わがままな王子様

12月24日・・・世間ではクリスマス・イヴ又は、イエス・キリストの生誕日の前日として、
沢山のイベントが行われる。でも、俺にとってそんな事はどうでもいい!
クリスチャンでもないし、クリスマスを一緒に過ごす、恋人もいない・・・だったけど・・・――。
今年は違う!クリスマスを祝うためではないけれど・・・一緒に過ごすべき
恋人がいる・・・リョ―マが・・・―――。



― 12月24日 ―
世の恋人たち、子供たちは大好きな人からもらえるプレゼントを心待ちにしている日。
にもかかわらず、青春学園・テニス部は練習に励んでいた。
「青学ー!ファイ・オー!!」
一年生たちの応援の声が響くコートでは、レギュラー陣による大会に向けた
練習試合が行われていた。
しかし、その試合に水を差すかのごとく、雨が降り始めた。
手塚は短く舌打ちをして、部員に指示を出す。
「一年は手早く、ネットを片せ!他の部員は部室に戻って、着替えろ。急げ!!」



― 部室 ―
「いきなり降ってきたね、リョ―マ君。」
「ああ。」
カチローが着替えながら、リョ―マに話し掛けた。
部室には誰がスイッチを入れたのかわからないが、ヒーターが入っていて暖かい。
いくらテニスをしていたとはいえ、冬の雨は体を心から冷やす。
「これぐらいの寒さだったら、晩には雪になるかもね。ホワイト・クリスマスだよ。」
「興味ないね。」
リョ―マは返事もそこそこに着替えを済ませて、ミーティングの輪に加わる。
「今日は突然の雨で、練習を中止せざるを得ない。明日は休みだから、明後日に練習試合の
続きを行う。では、解散。気をつけて帰れ。」
「お疲れ様でした!」
手塚は一通りの連絡を済ませて、部誌を開いた。
部員たちは各々、帰途につく。そして、部室には手塚とリョ―マだけ残った。
「越前、帰らないのか?」
顔を上げずに、手塚は訊ねた。
「それ、本気(マジ)で言ってたら怒るよ。」
「怒られる覚えはないが?」
相変わらず、部誌へペンを走らせる手塚。リョ―マはその姿に苛立ちを覚え、
「今日はクリスマス・イヴだし、誰か可愛い人と過ごすんだろ?」
と皮肉を言ってみる。すぐに否定してくれると思っていたリョ―マは、意外な言葉を耳にした。
「ああ、そうだな。早く済ませないとな。」
カチン・・・。頭の中で本当にその音がしたかと思うほど、リョ―マは怒りの表情を浮かべ、
「浮気者〜!」
と、叫ぼうとしたが、その言葉が口から出る前に唇を塞がれた。
「んぅ・・・んぅ・・・・。」
強引に入ってくる舌を一瞬、拒んでみたがすぐに、己が舌を絡め取られる。
「んぅ・・・うん・・・はぁ・・・。」
名残惜しそうに二つの唇の間で銀糸が糸を引いた。
「可愛い恋人の誕生日だしな、リョ―マ。」
「酷いな、覚えてるなんて。」
先刻までの怒りの表情は何処へ行ったのか、リョ―マは頬を上気させて答えた。
「帰るか?」
「コクン」と小さくうなずいて、リョ―マはラケットケースを左肩にかけた。



