乗鞍岳(のりくらだけ)    4座目

(3,026m、 長野県・岐阜県)


畳平から肩の小屋へ向かう途中から見た乗鞍岳。
右から朝日岳、蚕玉岳、剣ケ峰(最高峰)

登頂歴
 B2005.07.24
 A1975.10月
 @1970.8月

畳平〜(お花畑コース)〜剣ケ峰〜富士見岳〜畳平

2005年7月24日(日)

相模原430−松本IC−745乗鞍高原観光センター800−(バス)−855畳平911〜(お花畑コース)〜952肩の小屋〜1052剣ケ峰1143〜1210肩の小屋1217〜1245富士見岳〜1300畳平1310−(バス)−観光バスセンター

 乗鞍岳は、もう30年も前に2回登っているが、2回とも天気に恵まれなかったので、スカッと晴れた日にもう一度登って見たいと思っていた。

 金曜日の朝になって、「どうせ登るなら花が多い7月がいいなあ」、と思いながらカレンダーを見ると、7月に登るなら今度の日曜日しかない、ということが分かり、急遽、日帰りで行くことにした。
 そして、どうせ行くなら大勢の方がいいと思い、仲間に連絡をとってみると、KさんとMOさんが同行したいとの連絡があった。

 4時に相模原に集合し、車1台を駐車場へ止め、Kさんの車に2人が乗り込んで4時半に出発した。
 天気は思ったより雲が多く、中央高速に乗っても甲斐駒も八ケ岳も見えなかった。昨日の天気予報では長野県も岐阜県も晴れ時々曇りと報じていたが、晴れて来る気配はなかった。

 諏訪ICに近づくと濃い霧が湧き出した。高速で霧が出ると運転はしにくいだろうが、助手席に座っている私は、「朝霧は晴れる、という諺があるから今日は絶対に晴れて来る!」と自慢げに、いや、気休めのように言った。

 しかし、何のことはない。松本IC近くでパラパラと雨粒が落ちて来た。運転手のKさんと、「まいったなあ!」と同時にボヤキ節が出た。

 松本ICを降りると、その雨も止んだ。ガソリンスタンドで給油し、主人に、
「今日の天気はどうですかね・・・」と聞くと、
「雨は降らない、晴れることもないだろうがねぇ・・。明日から3日間は雨ですがねぇ・・」
 と、自信満々で言った。テレビで天気予報を見たばかりなのだろう。それにしても、「雨が降らない」という言葉を聞いて安堵した。せっかく来て雨に降られてはたまらない。

 しばらく走っていると、少しずつ雲が切れ、青空が見えるようになって来た。3人で歓声を上げた。

 7時45分、、乗鞍高原観光センターへ到着。温泉の匂いが漂う。青空も少しずつ広がって来た。
 準備を済ませると8時7、8分前だった。これなら8時ジャストのバスに乗れる。急いで乗車券を買ってバスに乗り込んだ。
 バスは3台出た。全員が座って行けるのがいい。乗客の中にはスキーを持った人もいる。ここはサマースキーが出来るようだ。

 車窓から、青空が広がったり、雲に隠れて見えなくなったりするたびに一喜一憂する。
 車内で乗鞍岳についてのアナウンスがあった。それによると畳平は標高2,702mあり、バスが入る高さでは日本一だそうだ。

 バスに揺られてウトウトしていると「肩の小屋口」へ着いた。急峻な雪渓でスキーをしている人が大勢いた。スキーを持った乗客もここで降りて行く。

 ここからすぐに終点の畳平へ着いた。8時55分着。

  【左の写真を拡大してご覧下さい】

 30年振りに降り立った畳平であるが、ガスがかかって眺望は利かない。ガスの切れ間から大黒岳と富士見岳の半分位がやっと見えた。

 立ち並んだ売店やお土産屋さんは、全く記憶になかったが、売店のすぐ後ろにある山(写真右)だけは記憶にあった。

 ここでトイレを済ませ、高山病にならないようにのんびりしよう、と言っていると、ガスがパーと切れて正面奥に白く丸いコロナ観測所が見えて来た。急いで写真を撮りまくった。

 さて、どこから登ればいいのだろう。登山者は左手の車道を登って行く人や、右側の細い道を一旦下ってから登り返している人達が見えた。我々は右側の道を行くことにして、バスセンターの所から一歩下るとそこは一面のお花畑だった。黄色いミヤマキンバイと白いハクサンイチゲが一面を覆っていた。

(写真左:お花畑。手前の山が魔王岳)

 写真を撮りながら下って行くと、クロユリがあった。しかし、コマクサがない。私にとって、乗鞍岳といえばコマクサが一面に咲いていたイメージが強烈に残っているのだが、そのコマクサがない。きっと山頂近くに咲いているのだろう。

 鞍部から今度は登り返しになった。登山者が続々と下って来る。登っている私と軽装のハイカーがぶつかりそうになり、お互いに立ち止まってお見合いをしてしまったが、それでも下山者は避けてくれない。ここは「登り優先」などというのは通用しないようだ。

 車道へ出て、コロナ観測所の分岐を過ぎると三つの頂を持った乗鞍岳が見えて来た。感激だ! 最高峰の剣ケ峰には少しガスがかかっていたが、3回目にして初めて見ることが出来た。写真を何枚も撮った。やっと願いが叶った嬉しさを、じっと噛み締めた。
 カメラを持ったまま歩いていると、山頂のガスが次第に切れ出した。シャッターを何回も押した。

