(2,053m、長野県) 129座
戸隠中社(泊)−大橋登山口−黒姫高原−望湖台(715)〜(850)姫見台(855)〜(928)越見尾根〜(1020)黒姫乗越(1030)〜(1130)黒姫山頂(1220)〜七つ池〜(1338)黒姫乗越(1345)〜(1435)姫見台(1445)〜(1525)望湖台−信濃町IC−相模湖IC−相模原 |
昨日は飯縄山を登り、戸隠の民宿に宿泊。
朝4時半に目覚まし時計を掛けたつもりが、5時半になっており、1時間も遅くなってしまい大慌て。朝食も摂らずに宿を出た。
外はまだ暗く、しかも霧が濃いためライトを点けて大橋登山口へ向かった。
途中にある戸隠キャンプ場の駐車場には車が5、6台あり、テントの外で食事をしているパーティーもいた。
大橋登山口の駐車場は狭いと聞いていたのであせっていたが、駐車場へ着いてみると一台の車もなく、思わず「ウソー・・・!」とため息が出た。
車の中でパンと缶コーヒーで朝食を摂り、一服していても車が来る気配はない。やはりシーズンオフは人が少ないのだろうか。
6時25分。意を決して登ることにした。
登山口にあった登山ポストを開け、入山届けを記入して、閉じようとした時、「熊出没注意」「平成△年○月○日、登山者が熊に襲われ・・・、単独での入山は避けましょう・・」
というのが目に留まった。
ザックを降ろし、熊除け鈴を探す。しかし、肝心な鈴を忘れて来た(本当はあったのだが)。鈴なしでこの茂みの中に分け入るのは怖い。
前の人の記録を見ると、先週の日曜日に一人、その前の週にも一人しか登っていない。ということは今日も大勢登るとは思えない。しかも、一昨日、信濃町で農作業をしていたご夫婦が熊に襲われたとテレビで報じていた。
しばし思案にくれた。山は5、60メートル先がガスって見えない。それが一層恐怖を駆り立てる。
「そうだ。黒姫高原のリフトの方なら登山者がいるかも知れない」と思い、急遽、コースを変更。一路黒姫高原を目指して下って行った。
世の登山者から、「この臆病者め!」と言われそうだが、単独行はやはり熊が一番怖いのである。
もし、リフト側の登山口にも登山者がいなかったら、紅葉でも見ながら温泉にでも浸かって帰ろうと思った。もう温泉モードになっていた。
黒姫高原で道が分からずウロウロしたが、ゲレンデの中にやっと車が一台が通れそうな道があり、そこに「登山道」の標識があった。
とにかく車で登れる所まで登ってみよう、とデコボコ道を登って行くと、一人の登山者がいた。30代の単独行だった。
「これから登るんですか?」
と声をかけると、
「えー、でも誰もいなくて不安なんですよ・・・」
との言葉が返ってきた。やはり一人旅は熊が怖いのだ。
これで私も登る決心が付いた。少し登った所が車の行き止まりだったので、そこへ車を止めた。
急いで準備をして、7時15分に出発する。近くの木に「望湖台」と書いたものが掛かっていた。
彼になるべく離されないようにと思い、急なゲレンデを必死に登って行ったが、彼は見る見る遠ざかって行った。
20分ほど登るとリフトの終点で、そこに彼が地図を広げて休んでいた。私も一息入れながら地図を見ようとして、地図を車の中へ忘れて来たことに気づく。
ここから5、6分も歩くと完全な登山道になった。ガスが濃くなり、視界は20メートルぐらいしか利かない。
それにしても暑い。まるで蒸し風呂へでも入っているようで汗だくだった。厚手のシャツを脱いだ。
歩きながら、今回は熊除け鈴を忘れ、地図まで忘れては山へ登る資格はない、と反省した。
しばらく歩くとクマザサと落葉したブナやクヌギなどになった。これだけ見通しが利けば熊も出て来ないだろうと思った。
途中で休憩した。汗を拭っていると右手にリフトのケーブルが走っていた。何のことはない。まだスキー場の中をウロウロしていたのだ。
姫見台へ8時50分着。
姫見台にはコンクリートで固められた大きなケルンがあった。(写真右)
晴れていれば、ここから山頂が見えるはずだか、今日は何も見えない。
ここからが本当の登山道になった。落葉した雑木林の中を登って行く。一瞬、陽が差したがすぐにガスに覆われてしまった。
道は苔むした石と岩で歩きにくかった。人工的なものは一切なく、自然の道だった。今どきめずらしい気もするが、そもそもこの道を利用する人が少ないのだろうと思った。
そこを過ぎると「越見尾根」の標識がある尾根へ出た。左へ曲がって尾根を登って行く。