― 手塚の家 ―
「やぁ・・・あん・・・あん・・・。」
リョ―マの甘い声と湿った淫らな音だけが部屋を満たす。
家に着くや否や、玄関で手塚はディープ・キスをして、力が入らなくなったリョ―マを
抱き上げて自室のベッドへ運んだのだ。
幸い、手塚の家族は旅行に出ているらしく家には二人だけだった。
「はぁ・・・はぁ・・・やぁ・・・いく・・・。」
「好きなだけ達け。俺が受け止めてやるから。」
手塚はそう言って、リョ―マの張り詰めた自身を吸い上げる。
「やぁ・・・ああぁぁぁ―――――。」
その刺激にリョ―マ自身はあさましく脈打って、手塚の口腔で欲望を放った。
手塚はリョ―マのモノを余すことなく嚥下してしまう。
リョ―マは荒い呼吸をして、空ろな表情で手塚の顔をみつめる。
「気持ち良かったか?」
「うん・・・。」
リョ―マは小さく頷いて、手塚の唇に己がそれを重ねる。
「んぅ・・・うん・・・うん・・・。」
いつもは手塚がリードするキスも今夜は、リョ―マが積極的に舌を動かす。
「んぅ・・・んぅ・・・はぁ・・・。」
「今日はやけに積極的だな。」
「だって、俺のバースデーだもん。手塚には俺が欲しいって思ってるもの全部、
プレゼントして欲しい。これは先刻のお礼。」
「リョ―マが欲しいモノって何だ?」
答えなどわかりきってるくせに、意地悪く訊ねる手塚。
リョ―マはそんな手塚の反応に頬を膨らませてすねてみた。
「俺に言わせる気?俺は今夜、王子様なんだよ。」
「じゃあ俺はその我が儘な王子様に仕える従者?」
「うん、そうなるね。忠実な従者は俺が言わなくても、して欲しい事がわかるの。」
「例えば、こういう事か?」
手塚はリョ―マを再びベッドに押し倒し、彼の胸の突起を軽く吸う。
「はぁ・・・うん・・・やぁ・・・あん・・・・。」
リョ―マは一瞬、手塚の突飛な行動に息をつめたがすぐに、甘い声をだす。
舌を使って、両の突起に与えられる刺激にリョ―マ自身は反応して、その体積を再び増し始めた。
そして、手塚の手はリョ―マの足を開かせてその最奥に潜む秘部に長い指を這わせる。
「あん・・・はぁ・・・はぁ・・・。」
一段とリョ―マの声は高さを増した。上と下からそれぞれ湧き起こる快楽は
行き場を失ったように、彼の中心である彼自身に集中して行き、
それは次の刺激で欲望を吐き出すまでに体積を増した。
「あん・・・んん・・・んぅ・・・。」
「リョ―マ、気持ちいいか?」
「うん・・・。もう・・・いっ・・・ちゃう・・・。」
「もう、限界?本当にリョ―マのここは元気がイイナ。後ろと胸だけで達けるなんて。」
「ゆう・・・しゅうな・・・ああ・・・じゅう・・・しゃの・・・おか・・・げ・・・。」
「達く?それとも、我慢する?」
「達くぅ・・・やぁ・・・・早く・・・。」
リョ―マは切羽詰った声をあげて、手塚を上目使いに見た。
「わかった。」
手塚は焦らすように、胸の突起から徐々に下へ下りて行き始めた。
「バカ・・・!早くぅ・・・。」
涙目になりながら、手塚の動きを見ていたリョ―マはあまりにも焦らされるので文句を言った。
しかし、そう訴えてみたものの手塚は知らん顔を決め込み、あまつさえリョ―マ自身の根元を
彼の秘部に這わせていた指で締めた。
「ひゅぅ・・・ぃやぁ・・・!」
あまりの衝撃にリョ―マはまた息をつめた。
「はなし・・・てぇ・・・。達き・・・たい・・・。」
「ちょっとだけ我慢しろ。すぐに達かしてやるから。我慢した方が解放した時の気分が最高だぞ。」
そうリョ―マの耳元で告げて、手塚はリョ―マ自身を口に含んだ。
リョ―マの感じるところばかりを執拗に攻めてくるので、リョ―マ自身はあさましく震え、
先走りの雫をこぼし始める。
「ゃあ・・・・あん・・・あん・・・はぁ・・・。」
先端からこぼれる雫を丁寧に舐め取りながらも、手塚はリョ―マ自身を弄ぶ。
「でづ・・・か・・・おねがい!・・・達かして・・・。」
これ以上我慢させられたら、意識を失うと思ったリョ―マが必死に手塚に言った。
「お願いするのが上手くなったな。」
リョ―マ自身を口から離さずに話したので、手塚が口を動かす度に
自身に唇がふれるので、リョ―マはギュッと目をつぶった。
「その顔に免じて、解放させてやる。」
手塚はリョ―マ自身の根元を締めていた指を離して、先端をその指で弾いた。
「はぁ・・・あああぁぁぁ・・・―――。」
リョ―マは二度目の精を放った。
「先刻のよりも気持ちが良かっただろう?」
「うん・・・・。」
リョ―マは体を起こす力もないようで、ただ空ろな瞳だけを手塚に向けていた。
「リョ―マ。リョ―マが一番欲しいモノをあげようか?」
「手塚の・・・あれ?」
弱々しく訊ね返して、リョ―マは数瞬、目を閉じる。
「うん・・・欲しい。」
「わかった、あげる。」
手塚はリョ―マの両足を持ち上げて、秘部を露にした。
「手塚・・・苦・・・しぃ。」
まだ先刻の解放で呼吸が整っていないリョ―マはその無理な体勢に不平をもらした。
「でも、この方がリョ―マの下の口がよく見える。それに、俺をもっと近くで感じれる。」
「バカ!何が『近くで感じれる』だよ。」
「その方が嬉しいだろ?」
「勝手にしろ!」
プイっと照れくさそうに顔を背けてしまったリョ―マ。
手塚はその仕草があまりにも可愛くて、もっと苛めたくなる衝動に襲われた。
「勝手にする。ただし、途中で嫌がるなよ。」
「わかってる。」
顔を背けたままリョ―マは答えた。その頬は照れくささと熱で上気していた。
リョ―マの秘部は二度の射精の所為か、モノ欲しげにひくついている。
手塚はゆっくりとそこに自身をあてがった。
リョ―マの中へ手塚は自身を進めていくと最初、異物が入ってきたと体が判断して、
押し返そうとしたが、リョ―マの放った精液がローションの代わりした為か
その圧力もいつしかなくなり、手塚はすっぽりとリョ―マの中へ自身をおさめた。
「動かすぞ。」
手塚がゆっくりと腰を動かし始めると、リョ―マの声も高くなった。
「あん・・・あん・・・んぅ・・・はぁ・・・はぁ・・・。」
手塚は徐々に腰の動きを早めながらも、リョ―マが感じるところを
確実に突いてきた。その為、リョ―マ自身はまたもその頭をもたげ始める。
「ぃやぁ・・・あん・・・あん・・・。」
「もう、復活してるぞ。リョ―マの。」
「てづか・・・が・・・やぁ・・・いいとこ・・・突くから・・・。」
「満足してるか?王子様。」
「うん・・・。うれ・・・あん・・・あん・・・しぃ。」
手塚自身もリョ―マの中で、さらに体積を増していき限界にまで張り詰めていた。
「うっ・・・。」
短い声を出して、手塚はリョ―マの最奥に証を残すように自身を解放させた。
そして、リョ―マ自身も限界に達して三度目の精を放っていた。