 ここから肩の小屋へ向かって歩きながら、2回目に来た時女性が高山病になってしまい、私が背負っていた背負子で畳平から肩の小屋まで男性3、4人で交代しながら背負い上げたことを思い出した。女性とはいえ人ひとりを背負って坂道を登るしんどさを思い出した。

 肩の小屋へ着くと、小屋前のテーブルで生ビールを美味そうに飲んでいる御仁がいた。弁当を広げているパーティーも大勢いた。
 私は2回ともこの肩の小屋へ泊まっているので懐かしさがあったが、かなりイメージが違っていた。やはり30年という年月は長い。

 小屋の後ろ側へ回ると頂きが見えた。一瞬、剣ケ峰かと思ったが、これは朝日岳で剣ケ峰はこの裏になるため見えない。
 ここからいよいよ登山道になった。高山病を意識して、ゆっくりゆっくり登って行く。

 (写真左:眼下に見える白い小屋が肩の小屋。赤い建物が宇宙線研究所。山上にあるのがコロナ観測所)

 ここは人が多いことや軽装者が多いことなど、富士山に似ていると思った。登山道だけは富士山と違い、一抱えもある石や、それ以上大きな石がゴロゴロしている。

 登山道脇にはハイマツが茂っているが、砂礫の所にコマクサがないかと注意しながら登って行った。また、ここにはライチョウがいるというで探しながら行ったが、ライチョウが出る時は天気が悪い時か崩れる時だから、会わない方がいい、という思いもあった。

 やっと稜線の鞍部へ着いた。右の高い岩塊のピークが朝日岳で、立ち入り禁止の表示がありロープが張られていた。道は左手のボッテリした方の山頂へと続く。その頂には蚕玉岳と書かれた標識があり、10人位が休んでいた。その中の一人に、
「この山、何と読むんですか?」と聞くと、
「コダマ岳らしいですよ」
 と教えてくれた。

 ここからは眼下に権現池(火口)が見え(写真右)、左手には最高峰の剣ケ峰がもう目の前にあった。山頂の奥宮の屋根まで見えた(写真左)。

 剣ケ峰の山頂へ10時52分着。
 広い山頂ではあるが、大勢の人でごった返しており、写真を撮るのも順番待ちだった。奥宮の神主だけが退屈そうに座っていた。

 ここからは権現池(火口)はもとより、外輪山の全てを見ることが出来た。ただ、ここから見る焼岳を楽しみにしていたが、全く見えなかった。まあ、これだけ眺望があるのだから贅沢は言うまい。

(山頂からの展望、真ん中が蚕玉岳、奥が朝日岳。登山者が蟻のように見える)

 山頂の一角で昼食にした。
 食事をしている間にも、30人、50人という団体さんが登って来る。その度に山頂が混雑する。中には軽装で2、3才の子供をだっこしながら登って来るエライおとうさんもいた。

 風も冷たくなって来たので早々に下山することにした。
 もう写真を撮ることもなく、高山病にかかる心配もないので、一気に肩の小屋へ下った。

 小屋前の道路で休憩している時、細かい雨粒がポツポツと落ちて来た。早く下って正解だった。
 雨はすぐに止んだが、またしばらくするとポツポツと来た。いずれにしても雨具を着るほどではなかったが、山頂近くで会ったあの子連れが心配だった。

 コロナ観測所との分岐を過ぎた所で、コマクサを発見! 一株だけだったが見事な花を咲かせていた(写真左)。
「あったぞー! コマクサがあったぞー!」
 やっとコマクサを見つけることが出来た嬉しさに、つい子供のようにはしゃいでしまった。

「高山植物の女王」と言われるコマクサである。初めて見るという二人も珍しそうに写真を撮っていた。私もやっとコマクサを見せることが出来て嬉しかった。他のパーティーに気づかれないように、すばやくその場を離れた(観光客に気づかれると荒らされてしまうから)。

 霧のような小雨が降っていたが、時間もあるので富士見岳へ寄って行くことにした。ここにもコマクサが何株もあった。少しやせているが、可憐な花をつけていた。満足、満足。

 富士見岳の山頂へ立った瞬間、今まで視界を遮っていたガスがパーと切れた。眼下に鶴池や畳平が見えた。ここから鶴池に向かって下る道も見えた。小雨はわずかに降っていたが鶴池に向かって下って行った。今日は剣ケ峰だけの登山では少し物足りなかったが、富士見岳を登ったのでヨシとしよう。

(右の写真は富士見岳山頂から:右に鶴池、左に畳平が見える)

 富士見岳を下り、鶴池まで来た時、雨粒が大きくなった。それに急げば13時10分発のバスに乗れるので、周りには目もくれず、急いでバス停に向かった。バスに乗り込んだ途端に雨が本降りになった。

 今回は帰りが少々忙し過ぎた。出来ればあと一本か二本バスを遅らせて、鶴池の周りの花をゆっくり観賞したり、お土産を探したり、洒落た店でコーヒーかビールでも飲んでから帰って来れば良かったと思うが、日帰りという強行軍だったのでそれも仕方が無い。せめてその分早く家へ着くことが出来たので、それで良しとしよう。