上関原子力発電所(1,2号機)建設に伴う詳細調査の環境保全について 1. 詳細調査の環境保全に係る基本的事項 上関原子力発電所(1、2号機)建設に伴う詳細調査は、「原子炉設置許可」の申請に必要なデータを得るために実施し、その内容は他地点での調査をはじめ一般の事業において広く実施されているものであり、調査により周辺環境に影響を与えたとは聞いていない。 また、上関地点においても詳細調査と同様の調査は、既に平成6年から平成8年にかけて上関地点立地環境調査として実施しており、適切な環境保全措置のもと周辺環境は良好に維持されている。 このため、詳細調査の実施においても、関係法令等を遵守するとともに、従来から実施している環境保全措置と同様な措置を講じることにより、環境への影響はほとんどないと考える。 しかしながら、発電所の建設工事・運転を対象とした環境影響評価段階において、貴重動植物が確認されていることなどを考慮し、詳細調査に於ける環境保全措置等をとりまとめ、環境保全に関する配慮の徹底を図ることとした。 2. 調査概要および環境保全措置 (1)ボーリング調査(陸域) a.調査概要 ボーリング機械により地盤を構成する岩石などを棒状のコアとして連続的に採取し、これを観察するとともに種々の試験を行う。(約60本、総延長:約8,000メートル) b.想定される環境影響 (a)水質 削孔において使用する水による水質への影響 (b)動植物 ボーリング機械の一時設置場所の動植物への影響 c.環境保全措置 (a) 水質 調査において水を使用するが、循環使用により外部に濁水を排出しない。 (b)動植物 土地の形状変更および樹木の伐採範囲を必要最小限にとどめることにより、 既存植生および動物の生息環境の保全に努める。 調査着手前には、可能な範囲で作業区域内の貴重な動植物の確認を行う。 また、作業者には、計画地点で確認された貴重な動植物等の概要と注意事項を記載した「ハンドブック」を携帯させ、調査工事中に貴重な動植物が確認された場合には、適切な措置を講じるよう指導する。 ア. 猛禽類 新たに猛禽類の営巣を確認した場合は作業を中止し、学識経験者等も交えその後の具体的措置を協議し、適切な措置を講じる。 イ. 昆虫類・植物 作業区域内において貴重な昆虫類を確認した場合は、昆虫類を作業区域外に移動する。 土地の形状変更を行う場所において貴重な植物を確認した場合は、適切な場所に移植する。 (2)地震観測(陸域) a. 調査概要 ボーリング機械により地盤を削抗した後、地震計を孔底に設置して、地盤観測を行う。(1箇所) b. 想定される環境影響 (a)水質 削孔において使用する水による水質への影響 (b) 動植物 ボーリング機械の一時設置場所および観測設置場所の動植物への影響 c. 環境保全措置 (a)水質 ボーリング機械による削孔において水を使用するが、循環使用により外部に濁水を排出しないように措置する。 (b)動植物 また,作業者には,計画地点で確認された貴重な動植物等の概要と往昔 事項を記載した「ハンドブック」を携帯させ,調査工事中に質量な動植物 が確既された場合にはl適切な措置を講じるよう指導する。 ア.猛禽類 新たに猛禽類の営巣を確認した場合は作業を中断し,学識経験者等も 交え号の後の具体的措置を協#し,適切な措置を請じる。 イ.昆虫類・植物 作集区域内において賓量な鳥虫類を確路した場合は,昆虫類を作秦区 域外に移動する。 土地の形状変更を行う場所において貴重な植物を確絶した場合は,適 切な場所に移植する。 (3)試掘坑調査(陸域) a.調査概要 原子炉建屋の建設予定地等の地盤中にトンネル(幅:約2m高さ:約2 m)を掘り,地質を直接観察するとともにトンネル内において種々の試験を 行う,(4箇所,級延長:約1k血) なお,調査開始にあたり.仮桟橋,ヤード盤億および調査用道路の設置工 事を行う。 