妙 義 山

金洞山(こんどうさん)縦走

バラ尾根のピークから見た金洞山。左から中之岳、西岳、星穴岳。
(東岳、鷹戻しの頭は右にあるため写っていない)

金鶏橋駐車場〜ホッキリ〜鷹戻し〜東岳〜中之岳〜第四石門〜大砲岩〜金鶏橋駐車場

2002年11月 9日(土)

相模原500−川越IC−松井田妙義IC−妙義神社前−812金鶏橋駐車場815〜848東屋〜937ホッキリ〜鷹戻し〜東岳〜中之岳〜1302中間道〜第四石門〜大砲岩〜石門入口〜一本杉〜金鶏橋駐車場−下仁田(泊:荒船山へ続く)

 朝5時に家を出発。途中のコンビニでオイナリさんを買って行く。
 関越道に乗り、高坂インターで休憩。夜もすっかり明け、青い空に真っ白い富士山がくっきりと見えた。今日は最高の登山日和になりそうである。

 今回は1泊2日で妙義山と荒船山を登る予定である。前日から好天なら妙義、荒船、もし前日に雨が降った場合は妙義山は岩場が滑るので荒船、妙義の順に登るつもりでいたが、上信越に入っても雨が降った気配はなかったので、当初の予定通り妙義山を目指して行く。

 松井田妙義インターで降り、妙義神社の入り口にある道の駅へ車を止めて、朝日に輝く白雲山を見上げる(写真左)。去年来た時は、少しモヤっていたが、今日はまばゆいほどクッキリと見えた。高鳴る興奮を抑えながら、ぶどう園の近くにあるはずの金鶏橋を目指して行った。

 途中で車を止め写真を撮りながら行くと、いつの間にか石門入口まで行ってしまい、あわてて引き返す。

 金鶏橋の駐車場は、たったの3台しか置けないが、運良く1台分が空いていた。8時12分着。(妙義神社の方へ少し下った所にも駐車場があった)。

 今日は登山靴を二足持って来た。革靴のゴッツイのは岩場をよじ登るには不向きなので軽登山靴を履いて行く。8時15分発。
 登山口で、下の駐車場へ車を止めた若い男女4人のパーティーと一緒になった。

 5分程登るとあづまやがあり5、6人が休憩していたが、そこを素通りして左へ曲がってすぐ右手のケモノ道のような細い道を登って行く。4人組みのパーティーは真っ直ぐ行ってしまい、途中で引き返して来た。

 紅葉はすでに遅かった。本当は先週来る予定だったが体調を崩してしまい1週間遅くなってしまったのである。少しガッカリしていた時、真っ赤に色づいたモミジがあって感激。

 中間道のあづまやへ8時48分着。ここで一服していると、後から着いた男女4人のパーティーは真剣に案内板を見つめていた。どうやら白雲山を登るらしい。若い女性2人は見るからに山慣れしているとは思えない。本当に大丈夫かなあ、と心配になる。

 ホッキリとの分岐へ9時10分着。やっと登山口へ着いた感じである。ここで小休止。右手には去年登った白雲山の険峻な岩峰が並び立って見えた。左手からは人の声が聞こえて来る。観光客の声かと思ったが、カラビナのような金属音がした。鷹戻しを登っているクライマーだと思うと、嫌でも緊張感が高まって来た。

 9時15分発。いよいよ金洞山へ向かって出発、と思いきや、歩き出して7、8mほどの所で巻き道に気づかず、ガレた岩場を登ろうとして掴んだ岩が崩れ、それが右手の甲に落ちて負傷。傷口をぺロペロなめながら苦笑い。先が思いやられる。

 ここからは両手を使わないと登れない。岩と木の根につかまりながら登って行く。アッという間にホッキリへ着いた(9時37分着)。ここからは裏妙義がバッチリ見えた。鳥肌が立つような絶壁を見ながら、一度登ってみたいと思った。


(ホッキリ・白雲山塊と金洞山塊の分岐)

(裏妙義・左から烏帽子岩、赤岩、丁須ノ頭)

