第一部 地震あれこれ

  1.3 地震の型

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 被害を起こす地震には、プレート境界型(海溝型)地震と直下型(活断層による)地震に大きく分けられ、地震の型としてよく用いられています。しかし、このような分け方では、地震全体を網羅することはできないし、用語に伴う誤解や混乱もあるようです。
 ここでは、プレート境界型や直下型というよく使われる用語をそのまま使い、他に日本海東縁地震、スラブ内地震を付け加えて地震の型としています。地震の型(発生機構)というよりも、地震の起こる場所による区分であると考えたほうがいいかもしれません。

 地震の型
 プレート境界型(海溝型)
 直下型(活断層)

 日本海東縁地震
 スラブ内地震
 地震の型ってなぁ〜に?(誤解と混乱)

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【地震の型】

 海溝型地震と呼ばれるような地震の型を考えてみると感覚的に意味が捉えやすく防災上有効と思われる表現や地球科学的な分類による表現などがあり、混乱気味です。

 科学技術省地震調査推進本部が用いている表現によると、
 @活断層による地震
 A海溝型地震
 の2つに大分類して用いられることがあります。この分類に入らない地震は無理やり押し込める場合や少し細分して
 @活断層による地震
 Aプレート間地震
 Bプレート内地震
 の3つに分けることがあります。

 本来、プレート間の相互関係はプレートが離れる場合は除いて、(A)一方が他方のプレートの下に沈みこむ場合、(B)プレートが互いに押し合い衝突する場合、(C)すれ違う場合の三つに分けることができますが、これらは全てプレート間地震でまとめることができます。この場合は海溝型地震はプレート間地震に含められています。 
 直下型地震はマスコミによって作られた用語であるといわれており、上記のような分類の中には直下型地震と呼ばれる表現はありません。
 
 日本の太平洋側では海溝やトラフと呼ばれる海底の凹地から日本列島を載せた陸側のプレートの下に海洋側のプレートが沈み込んでおり、両者の境界は日本列島の下に向かって深くなっていきます。海溝型地震はプレート境界面で発生する浅い地震を指しますが、相模トラフや駿河トラフの場合はその震源域が人の住む日本列島の下まで及んでいるために海溝型地震が直下型地震であるとも言えます。さらに、広い意味でのプレート間地震やプレート内地震の一部も直下型地震と呼べる場合もあります。このようなあいまいさはありますが人の住む都市の直下で発生する比較的浅い地震、すなわち被害と直結するような地震を総称して直下型地震と表現されるようです。

 新聞なので目にする区分の代表は
 @直下型地震
 A海溝型地震
 の2つの大分類であり、地震被害を受ける側に立って防災を意識した分類のように感じます。
 明快な分類には適していないかもしれませんが、日本で起こる被害地震を2つに分けた分類としてはイメージ的に捉えやすい名前ではあるといえます。
 

 以下、地震の型として用いられるいくつかの表現を確認しておきます。

プレート境界型地震

1.3.1 プレートのもぐりこみによって起こる逆断層型大地震前後の地殻運動(茂木清夫著「地震の話」朝倉書店より

【プレート境界型(海溝型)】 

 プレート間地震に分類されます。
 プレート境界型地震はプレート間地震と同じであり、太平洋側ではプレート境界型地震もプレート間地震もほとんどの場合海溝型地震を意味します。プレート境界面の深度が深くなれば地震の発生場所は海溝から離れるので海溝型地震という意味合いが薄れ、海溝型地震というよりはプレート間地震というのが一般になります。
 海溝型地震は過去に大災害をもたらした地震が多く含まれることから、海溝型地震という表現は防災上からも重要な表現です。

 図1.3.1は、プレート境界型(海溝型地震)の起こる機構であり、大地震前後の地殻運動を示しています。海のプレート(図右側)が陸のプレート(図の左側)を押すとともに引きずり込みながら陸のプレートの下にもぐり込んでいますが、プレート境界の摩擦力が限界に達すると急激なすべりが起こり、逆断層型大地震が発生します。地震の発生とともに海水も急に持ち上げられるので海溝型地震には津波を伴うことがあります。
 海側のプレートのもぐり込む場所は、日本海溝や南西諸島海溝およびトラフと呼ばれる海底の凹地(駿河トラフ、南海トラフなど)です。
 海溝型の地震にはマグニチュード8程度以上の巨大地震である関東大地震、東海地震、南海地震などがあります。南海トラフでは歴史的に同じような場所で地震が繰り返して発生しており、次の東海地震が迫っているとの考えから、東海地震の直前予知を目指す体制がとられております。
 プレート境界型の関東大地震では死者・行方不明者が10万5千人でしたが、プレート境界型・直下型を問わず首都圏のような人口密集地で大地震が発生すると想像を絶するような被害が発生する可能性があることが指摘されています。

【直下型(活断層)】

 陸域の活断層によって発生する地震は直下型地震の代表です。
 
 プレート間地震がプレートの運動による直接的な地震であるのに対し、活断層による地震はプレート運動の影響による間接的な地震です。
 活断層が活動することによって発生する地震は生活の場である内陸部で発生するために内陸型地震とも呼びますが、マスコミ関係では直下型地震という呼び方が一般的です。
 活断層の活動に伴って発生する直下型地震はプレート境界型地震と較べて規模(マグニチュード)が小さいのが普通ですが、生活の場である内陸部で発生するため、たびたび大被害が発生しています。
 記憶に新しい1995年の兵庫県南部地震(マグニチュード7.3)や1891年(明治24年)の濃尾地震も直下型地震であり、ともに6千人〜7千人以上の人命が失われています。
 濃尾地震のマグニチュードは8.0であり、直下型の地震でもプレート境界型の地震に匹敵するような大規模の地震が起こる可能性があることを示しています。