b.想定きれる環境影響 (a〉騒音・振動 工事用機械および試掘坑における発破による騒音・振動の影響 (b).水盤 試掘坑の掘削における地下湧水ならびに作業ヤード,調査用道路等から の流出雨水による水質への影響 (c)動植物 作業ヤード整備,調査用道路時の設置場所の動植物への影響 (d)地形および表層の土壌 作業ヤードおよび調査用道路への降雨による地形および表層土壌への影 響 C.環境保全櫓置 (a)騒音・振動 工事用機械としては,低騒音・低振動型の機械を選定し,発生する騒音・ 振動の低減に努める。 発破にあたっては,坑口への防音扉設置などにより騒音の低減に努める。 (b)水質 工事にともなう排水については,沈砂池において砂泥を沈降させた後, 上澄み水を海域に排出するよう措定する。 (c)動植物 土地の形状変更虫よび樹木の伐採範囲を必要最小限にとどめることによ り,既存植生および動物の生息環境の保全に努める。 調査着手前には,可能な範囲で作業区域内の貴重な動植物の確認を行う。 また,作業者には,計画地点で確認された貴重な動植物専の概要と注意 事項を記載した「ハンドブック」を携帯きせ,調査工事中に貴重な動植物が確認された場合には,適切な措置を講じるよう指導する。 ア.猛禽頼 新たに猛禽額の営巣を確認した場合は件業を中断し,学舐経験者専も 交えその後の具体的措置を協議し.適切な措置を講じる。 イ.昆虫頼・植物 作業区域内において貴重な昆虫類を確認した場合は,・昆虫類を作業区 域外に移動する。 土地の形状変更を行う場所において貴重な植物を確認した場合はぃ適 切な場所に移植する。 (d)地形及び表層の土壌 法面は安定勾配として緑化等を行い,降雨等による崩壊および土砂の流 出防止に努める。 (4)弾性波探査(陸域) a.調査概要 発破により人工的に地盤に振動を発生させ.その波の伝わり方を判定して,地下の地質構造を調査する.(総測線長:約5km.) b.想定される環境影響 (a)騒音 発破による騒音の影響 (b)動植物 発破および測定作業による動植物への影響 C.環境保全摺竜 (a)騒音 発破にあたっては,防爆シートなどにより騒音の低減に努める。 (b)動植物 調査着手前には,可能な範囲で作筆区域内の貴星な動植物の確認を行う。 また,作業者には.計画地点で確認された貴重な動植物等の概要と注意 事項を記載した「ハンドブックJを携帯させ,調査工事中に貴重な動植物が確認された場合には,適切な措置を講じるよう指導する。 ア.猛禽類 新たに猛禽頬の営巣を確認した場合は作業を中断し.学識経験者等も 交えその後の具体的措置を協議し,適切な措置を講じる. イ.昆虫類 作業区域内において東重な昆虫類を確認した場合は,昆虫類を作業区 域外に移動する。 (5)地震地質踏査(陸域) a、調査概要 文献および航空写真等による机上調査をもとに,現地踏査を実施する範囲 を絞り込み,現地において地層が現れている露頭を詳細に観察し、地質,断層の有無および断層の括動性,長さ等について調査する。(半径約30kmの範囲) b.想定される環境影響 (a)動植物 現地踏査による動植物への影智 c.環境保全措置 (a)動植物 作業者には,計画地点で確認された貴重な動植物等の概要と注意事項を 紀載した「ハンドブック」を携帯させ,調査工事中に貴重な動植物が確認された場合には,適切な措置を講じるよう指導する. ア.ハヤブサ ハヤブサが生息している鼻繰島の営巣地には,刺激を与えないよう必 要以上接近しないようにする。 (6)ボーリング調査(海域) a.調査概要 ボーリング機械により地盤を構成する岩石などを棒状のコアとして連続的 に採取し,これを観察するとともに種々の試験を行う。(約60本,総延長; 約5.000m) b.