生徒会室の情事
ねぇ、ちょっとはかまってよ。忙しいのはわかるけどさ。
『今日は他の奴と帰ってくれ』
『え?』
『生徒会の仕事だ』
『生徒会』この三文字がオレとアイツとの距離を思い知らせる。
そんなに『生徒会長』という名誉が大事なの?
― 生徒会室 ―
「それでは次の議題にうつります」
生徒会室では手塚の片腕として働いている「副会長」の女生徒が明朗な声で
会議を進めていた。
当の手塚は?というと、会議中にしては珍しく、集中していないようだ。
手塚は先程、リョ―マが見せた表情が気になっていたのだ。
(最近、こっちの仕事が忙しいから部活にも顔を見せていないしな・・・)
「・・・長!会長!」
突然、彼の耳にあの明朗な女生徒の声が飛び込んでくる。
否応なしに現実に引き戻された。
「会長。ご気分でも悪いのですか?」
「そうじゃない。他の事を考えていただけだ」
「しっかりして下さいね。会長の部にも関わる話なんですから」
「気をつける」
手塚にこういう風に言う事ができる数少ない人間の一人が、この「如月」という名の女生徒。
青春学園は生徒会長と副会長はそれぞれ、異性が務めることが慣わしであった。
つまり、手塚に意見する事ができる数少ない人間の代表格・不二周助は自動的に
副会長にはなれないので、彼女が勤めているのだ。
もっとも、不二が「副会長」という仕事をするとは思えない。
さて、如月はプリントを役員に配布した。
そこには『第○○回 青春学園文化祭 予算調査結果』と書かれてあった。
そう、手塚がずっと部活に行けなかった理由は、青春学園の一大イベント・文化祭が
近付いていたためである。
ちなみに男子テニス部も部活参加として毎年、店を出しているのだが、
今年は校長の妙な提案(別名:思いつき)でとんでもない事をやらされる破目になっていた。
手塚は一つ溜息をつくと、会議を進め始めた。
「お疲れ様でした」
生徒会の会議室の隣にある応接室で、手塚は残りの仕事を仕上げていた。
その彼の目の前に紅茶が置かれた。
「有難う」
如月は紅茶の茶葉集めが趣味のようで、残って仕事している手塚に
紅茶を出すのは珍しくなかった。
「こうして外が暗くなるまで学校に残り始めると、ああ、文化祭近いんだなって思っちゃいます」
「先に帰っても構わないが?」
目を通している資料を見つめたまま手塚が答えた。
「いえ・・・そういう意味で言ったわけでは・・・」
手塚の返事に狼狽した様子を見せる如月。
(確かに暗いから、送ってくれるかな?とは思ったけどね)
少々ヘコみながら如月は、自分の分の紅茶を一気に飲み干した。
(手塚会長ってこういう所では疎いよね。何でもできるのに・・・)
「本当に先に帰っても構わないんだが」
「え?」
突然手塚から声をかけられて、如月は持っていたティーカップを落としそうになった。
「外も暗い。家の方が心配されるだろう」
(そこまでわかっていて、どうして『送る』の二文字が浮かばないの?
もしかして、送るべき彼女がいるとか?やっぱり、彼女持ちだったんだ――!!)
「如月?」
「は、はい!?」
名前を呼ばれて如月が顔をあげると、手塚の顔が目の前にあった。
黙り込んでいる彼女を見て、彼は気分を悪くしたと思った様だ。
「気分でも悪いのか?」
如月の顔が一気に赤く染まった。
「いえ、そういうわけでは・・・。あ、あの・・・お言葉に甘えさせて頂いて構いませんか?」
「ああ、構わない」
「しっ・・・失礼します!」
如月は返事もそこそこに脱兎の如く、生徒会室を後にした。
(不意打ちよ!あれは反則よ!イエローカードよ!(←謎))
赤面した顔を隠しながら、廊下を走っていた如月は、はたと足を止めた。
(でも、カッコ良かった。惚れ直しちゃいました)
赤面した顔をさらに赤くした彼女は、恥かしくなって下を向いた。そして、彼女の目は自分の手に
握られている白い物体に釘付けになる。
「私の馬鹿〜!」
如月の声が暗くなった校舎に響き渡った。
さて、如月が突如立ち去った生徒会室には手塚が一人で資料を片付けて、帰り支度をしていた。
「トントン」
不意に生徒会室のドアがノックされた。
手塚は如月が忘れ物でもしたのだと思い・・・
「如月か?忘れ物でもしたのか?」
と、ドアに向かって言った。
「『キサラギ』って誰?」
声と同時に生徒会室のドアが開いた。
「越前・・・」
開けられたドアの後ろにいたのは、帰ったはずのリョ―マだった。
「ねぇ、キサラギって誰なの?」
リョ―マはそう言いながら、部屋に入りドアを後ろ手で閉めた。
「副会長の名だ。それより・・・!!」
リョ―マが何故ここにいるのかを問いただそうとした手塚の唇は、封じられた。
リョ―マが己がそれを重ねてきたのだ。
「んぅ・・・んん・・・」
手塚の口腔に舌を差し入れてくるリョ―マ。
始めは戸惑っていた手塚も、彼の舌が入ってくると絡め取って、自分のペースへ進めた。
「んん・・・んぅ・・・はぁ」
唇と唇の間で、リョ―マは熱い息を吐いた。
「それで、どうして越前がここにいるんだ?」
「もう、せっかくそれを訊かれる前に唇、塞いだのに」
「あの程度で俺が誤魔化せると思っていたのか?」
「・・・ってないよ。途中から手塚のペースだったし」
赤面した顔を手塚に見せまいとして、リョ―マはそっぽを向いた。
「今まで練習していたわけではないだろう?」
(まだ、その話続けるの?)