 同じ活断層が歴史的に繰り返し活動することによって地震時の変位が蓄積されて地形として残されていたり、地層が断層で切られているような地震の痕跡が残されています。活断層の調査によると活断層の繰り返し間隔は千年〜数万年で断層ごとに異なると言われ、最近活動した活断層が近い将来再び活動することはないと考えられています。ただし、活断層の活動はプレート境界型の地震と較べて、繰り返し期間が長く活動履歴を正確に把握でき難いことから、いつどこで起こるか分からないという考え方もあります。実際、深い地震や小規模の地震は地表に地震断層が現われることは少なく、活断層があるかどうかも確認できません。
また、活断層が活動することによって隣接地域の活断層が影響を受けて活動しやすくなるとも言われております。

【日本海東縁地震】 

 プレート間(プレート境界型)の地震です。
 東北日本の日本海東縁にはプレートの境界があり、南下して糸魚川−静岡構造線につながるという説があります。
 プレート境界は東西方向の圧縮力のために「歪み集中帯」と呼ばれる何条かの断層・褶曲帯が形成され、南北方向に延びています。このゾーンで発生する主な地震は逆断層型のタイプです。
 日本海東縁地震はプレート境界で発生する地震ですが、太平洋側のようにプレートの顕著なもぐり込みは認められておらず、いずれも浅い地震です。今後の研究課題として残っており、海溝型地震とは別の扱いにされるのが普通です。
 1983年(昭和58年)の日本海中部地震(M7.7、死者104人)や1993年(平成5年)の北海道南西沖地震(M7.8、死者行方不明者230人)のような津波を伴う地震が発生しています。

【プレート内地震、スラブ内地震】

 プレート内地震とスラブ内地震は同じです。
 図 1.3.1に示すように、海のプレートは陸のプレートの下にもぐりこんでいきますが、もぐり込んでいくプレート(これをスラブといいます)の内部で発生する地震をプレート内地震あるいはスラブ内地震と呼びます。プレートは海溝やトラフと呼ばれる海底の凹地でもぐり込むので、スラブは海溝やトラフ付近で浅く、陸側に向かって深くなります。プレート内(スラブ内)地震は時としてマグニチュード8程度以上の巨大地震であることがあります。
 なお、本ページでは陸側のプレートの内部で発生する地震はプレート内地震に含めていません。

 スラブ内の浅い地震としては、1933年(昭和8年)の三陸地震津波(M8.1)があり、震源域が浅いために大津波が発生しました。深い地震としては、1993年(平成5年)の釧路沖地震(M7.8)があり、深さは約100kmです。

【地震の型ってなぁ〜に?(誤解と混乱)】

 東海地震はプレート間地震=プレート境界型地震=海溝型地震に区分されますが、震源域が駿河湾や遠州灘の他に都市のある陸域まで及んでいるため、都市の直下であるという意味で直下型地震あるいは直下地震ということもでき、実際にも防災上そのような表現で使われることがあります。
 日本では太平洋側で発生する海溝型地震によって大被害を受けてきた歴史があり、そのため、プレート間地震とかプレート境界型地震といえば海溝型地震を指している場合が多いことも事実です。
 スラブは陸側に向かって深くなるので、深いスラブ内地震=プレート内地震は内陸部で発生することがあります。都市の直下であっても、深い場合はこれを直下型地震とはいいません。直下型あるいは直下地震は暗に浅い地震がイメージされています。

 東京都の被害想定では、「直下地震」という名称が使われています。この場合の「直下地震」は、東京都の直下で発生する地震という意味での「直下地震」であり、、直下型地震やプレート境界型地震といった分類ではありません。
 中央防災会議の被害想定では地殻内の浅い地震として「横浜市直下の地震」などの表現が用いられています。地殻内の浅い地震とは活断層を示していますが、被害想定のための仮の地震であり活断層の存在は確認されているものではありません。規模の比較的小さい地震ややや深い地震の場合は過去に繰り返して発生していても地表にその痕跡がないことが多く、活断層があるとは認識できないのが普通です。

 直下型あるいはプレート境界型のように”型”が付くと、地震の発生機構による分類のように受けとめますが、分類の中に”日本海東縁地震”のような場所を示す用語が入ってくると混乱します。また、直下型地震と直下地震などのような類似する用語なども、話し手(地震・防災関係者、マスコミ)と聞き手(一般市民)による共通の認識を難しくしており、時に誤解や混乱のもとになっているのではないかと思われます。”型”という表現ではなく、”内陸地震”、”プレート境界での地震”と表現される場合もよく目にします。この場合の分類は、場所を示す分類として統一されていますので、”日本海東縁地震”が入ってきてもそれほど違和感はありません。そもそも、防災を考慮した地震の分類がないのが原因ではないかと思われます。

 活断層による地震は陸側のプレート内部で発生するので、活断層による地震をプレート内地震に分類することがあります(地震の辞典)。ただし、本ページではプレート内地震とは海側のプレート内での地震としており、陸側のプレート内で起こる地震(活断層による地震)は含めていません。

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参考資料
 地震調査推進本部地震調査委員会 日本海東縁部の地震活動の評価(2003)、相模トラフ沿いの地震活動の評価(2004)など
 理科年表 国立天文台編 (2002)
 宇津徳治他編 地震の辞典(第2版)(2001) 
 茂木清夫 地震の話 朝倉書店 2001
 安部勝柾 最近の大地震の特徴と教訓 「東海地震の予知と防災」 1997
 高木章雄 これからの地震予知研究 「東海地震の予知と防災」 1997
 石橋克彦 大動乱の時代 岩波新書 (1994) 
 東京都 東京における直下地震の被害想定に関する調査報告書 1997

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