北茨城民報2002年10月27日号

日本共産党市議団が「市町村合併しない宣言」の矢祭町を視察

十月二十二日、日本共産党市議団(福田明・鈴木やす子)は「市町村合併をしない宣言」を全国で唯一行った福島県矢祭町を視察しました。

矢祭山のつつじより有名な「市町村合併をしない宣言」

矢祭町は北茨城市とは阿武隈山地を隔てた隣町で人口約七千三百人の町です。春の「矢祭山のつつじ」は本市でも有名ですが、最近、同町の名を全国的に馳せているのは「市町村合併をしない宣言」や「住基ネット不参加」など住民自治をつらぬく同町の政治姿勢です。

今回は「市町村合併をしない宣言」に絞っての視察でしたが、説明に当った根本矢祭町長からは「自分たちの町は自分たちが守る」という自信と熱気が溢れていました。

他県もあきれる茨城県の国いいなりの姿勢

根本町長は「茨城県は市町村合併の全国一の推進県であり、国の政策を何の抵抗もなく受入れる県と、他県ではみんな見ている。県が違うと、こうも考えが違うものなのかあきれる」等々の話をされたが、事実、国のいいなりになって合併を推進する茨城県と福島県では合併問題での対応に雲泥の差がある。矢祭町の「合併をしない宣言」について福島県の佐藤知事は「これも地方分権の一つの考え方」と各所で述べているそうで、根本町長は「この知事の発言こそ矢祭町にとっての県の最大の支援策」と、知事の政治姿勢をつよく評価していた。

「合併しない宣言」の背景には、街づくりにたいするゆるぎない自信

 矢祭町が「合併をしない宣言」を行った背景には、これまで同町が推進してきた街づくにたいする自信があります。根本町長は「これまで町民に必要なインフラ整備はすべてやってきた。国保や水道、介護保険料など各種料金は郡内で一番安い。これからは開発はやらないで福祉などのソフト面に力を注いでいけば、多少交付税が削られても行政を運営できる」とのべると同時に、「財政問題だけで合併するかどうか議論している自治体は情けない。今までの町がなくなるというのに、『郷土愛』があるのか」と述べました。同席していた矢祭町の共産党町議も「町長は五期二十年間、命がけで街づくりに尽くしてきた」と述べていましたが、町長の発言は、そのことを裏付ける迫力と熱気を感じさせました。

財政難の中、やるべきことをやらないではダメである

 また、根本町長は「この不況下の財政難だといって、行政がやるべきこともやらずに、住民の福祉や各種サービスを削るようなことがあってはダメである。住民の暮らしの分野は絶対に後退させてはならない。介護保険は今後も上げるつもりはない」と明言しました。その一方で、従業員七百人規模の無公害の工場を誘致したり、住宅団地を販売するなど独自の財源確保にも力を注ぎ、平成十一年度の福島県内の市町村経済成長率では十八・五%を記録し第三位に入っています。

いま、全国で最も注目されている町、田中長野県知事も訪問

 矢祭町は今、全国で最も注目されている町の一つで、「合併をしない宣言」を決議した昨年十月以降、北は北海道から南は九州まで数百自治体が同町を視察し、日本共産党市議団が視察したこの日も五つの自治体の視察がありました。長野県の田中知事が再選後、同町を訪れた際、根本町長は「脱ダムは、田中知事より私が先、久慈川のダム計画をストップさせたのは私である」と、語った裏話を披露しました。

 いま全国に広がる「住民こそ主人公」の地方政治の流れが、山を越えた隣接の町でも確かな流れになっていることを実感し矢祭町を後にしました。

(この視察には日本共産党北茨城市議団のほか十王町の根本陽一町議、日立市の小林真美子議員、東海村の佐藤利彦議員、大名美恵子議員も参加しました)

左から大名東海村議・福田明議員・鈴木やす子議員・佐藤東海村議・根本十王町議・小林日立市議(矢祭町役場前で)