リョ―マはそっぽを向いたままで、答えない。
その様子を見て、手塚は大きく溜息をつくと、リョ―マのもとに歩み寄った。
「寂しかったのか?」
「・・・・」
「俺を待っていたんだろう?」
(わかってんじゃん)
「何が望みだ?」
「・・・して。オレを・・・抱いて」
やっと口を開いたリョ―マは、頬を紅潮させて上目づかいをして見せた。
リョ―マが手塚に甘える時の「常習手段」。この表情を見たら、さすがの手塚も折れるしかない・・・。
「生徒会室(こんなとこ)だぞ?」
「いいの。いっつもしてる部室よりマシ。ソファだってあるし・・・」
そう言って、リョ―マは手塚をソファに押し倒して、その上に乗ろうとした。
が、すぐにリョ―マの視界が反転する。
「押し倒されるのは趣味じゃない」
手塚の整った顔がリョ―マの視界を占める。
どちらともなく、唇を重ねた。
「んぅ・・・んぅ・・・」
手塚はリョ―マの制服を脱がし始めた。
「んぅ・・・・んん・・・」
舌がリョ―マの口腔を自由に動き回ると、リョ―マの欲望はあさましくも反応し始める。
服の合わせ目から、手を差し入れられると・・・
「んぅ・・・」
鼻にかかった声が微かに漏れた。
手塚が手探りでリョ―マの胸の突起を見つけると、指で弄び始めた。
その度にリョ―マの中心へと快感が走る。
「んぅ・・・んん・・・」
唇が耳元に移り、続いて首筋、鎖骨と移る。
唇が触れる度にチリリとした痛みが、一瞬だけ起きて、リョ―マの体に赤い跡が息づいた。
そして、唇が胸に下りてきた。すでに、上半身を裸にされていたリョ―マ。
無意識のうちに手は、下半身でその存在を主張しているモノへと伸びる。
しかし、その手は目的の場所へたどり着くまえに、手塚の手に捕らえられた。
「まだ、ダメだ」
耳元で優しく囁かれて、両手を上へあげられた。
手塚はまた、胸へと唇を落とす。突起を甘噛みしたり、軽くキスするように
触れる度に、リョ―マの体は電気刺激を与えたように細かく震えた。
「ダメだ」と言われていても、何も拘束されていないそこは解放されるのを
今か、今かとせかすように、浅ましく震えつづける。
リョ―マは堪えきれずに、手塚の背へ手を回し、潤んだ瞳で訴えてみる。
「も・・・ダ・・メ・・・。達かせて!」
すると手塚の唇の感触が胸の上から消えた。
リョ―マが恐る恐る目を開けてみると、手塚の唇が眦に溜まっていた涙を吸い取った。
「達きたいか?」
何処か微笑を浮かべながら、訊ねてくる手塚。
リョ―マは一生懸命、縦に首を振った。
「ねだるのが上手になったな」
フッ、と自嘲気味に笑って、手塚はリョ―マのズボンのベルトをはずし、
下着ごと一気に下ろした。外気がリョ―マ自身に触れただけで、
達ってしまいそうなぐらいにそこは、限界に張り詰めていた。
手塚の唇が軽く触れて、すぐに口腔へと導かれた。
「やっ・・・あっ・・・あっ・・・」
手塚の肩口を掴んでいた手に、無意識に力が込められる。
「やぁ・・・あっ・・・ああぁぁ――」
リョ―マ自身は呆気なく、手塚の口腔で果てた。
普段通り、手塚がリョ―マのモノを嚥下していく様を潤んだ瞳でみつめる。
そして、リョ―マは先程まで自分自身に触れていた唇に己がそれを重ねた。
手塚もすぐにそれに答えて、舌を絡める。
苦い独特の味が口の中に広がった。
「んぅ・・・んん・・・」
深いキスを交わしている間に、手塚の指はリョ―マの秘部へ伸びていた。
そこはすでに充血して、誘うようにひくつく。
一気に二本の指を挿れてみると、先程の解放の所為か、あまり抵抗なく中へ入った。
ニ、三度指を出し挿れされただけで、リョ―マ自身は緩やかにその存在を再び主張し始める。
「んぅ・・・んん・・・はぁ・・・。てづか・・・もう、いい・・・指・・・いい・・・」
「まだ、キツいかもしれないぞ」
「大・・・丈夫・・・」
そう言ってリョ―マは手塚の背中へ回した手に力を込めた。
手塚が指を抜くと、淫らな音が部屋中に響いた。
リョ―マはその音の大きさに驚いたが、次の瞬間、驚きも吹っ飛ぶほどの衝撃に襲われる。
手塚自身が、リョ―マの中に入ってきたのだ。
「あっ・・・あぅ・・・」
最近はそこも慣れてきたのか、手塚自身が入ってきても、以前のような激痛はなくなっていた。