想定される環境影響 (a)水質 削孔において使用する水またはボーリング機械の油による水質への影響 (b)動物 ボーリング台船の一時設置場所の動物への影響 C.環境保全捨値 (a.)水質 調査において水を使用するが,循環使用により外部に濁水を排出しない よう措置する。 また,海底部に漏水防止用コンクリートを打設して濁水流出防止に努め る。さらに,油を流出させないよう調査関係者に周知・指導するとともに,万一流出した場合に備えて,オイルフェンス・吸着マット等を常備する。 (b)動物 作業者には,計画地点で確認された貴重な動植物等の概要と注意事項を 記載した「ハンドブック」を携帯させ,調査工事中に貴重な動物等が確認 された場合には適切な措置を講じるよう指導する。 ア.カクメイ科の貝類 既にカクメイ科の貝類が確認されたタイドプールでは調査を実施しな い。 イ.スナメリ 作業区域においてスナメリの遊泳を確認した場合,区域外に出るまで 監視を続ける。 ウ.ハヤブサ ハヤブサが生息している鼻繰島には,刺激を与えないよう必要以上接近しないようにするとともに,生息状況について定期的に営巣地沖合いから目視観察を行う。 (7)弾性波探査(海域) a.調査概要 船から海底に向けて音波を発振し、人工的に地盤に振動を発生させ,その 波の伝わり方を測定して,海底の地下の地質構造を調査する。(総測線長:約3km) b.想定される環境影響 (a)動物 調査船の航行による動物への影響 C.環境保全蛤麿 (a)動物 作業者には計画地点で確認された貴重な動植物等の概要と注意事項を記載した「ハンドブック」を携帯させ,調査工事中に貴重な動物等が篠路 された場合には,適切な措置を講じるよう指導する. ア.カタメイ科の貝類 既にカクメイ科の貝類が確認されたタイドプールでは調査を実施しない。 イ.スナメリ 作業区域においてスナメリの遊泳を確認した場合,区域外に出るまで 監視を続ける。 ウ.八ヤブサ ハヤブサが生息している鼻繰島には刺激を与えないよう必要以上接 近しないようにするとともに,生息状況について定期的に営巣地沖合いから目視観察を行う。 (8)音波探査(海域) a.調査概要 船から海底に向けて音波を発振し,海底地盤から反射してくる渡の伝わり方を測定して,海底の地形および地質構過を調査する。(半径約3Okmの範囲) b.想定される環境影響 (a)動物 調査船の航行にこよる動物への影響 C.環境保全措定 (a)動物 作業者には,計画地点で確認書れた貴重な動機物等の概要と注意事項を 記載した「ハンドブック」を携帯させ.調査工事中に貴重な動物が確認された場合には.適切な措置を講じるよう指導する。 ア.ハヤブサ ハヤブサが生息している鼻繰島にほ.刺激を与えないよう必要以上接 近しないようにするとともに,生息状況について定期的に営巣地沖合い から目視観察を行う。 3.環境保全のまとめ 上関原子力発電所建設に伴う詳細調査においては,上記のとおり個々の調査 に応じた環境保全措置を講じることにより,周辺環境は適切に保全され,詳細調査による帝境への影響はほとんどないものと考える。 4.環境藍硯 詳細調査実施中の貴重動植物等の生育・生息状況把握のため,従来から自主的に実施している環境監視調査を継続実施する。 (1)植物調査 . a.調査時期 春季,夏季 b.調査場所 発電所計画地点内 c.調査内容 調査ルートにおける貴重植物の生育確認 (2)ハヤブサ a.調査時期 繁殖期:2回/月 ・非繁殖期:1回/月 b.調査場所 鼻繰島周辺 C.調査内容 船上からのハヤブサおよびハンティング対象種の目視観察 (3)スナメリ a.調査時期 3月〜10月の間 b.調査場所 発電所計画地点周辺海域 c.調査内容 漁業関係者からのスナメリ確認情報の聞取り (4)カクメイ科等の貝類 a.調査時期 夏季 b.調査場所 発電所計画地点内タイドプール C.調査内容 現場目観察および底砂等の採取確認 以 上 |