釣行記

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    2001/10/20(土) 和歌山県・七川(しちかわ)ダム  釣行兼ライター:K'z

国道42号線から県道39号線を走り、途中で地縛霊と挨拶を交わしながらまだ真っ暗な和歌山の山林を越えて「七川ダム」に到着したのは6時を回る前である。寝不足からくる車酔いが伴い、とても釣りをする気分では無い。
便所を発見。「こ、この臭気は・・・!?」目が痛い。「やられた」おそらく生物兵器テロによる異臭であると判断。かつて第6サティアンで経験した、あの臭気と似ている。死を覚悟でうんこしたのは初めてである。
気温11度、水温18度。かなりのマッディウォーターだ。「もしやターンオーバー?」憂鬱になる。湖面には靄がかかってはいるが、ボート置き場周辺ではバスと思われる「獲物」の気配が漂っている。レンタルボートはクリーニングもされていないひどいものだ。もう一人のメンバー「S本氏」は操船技術の優れたバス歴2ヶ月のライトアングラーである。私は敬意を表して彼を船長と呼ぶ事にした。

午前7時、取り合えづ向かったのはボート乗降場からすぐの柳の木が立っている場所である。第1投。駄目だ。ラインが見えない。湖面はうぐいす色。スティックベイト(ソフトルアー)を使い、ラインの動きでアタリを見るやり方の私にとっては致命的である。2〜3投してすぐに移動。のちにその場所は好ポイントであったことが判明する。壁際を西へと攻めながら少しずつ移動していく。立ち木を発見し、言うまでも無くそこを攻める。私は陸に上がり、木と木の間にスティックベイトを沈める。
船長
バックラッシュで難儀する船長
『!#%*>☆!?』何やら船長がもんどりうって叫んでいる。ロッドがしなる。早くもワンフィッシュか?いや違う。ベイトリールがバックラッシュしている。おまけに投げられたルアーは、立ち木の枝にブラブラしている。船長はキャストに不慣れなのだ。
陸から逆側を見ると、そこはワンド状になっていて風も少なそうだ。すぐさまバックラッシュから回復させ、そっちに移動。当然の事ながら、すぐにはアタリすら来ない。壁際をトレースしながら徐々に移動。絶好のポイントが数多くあるにも関わらずアタリが無い。「やはりターンオーバーか・・・」野池で鍛えられた鬼の手から魂が抜ける。

捨てられたボートを発見。そのすぐ先で、その出来事は起こった。逆光でラインが光り見え出したのだ。神のいたずらか、それとも情けか、その見えたラインが落ち込んでいく最中にスッと水中に引き込まれる。「来たっ」とっさにラインを巻き取り合わせる。ブルッ。一瞬魚を感じたがバレてしまった。心の臓が息吹をあげる。鬼の面が復活した。『船長!居ますよ、この辺り!』『ホンマかぁ〜?根掛かりちゃうんか〜?』根掛かりか否かの違いは、経験で分かっているつもりだ。船長は悔しそうな顔で「今のは魚ぢゃない」と言いたげだ。しかしその暗鬱した船長の表情が、20m程西へ進んだところで、オムツを交換された赤子の表情に変わる事になる。『木が邪魔やね〜ん!もぅ〜!』船長が嘆く。しかし、掛かっていたのは木ではない。ピチピチした良いサイズのグッドバスである。『ギョエ〜ッ!』と言う叫び声と共にバスはバレた。使用ルアーはグラブ(ソフトルアー)のジグヘッド。取り付け方がまずく、グラブ本体からフックの先がほとんど出ていない。それではフッキングは出来ない。船長は向こう合せにすべてをかけて、ファットペッパー(クランクベイト)に交換。すぐさま『来たぁ〜!』ギンギンにロッドがしなっている。いい引きのようだ。今度はバラす事もなくあげる事が出来た。

船長
ちっちゃく見えるけど、そこそこナイスバディなのだ
釣り始めてから約2時間。午前9時を回った頃の待望のワンフィッシュだ。なぜか船長は白いグローブを手にはめてバスをつかんだ。そして記念撮影。専用の針外し(?)を使いリリースする。ホッと一安心と言った表情を浮かべ、その後もしばらくその場にとどまる。すぐそばでもバスが跳ねるなどの気配が多くなりだしたからだ。
風が強くなり、ゴミが急に流れ出してきた。私はいいのだが、船長はゴミに弱いため移動を希望。大移動を提案し、私が舵を握ることに。操縦はかなり難しいものであった。船尾の操舵になりなかなか慣れることが出来ずに釣りどころではなくなった。船長の操縦技術に改めてセンスを感じる結果となった。

その後はアタリの一つ無く、2人とも消光した状態となる。北側の壁から南側の壁に移動をするが、やはり同じだ。更なる大移動という事で、スタート地点近くの橋げたを目指すことにした。途中良さそうなポイントに止まりキャストしてみるが湖は我々の期待を裏切り、まったくバスの気配が消えてしまっていた。消沈しながら橋げたまで行くが、風の通り道であるかのごとく突風が吹き荒れていて釣りどころでは無いと、またまた大移動することになる。

