2005年9月15日 中国電力株式会社 代表取締役社長 白倉茂生様 長島の自然を守る会 代表 高島美登里 詳細調査の即時中止を求める緊急申し入れ 平素より市民生活の安全と発展のために尽力されていることに敬意を表します。 さて、2005年2月3日に私どもは、「上関原発立地のための詳細調査を実施しないよう求める緊急署名」を持参し、詳細調査の中止を申し入れたところです。 ところが,貴社は,4月13日の陸域ボーリング強行に続き,6月24日より海域ボーリングも強行しました。 その結果,早くも私たちが懸念していた,長島の貴重な自然環境および生態系に,甚大なダメージが生じています。 私たちは、5月5日〜6日,5月24日,7月25日〜26日,8月27日,9月4日と現地調査を継続してきましたが、異変は7月から顕在化し始めました。 7月調査から、予定地東岸潮間帯で岩礫の下にヘドロのような泥がたまり始めました。 8月調査ではブンブクの死骸が大量に海岸に打ち上げられ、9月調査では、泥が岩を埋める程に増え、マツバガイやイシダタミ・アサリの死殻が随所に散らばり生物の種数・個体数も減少しています。希少生物であるミミズハゼ・カサシャミセンも確認することができませんでした。この潮間帯の真上に陸域ボーリング地点があり、急峻な山道を拡幅・伐採しており、汲み上げられた泥水を地表に垂れ流している現場も確認しました。 生命のささやきに満ち満ちた貴重な潮溜まりは、ひっそりと静まり返り墓場と化しています。 私たちは,貴社が,予定地の生態系破壊の原因究明と原状回復につき,責任ある対応を取られることを求め,以下のとおり,緊急に申し入れます。 記 1. 貴社は環境保全計画の中で、陸域ボーリング調査において、水を使用するが、循環使用により、外部に濁水を排出しないよう措置するとしています。しかし、汲み上げられた泥水を地表に垂れ流している現場も確認しました。 明らかに、保全措置を逸脱した違反行為であり、即刻調査を中止されること。 2. 2005年7月より,田ノ浦東岸の潮間帯に汚泥が堆積し始め,生態系が急速に破壊されており,シュジュコミミガイ(WWFレッドデータブック絶滅危惧種)・カサシャミセン・ミミズハゼなどの希少生物が絶滅の危機に瀕しています。 直ちに,海域・陸域のボーリング調査を中止し,因果関係の究明をされること。 また,原状回復措置を図られること。 3. 陸域ボーリング調査に伴う照葉樹林伐採について,事業者は何ら保全対策を取っていませんが,田ノ浦東岸の汚泥堆積に,大きく影響していると予測されます。 直ちに,ボーリングを中止し,因果関係を究明されること。 また,原状回復措置を図られること。 4. 海域ボーリングの対象地は,貴重な海生動植物が多種多様に生息する海域であることから,その影響は甚大なものであると予想されます。現在のボーリング実施箇所は,長島の自然を守る会が2005年5月調査で,水産庁危急種ナメクジウオを確認した地点であり,直ちに調査を中止されること。 5. ボーリング開始後の生態系への環境影響につき,直ちに専門分野に関わる下記の研究者の見解を求められること。 *
軟体動物:福田宏・佐藤正典・加藤真・向井宏・山下博由 *
スナメリ:粕谷俊雄 *
植物:野間直彦・安渓貴子 * 海草:横浜康継 6. 2005年6月20日の県への申し入れで,貴社のヤシマイシン近似種の調査不備を下記のとおり,指摘したところですが,その後の経緯を公表されること。
参考 2005.6.20.申し入れ内容 2001年の環境アセスメントで,事業者はヤシマイシン近似種の調査を指示されており,その結果について,2005年2月3日に問いただしたところ,2001年より夏季3回,調査を行い,1回も生息を確認していないとの回答でした。ところが,長島の自然を守る会は計5例生息を確認しています。これは,他地域では,希有に等しい事例であると研究者は指摘しています。 @
中国電力の調査能力には,重大な欠陥があると考えられるので,第3者の専門家 による調査をするよう指導されること。 A
ずさんな調査結果を含む環境保全計画のやり直しをさせること。 7.
上記1〜5で,貴社の対応が科学的に適切なものであると立証されるまで,詳細調査を即時中止されること。 8.
用地問題・漁業補償問題・住民合意問題など,課題が山積し,立地のめども立たないまま,詳細調査を先行させることは,世界遺産に匹敵する現地の自然環境・生態系をいたずらに傷つけ,歴史的禍根を残すのみなので,即時中止すること。 9.
上関原発建設計画を中止すること。 10.以上につき,9月30日までに,文書で回答されること。 |