紫電の瞳




 何年も何年も探してやっと巡り会ったんです。
幼い頃垣間見た写真の中の姿そのままに・・・・
一瞬にして、私の心を奪い去った「紫電の瞳」で――・・・・


「都筑さん、今日こそ私の願いをかなえさせてもらいますよ。
覚悟してくださいね。」
「何を言うんだ邑輝!この手を離せよ。」
「そんなつれない事言わないでくださいよ、都筑さん。
私は何年も何年もあなたを思いつづけてきたんですよ。
さあ、私の物になりなさい。クスッ。」
「あぁ!や・・・っ!やめろこのバカ!どこさわってるんだよぉ。」
ピピピピッ・・・・・・
「くっ、もうこんな時間になってしまった。これからだというのに。
まぁ、いいでしょう。都筑さん、また会いましょう。
私は当分、この長崎で仕事がありますから。」
「誰が好き好んで、お前みたいな奴に会うか!もう一生、俺の前に
姿を現すな!」
「あらあら、それは全くもって難しい事ですよ。なぜなら、あなたが今
関わっている仕事の黒幕はこの私なんですから。あっ、もちろんあなたに
会うために仕組んだ事。私は今まであなたにはあまり積極的ではありませんでしたね。
私はいつも、自分より高い位置にいると自分自身で認めている人間には、
手を出しませんでした。でも、今回は違いますよ、都筑さん。私は今の自分の力に
不足を感じはじめました。よって、あなたを抱いてあなたの力を得ようと思います。クスッ。
そんなにびくつかないで下さいよ。もっといじめたくなるではありませんか。
おっと、時間に遅れてしまいます。また会いましょうね、都筑さん。」

都筑の耳に邑輝はキスをして、その手をほどいた。
都筑は突然の邑輝の行動に驚き、頬を赤らめ、声にならない声で言った。
「バカッ!何するんだよぉ。お前なんか大嫌いだ。」
「フフッ。それもいつかは変わりますよ。かわいい人ですね、あなたは。それでは。」

邑輝は都筑の前から去った。一人残された都筑は、まだ冷めない頬を手で隠しながら思った。
「どうして、あいつはいつもいつも積極的なんだよ。しかも、自分の力に不足を感じて
俺を抱くだと?なんて、愛のない理由だよ。本当に俺のことを愛しているのか謎だ。
それに俺には別に好きな人がいるんだし・・・・。」
と、自分の思った言葉にやっと冷めていた頬をまた赤らめた。

数日後、都筑は一人で長崎の街を歩いていた。事件もあの日以来、ぷっつりとなくなっていた。
たぶん、あの時邑輝が言っていた事は本当だったんだろう。
「もしこの考えがあたっているのなら、(というより確実なんだろうけど)邑輝はまた、
俺の前に現れるだろうな。はー、苦痛だな。いっそ奴に言ってしまおうかな?俺の本心を。」
「へー、都筑さんの本心というのは何ですか?」
いきなり、そんな声が聞こえて都筑の目の前は真っ暗になった。
「何でも聞きますよ、都筑さん。ただし、こんな所では聞けませんね。黙ってついて来て下さい。」
邑輝はいつのまにか都筑の後ろに立っていたのだ。
そして、都筑に自分のコートをかぶせて車に乗せた。
「うっわ!なにするんだよ、邑輝。」

数十分後、車はとまった。そこは、街から少し離れた見晴らしのいい丘の上に建った別荘だった。
「ここは私の数ある別荘のうちの一つです。もちろん、榊には帰ってもらいますから、
あなたと私の2人だけですよ。さあ、中へどうぞ。」
「ふわー、すごいきれいな別荘だ。お前って本当に金持ちなんだな・・・・。
その性格さえなかったら、もてるだろうにな。」
「またさらりときつい事をいいますね、あなたは。いくら私でも、さっきの言葉には
傷つきますよ。さぁ、こんな所で話してないで私の部屋に来てください。」
「なっ何をバカな事言うんだ。」
そう言い終わるかどうかわからないうちに邑輝が都筑に薬を飲ませると、都筑はぐらっとなり
体は前に倒れた。邑輝はそれを優しく受けとめて自室に運んだ。
「あまり好きな方法ではありませんけど、私は本当にあなたを抱きたいんですよ。
卑怯な手を使ってもね。」

