居場所

 僕の中で君の存在が大きくなる・・・・。あの時、出会ったのは
 ただの偶然だったとは思えない。運命だったんだ・・・・――。
 だから、僕は待つよ。君が心を開くまで・・・・。



幻想界。ここは式神になるべく者たちが暮らす世界。かつて、人間界の隣にあった
この世界は、人間たちの文明が進むにつれ、彼らの住む環境がなくなったとして、
電脳世界に移ってきた。彼らはその時、こんな言葉を残した・・・・。

「人間の心の中にはもう――― 我々の居場所は無い・・・・。」



貴人は一人で瞑想していた。そこへ六合が入ってきた。
「貴人。瞑想中に失礼ですが、1つ聞いてもいいですか?」
「別に構わないよ。何かな?」
「黒崎 密のことなんですけど。彼、式探しに来たはずですよね?」
「うん、そうだけど。それがどうかしたのかい?」
「ええ。彼は最初の2日間は式探しに熱中していたのですが、どうも最近やっていないようです。
どうしてでしょうね?」
「ああ、そうだったの?最近見ないと思っていたら、、、。でも、僕にはその理由は
わからない。」
「そうですよね。ただ、あなたは外見の年齢が彼と近いので、何か相談でも受けたかと
思ったんです。失礼します。」
「うん、役に立てなくてごめんね。」
「構いませんよ。他をあたってみましょう。」
そう言うと、六合は貴人の部屋を去った。
「六合は、本当にそれだけの理由で来たのかな?どうも、僕の事を疑っているみたいだな。
気をつけないと、、、、。」
そうつぶやくと貴人は瞑想を再開させた。



「密ー!ここ開けてよ〜〜〜。」
都筑が密の泊まっている部屋の前で、密に呼びかけている。
しかし、密はいっこうに返事をしてこない。
「密!どうしちゃったのさ。最初の2日間はあんなに張り切っていたのに・・・・。
最初はね、みんないい式を見つけられないから不安になるだけだよ。それに、
特にこの辺りは十二神将の力があるから、あんまり強い式はいないんだ。」
「十二神将」という言葉を聞いた瞬間、密は溜まっていた怒りをぶつけた。
「うるさい、都筑!俺は1人で居たいんだよ!帰れ!!」
「えっ!ご、ごめんね。俺っていつもおせっかいだね。だけど、密が1人で部屋に閉じこもっていると、
心配になるんだ、、、、。本当にごめんね。何かあったら、俺の部屋に来て。
良き相談相手になるから。」
部屋の中から返事は聞こえてこない。都筑は諦めて、自室に戻った。
「都筑、ごめんな。お前にはどうしても相談できない。だってお前は、巽さんと・・・・。
最初、お前と巽さんが名前を呼びあっているのを聞いて、驚いた。確かに、お前と巽さんは
昔からつきあいがあるし、名前を呼んでいるのも不思議じゃないと自分に言い聞かせた。
だが、その後のあの行動には驚いた。俺は見てしまった!2人のキス・シーンを!!
俺は我が目を疑った、本当に。だから、都筑!お前には相談できない。お前にこの事を
話せば、お前は貴人(やつ)の肩を持つだろう!?俺にはどうしてもできないんだ!
男とあんな事をするのは。邑輝に犯された夜から俺は、男に恐怖を抱いた。でも、召喚課に配属
されてから都筑や他の職員たちを見ていて、その恐怖は小さくなった。でも、俺は貴人に
唇を奪われてから、その恐怖がまた、大きくなった。最初の2日間はまだ、よかった。
式探しに熱中できた。しかし、俺がレベルの高い式を得ようと探すのに一向に見つからない。
『どうしてだ?』と訊くと、皆、口をそろえて言う。『十二神将の力がこの辺りに及んでいるから』と。
そうだよ、俺の唇を奪った奴が俺の邪魔をしているんだ。どうすればいいんだ!!!」
と、思考を巡らせながら密はベットに横たわった。そのうち眠気を感じ、密は深い眠りに落ちた・・・・。
密は夢を見た。



