天狗岳(てんぐだけ)

(2,646m、長野県)  119座

天狗の奥庭から見た東天狗(左)と西天狗(右)。


唐沢鉱泉〜黒百合ヒュッテ〜東天狗〜西天狗〜唐沢鉱泉

 2003年11月2日(日)

〔車、日帰り〕
相模原410−相模湖IC−諏訪IC−655唐沢鉱泉700〜803渋ノ湯温泉分岐815〜852黒百合ヒュッテ910〜天狗の奥庭〜1025稜線分岐〜1105東天狗1145〜西天狗1215〜枯尾の峰分岐1347〜1430唐沢鉱泉

 八ヶ岳は、赤岳から硫黄岳までは縦走したことがあるが、それより北の「北八ケ岳」には、まだ行ったことがない。
 その北八ヶ岳を代表する天狗岳は、車なら日帰り出来ると知って、急遽でかけることにした。

 朝4時10分に家を出発。空にはまだ星が輝いていた。
 相模湖ICから中央高速に乗り、八ヶ岳PAで休憩する。
 PAからは、明けたばかりの乳白色の空に八ヶ岳連峰の編笠山、権現岳、三ツ頭がシルエットになって浮かび上がって見えた。また、南の空には南アルプスが見え、中でも三角錐の山頂とコブのような摩利支天を抱いた甲斐駒が目を惹いた。写真を撮りたいと思ったが露出不足で撮れない。帰りに撮って帰ろう。

 6時にPAを出発。ここから諏訪南ICへ向かう途中で霧が出た。「朝霧は晴れる」という諺があるので、今日の好天を確信した。そして、その霧が消えると道路脇の紅葉が見事に見えた。

 諏訪ICを降り、20号線を戻って299号線から152号線へ入る。ここから約3キロほど行った所の福沢工業団地の交差点を右折。真っ直ぐ進んで行くとすぐに八ヶ岳連峰が見えて来た。 (写真は帰りに撮ったもの)。正面に見えるのが天狗岳だろうか。

 森林地帯へ入って行くと、三井の森の別荘地帯になった。この辺はカラマツの紅葉と別荘地内のドウダンやモミジの紅葉が見事だった。
 その後ダートになり、砂煙を上げて山道を登って行くと唐沢鉱泉へ着いた(6時55分着)。
 鉱泉から30メートルほど手前にあった駐車場へ車を止める。駐車場はすでに7、8台止めてあったが、まだ4、5台は止められそうだった。

 車から降りると寒くて震える。セーターを着ようかと思ったが、ザックに入れたまま出かけることにした。
 空は雲一つない快晴だったが、ここは山間部なのでまだ陽は差さない。

 7時ジャストに駐車場を出発。
 両手をポケットに突っ込んだまま歩き出す。鉱泉の前にある西天狗へ行く橋を見送って、しばらく川沿いの道を進んでから橋を渡り、シラビソの樹林帯の中へと入って行く。

 ここのシラビソは背丈が低いので助かる。うっそうと茂ってはいるが南アルプスのような大木とは違い、登山道を歩いていても頭上が明るい。それに斜面がなだらかなので歩きやすくていい。

 ここは光ゴケの生息地だというので、足元に注意しながら歩いていると、白い粉のような、夜光塗料を塗ったようなコケがあった。もしやこれが光ゴケかも知れないと思い、手で囲って暗くしてみたが特に変わった様子はなかった。

 温度が上がって来たせいか、朝の澄んだ大気が心地良く感じる。前にも後ろにも人陰はなく静かだ。時々、クマがいないかと周りに目を凝らす。

 いつしか左手に見えた尾根と合体して、さらに右側へと登って行く。
 50分ほど歩いた時、まぶしいほどの日差しを浴びた。しかし、それも一瞬のことで、再び樹林帯となった。

 涸れた沢の石がゴロゴロした所へ出ると、そこに分岐の標識があった。渋の湯温泉との分岐へ8時3分着。
 ここまでノンストップで来てしまった。私にしては1時間も歩きぱなしというのはめずらしい。

 ここで一服していると男性2人が下って来た。きっと黒百合ヒュッテへ泊まったのだろう。
 8時15分、分岐発。
 出かけようとしてザックを背負った時、渋の湯コースから甲高い女性の声とクマ除け鈴の音が聞こえて来た。私は逃げるように歩き出した。
 パーティーの姿は見えないが、甲高い声と鈴の音に追われているようで、歩くペースが乱れる。

 8時50分、全身に日差しを浴びた。思わずバンザーイと叫んでしまう。そこから1、2分で黒百合ヒュッテへ着いた。
 ここは黒百合平と呼ばれる所で、初夏には黒百合が咲き乱れるという。その小屋の庭先には7、8人が休んでいた。私もここで休憩。

 日差しを浴びていると厚手のシャツを脱ぎたいほどだったが、水溜りは凍っていた。霜柱も2センチぐらいあった。

 ここから天狗岳へ行くコースとして、中山峠からの尾根コースと天狗の奥庭といわれるコースがある。私は後者の天狗の奥庭コースで行くことにした。

 9時10分、小屋を出発。ソーラー設備の前から登山道へ入ると、すぐに急峻な岩場になった。周りはハイマツとシャクナゲで一気にアルペンムードになって来た。

 そこを登り切って高台へ出ると展望が開け、目の前に東天狗岳と西天狗岳がドドーンと聳え立っていた。左手の東天狗には甲斐駒ケ岳の摩利支天のような岩塊があった。
 ここは天狗の奥庭と呼ばれる所で、例年なら眼下に池があるらしいが今は見当たらない。
 遠くには御嶽山や乗鞍、北アルプスの槍・穂高も見えた。天気は快晴、最高の気分だった。