 昨年は妙義神社から白雲山を越えてここまで来た時はホッとしたが、金洞山へも行ってみたいと思った。その続きがやっとこれから始まる。
 ここからは初めてのコースである。しかも、妙義山最大の難所といわれる「鷹(たか)戻し」がある。とにかく慎重に行こう。

 ヤセ尾根を行くとすぐにクサリ場があった。道は左側が絶壁なのでほとんど右(西)を巻いている。稜線は時々強風でビュウビュウ唸っている。こんな強風で「鷹戻し」は大丈夫だろうか。

 最初のピークは縦走路から7、8mほど左へ登った所にあった。展望はバツグンだった。正面に鷹戻しの岩壁、その奥に東岳、さらに中之岳(実は西岳だった)、星穴岳と切り立った岩塊が続く。

 (写真左は手前から鷹戻しの頭、西岳、星穴岳)

 特に流星が岩壁に穴を開けたという星穴岳はすぐに識別できた。そして、何とロマンチックな名前だろうと思った。とにかくここで一服しよう。

 (写真右は星穴岳、中央が星穴、左の小さい穴が射抜穴→拡大してご覧下さい)

 写真を撮るには少々逆光だったが、かまわずバチバチ撮った。そして、正面に見える鷹さえも戻ってしまうといわれる「鷹戻し」の垂直の岩壁を見ながら、本当にあんな所が登れるのだろうか、と心配になった。

 ここから下った鞍部に、女坂との分岐があった。
 稜線歩きになると、風が強く冷たい。手がかじかんでしまうが、ポケットに入れたり手袋をする訳にはいかない。岩場やクサリ場は手袋をすると滑るので、少しぐらい寒くても我慢しなければならない。
 風に向かうと呼吸が出来ないほどだった。風がビュウビュウと唸り、心細くなった。しかし、鷹戻しの取っ付きまでは難なく辿り着くことが出来た。

 鷹戻しは、先ほど見た絶望感さえ覚えるような絶壁を左に巻いて、少し樹木がある所へ出てホッとした。しかし、いぜん急斜面に変わりはない。

 クサリ場の所で中年のオジさん2人が立っていた。そして、
「上から二人降りてくるのでここで待っていてくれ」
 と言われる。二人は地下足袋を履いているところを見ると、かなり山慣れしているようだった。

 それに比べ3番目と4番目の人は、腰にザイルを巻き、ザイルの先端にあるカラビナをクサリに通して下って来た。私は「ああいう方法もあるのか」と思ったが、この方法はクサリの上下が岩にフイックスしていなければ意味がない。

 それにしても岩を怖がり、しがみついているのを見ると何とも心もとない。いっそのこと両手でクサリを握った方がいいんじゃないかなあ‥‥。そんな事を考えていた時、4番目の人が3〜4メートルぐらい上から私の脇へ落ちて来た。鞍部だったので事なきを得たが、やはり、クサリ場は下るより登りにとるべきだと思った。

 ここからはクサリとハシゴの連続だった。クサリ場はとにかく腕力で登ったが、手が冷たく、感覚がなくなりそうだった。

(写真は2番目か3番目のクサリ場)

 最大の難所といわれる鷹戻しを登った所で一休み。日向ぼっこをしながら冷えた身体を温める。そして、この鷹戻しは登りにとって正解だったと思ったが、何でこんな所が最大の難所と言われるのだろうか、と思った。この程度のクサリ場ならどこにでもあるし、昨年登った妙義神社から相馬岳へ向かう途中にあったクサリ場の方がよっぽどいやらしかったと思った。

 ここからは、東岳、西岳、星穴岳がズラリと並んで見えた。実はこの時点では西岳を中之岳と思い込んでいた。中之岳は西岳の陰に隠れて見えないらしい。

 最大の難所を越え、「ここからは、もうさほど危険な所はあるまい」と思ったが甘かった。この「鷹戻しの頭」から一気にチムニー(岩の割れ目)を2本のクサリで25メートル下る。垂直の岩場で高度感があった。それでも最初のクサリは難なく下ったが、2本目は足場がなくて苦戦した。クサリにつかまったまま動けなくなった。手は冷たく腕力がなくなっていく‥‥。