―― 夢の中 ――
緋色の月が散り行く桜を浮かび上げている夜、密は夜風にあたっていた。
とても、静かな夜だった。しかし、その静けさを破る音が響いた。何かが落ちる音。
それも、かなり重い物が落ちたようだ。その音が聞こえた方向に密は走った、そして次の瞬間、
彼は我が目を疑った。そこにあったのは女性の惨殺死体だった。そして、、、、階段の上には
何の感情も表していない男が、月明かりに照らし出されていた。
男は密を見つけると、彼を捕まえるため近付いてきた。密は瞬時にその男は「殺人犯」だと思い、逃げた。
しかし、遅かった。逃げる密を男は捕まえて、桜の木の下に押し倒した。そして、彼の着ていた着物を
全て剥ぎ取ると、彼の胸に唇を落としはわせていく。得体の知れないものが自分の体をはいまわる恐怖に
密は悲鳴をあげた。が、それも空しいものとして夜の闇に吸い込まれていく。
「や、、、やめて!あぁ、、、はぁ、、、、。」
抵抗を続ける密の口から甘い吐息が漏れる。
その声に少し満足した笑みを浮かべながら、男は冷たく言った。
「坊や。君は見てはいけないものをみてしまったんです。この事は黙って頂かないといけません。
だから、私は君を殺します。
ただし、君みたいな美しい物を一思いに殺すのは、私の美学に反するので君に呪詛をかけました。
君はこれから、苦しみ続けるのです。私の影におびえながら。私が死なない限り、その呪詛は
消えません。たとえ、君が死んでもね。」
そう言い捨てた後、男は密の秘部に己自身をいれていった。
「い、、、や、、、。い、、、たい!や、、め、、て、、、あぁぁ。」
一気にいれてしまうと、男は腰を動かし始め、そして満足なところで果てた。その間、密は
甘い声を上げ続けていた・・・・・。
最後に男は密の顔に己の顔を近づけて何かつぶやこうとした・・・・・。



「密!大丈夫?どうしたの?」
誰かが密に声をかけている。その声に密は目を覚ました。
「貴、、、、人、、、?」
「どうしたんだい?すごい悲鳴をあげてたよ。それに、体は汗でびっしょりだし・・・・。」
そう言って、密の体に触れようとした貴人の手を密は振り払った。
「俺に触るな!!何でもないから、出て行け!!」
「密!何でもないわけがないだろう。あんなに悲鳴をあげて・・・・。それに、君の体に
浮き上がっている文字。それ、呪詛だろ?」
(しまった!見られた。)と思い、返す言葉を失っている密に貴人は言った。
「誰にやられたのか知らないけど、君が僕の愛を受け入れないのもそこにあるの?
なら、こうするまでだ!!」
そう言うと、貴人は密を押し倒した。そして、すばやく彼の両腕を手近にあった紐で、結んだ。
「な、、、何するんだ!止めろ!!」
両手の自由を奪われた密は、自分の体の上にのっている貴人を蹴倒そうとした。
しかし、力ではかなわなかった。
「止めろ!何のつもりだ!!離せ!!!」
口だけで抵抗を試みる密を見て、貴人は冷たい笑みを浮かべ、言った。
「生憎だけど、僕は君を抱くつもりだよ。その呪詛の文字が見えなくなるまで、僕の印をつけてあげる。」
そして、密の唇に己の唇を近づけた。貴人の言葉に驚いて、口を開けていたためすぐに貴人の舌が
密の口腔に入ってくる。
「んん、、、う、、、んぅ。」
密の甘い吐息が部屋に響く。
「んん、、、はぁ、、、、。どうしてだよ!!」
空しい叫びを密があげた。
「どうして・・・どうして俺は、こんな気持ちになるんだ?男とこんな事するなんて、気持ちの悪い
ことのはずなのに・・・・。4年前、邑輝に犯されたときは嫌悪感しかなかった。
でも今は、違う!貴人にキスされて、少しの嫌悪感はあった。でも、その感情を上回る快感が
あるんだ。俺は・・・・。」
「密?密、もう言わなくていいよ。君も僕の事、好きになったんだね。」
「ああ、そうかもしれない。少なくとも、嫌いじゃない。」
「う〜〜ん。じゃあさ、確かめないかい?」
「確かめる?どうやって??」
「しよっか?一番、わかりやすいと思うし!」
「する?」
そうつぶやいてから、密は頬を紅くしていった。
「べ・・・別に・・・いいぞ・・・。」
少し聞き取りにくい声だったが、貴人はしっかりと聞き取った。
「じゃあまず、腕の紐を解かないとね。痛かったでしょ?」
貴人は密の自由を奪っていた紐をはずし、紐の跡が赤く浮き出た腕に唇をはわせた。
「あ、、、。」
突然の貴人の行動に密は驚いて、腕を動かしたが、己の行動に罪悪感を感じ、
「ごめん。」
と小さく言った。
「僕の方こそ。密はほとんど初めてに近い事を忘れてた。優しく、ゆっくりしていくから安心して。」
そう言って、貴人は密の服を一枚ずつ脱がしていく。密は一枚、一枚脱がされるごとに、頬の紅みを
増していった。そして、全てをとりさらった密の体に貴人は唇をはわせる。未だ消えていない呪詛の
文字にあわせながら。
時には優しく噛んでみたりして、キス・マークをつけていく。
「あ、、、、んん、、、い、、い、、、、。」
密は素直に答えた。その声に満足な笑みを浮かべて、貴人は密自身に手をかけた。
「あぁ、、、はず、、か、、しい。」
「そんな事はないよ。密のって、綺麗。」
「や、、、見る、、、な、、よ。」
「大丈夫。気持ち良くさせてあげるから。まかせて。」
そう言って、貴人は密自身を口に含むと、舌で舐めていく。
「うぅ、、、んん、、、達っ、、、ちゃう、、、。」
「いいよ、密。好きな時に達ってよ・・・。」
「あ、、、んぅ、、、。あ、、、、。」
密自身は貴人の口腔の中で果てた。
貴人は密のものを全て飲み干し、言った。
「密、次は僕も一緒に達きたい。いれてもいい?」
まだ、絶頂の中から抜けきれていない密は、言葉の意味がわからず、ぼーっとした顔をしていたが
貴人が唇を寄せてきたので、優しく受けとめた。
「ん、、、、う、、んぅ、、、。」
「ねぇ、密。いれてもいい?」
再度、たずねられて密は頬を火照らせながら、首をたてにふった。
その顔を見て、貴人は密の秘部に指をいれた。
「あぁ、、、うぅ、、んん、、。痛、、、い。」
「ごめん。もうちょっと、ゆっくりするよ。」
「あ、、んぅ、、、あぁ、、い、、い、、。」
「それじゃあ、いれるよ?」
そう言うと貴人は密の秘部に己自身をあて、ゆっくりといれていく。
「んぅ、、、もっ、、、と、、、ゆっ、、、く、、り、、、。」
その言葉を受けて、貴人はさらにゆっくりといれていった。そして、最後まで入れ終わると、密の痛みを
和らぐように、腰を動かし始めた。
「あ、、、い、、や、、、。痛、、、、い、、、、。」
「ごめん。でも、ちょっと我慢して。もう少しだから!」
貴人はゆっくりと、腰を動かしながら密自身に手をかけた。密自身は2度目の絶頂に向け、
たちあがっていった。そして・・・・・。
「・・・・。うぅ!」
貴人自身は密の中で、密自身は貴人の手の中で果てた。
ゆっくりと貴人は密の中から己自身を出していく。密はぐったりと、ベットの上で横たわっていた。
「密、大丈夫?」
「たぶ、、ん。大丈、、、、夫。なんか、すっ、、、ごく、恥か、、、しい。」
「そのうち、恥かしさもなくなるよ。ところで、あの答えは出た?」
あの答えとはもちろん、「密の貴人に対する気持ち」だ。
「ああ、出た、、、よ。貴人、、、愛して、、、る。」
そう言うのと同時に密は貴人の唇にキスした。そのキスを受け入れるように貴人は口を開け、
密の舌を己の口腔へ導く。
「んぅ、、、んん、、、、。」
2人の甘い吐息が漏れる。
そして貴人は、離れた唇の間で言った。
「僕も密の事、愛してる。未来永劫・・・。」
「俺も、未来永劫・・・愛してる。」
そう言って、2人はまた、唇を重ねた。



