自由

最後の戦争から一体何年経ったのか・・・・・・
いや、年月など俺にはあって無いようなモノ・・・・・・
何でもいい・・・・・・
   自由になりたい!!!


「テメェ!いつまで呑気に寝てやがる!」
「うわっ!痛いじゃないか、騰蛇。」
そう言いながら都筑は、騰蛇にけられたおしりをなでていた。
「騰蛇、君には少しでも主人を大事にする心というのがあるのかい?」
「主人?では、都筑は俺に六合のように跪いてあいさつしたり、
朱雀のように『我愛ニー(うぉーあいーにー)』と言いながら
抱きついて欲しいと言うのか?」
「い、、、、いやっそういう意味ではなくて、、、。
もう少し優しく起こしてくれるとか。いくらなんでも『足ゲリ』は
ないでしょう?」
「いくら呼んでも起きない人間に足ゲリをくわえて何がわるい。
まあ、それはいいとして神界のあいさつまわりは済んだのか?」
「ううん。みんな忙しくて、相手にしてくれないんだ。
ふ〜、朱雀姐さんや白虎ともあまりゆっくる話せてないんだ。」
「まあしょうがないと言えば、しょうがないだろうな。『時空の歪み(ワームホール)』
が大量にでてきて、その調査でみな忙しいのだろう。もっとも、俺は
手伝う気はないけどな。」
「騰蛇、ちょっとはみんなのお手伝いをしなければいけないよ。」
「言っただろう、都筑。俺はお前以外の人間(モノ)の命令は聞かない。
それが天空小父や黄帝陛下であってもな。」
「ある意味、これも主人に対する忠誠なのだろう。」と思いながら都筑は言った。
そこに潜むある感情には気付かずに。
「有難う、騰蛇。そうだ、式探しに行った密の様子が気になるなぁ。
今、どこにいるんだろう?」
「そんなに心配することもないだろう。子供じゃないのだから。」
「そっ、そうだね。」
「あー、でも、子供かもしれないな。」
「えっ!どうして、そんな事を?」
「今、思い出したが昨日、あの子供が翁(玄武)に『浮遊砂漠』の行き方を
聞いていたそうだ。もっとも、翁(玄武)は行き方を教えていないがな。
ただ、この前の事もあるから、朱雀門の門番『狐太郎と虎次郎』に後を
追ってもらった。あの子供は俺の忠告を無視したのさ。自分の危険も顧みずにね。
やっぱり、子供だ。」
「それ本当の話かよ、騰蛇。でもまあ、安心してもいいかな。『浮遊砂漠』には
ある方法を使う以外、行けないからね。それに、狐太郎ちゃんや虎次郎ちゃんもいるし。クスッ。」
「何がおかしい、都筑。」
「だって、騰蛇が俺以外の人間の話をするなんて、珍しいじゃないか。だから笑ったのさ。」
「どうもお前は、あの子供が大事らしいからな。でなけりゃ、あんな子供に興味はない。」
「でも、本当に有難う。騰蛇。」
顔に満面の笑みを浮かべて都筑は言った。
騰蛇は都筑が見せた笑みに昔を思い出した、、、、、、。

―― 数十年前 ――
 幻想界での最終戦争が終わり、この世界には平和がおとずれていた。
しかし、一人だけには平和がおとずれていなかった。天空城の奥深くの牢の中、
一人の男がつながれていた。その男の名は『騰蛇』。地獄の黒焔を放ち、
幻想界での戦争に加担した。その恐ろしい黒焔と性格のために、いつはむかうかわからないという
理由でこの牢につながれていた。
未来永却、この牢の中で生きる運命だった。
しかし、、、、

「天空!朱雀や白虎から聞いたぞ。騰蛇を地下牢に閉じ込めているそうじゃないか。
どうしてそんな事をしているんだ?騰蛇にいったいどんな罪があるというんだ。」
「あの者は、いつ我らを裏切るかわからない。だから、我が胎内に閉じ込めているのだ。」
「裏切るだと?どうしてそんな事がわかる。朱雀姐さんもそうだけど、ここの人間(もの)たちは
どうしてそんなに騰蛇を忌み嫌うんだ。必要な時には、使うだけ使っておいて終わってしまえば、
『裏切る』から牢の中につなぐなんて、おかしすぎる。
天空!こんな事は言いたくないけれど、あえて言う。
俺はお前たちの主人だ。主人の命令には絶対服従だ。命令する!騰蛇を牢から解放しろ!!」
「・・・・・。しかたるまい、契約解除にならない限り、主人の命令には服従だ。
ただし、そのまま解放するわけにはいかない。制御装置をつけさせてもらうぞ。よいな、都筑。」
「ふー。どこまでも用心深いな。まあ、仕方が無い。今から解放しに行く、牢への道を開け!」