シラビソの間から青空が見えるようになり、日差しが差し込んで来た。山頂へ着く頃には完全に晴れ上がるに違いない、と期待した。
少し開けた明るい所へ出たので休憩しようと思ったら、そこが「黒姫乗越」だった。(10時20分着)
ここはシラビソが生い茂り、けして気持ちの良い所ではなかったが、腰を下ろして一服した。
ここは分岐になっており、右手に七つ池へ下る道があったが、私は山頂を目指して真っ直ぐ尾根を進んで行った。
途中から、右手に七つ池と富士山のような端正な山容をした小黒姫(御巣鷹山)が見えた。しかし、樹木が多くて写真は撮れない。
ここは原生林のようで、大木の根っこが石や岩の上をタコ足のように張っている。バケモノのような太い根っこの上を歩いたり、跨いだり。本当に歩きにくく薄気味悪い。
山頂近くまで行って、やっと小黒姫の写真が撮れた。
黒姫乗越から1時間もかかってやっと山頂へ着いた。誰もいないと思った山頂には、何と10人ほどの先客がいて驚いた。そのほとんどが、いや全員が大橋登山口から登って来たという。登山口で一緒だった青年はもういなかった。
(山頂手前から見た小黒姫) |
(黒姫山頂) |
山頂からは妙高山が一瞬見えたが、すぐにガスに隠れてしまった。
ビールを飲んでいた50代の4人のパーティーは、「大橋登山口を7時半ごろ出た」と言うので、「私は6時頃行った時は車が一台もなかった」と言うと、
「そんな早くから登る人はいないよ!」と言われる。
そして、彼らは私が反対側から登って来たことに驚き、「今時、こっちから登る人は珍しい」と言われる。やっぱり、私が登って来た道は歩く人が少ないようだ。
湯を沸かしてラーメンを食べながら、「黒姫乗越からはタコ足のように木の根っこが張り出して歩きにくく、もう下りたくない」と言うような話をすると、近くにいた親子らしい3人連れが、「これから下ろうと思っていたんですが、そんなにひどいですか・・」と言い、「じゃあ、七つ池を廻って帰ることにします」、と言って下って行った。
ここでザックを広げた時、熊除け鈴があった。やはり忘れて来た訳ではなかった。大橋登山口で探した時に見つからなかったのは、あせっていたからかも知れない。
ビールを飲んでいた4人組のうち一人はもう完全に出来上がっていた。いろいろ話しかけてくるが、焼き鳥屋で酔っ払っているオジさんのようだった。その酔っ払いを残して、他の3人は先に下って行った。
その酔っ払ったオジさんが、これから大橋登山口へ下り黒姫高原にある温泉へ行くから、一緒に下って駐車場まで乗せててやる、と言ってくれたが、私は七つ池を廻って帰ることにした。
12時20分山頂発。
黒姫の山頂は外輪山の一角で、これから下る七つ池が火口で、噴火で出来た新山が小黒姫(御巣鷹山)である。山頂から反対側へ10分ほど下り、そこから一気に火口へ下って行った。途中で登って来るパーティーに会った。
まずは峰の大池へ行った(写真左)。水面に御巣鷹山が逆さに映っていた。すぐに引き返して七つ池へ向かった。
針葉樹林を1、2分歩くと、パッと視界が開ける。クマザサが生えた草原で、まさに別天地のようだった。草原の中に池が幾つかあった。(写真右)
ここから黒姫の山頂が見えた。しかし外輪山の一角なので、特に際立って高い訳でもなく、目立たなかった。私は黒姫の山頂よりも高度は少し低いが御巣鷹山に登ってみたいと思った。ぜひ登山道がほしいと思った。
ここからオオシラビソの原生林のような薄暗い中を登ったり下ったりしながら進んで行った。そして、いよいよここからが黒姫乗越への急登かと思った時、その黒姫乗越へ着いてしまった。私より先に出発した親子連れが休んでいた。
ここで一服している時、雨粒が落ちて来た。でも雨具を着るほどのことではなかった。
しばらく下ると雨は止んだ。しかし、ガスが一層濃くなった。1、2メートル先がボンヤリするので、メガネが曇ったのかと思ったが、それは濃いキリのせいだった。視界はせいぜい10メートルぐらいだろうか。
姫見台まで一気に下ると、親子連れが休んでいた。彼らは私と入れ替わるように下って行った。私はここで一服。周りは完全にホワイトアウト。何にも見えない。熊が近づいて来ても分からない。
せっかく来た黒姫であるが、最後までその山容を見せてはくれなかった。もう未練を捨てて、一気に下る。
スキー場の急なゲレンデを何回も転びながら下った。
|
|