小鳥のさえずりが部屋の外で響いて、貴人は目を覚ました。
密は未だ目覚めていない。貴人は服を着ると、密に毛布をかけた。
「人間の恋人同士なら、この後コーヒーとか一緒に飲むのかな?」
と、貴人は眠る密に声をかけた。
「でも、無理だね。僕たちの関係はもう少し、秘密。君の式探しに支障を与えるから。
そうだ!『阿里山茶(アァ・リィ・サン・ツァー)』をいれておくよ。朝の目覚めには最適だから。」
貴人は密の部屋に置いてある茶器でお茶をいれた。茶葉の独特の香りが漂う。密はその香りをかぎとり
起きようとしている。
貴人はそれに気付き、部屋から静かにでた。彼は出際につぶやいた。
「昔、僕たちはこう言いながら、電脳世界(ここ)にやってきた。『人間の心の中にはもう―――
我々の居場所は無い・・・・。』と。でも、今は違う。密、君の心の中に僕の居場所はあるよね?
僕の心の中にも、君の居場所はあるよ・・・・。」
そして、貴人は朝日が優しく差し込む廊下を歩いていった。
茶葉の香りをまといながら・・・・・。

                                               「居場所」 終

―― あとがき ――
こちらも、やってしまいました。アハハハ。もう、笑うしかありません。
「前と内容が似てる!」という文句は出るのでしょうか??実際、私も
そう思っております。未熟な木精のワン・パターン・コースです。はい。
しかし!これではいけないと思い、今度の小説では少し趣向を変えようと
思っています。基本的に「鬼畜」な感じのキャラは書きたくないのですが・・・・。
今度のではある人に「鬼畜」になっていただこうかと・・・・。
でも、無理でしょうね。
閑話休題(それはさておき)
今回も話の中に中国茶の名前をいれた私ですが、「『阿里山茶』って何?」と
思われた方います?「阿里山」というのは台湾でも有名なお茶の生産地なんです。
そこでできたお茶はとってもおいしいです。機会があれば、飲んでみてください。
私のオススメは阿里山茶の1つ「雪中茶」です。少々、値段は張りますが、オススメします。
それでは、今度は「邑輝X都筑・巽X都筑」で会いましょう。
(ここ最近、あとがきで茶葉の宣伝ばかりしてるな・・・。自粛しよ。)

                             FROM.神崎 木精

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