 そこから20〜30メートルも行くと、北アルプス全体が見えるようになって来た。遠くに見えるのは鹿島槍かも知れない。
 ここから見る天狗岳は逆光だったが、かまわず写真を撮った。

 稜線を歩いていると久しぶりにアルプスへ来たような気分になって来る。日差しはあるが風は冷たい。ここはすれ違う人も多かった。

 東天狗へ向かいながら、あのモッコリとした岩塊に登りたいと思った。

(写真のモッコリした岩塊の奥が東天狗岳山頂)

 しばらく登り、小さな岩塊がある所で休憩。背後に富士山のような山容をした蓼科山が見えた。

 標識が立った分岐点へ10時25分着。そのまま通り過ぎようと思ったが、左手の遥か下の方にカラマツの紅葉が見事に見えたので立ち止まって写真を撮った。よく見ると奥秩父の山や上州の浅間山らしいものも見えた。

 ここからコブのような岩塊へ行くため、一旦下って登り返すが、この下りでドジを踏んだ。右足を出して下の岩へ飛び降りた瞬間、左足の膝を手前にあった石に思い切りぶつけてしまったのだ。一瞬、膝のお皿が割れてしまったかと思った。その場へうずくまったまま痛みに堪えていると、近くにいた青年から、
「大丈夫ですか‥‥?」と声をかけられた。
 私は「大丈夫‥‥!」と応えるのがやっとだった。

 幸い骨には異常はなかったので、しばらく休んでから歩き出した。単なる打撲で済んでホッとした。ヨシ、これならあの岩塊に登れるだろう、と気合を入れた。
 その岩塊は簡単に登れたが、テッペンは畳を立てたような岩で立つことが出来ず、両手を掛けただけだった。そして良く見ると今まで見えていた岩塊は、実はこの岩ではなくさらに上にあった。
 早速その岩塊へ挑戦する。そこは思ったより簡単に登ることが出来た。東天狗の山頂が目の前にあり、山頂にいる人達に向かって手を振った。

 そこから10分もかからずに東天狗の山頂へ着いた。東天狗岳11時5分着。
 山頂には12、3人が休んでいた。ここからは、硫黄岳の奥に屹立した赤岳と阿弥陀岳が見えた。モッコリとして怪獣の頭のような赤岳の山容が懐かしかった。
 展望も天気も最高。よしここで昼食にしよう。


(左から硫黄岳、赤岳、低いのが中岳、阿弥陀岳)

 食事をしながら赤岳を見ていると、吹雪の中で登った青春時代が懐かしく思い出されて来た。もう冬山を登ることはないだろうが、いつの日か花が咲く季節にでもあの赤岳と阿弥陀岳を登りたいと思った。

 食事をしている間にも登山者がゾクゾクと登って来た。やはりここは日本200名山ということもあって、かなり人気があるようだ。
 眼下に見える蓼科高原が、カラマツの紅葉で燃えているように見えた。

 11時45分、東天狗岳発。
 西天狗へはここから一旦下って登り返す。(写真右は東天狗から見た西天狗→拡大できます)
 西天狗岳はあっけなく着いた。たぶん12時ちょうどぐらいだったと思う。
 三角点の脇に小さな石仏があったので、帽子を取って手を合わせた。

 ここも展望は抜群だった。八ヶ岳の主峰である赤岳、阿弥陀岳、そして硫黄岳をじっくり眺める。

(写真左は西天狗から見た東天狗→拡大できます)

 このまま下ってしまってはもったいない気もするが、もう充分満喫したのでぼちぼち下ることにしょう。

 12時15分発。
 大きな岩や石がゴロゴロしている急坂を下る。左足が気になっていつものようには飛ばせない。

 20分も下ると、今度はシラビソ帯の登り返しになった。登り切った所で休憩する。12時55分着。
 休んでいると足元に紅いコケモモの実があった。フイルムは撮り切ってしまったので新しいフイルムを入れて写真を撮った。

 今日は15時までに唐沢鉱泉へ着けば温泉に入って帰るつもりでいるが、この時間なら充分余裕があるだろう。
 そこから歩き出して5分もすると展望台があった。赤岳が輝いて見えた。振り返えると森林の奥に西天狗が顔を出していた。


(赤岳よ!さらば!)

 ここからは背丈が低いシラビソのトンネルを潜るようにして下って行く。木漏れ日が暑い。汗をぬぐいながら下って行った。

 枯尾の峰分岐へ13時47分着。森林の中の分岐点だった。ここを右へ下って行く。
 この道は下りに取って正解だと思った。ここは黒百合ヒュッテの登りに比べかなり急で、ここを登りにとるとかなりシンドイだろうと思った。

 次第に沢の音が大きくなり、橋を渡ると唐沢鉱泉の前へ出た。駐車場へ14時30分着。
 車から着替え一式を持って唐沢鉱泉へ行き、ゆっくりと温泉に浸かった。

 天狗岳は身近でアルペン気分を味わえる山だった。かなりシャクナゲが多かったので5月下旬か6月上旬に行くと最高だろうと思った。