシカ渡り」の標識。岩と木の根っこの直登である。普通ならクサリかロープがあってもよさそうだが、何もない。
 しかし、実際に登って行くと、太い木の根っこや岩角などがあり、特に心配することはなかった。ただ、体力消耗は激しい。

 ここを登り詰めた時はヘトヘトだった。ここに、「兜(かぶと)岩眺望」という標識があり、「小秀山登山道のピラミッドピーク」と書いてあった。
 ここから見るピラミッドピークはすばらしかった。三角形の山の頂点にキラキラ光るモノが見えた。それが兜岩らしい。ぜひ、あのピークに立ちたいと思うが、まだまだ遠い。

 ここからヤセ尾根を行く。小さな岩場を登ったり下ったり。また、森林の中を登ったり下ったりを繰りを返し、やっと「三の谷分岐」へ着いた。9時54分。ここで休憩。
 ここまで4時間もかかってしまったが、仕方がない。明るいうちに下山できればいい。

 三の谷分岐、10時発。
 やや広くなった尾根を、なだらかに登って行くと、樹木の間から兜岩が見えた。「格好いい!」と思うも、「まだあんなに登るのか!」とガックリ来た。
 しかしピラミッドがすばらしい。これだけでも日本200名山の価値があると思った。

 ピラミッドの兜岩直下まで来ると、『「直進」岩場コース、「右」断崖横断コース、どちらもルート最大の危険個所にて慎重に』という標識があった。

 私は迷わず直進した。ロープにつかまりながら登って行った。山頂部には大きな岩が5、6個あった。この岩全部を兜岩というのか、それとも一番高い岩を言うのか分からないが、帰りに岩のテッペンへ登っていこう、と思った。

 兜岩から3分ほどで第一高原へ着いた。ここは展望がいいので、しばし休憩。
 ここから20〜30m行くと、前山・唐塩山との分岐があった。そして、ここからはササが生えた明るい草原になった。道端には時々、真っ赤なドウダンやモミジがあり感動。

 なだらかなピークを越えると、森林地帯の下りになった。そして再び草原が広がる。クマザサとゴヨウマツの中に「第二高原」の標識があった。

 今度はコメツガの中をゆるやかに下って登り返す。やっと登り上げると、また下る。
 正面に見えるようになった、やや三角形の凛とした山が小秀山に違いないと思うと少し元気が出た。

 小さなアップダウンを繰り返し、「第三高原」の標識へ着いた。標識は小秀山との鞍部の少し手前にあった。標識には「山頂まで015」と書いてあった。あと15分で山頂!
 気合を入れて鞍部まで行き、最後の本峰への登りにかかる。しかし、気合を入れた割にはなだらかな登りで気抜けする。これが本当に本峰の登りなのだろうか、と思った時、急登になった。

 しかし、その急登もすぐに終わり、右へトラバースして行く。すると平らな所に小秀山の標識があった。「うそ〜、ここが山頂?」 ここが山頂のはずはない、と思って進んで行くと、大きな岩の奥に本当の山頂があった。11時45分着。

 誰もいない山頂で山座同定をするが、すぐ目の前にドーンと見える御嶽山は山頂部が雲に隠れていた。
 山座同定もそこそこに弁当を広げる。

 私が昼食が終わる頃、50代のご夫婦が登って来た。さらにその後から今朝キャンプ場でお話をしたオジさんが登って来た。これが今日一日で会ったオールキャストである。

 裏木曽の名峰といわれるこの山に、木曽側からの登山道がないと聞いていたが、新しい道が出来たようだ。山頂に、「白川林道へ」という王滝村の立派な標識が立っていた。そして、出来たての道が続いていた。まだ踏み固まらないホカホカの道だった。関東方面から行く人は王滝村へ問い合わせるといい。

 私は一足先に下山することにした。12時20分下山。
 下りは楽でいい。兜岩へ13時5分着。兜岩の一番高い岩に挑戦。この岩は三角形なので、跨いでズッて行かないと最高点へ着かない。私は抱っこしただけで戻って来た。この岩は北アルプスの烏帽子岳と似ていると思った。烏帽子の場合は若かったので跨いでズッて前進して最高点を跨いだが、今はそんな無茶はできない。
 もう、これで心置きなく下れる。兜岩からの下りは、巻道を下る。ここは巻道といっても「断崖横断コース」である。慎重に下った。

「三の谷分岐」近くの紅葉が綺麗だった。午後の日差しを浴びて輝いていた。
「三の谷分岐」へ13時33分着。ここで一服してから出発する。

 ここからは「三の谷コース」を下って行く。広い尾根をジグザグに下る。普通の道で下りやすい。時々、立ち止まって紅葉を眺める。
「山頂まで4km、管理棟まで4km」という表示がある一帯は、まさに紅葉が真っ盛りで燃えるようだった。

 この道は、岩場も急坂もない平凡な道で、概ね針葉樹林帯に道がつけられているが、時々、広葉樹林帯へはみ出した時に紅葉が見られる、という感じである。その広葉樹林帯の紅葉は見事だった。

 登山口の管理棟へ14時57分着。管理棟は無人のようだった。砂利道の車道へ座り込んで休憩。
 ここからも熊の心配がない訳ではない。カーブの所ではホイッスルを吹きながら下った。
 乙女渓谷キャンプ場へ15時35分着。