橋
七川ダムに架かる2本の橋のひとつ
午後1時を回った頃、スタート地点から100mほどに位置する窪地を発見。風が吹く事もなく、日光の照らされ具合も上場だ。私が今回ずっと悩んでいた「ラインが見えない」場所ではなかったのだ。「1本獲れる」そう思いながら、得意の壁ショットを打つ。ふと船長のルアーを見ると、赤い羽根募金で貰えるような羽のルアーをセッティングしていた。ブルーギルを釣るセットとして売っているのを見たことはあった。購入する人なんているのかと思っていたが、そばに居た。
余談だが、それにしても船長はさまざまなルアーを持っている。タックルボックスには少しづつの数だが、ほとんどの種類のルアーが詰まっていた。セコ釣りをしてたんだなぁと思わせる「カナブンルアー(シャロークランク)」から、あんた早速ランカー狙いなの?と思わせる「マッドペッパーMAX(ディープクランク)」やバズベイトなど取り合えづ集めましたと言わんばかりに詰まっていた。又、それをちょこちょこ付け替えてすべて使っているところがスゴイ。まだ自分にとっての「最高の武器」が見つかってないからだろう。私にとっての「最高の武器」はハードルアーでは「CB100」、ソフトルアーでは「クロステールシャッド」の4inchである。

その「クロステールシャッド」の4inchをしつこく壁際に落としている時にその時は来た。するすると引きずり込まれるラインを見て、すでにラインはやや張られていた為、ゆっくり目のアワセを行った。グッと重みを感じ、フックが完全である事を認識できた。3m程下にいるその魚は、普段経験することの無い動きを見せた。『でかいですっ』思わず叫ぶ。ひとかきが大きいのだ。船長の目は冷ややかだ。『うそやん』信じてはもらえていない。グンッグンッという動きに「切られる!」と思った。以前同じくらいの引きのバスに6ポンドラインを簡単に切られたことが有った。今回は8ポンドであるが、夏前に巻いたそのラインに自信が無かったのだ。巻くのを止め、ロッドの操作だけで水面まで寄せた私のシルエットは「まさに知性溢れる野池の鬼」だったと船長は後に語った。バスの動きは頭が良いと思わせるのに十分な軌道を描いていた。前から後ろからボートの下に潜ろうとするのだ。2度のジャンプは船長の額やタックルボックスにしぶきをぶっかけ、誰が本物のアングラーなのかが分かっているようだった。約30分の死闘の末、バスはぐったりと観念したところをハンドランディングした。
K'z
無理矢理な両手持ち。やはりちっちゃく見える
ゴッドサイズのバスも嬉しいが、ボウズを免れた安堵感のほうが大きかった。過去2〜3回しか使ったことのないメジャーを取り出し身体測定を。『42cm。記録更新です。』と言ったが、船長は僕の測り方に疑問を持ったため再検査。ジャスト40cm。39cmと40cmにはアングラーにしか分からない大きな差がある。心の中ではパラパラを踊っていたが、平然を装うようにした。
1本獲ったら苦手ルアーの克服と決めていたので、以後はラバージグを使うことにしたが、自分にとって「使う必要のないルアー」である事を悟り、使うルアーの練習と更なる秘技をあみ出すために元のスティックベイトに戻すことにした。

丁度その頃、ボートのバッテリー切れに気付き、バッテリー交換のためにボート置き場へ向かった。そこで耳にしたこの湖のポイントは、最初に行った柳の木の向こう側であるという。『柳の木の向こうはシャローになっていて、向こうの丘にかけてブレイクがあるので、沖に向かってバイブレーションやスピナーベイトを投げてたら釣れますよ』と言われるが、どこがどうで、どこからどこへ投げればいいのかがイマイチ理解出来なかった。それよりも自分の勘を信じて、釣れそうな場所を探して釣ることにした。

ボート置き場より東に進んだところに立ち木エリアなどを攻めながら、好ポイントにボートを固定することにした。船長の1投目は見事木枝にヒット。本日初(これも珍しい)のロストかと思ったが、船長の、ルアーを取り返す執念はバスを獲る時よりもすさまじく、丘に上がってその木を破壊しだしたのだ。もう止めてくれと木の悲鳴を感じたその時、ルアーはポチャっと水面へ落ちた。その後その場には、それまで寂しかった湖面を賑わす事となった。「バスレイク」である事を認識させる、青年バス(多分生後1年くらい)の群れがベイトを追って湖面に現れたのだ。私はすかさずそれに目掛けてスティックベイトを投げると、早速アタって来たが喰いきれなかったようで、2〜3回パクっと来るだけで、飲み込むまではいかなかった。しかしそのスクールの発見は、水質の良化と時期・場所さえ考えて釣行すれば爆釣させる事が出来る湖であると知らしめられた。

時間は午後4時半を回った。ボートの使用は午後5時までなので、最終的に向かったのはスタート地点であるボート置き場とした。私は電話をするために車へ行き、ボートに戻ると船長が1匹釣り上げていた。『イエ〜イ♪』と言っていたが、なぜか写真撮影は断ってきた。もしや八百長?アミで獲ったバスにフックを付けたのか?
この湖は朝マヅメよりも夕マヅメが強力のようだ。あちこちでベイトフィッシュを追い、跳ねている姿が見られるようになった。しかしどれもコバッチばかりで、私の使うルアーでは追ってきても喰えないサイズであった。そして納竿の時間が近くなり、私の中から鬼が消えた。しかし船長の方はオムツを交換された赤子の表情が消える事無く『キャッキャ』言いながらチビグラブをキャストしまくっていた。

今回この釣行には2つの学習があった。1つは「いないと思った場所にもバスはいる」という事だ。いそうな場所ばかり攻めるのは効率も良くやはり釣れるのだが、人に聞いた場所なども無視出来ないと思った。もう一つは「カラーリング」。「クロステールシャッド」の4inchで私の中の最も信頼できるカラー「パープルウィニー」では1回もアタリが来なかったのに、マッディウォーターでより目立つ「ブラックウィニー」に交換してから転機が来出したからだ。バスの視力が如何ほどなのか分からないが、やはりマッディな中でのナチュラルカラーは見えないのだろう。

最後に1句。「七川の、付近にギャルの、姿無し」

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