都筑を自室に運んでいった邑輝は彼をベッドの上に横たえた。そして、彼の着ている服を
1枚づつ脱がしていった。全ての服を脱がした邑輝は都筑の唇にキスをし、そして
胸のいろいろな所にも唇をはわせた。
最初は優しくしていた邑輝もだんだんと噛むようになった。
そういうことをしていたせいか、薬で眠っていた都筑は少し目が覚めた。
しかし、まだ薬が切れていないせいか意識はもうろうとしていた。
そして、自分の体をさわっている人間に気づいた。ただ、もうろうとした意識の中で、
それが誰かと判断するのは難しかった。なおも続けられる行為に都筑は快感の声をあげてしまった。
「ん・・・・はっ・・・・んっ・・・・。」
その声を聞いた邑輝は、一層強く都筑の体に愛の印をつけていった。
そしてついに耐えられなくなった都筑は言った。
「あぅ・・・・たっ巽、愛してるぅ・・・・。」

その言葉を聞いて邑輝は自分の手を止めた。あまりにもその言葉が彼にとって意外だったからだ。
決して自分は愛されているとは思っていなかったが、愛しい都筑の口から出た言葉は「巽」だった。
彼の最も嫌う人間のうちの一人だ。そして、邑輝は催眠術を使って今までしてきた事を都筑の頭から
全て消し去り、彼に服を着せた。

数時間後、都筑は目を覚ました。
「都筑さん、そんなに私と話したくなかったのですか?それともあの秘書にいじめられて、
疲れきっているのですか?」
「俺は・・・・俺はただ眠っていただけなのか?邑輝。」
「ええ、そうですよ。私にだって高いプライドがあるんです。疲れきって眠っている人間を
襲おうとは思いませんよ。」
「本当だろうな?まあ、体には何の異変もないようだし、信じるとするか。
うわ!やばい、巽との約束の時間に遅れる。あいつはそういう事にうるさいからな。
そうだ、邑輝!今度また変な事件を起こしてみろ、ただじゃ済ませないぞ。
十王庁を甘くみるなよ。」
「あらあら、また恐い目ですね。でも、私はあなたのその『紫電の瞳』に心を奪われたんですけどね。
また会いましょう。都筑さん。」

都筑が邑輝の別荘を去ってから、彼は一人でコーヒーを飲み思った。
「本当にあの人は愛おしい人だ。私の前でいとも簡単にあの男の名をだす。
でも、覚悟してくださいね都筑さん。私は近いうちに必ず、あなたの心からあの男を追い出し、
私で埋め尽くしてみせましょう。それまで、もっとたくさんあの男を愛しなさい。
その方が、私も奪いがいがありますから。必ず私はあなたの心を支配しますよ、都筑さん。
あなたの『紫電の瞳』がいつも私の事だけを見つめる日は必ず来ます。」

                                                   「紫電の瞳」終

―あとがき―

あ〜、最初からこんなにどろどろでいいのかな?初めて裏ページを見た人には、ちょっと
きつ過ぎたかもしれませんね。(いや、まだ序の口かな?)いちおう私の中では都筑は
巽さんとLOVEx2な方がいいですね。それで、邑輝さんには入り込む隙なし!というのが
ベストですが、今回の都筑は隙だらけですね。
ちなみに、気になる人がいるかもしれないので一言、言っておきましょう。
邑輝さんがつけた「愛の印」というのはもちろん「キスマーク」の事です。
一般的にキスマークは数時間では消えません。(一日以上残るものもあります。)
しかし、ここは死神である都筑に関係のない事で、死神の超再生能力ですぐに消えちゃいます。
ある意味、都合がいい能力ですね、これは。
この小説に関する感想は「秘密を知る者の語らい」に書いてください。かなり今回ので
木精は疲れきっています。精神はすこしぼろぼろです。がんばらねば。

                                     FROM.神崎 木精

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