「こんな所で立ち止まっているとヤバイことになる」と自分に言い聞かせ、腕力だけで一気に下ったが、本当にいやらしいクサリ場だった。やはり甘くみてはいけない。

 しばらく行くと、左手に第四石門へ下る道があった(ロープが3本ぶら下がっている)。「ここから下ってしまおうかな」、という気もあったが、やはり中之岳を登らずして下る訳には行かない。

 クサリのない岩場を登って進んで行く。左手には石門群が見えハイカーの声も聞こえて来た。その先にある駐車場の車が光ってまぶしい。

 東岳の山頂から、右手に真っ白になった浅間山が見え、左手前方には荒船山(写真左)が見えた。

 荒船は山容が荒波を行く船に見えるというが、言われてみると航空母艦に見えないこともない。明日登る予定の荒船山の写真を撮り、満足満足‥‥。(この写真を撮った時、偶然写った手前の山が中之岳だった)。

 振り返ってみると、さっき私が苦戦したチムニーを2人のパーティーが下っているのが見えた。ここから見るとすごい高度感で、よくもあんな所を下ってきたものだと我ながら感心した。

(下の写真)

チムニーの2段のクサリ場。バックは白雲山。
手前の紅葉した岩場(縦に黒い所)を下っている2人が見えるだろうか。
見えない方は→こちら

 東岳の山頂から踏み跡をたどって右へ10mほど進んで行くと、突然道がなくなり絶壁になっていた。「ウソー」と唸りながら顔が引き攣た。恐る恐る下を覗き込んで見たが、道はなく、私の技術では絶対に下れないと思った。「どこかに必ず道があるはずだ」と思いながら引き返す。

 山頂には1メートル四方ほどの石があった。風でバランスを崩さないようにその石に登ってみると、左手の20mほど下にハシゴが見えた。この石に乗らないとハシゴが見えなかったのだ。石には踏み跡は付かないが、行き止まりの道は皆んなが往復するのでしっかり踏まれている。気をつけなくてはいけない。

 やっと縦走路へ出てホッとする暇もなく、大きな岩を左へ巻いて行くと、これも行き止まり。戻って垂直の岩場を見上げる。高さは3〜4mぐらいで足場はしっかりしているが、やせ尾根で両側とも切れ落ちている。しかも風が強いので吹き飛ばされないかと心配だった。
 しばらくうずくまって風が止むのを待った。が、風はいっこうに止む気配がなかった。引き返そうかとも思ったが、ここから引き返すのもシンドイ。心を決して岩にしがみつくようにして登りきった。ヤレヤレ‥‥。

 この岩場を過ぎると、祠のあるピークに着いた。(ここが中之岳とは思わなかった)。ザックを置いて、「無事下山できますように」と手を合わせる。

 ここで一服していると、後ろのパーティーが東岳で私と同じように道に迷っていた。私が絶対に下れないと思った所でウロウロしている。私は大きなこ声で「違うぞー、もっと上、上!」と叫びながら合図を送ったが、風で聞こえないようだった。

 すでに12時半になっていた。腹もへっていたが落ち着いて食事をしようという気にはなれなかった。

 突然、騒がしい声がした。反対側を見るとクサリの下に10人以上のパーティがいた。一言ことわって急いでクサリ場を降りた。10人が登るのを待っていられないからだ。パーティーは軽装でピストンしているという。そのパーティーから、ここが中之岳であることを教えられた。

 クサリ場からすぐに西岳との分岐があった。そこを右に下って行く。
 とにかくここまでは緊張の連続だった。やっと安全地帯へ入ったと思いホッとした時、雪がパラパラと降って来た。しかし、その雪も10分ほどで止んだ。

 13時2分、中間道へ到着。ここでゆっくり昼食にした。再び青空が広がってきた。

 帰りは第四石門をくぐり、大砲岩へ登ってきた。大砲岩からの展望はバツグンだった。


(第四石門と奥に大砲岩)

(大砲岩からの展望)

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