激しい律動を繰り返しながら、手塚は自身を進めた。
「やぁ・・・あっ・・・あっ・・・」
リョ―マは快楽の波に押し流されそうな意識を保つために、手塚の背中に爪を立てた。
リョ―マの中に侵入しながらも、手塚自身はその体積を増していた。
最奥にたどり着くと、先刻以上の激しい律動を繰り返した。
そしてついに・・・
「いゃ・・・・あっ・・あっ・・・あああぁぁぁ―――」
「っ!」
リョ―マが自身を解放させたのと同時に、手塚もまた、リョ―マの中で自身を解放させた。
いつものように、リョ―マは今まで情事が行われていたソファの上で寝ていた。
手塚はリョ―マの体を綺麗にして、如月が淹れてくれた紅茶のカップを片付けた。
「こんなとこでもヤルとはな・・・」
手塚は自嘲気味に言った。
相変わらず眠りつづける恋人・・・。
時計の針が八時を差す時間になっていた。
さすがにこの時間は遅すぎる。家まで送っていった方が良いだろう。
「リョ―マ、起きるんだ。帰るぞ・・・」
「んぅ・・・」
薄っすらと目を開けて、ソファから起き上がったリョ―マ。
「手塚ぁ・・・キスして!」
「寝惚けているのか?」
先刻まで抱き合っていたのに、その上、目覚めのキスまで要求する恋人。
口では冷たく言っていても、結局の所、リョ―マの要求を満たしてやる手塚。
「んぅ・・・んぅ・・・」
情事の始まりと同じように、リョ―マが積極的に舌を絡めてきた。
「んん・・・んぅ・・・ふぁ。手塚・・・」
離れた唇の間で、リョ―マが密かに呟く。
「オレ・・・気に入ったかも」
「何をだ?」
「ここでの・・・SEX・・・」
「気に入るな」
「どうして?また、やろうよ」
リョ―マは本気でやりかねない表情を見せていた。
「誰かが見るかもしれないぞ?」
「大丈夫。今日みたいな夜なら・・・」
「勝手にしろ」
また、二人の唇が重なり合った。
校舎に差し込む月光は二人だけを照らすスポットライトのように、輝いていた。
ちなみに、カップを握り締めて大絶叫した如月は?というと・・・
「嘘でしょ?あの手塚会長が、テニス部の一年生ルーキーと、できてるなんて・・・」
カップを返しに応接室に戻ってきていて、情事の一部始終を見ていた。
「という事は・・・私にはチャンスなし!ってこと・・・はぅ〜〜」
如月は現実を目の当たりにして、落ち込んでしまった・・・が、しかし!!
「でもそれって、ラッキーかも。身近なところにホモカップルがいるなんて。
今度、この応接室に隠しカメラつけようかな〜。
そうだ!この目撃を元に今度のイベント用の本、作ろっと」
と、意気込んでいた。
女はある意味、力強い生き物のようだった。
コトに及ぶ時はご用心を・・・。何処に誰の目があるかわかりませんよ?
昔の人も言っているでしょう?
『壁に耳有り、障子に目有り』
ほら、そこにもハイテック握り締めて立ってる人が・・・!!
― Fin ―
― あとがき ―
久々にハイテックを握って、書いてみました。(え?ラストに書いてある人って神崎・・・?)
文章表現力、ガタ落ちです。お恥ずかしいものを見せてしまいました。すみません・・・。
神崎が活動を休止してから、四ヶ月・・・。BL関係の本は読んでましたが、
量は減ってました。
それでも、タイピング速度を落としていなかった自分に少々、感激。
慣れって凄い!!
さて、「NEWS」でお知らせしている通り、小説を当分は更新しないと言っておきながら
更新している神崎ですが、今回で復帰ではございません。残念ながら・・・。
むしろ、以前よりもPC及びNETから離れる確立大です!!
努力しますが、小説の更新は今度こそ無理のようです。(あ、他に二本入りますけど)
しかし、ここで宣言します!!神崎が完全復帰した暁には中途半端なものを
一掃できる作品を掲載しようと思っていますので、もう少しだけ待っていてくださいね。
それでは、アンケートの方も宜しくお願いします。
P.S.今回、オリキャラで副会長の如月嬢(下の名前決まってない)が出てきましたが、
今後も出てきて欲しいところですね・・・。オリキャラって性格とか勝手に
決められるから結構好き、なんです。
See You Next Story !!
神崎 木精
BACK