疲労でリョ―マは手塚がリョ―マの中から自身を抜いた後、眠りに落ちた。
その寝顔を見ながら手塚はつぶやいた。
「本当に王子様みたいな奴だな。命令してみたり、すねてみたり・・・。
そこがまた、可愛いんだけどな・・・。」
リョ―マはそんな手塚を知らん顔で眠りつづける。
手塚はリョ―マの額に汗で張り付いた前髪をかきあげて、キスした。
リョ―マの睡眠を妨げないような優しいキス・・・。
普段はどんな事があっても、表情を崩さず、冷静に行動している手塚だったが、
彼は本当はこのキスのように優しいのだ。
手塚はふと、リョ―マが数日前に今日と同じくベッドの上で訊ねた事を思い出した。

― 数日前 ―
「手塚って、テニス以外に登山と釣りも好きだよね。」
「ああ。」
リョ―マはじっと、壁に飾られているルアー・コレクションを眺めていた。
いきなり黙ってしまったリョ―マを不思議に思った手塚は、ラジカセのボリュームを下げて
ベッドへ近寄った。
「別にいいのに。ボリューム下げなくても。」
「眠ったと思っただけだ。」
「眠くないよ。」
リョ―マはそう言って手塚をみつめた。
「どうした?」
リョ―マは首を横に振って、目を閉じた。「何でもない。」と言うように。
「寝ろ。疲れてるだろ。」
手塚はリョ―マに毛布をかけようとしたが、瞬間、その動きを止めた。
リョ―マがその手首を掴んでいたのだ。
「手塚。正直に答えてね。俺とテニスと登山と釣りの中で一番大事なのは何?」
突然のリョ―マの問いに手塚は黙ってしまった。
「ねぇ、どれ?」
あまりにも必死に問うリョ―マ。
(そんなの、お前に決まってる・・・。)
手塚は心の中でそう思いながらも、恥かしくなって口にだせなかった。
「もう、いいよ。」
手塚があまりにも黙ってしまったので、リョ―マはすねてしまい
掴んでいた手首を振り放した。
「リョ―マ!」
リョ―マにちゃんとした答えを聞かせなかった事に罪悪感を感じ、手塚は必死にリョ―マに真実を
伝えようとしたが、リョ―マは狸寝入りしてしまい、仕方なく手塚がシャワーを浴びている間に
帰ってしまっていた。

   (回想終了)

「あの時伝えれなかった事を今、言う。一番大事なのは・・・リョ―マ、お前だけだ。」
相変わらず、リョ―マは眠り続けていた。
ガサッ・・・と部屋の隅で、紙袋が倒れる音がして手塚は音のした方を見た。
それは、昨日の休みにリョ―マへのプレゼントとして買っていた、リョ―マの好きなメーカー、
FILAのスポーツタオルとリストバンドだった。
手塚はおもむろにそれを拾い上げた。
「忘れていた・・・・。」
そして手塚はリョ―マが寝ている枕元にその紙袋を置いて、部屋を静かに出た。
ドアが閉まる音を聞いてからリョ―マは目を開けた。
手塚の置いていった紙袋を掴んで目の前に持ってきて、リョ―マはつぶやいた。
「サンタクロース気取り?本当に恥かしがり屋なんだから・・・。
そんな大事なことは俺が起きている時に言うものだよ。バカ・・・。」
そんな言葉とは裏腹にリョ―マは頬を染めていた。
「ムカツクから、もう一回言わせてやる。」
リョ―マは掴んでいた紙袋を元あった場所に戻し、
今度は本当の眠りについた・・・。

十二月二十四日・・・クリスマス・イヴ、教会ではミサ、そして・・・
愛するリョ―マのバースデー・・・――――。

                                ― THE END ―



この作品は2001年12月23日に神戸国際展示場で行われた
C.CITY IN 神戸で販売したコピ本の木精が執筆したものです。
この話に陽さんのマンガがついて販売してました。
限定5冊・・・。全て売れちゃいましたよ。
そこで、2002年になりましたのでHPに掲載させていただきます。
今、木精は1月のイベントの原稿に追われてます。
正月返上で原稿・・・。他にも何本かしないといけないので、
大変です。もし、今回の小説が面白いOR興味をもたれた方は
ぜひ、1月のイベントにいらしてください。
そこでもコピ本をだしますので・・・。もちろん、内容は「やおい」で
ございます。たぶん、限定5冊・・・。

                                        神崎木精

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