 カツーン、カツーン、、、、。
暗闇の中に靴音が響く。その音に騰蛇は疑問をいだいた。
「いったい誰だ?こんな所にやってくる人間は。最終戦争が終わり、俺を使役していた人間たちは
手のひらを返すように、俺を『危険因子』だとして、ここに閉じ込めた。以来、誰もこの牢には
来ていないのに、、、、。
誰でもいい、俺を自由にしてくれ!!!」
暗闇の中に一人の男の姿が浮かび、その男は騰蛇をつないでいた鎖を切った。腕をあげる形で
つながれていた騰蛇は鎖を切られた弾みで、前に倒れた。
今まで、恐怖をいだいた事がなかった騰蛇だったが、この時初めて恐怖をいだき、震えた。
「俺はいったい、どうなるんだろう?天空がいったように『抹殺』されるのだろうか?」
そう思いながら震えつづける騰蛇に、鎖を切った男は不安を和らげるように言った。
「怖がらなくていいんだよ。俺は君の味方だから。さあ・・・一緒に行こう。騰蛇――・・・・」
そして、その男は騰蛇の前に大きな手を差し出した。

―― 現代 ――
 「あの時初めて、俺は人のぬくもりを感じた。そして、俺をあの牢獄から自由にしてくれた
都筑に感謝し、都筑(やつ)についていこうと思った。天空小父や黄帝陛下を敵にまわしたとしても、
俺は絶対に都筑を裏切らない。俺は都筑の望む通りに生きる・・・・!!」

「騰蛇ぁ・・・?どうしたの、ボーっとしちゃって。」
そう言いながら、都筑は騰蛇の前で手を振ってみせた。そう、数十年以上も前に彼を暗闇の牢獄から
救い出した大きな手だ。
「ん?ああ、都筑。まだいたのか?暇な奴だな、本当に。」
「ひ、ひどいなぁ。俺の睡眠を邪魔した上に、お説教までしちゃってさ。それで俺がいろいろと
話していたら、ボーっとしだして。心、ここにあらず。という感じだったし。そんなにつまらなかった?
俺の話。」
「ああ、つまらなかった。だから、他の事を考えていたんだ。」
「う、率直な意見をどうも有難う。しょうがないな、白虎や朱雀姐さんでも探そう。
そして、あいさつまわりをしないとな。」
横で都筑と一緒に寝ていた、猫に翼が生えた幻想界特有の獣、ヘイヘイの頭をなでながら都筑は立った。
「じゃあ、行ってくるね。騰蛇、少しはみんなのお手伝いをしなさい。これは友達からのお願いだぞ。」
そう言いながら、都筑は朱雀の屋敷に向かった。ブツブツと何を言おうかと迷っていた都筑を
突然、白い絹の布がおおった。そして、都筑はその布をかぶせた人間から背中から抱かれた。
そして、耳元でささやかれた。
「都筑、好きだよ。お前が俺をあの牢屋から解放してくれた時から、愛している。」
「騰蛇?どうしたの?」
「黙って聞いてろ!京都で、お前が俺を召喚して殺してくれるよう頼んだ時、俺は躊躇した。
でも、思ったんだ。愛する者を失うのは辛いけれど、その愛する者が苦しんでいる姿を見るのは、
もっと辛い。そして数十年前、お前が俺を牢から解放してくれたように、俺もお前を苦しみから
解放してやろうと思った。だから、俺の地獄の黒焔を放ったのさ。でもまあ、巽が影に取り込んで
しまった。あの後、少し後悔したんだぞ。俺は愛する者を殺そうとしたんだからな。いくら、お前を
苦しみから解放させるとはいえ、お前を殺す必要はなかったんじゃないかと思った。だから、
あの影師の巽には感謝している。」
「騰蛇、、、、ごめんね。あの時の俺はどうかしていたのかもしれない。そして、心から伝える。
俺も騰蛇のことが大好きだよ。」
そう言いながら、都筑は騰蛇の腕を優しくにぎった。
「都筑、、、、。これからもずっと、俺はお前を守っていくよ。そして愛し続けるよ。」

 2人の男がお互いの気持ちをわかちあっているのを横目に、ヘイヘイは翼を使って飛んでいった。
その様子はさながら、気持ちのすれちがっていた恋人同士が互いの気持ちをわかちあい、周りから
祝福されているかのようだった。
これから起こる惨事など、この2人にはまだわかっていない・・・・。

                                           「自由」 終


―― あとがき ――
テスト復帰、第一号の小説は「騰蛇X都筑」にしてみました。いやはや、「闇の末裔」のコミックスを
読んでいない方は、『幻想界』って何?『式探し』?という具合に前作から話がとんでいますね。
というより、前2作だって、かなり突然のストーリーで混乱された方も多いと思います。まあ、私としては
「幻想界」での話と「冥府」での話とは、少し別に進行させていこうと思います。(苦し紛れの言い訳?)
これでも、今回のお話はやっぱり唐突すぎますね。仕方がないので、順番が逆になりますが、都筑たちが
幻想界へ行く事になったエピソードも書きましょう。
どうして突然、復帰第一作目にして「騰蛇X都筑」という話を書いたのかというと、、、、。
ただ、書きたかっただけです。(なんて、率直な意見。)まあ、これだけでは説明不足ですね。
実は、今発売中の「闇の末裔 I」を読んでいて、「あ!騰蛇ってかっこいい。」と思ってしまい
一目ぼれしてしまいました。ちなみに、私が十二神将(この言葉の説明も今度。)で好きな式神は、
順にあげると、、、、白虎、朱雀、六合、騰蛇という具合です。でも最近、騰蛇が朱雀姐さんを
抜かすぐらいになってきました。
 
あ!!語っていたら、もうP(ページ)が足りない。ということで「木精の十二神将話」は次回に続きます。
次回もお楽しみに。

                                        FROM.神崎 木精

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