祝島自治会で「生態系保全規則」制定

 祝島自治会では「祝島未来航海プロジェクト」や「原発に反対する祝島島民の会」と協力し、2008年3月2日に「祝島自治会生態系保全規則」を制定しました。

 この規則の中では、島に現存していない動植物を島に持ち込む際は事前に自治会に協議し、自治会は関係者や専門家の意見を参考に可否を判断する、となっています。また持ち込まれた動植物によって島民生活や島の生態系に被害を及ぼした場合は損害賠償を求める、その動植物の生育・飼育状況の確認等を受け入れる、といった同意書の提出も持ち込む人に求めることとなっています。

 この規則の目的は下記のようにうたわれています。

第1条 規則の目的

 生態系とは、人間も含めて動植物がお互いに影響しあい、関係しあって共存している環境全体のことをいい、微妙な均衡の上に成り立っていて、一旦崩れれば人間の力でその復元は不可能な自然界の基本的な仕組みである。
 万葉集にも詠われ、先人から受け継がれてきた祝島の海・山の豊かな自然生態系は島民が自立した生活を営むために不可欠な産業基盤であり、将来にわたって祝島のかけがえのない財産である。
 したがって現在の我々島民は、次世代の島民にこの豊かな祝島の自然生態系を保全し引き継ぐ責務があり、そのために守るべき事項を祝島島民の総意としてこの規則に定める。

 祝島は他の地域と海で隔てられた離島であるため、農漁業による生産物の出荷や他の地域からの物資の搬入の面では不利な状況におかれています。しかしそれは同時に、島での生活を支える豊かな自然を守るという面においては有利に働いている、とも考えられます。
 
 農業を例に挙げると、現在の祝島では狸や猪、猿などが生息していないので他の地域のように作物の被害や、その被害を防ぐコストについてはかなり軽減されています。だからこそ、高齢者でもびわの無農薬栽培など高品質な作物の生産と併せることで、輸送に不利な面をカバーして農業が続けられています。

 しかし一旦島の生態系が崩れれば、島での生活の基盤を揺るがすことにもなりかねません。

 例えば本来は島にいなかったミカンバエが入ってくることにより、柑橘類の無農薬栽培は難しくなってしまいました。また、20年程前には山口県内のある街の人間が島に無断で雉を持ち込み、その雉が繁殖して農業に大きな被害が出たこともありました。(その雉はあるときを境にぱったりといなくなったそうです)

 もちろんこれはあくまで自治会の規則であり法的拘束力は無く、運用についてもすぐに厳正に適用していくということは難しいと思われます。そのため、これから個々の事例を何度も踏まえていきながら運用のあり方を確立させ、同時に祝島島民自身や関係者の理解を深めていくことが重要となってくるでしょう。

 この規則は、祝島の豊かな自然とそれに根ざした暮らしを自分たち自身の手で守っていく、祝島島民の決意の表れといえます。このサイトをご覧の皆様も、ぜひ祝島の決意にご協力いただければと思います。

関連リンク

祝島自治会生態系保全規則 :氏本農園・祝島だより

3/14付け山口新聞 3/14付け朝日新聞
(2008/3/14)


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